お米を竹笊で洗う習慣が無くなったので、質の良い米研ぎざるを編む職人さんがいなくなった。更に、片口ざるとなると、もっと目にする機会は少ない。片口ざるには、穀物などを別の容器に移し変えるのに便利な注ぎ口が付けられている。だから、実は当時の暮らしでは多用されていたので、どこのご家庭にもあった普通の竹製品のひとつだ。。
ユニークな口元にご注目いただくと、竹節の付いた身の厚い竹材が差し込まれている。これは、縦の骨ヒゴから横編みの竹ヒゴが外れないためにしているだが、川魚のイダの口に似ているから「イダグチ」とも呼ぶ地方もあるようだ。自分達は、ハヤと言う事が多いのだが、イダとはウグイの事である。ウグイは日本各地の川に生息して親しまれたせいか、全国で様々な呼び名のある魚た。そんな身近な魚の名前が付けられるくらい、竹細工と人の関係は親密で近しいものだったという事が分かって少し嬉しい。
余談になるけれど、高知にはイダのイタチ漁なるものがある。川底の岩穴に潜むイダを、イタチの皮で追い出すという変わった漁法だ。イタチは何でも食べる動物だが、水に潜って魚を捕まえるのも得意なので、それを知っている魚は習性的に嫌って逃げ出してくる。そこを網で一網打尽にするのである。
イタチが水に潜るなど、驚かれる方もおられると思う。しかし、実家にある池で飼っている鯉が、度々イタチの被害にあってきた。警戒心が強くて、めったに人前に現れないものの、竹垣からピョコンと頭を突き出してこちらを眺めている姿に2~3度出会った。あの小さくて可愛い顔からは、想像もつかない野生を秘めているのだから、自然は面白い。毎日見ている虎竹にしても、どうして虎竹の里でしか成育しないのか?他の場所に移すと虎模様が無くなってしまうのか?人知の及ぶところではない。
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