竹の仕事では、いつも身に染みて感じている事ではあるが、日本の伝統文化は日常から遠く離れてしまって、次世代への継承が大きな課題になっている。そこで、特に若い皆さんが自国の文化に誇りを持ち、世界と交流できる環境を整えることが重要だと言う事で、持続可能な伝統文化の発展を目指す日本和文化振興プロジェクトが設立されている。
大きな活動のひとつに、アワードイベント「日本和文化グランプリ」の開催があり、次世代の職人、アーティストに光を当られているのだ。実は、この度日本和グランプリ2024にて、竹虎の空気清浄機「竹風」が見事に奨励賞を受賞させていただく事になった。
審査員には、昨日朝のニュース番組で拝見したばかりの、東京大学名誉教授・日本文学研究者のロバート キャンベル氏はじめ、高名な方が名前を連ねられている。中でも気になった方がおられて、それが能楽小鼓方大倉流十六世宗家の大倉源次郎氏だ。能楽に特別興味がある訳ではないものの、能楽と歴史の関わりを話をされているのを一度拝見した事があり、非常に興味深かったので強く印象に残り続けている方だ。
大倉源次郎氏の講評を読むと、「生活空間に『竹風』が訪れることで、そこにいる人々が目には見えない風の尊さと竹の存在に気づくきっかけになるのではないかと考えます。」とまさに、自分が製作にかけた思いがそのままに語られていて嬉しくなった。
竹炭には健康面、環境面、美容面などで様々な効能が言われていて注目されている。健康面では、デトックス効果で竹炭パウダーが広く使われるようになったり、消臭効果も知られてきた。わずか3ヶ月で親竹と同じ大きさに伸びる成長力の竹を原料するから環境の負荷が少なく、CO2の固定ができる。土壌改良に使うと保水性や通気性の改善にもなる。クレンジング、石鹸やシャンプーなど、美容関連には竹炭の吸着力が毛穴の汚れや皮脂を取り除くなど、様々な用途に期待が広がる。
伏せ竹炭窯の竹炭は主に室内の消臭、調湿剤として一番力を発揮する。
重たい鉄の蓋を開ければ、そんな竹炭がしっかり焼き上がっているのだ。
土窯で焼かれる竹炭(バラ)とは燃焼温度の違いで硬度や形状が違う。伏せ竹炭窯で焼かれた竹炭は、細かい粒状が多いので不織布などを利用する方法が良いと思っている。
竹資源があるのは何も竹林に限った事ではない、竹虎の工場内にも製品加工にできず活用されない竹が少なからずある。竹は、もともと竹根からはじまり、稈(幹の部分)、枝、葉まで全て活かしきる事のできる素材なのだ。そこで、使われていない端材について、もれなく竹炭にできる伏せ窯を作る事にした。
竹炭窯にも土窯や鉄窯、キルン窯や耐火レンガ窯など色々種類があるが、伏せ窯は炭焼きの原点のような一番古く原始的な窯で、世界中で同じ技法で炭が焼かれていると聞いた。
そう、ちょうどポーラス竹炭と同じような簡易的な焼き方だ。
余っている竹材はサイズも様々だが、形状や長さを気にする事なく焼いていけるのが良いところだ。
火の具合を見ながら焼き続けていると6~8時間くらいで竹炭がいっばいとなってくる。
放水して火を止めるのはポーラス竹炭と同じ。
ただし、伏せ窯の場合は、ここから鉄板で上を塞ぎ、継ぎ目を練った赤土で塞いで空気を遮断する。窯が冷えるまで数日置いてから出来上がりだ。
