篠竹(野竹)について

篠竹


南方系の植物である竹は、西日本には孟宗竹や真竹、淡竹など大型の種類が多いが、東日本の特に東北まで行くと孟宗竹も少し小振りになるし、竹細工に使われるのは主に小型の笹類が中心になってくる。そんな笹類のひとつ、篠竹は地方によって呼び名の多い竹材だが、篠竹を野竹とも呼ぶ山の職人さんから、数種類の見本が届られた。一日中、山で伐採していると様々な模様や色合いの入った篠竹がある。実は、この赤や黒の色合いが編み上げる竹籠に影響を与えていたのではないか?そんな仮説を聴いていて時間を忘れた事を思い出した。


米研ぎざる


しかし、なるほどヒゴにすると篠竹とスズ竹は分かりづらいかも知れない。篠竹は竹質にツヤがなく、スズ竹はツヤがあるのが若干の相異点だ。ある問屋さんでは、つい30年前には年間で2000~3000個ほど篠竹の米研ぎざるを扱っていたそうだ。店主によると、かつては地域には4000人の竹従事者がいて、推定で年間90万個の生産があり、何と米の出荷額と米研ぎざるの出荷額が同じくらいあった時期もあったと言うから驚く。


根曲竹手提げ籠


さて、東北地方には、「真竹より篠竹、篠竹よりスズ竹、スズより根曲竹」という言葉がある。竹の使いやすさ、奥深さを例えて言い伝えられて来た事だと思うが、長年使い込まれた根曲竹などを手にすると、なるほどと納得する事が多い。


篠竹六ツ目丸籠


「篠竹よりスズ竹」の篠竹であるが、かつて関東あたりでも盛んに編まれた六ツ目編みのメカゴに代表される籠に多用されてきた。篠竹とスズ竹は全く別の竹材ではあるけれど、割って薄く剥いだ竹ヒゴにする見分ける事は難しくなる。大量生産されていた当時は、竹ヒゴにした状態で内職の編み子さんに届ける場合がほとんどで、骨竹に篠竹、編み込みにはスズ竹を使う細工もあったため、ふたつの竹材が混在していた。


スズ竹市場籠


そこで、職人の中にも篠竹とスズ竹を区別しない方もおられたため、竹虎では現在でもスズ竹市場籠にあえて「篠竹」と明記をつけている。




ちなみに、スズ竹ではこんな緻密なアタッシュケースを製作させていただく事がある。自分も特別な日には手にして出かけるが、気持ちがシュッと引き締まって心地いい。



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