ちょうど一年ほど前に静岡にある匠宿という店舗を訪れた事がある。そこで千筋細工とは少し趣の変わった蓋付きの作品に出合った事を、ふと思い出した。静岡の千筋細工といえば、「千筋」という言葉通り細く取った竹ヒゴを並べて花籠や盛器に仕立てていく非常に手間のかかる竹細工だ。鳥籠や虫籠なども作られていた千筋細工は全て丸ヒゴで製作されてる。
菓子器など、同じような形のものが店頭に並んでいるのを見る事もあるけれど、展示されていた作品は丸ヒゴではない、おまけに竹ヒゴには節まで付いている。竹ヒゴの柔らかな曲線美も見事だ、古い時代にはこのような逸品も創作されていたのかと感動した。
千筋細工の産地には、安倍川餅で名前を知られた安倍川という大きな河が流れている。チャレンジラン横浜で静岡県を走行中、長い橋には悩まされた(笑)。スピードの出ない竹トラッカーで逃げ場のない橋を渡るのは、後続車にとても気を使ったからだ。なので、安倍川の広さも肌身で感じたけれど、これだけの大きな河川だから治水には苦労したと思う。
そこで、護岸のために真竹が川岸に沢山植えられ、その良質な竹材から千筋細工が生まれる事になる。千筋細工の職人さんと安倍川の土手を散歩しながら、そんな話をした事を懐かしく思い出す。あの方の川を見る眼差しは優しかった、地域への愛着をしみじみ感じたものです。
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