龍馬ブーツについては、何度かお話しした事あるので、もしかしたらご存知の方もおられるかも知れない。もう二十年近く前の事だろうか?いつも作務衣なので、出掛ける時の足元は自社で作っている竹皮スリッパや、自分がどうしても製作したかった竹皮男下駄(歯下駄)の事が多かった。ところが、東京出張した冬のある日、ビルから外にでると雪が降っているではないか!鼻緒の履物を履かれる方ならご存知かと思うが、冬の下駄は寒い!タビックスをビショビショに濡らしながら、ようやく駅のホームに辿りついたら、何と...電車が雪で止まっている!足先は冷たくなって凍えて倒れそうなほどだった、あの時ほど、靴が恋しかった事はない(笑)。
そこで、外に出かける時には長靴で行くことにした(両極端ですが)。作務衣に長靴、うんうん、見た目はそんなに悪くはない。ところがっ、今度は逆に暑いのだ!夏にムシムシする都会で膝から下から蒸れてどうにかなりそうになった(笑)。そこで、何か良い履物はないかと思った時に、たまたま出会ったのが龍馬ブーツ。長靴より短く、下駄のように寒くないからちょうど良いだろう、郷土の英雄である龍馬さんのように駆けられるようになるかも知れない。亀山社中のあった長崎の靴屋さんが作っていたので取り寄せて以来愛用させて頂いている。
数年前に、何の間違いか?外国の王室にお伺いできるお話しが舞い込んできた。残念ながら、その話自体は無くなってしまったけれど、その時に靴も新調せねばと連絡したら、何と龍馬ブーツの製造が中止になるとの事だった。ギリギリ滑り込みセーフで一足だけ確保させてもらったけれど、今後は作られないと思うと大切に履かねばならない。
そこでだ、初代龍馬ブーツは腕の良い革職人さんの協力をいただき、穴の開いた部分はツギハギしながら。二代目も底を貼り替えながら長く履き続ける体制を取っている。壊れた竹籠を修理して使うのと同様に、手直しすればするほど愛着が増してくる。
自分などは、抱き枕と言えば竹編みしか思い浮かばないが、一般の方はそうではないかも知れない。ご覧になった事がなければ、竹の抱き枕とは一体どんな物なのか?とイメージもつかないのも仕方ない。けれど、その昔、エアコンもない当時に夏の夜の暑さをしのげる道具は、団扇か、抱き枕くらいのものだった。それが、日本だけでなく、お隣の韓国や台湾、中国など竹の育つ東南アジアの国々に同じような竹編み抱き枕が存在するのが面白い。
夏場は毎晩のように使うものだから、傷んでしまう事もある。でも、ご安心ください、竹細工の良さの一つに加工性の高さがある。少しくらい壊れたりしても、材料さえあれば容易して元通りに手直しできるのだ。竹籠や竹ざるは、長い日本の歴史の中で、そうやって大切に大切に、まさに土に還るまで使い切ってきたのだ。
竹だから、抱き枕を極端に短くした別注サイズも編むことができるし、修理しながら愛用もできる。どこを探しても修理してもらえる所がないと、最後に竹虎を頼っていただく事が多くなった。もし、お困りの方がおられたら、いつでも、誰が作ったものでも、どんな籠でも、竹ならウェルカム(笑)。自社で製作したものでなくても、修理を出来るだけお引き受けしているのには、このような古き良き日本の伝統を繋いでいきたいと言う想いがあるからなのです。
お米を竹笊で洗う習慣が無くなったので、質の良い米研ぎざるを編む職人さんがいなくなった。更に、片口ざるとなると、もっと目にする機会は少ない。片口ざるには、穀物などを別の容器に移し変えるのに便利な注ぎ口が付けられている。だから、実は当時の暮らしでは多用されていたので、どこのご家庭にもあった普通の竹製品のひとつだ。。
ユニークな口元にご注目いただくと、竹節の付いた身の厚い竹材が差し込まれている。これは、縦の骨ヒゴから横編みの竹ヒゴが外れないためにしているだが、川魚のイダの口に似ているから「イダグチ」とも呼ぶ地方もあるようだ。自分達は、ハヤと言う事が多いのだが、イダとはウグイの事である。ウグイは日本各地の川に生息して親しまれたせいか、全国で様々な呼び名のある魚た。そんな身近な魚の名前が付けられるくらい、竹細工と人の関係は親密で近しいものだったという事が分かって少し嬉しい。
余談になるけれど、高知にはイダのイタチ漁なるものがある。川底の岩穴に潜むイダを、イタチの皮で追い出すという変わった漁法だ。イタチは何でも食べる動物だが、水に潜って魚を捕まえるのも得意なので、それを知っている魚は習性的に嫌って逃げ出してくる。そこを網で一網打尽にするのである。
イタチが水に潜るなど、驚かれる方もおられると思う。しかし、実家にある池で飼っている鯉が、度々イタチの被害にあってきた。警戒心が強くて、めったに人前に現れないものの、竹垣からピョコンと頭を突き出してこちらを眺めている姿に2~3度出会った。あの小さくて可愛い顔からは、想像もつかない野生を秘めているのだから、自然は面白い。毎日見ている虎竹にしても、どうして虎竹の里でしか成育しないのか?他の場所に移すと虎模様が無くなってしまうのか?人知の及ぶところではない。
ある一定の年齢より上の方なら、この緑色のプラスチック製手提げ籠をご覧になられて、懐かしいと感じられるのではないだろうか?当時は、この籠にミカンを入れて売られていて、そのまま持ち帰りにしたり、ちょっとした手土産代わりにしたものである。緑色に黄色いミカンが映えて美味しそうだった事を覚えている。
しかし、どうしてプラスチック製の籠なのに、まるで竹の手提げ籠のようなデザインなのか、ちょっと不思議に思ったりしないだろうか?機能的に作れば、自然とこのような形になったのかと言えば、実はそうではない。プラスチックのこの籠には、見本になった立派な竹籠があったのだ。
そもそも、現在使用されているプラスチックコンテナや、段ボールなど便利な製品が出来る前は、物を運ぶための容器は竹で編まれる事が多かった。
御用籠などのように、丈夫に作られて長期間使われるものもあれば、耐久性の高い竹表皮だけでなく、内側の身部分の竹ヒゴを使って簡易に製作された籠もあった。野菜や果物を運ぶために、使い捨てのような六ツ目編みの竹籠が大量に製造されていたのだ。
御用籠は、「御用」がなくなり、製造数が極端に少なくなっているが、持ち手を付けたコンテナ手提げ籠としても復刻しているので、これから少しづつ見直されていくと良いと思っている。
竹虎は創業130周年を記念し、よさこいチーム「すさき~真実~」さんと連携して地元須崎市に感謝の意を込めてた日本唯一の虎竹よさこい地方車「虎竹号」を制作した。このプロジェクトでは、クラウドファンディングを通じて資金を調達し、持続可能な天然資源として注目される虎斑竹を活用したのだが、今月に入りご支援の皆様へのお礼もようやく完了した。
500本の虎竹を用いて完成した「虎竹号」は、よさこい祭りで地域の魅力を全国に発信し、観客の注目を集めたと思う。また、思いもかけなかった地方車奨励賞を受賞し、製作に携わった職人たちの誇りともなり感謝している。一連の活動をまとめた、特集ページ、竹虎創業130周年記念!日本唯一の虎竹よさこい地方車「虎竹号」も出来たので、よろしければご覧ください。
沢山のご応募をいただいている、特別プレゼント企画【ワケあり】ワンジャリ 快眠の消臭竹炭枕の〆切が25日に迫っている。明日から三連休の方も多いかも知れないが、お出かけ前に是非!運だめしにプレゼント応募はどうでしょうか。
二重にした不織布の中に、消臭効果、調湿効果の高い国産竹炭粒をタップリ詰め込んでいる。ちょっとふざけたYouTube動画だが、本当にずっと竹炭枕は愛用していて、毎朝早いけれどシャキッ!と起きられる(笑)。寝つきが悪かったり、安眠できない、疲れが残ってしまうような方には一度お試しいただきたいと心から思っています。
昨日の9月18日は「世界竹の日(World Bamboo Day)」だった。数年前に、その記念日を楽しみたいと作った青竹踏み体操というストレッチがある。ところで、皆様は青竹踏みをご存じでしょうか?丸い竹を半分に割っただけの素朴なモノなので、誰が見ても竹だと分かる所も良い所。普段は目にしてもらえない竹の姿そのままに、ご家庭に置いてもらえる唯一の竹製品かも知れない。
青竹踏みは毎日の健康づくりに素足で安心してお使い頂くために、防虫剤・カビ防止剤を使わず無塗装で仕上げている。当たり前のように聞こえるだろうか?しかし、このために、伐採時期から、竹材の乾燥、製品に加工してからの天日干し、保管時の歪みの調整など実に管理が大変だ。
けれど、この竹製品が若い世代からは忘れ去れてしまっている事に、創業130年の老舗の自分達としては大きな危機感を感じたのだ。そこで、一目で竹と分かるだけに、自宅にひとつあることで、たとえわずかでも竹に親しみを感じていただけるのではないか、そう考えてずっと力を入れきた。恐らく国産の青竹踏みを、これだけの量を販売しているのは竹虎だけではないかと思う。
ただ、簡単そうに見えても、それだけ大量の国産竹で製造しようと思うと、実はかなり大変な事なのだ。自分達の青竹踏みには、強度を保つために節を必ず2つ入れる事にしている。竹の節間は均一ではなく、根元の方は狭く、ウラ(先端)に向かうほど間隔が広くなる、つまり、約40センチの長さの青竹踏みの中に二節入れようとすると、竹材が限られてしまう。もちろん太さもあるから、一本の竹でも使用できない部分は更に沢山できてしまうのだ。山の職人が激減している中で、利益率が高いとは言えない、この竹材の確保を支えているのは志だけだ。
昔から健康の源泉は足の強化が大事だそうだ。第二の心臓である足裏を、青竹踏みで刺激する事により、ダイエット・メタボ対策、冷え性、高血圧、血糖値改善にも役立つとも言われている。立ちっぱなしのお仕事方や、歩き回る営業職の方々から、本当に嬉しいお声が沢山届いている。安価で、お手軽で、誰でも使える、日本伝統の足裏マッサージ健康器具だ、竹がお役に立てるなら、力の限りお届けしたい。
竹は、持続可能な資源として注目されており、建築、製紙、繊維、エコロジー等さまざまな分野での利用が進んでいる。そんな竹の利用促進、研究、継続的な管理についての議論や情報交換が行われているのが世界竹会議(World Bamboo Congress)という国際的な会議だ。今年の4月に、台湾で開催された第12回世界竹会議(World Bamboo Congress Taiwan)には、前回のメキシコ大会に続いて虎竹製EV「竹トラッカー」を運んで会場を疾走させてもらった。
台湾には、良質の竹材があり、その竹材資源活用の研究は日本より数段進んでいる。かつての日本もそうだったと思うけれど、人と竹の距離が近くて、竹に親しんでいる方が多いようにも感じている。なので、世界竹会議にも興味を惹かれる面白い竹製品が多々あり楽しかった。
さて、今日は、そんな世界竹会議で制定されている「世界竹の日(World Bamboo Day)」だ。竹は東南アジアだけでなく、南米やアフリカなどにもあり、それぞれの国や地域での活用が期待されている。そんな竹を世界的に見直してもらいたいと願いを込められた9月18日に、竹虎がご紹介するのはシンプルな青竹踏み。
青竹踏みは、丸い竹を半分に割っただけの素朴な製品なので、誰が見ても竹だと分かる所がいい。そして、自宅に竹があることで少しでも親しみを感じていただけるのではないかと思っている。そもそも、日本では昔から身近な健康グッズとして一家に一台は普通にあったものではないだろうか。
竹を半分に割っただけと言ったけれど、実は量産しようとすると、竹の伐採から管理までとても大変な製品だが、自分達は青竹踏みを使うリズミカルで楽しい体操を考案してまでオススメしている。見直してみると、かなり恥ずかしい動画でもあるけれど世界竹の日のなので特別公開(?)だ(笑)。
思えば、長く続いている「竹虎通信」。今回ので247号となるけれど、第一号は2002年の9月だから既に22年も続けている事になる。毎月発行していたものが、昨年からは季刊にさせてもらった。見栄えは時代によって、ずっと変化し続けてきたものの虎竹への気持ちは変わらない。
いや、そんなに器用ではないので変えられないのが正直なところ。竹のように真っ直ぐにしか出来ないのだから仕方ない。
今年の猛暑も、さすがにこれからの季節は少しづつ鳴りを潜めていくだろうから、キャンプなど屋外に出かけられる方にも竹竹ピクニックバスケットやランチボックスは、ご覧いただきたい。
蛇籠とは、円筒形に編んだ竹に石を詰めて河川の護岸などに用いられていた。最近は集中豪雨が各地であるから、日頃は美しい流れが一変して増水する川の恐ろしさは皆様よくご存知だと思う。そんな激流に耐えて使用されてきたのだから、竹の強靭さは凄いものがある。
もちろん、近年では竹の代わりに鉄線が使われているけれど、基本的に昔と変わらず護岸用にされているのを見かける。
さて、そんな蛇籠を虎竹で製作する事になったのだが、中に入れるのは石ではなく人だ(笑)。
職人みずから中に入って、寝心地を確かめている。
立ててみると、こんな感じ。内側に和紙でも貼って灯りがついたら、大きな提灯になりそうだ。
自分も負けじと入ってみるけれど、不自由さよりも、竹編みだから心地がよい。
こうして捕らわれの身のまま、一体とごに運ばれるのか?その後のことは来春公開(ずいぶん先で申し訳ございません)。
地球温暖化なのか、確かに気候が変わってきている。夏が早くやってきて、もう9月も中旬だけれど、まだまだ続く気配だ。外で働く方を中心に、今年はファン付きベストをあちらこちらで見たような気がする。やはり、それだけ気温が高い証拠かも知れない。
夏に欠かせなくなった竹を使った笠は、昔から日本各地で色々と編まれてきた。職人が少なくなり製造数は減っているものの、このクバ笠のようにまだまだ伝統は続いている。
水に強く素材が何処でも手に入った竹皮は、笠にも多用されてきた。菅笠のように、細い竹ヒゴを回して本体の骨に留められている。
網代編みの竹笠では、まず托鉢笠。一般的に使われるものではないから、個人的に使用しているのは日本でも自分くらいだろうか(笑)?
竹網代笠は、海外出張にも持参するようになった。暑いのは日本だけではない、世界的に必需品なのだ。
ひさしの広い笠の方が涼しさは抜群なのだが、動きやすいのは、やはりツバの小さな竹帽子だ。これなら、人混みにも歩いていけるし、車の運転もできる。
そうなのだ、実際に都会では電車乗ったり人との距離が近いことが多く、笠が邪魔になってしまう事がある。
そこを逆手にとって開発したのが、ウィズコロナ(COVID-19)時代のソーシャルディスタンス帽子!暑さ対策にはなりません!
そうそう、それと先日できあがったばかりの虎竹フードカバー、これは帽子ではありません。
皆さんが何気に「竹皮」と呼んでいるのは、正確には筍の皮の事だ。筍が生えてから、わずか3カ月程度で十数メートルの竹に成長するまで、筍は竹皮を脱ぎながら大きくなっていく。毎日、驚くようなスピードで高く伸びる竹の根元に残されているのが竹皮と言うわけだ。
糖質ダイエットが随分前から言われていて、自分もお米やパンをできるだけ控えるようにしているけれど、実は最近、玄米おにぎりの美味しさに目覚めて良く食べている。玄米も白米も、糖質量はあまり変わりはないようだ、しかし、血糖値の上昇の早さに違いがあり、食物繊維も豊富だし、電子レンジで温めるだけの手軽さもいい。たまに、白米もやっぱりイイ(笑)、竹炭を入れて炊いたご飯は格別、日本人に生まれて良かったと思ってしまう。
虎竹おにぎり弁当箱と、国産竹皮を掲載いただいた雑誌「mono」は、そんな日本の食文化の原点のような表紙になっている。
竹編みの弁当箱だけでなく、現在はほとんど輸入品ばかりになっている国産竹皮も見直されると嬉しい。乾燥していると硬く手使いづらく思える竹皮は、水に湿らすと柔らかくて自然素材の素晴らしさを感じていただける。
別注で製作された煤竹菓子楊枝は、お客様にも喜んで頂いているが、煤竹がせっかく出て来たついでに少し竹材についてお話しさせていただきたい。
囲炉裏の生活は、今や贅沢で料理屋か高級旅館など、ごく限られた所でしか目にすることはないのではないだろうか。毎日の煮炊きや暖房に使われていた時代は、家中に煙が漂い天井裏に使われていた竹材が知らぬ間に燻されていた。
煤が付いて真っ黒になった竹を洗い、火抜きすると残っていた油分で、このような自然の光沢が生まれる。
何と数年前までは、この煤竹はじめ銘竹が田園の広がる民家の倉庫で市が開かれ取引されていた。
染め竹と煤竹を間違えられる方もいる、炭化竹といって熱と圧力で短時間で煤竹状にした竹材もあるけれど、長い年月を経て自然に生まれる煤竹には及ばない。
そんな煤竹で編まれた究極のバッグ、網代編みの巨匠である渡辺竹清氏がてがけた最後のひとつだ。
同じ携帯箸でも、煤竹は存在感が違う。
少し長めのサイズにした、別注の煤竹菓子楊枝を定番の横に並べてみた。少し大きさが異なるだけでも雰囲気が随分と違ってくるから面白い。お客様のご要望に応じて、数本でも製作対応できるのは、加工性の高い竹ならではと言える。煤竹も自然素材だから一本一本それぞれに、色合いの濃淡や質感に個性がある。
そういえば、皆様は煤竹の事をご存知だろうか?30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」も長く書かせて頂いているから、常連の方々には常識かも分からないが、若い方に煤竹と言っても未知の生活様式(自分も囲炉裏で生活した事はありません)から生まれる竹だから、知らないのが当然だろう。
煤竹は、昔の茅葺屋根の古民家にある囲炉裏の暮らしから自然とできた竹なのだ。いつだったか、山深い一軒家を訪れると囲炉裏があってパチパチと音を立てていた。室内は、燻された香りに包まれ何とも懐かしくて、いつまでも座っていたくなるような癒される気持ちになったものだ。
昔の住宅の天井には、このように竹材が多用されている。太いものもあれば、細い竹材、あるいは、割った竹材なども見た事がある。
囲炉裏では毎日火が焚かれるので、これらの竹は100年、200年という長い年月の間に煙に燻される。煤がついて真っ黒い煤竹が、こうして誕生するのだ。
縄で縛られた部分には、直接に煙が当たらないから色目の濃淡が自然と出来あがる。古材なので、全ての竹が加工に向いている訳ではなく、それぞれ使える竹材を厳選して使われる。そう思えば、小さな菓子楊枝も愛おしく思えてくるのではないだろうか。
クロッシュ(cloche)をご存知だろうか?多くの方は、呼び名は知らずとも一度くらいは見た事があるのではないかと思う。西洋料理で、温かさや鮮度保持のためにかぶせている銀色のカバーがそれだ。クローシュとも呼ばれているようだが、フランス語で釣鐘の意味で、まさに帽子のようにも見える独特の形でテーブルで異彩を放っている。
主に銀製である事が多いけれど、ガラスや大理石、ご家庭ではガラス製が一般的だと思う。ところが、やはり、ここは虎竹の里、普通なら銀製のドーム型の蓋さえも、やはり日本唯一の虎竹製なのだ。
職人が遊び心で製作した虎竹クロッシュ、金属やガラスなど冷たい素材と違って温かみがあるのが一番の特徴だ。
更に通気性の良さが機能面で大きく異なる、果物やパンなどの保管には向いていそうだ。
面白がって製作してみたクロッシュだが、案外虫除けなどに活躍しそうで期待している。