綺麗に舗装された二車線の道路から少し脇道に入った所にその竹林はあった。高知の場合には急斜面が多いが、この中国山地の山深い所にある竹林には大きなトラックを乗り入れられる車道もあり、平らで綺麗な孟宗竹の林が続いており仕事もしやすそうだ。この道40年のベテラン職人さんに案内されてやって来た、以前は3人で毎日4トン車一台を山出ししていたが、現在では1週間に一台だと笑う。
竹伐りは、若い頃には好きではなかったが今ではこんな良い仕事はないと言う。自分も同感なのだが、竹伐りの仕事をしている人には健康で長生きの方が多い、変化に富んだ山の中を動き回るので、全身運動になっているのかも知れない。あるいは、この竹達の気持ちのよいパワーを受けているからか(笑)?
それにしても、このような大きな竹材を毎週一台も伐り出して一体何に使われているのだろうか?孟宗竹は手入れされなくなり、全国で増え過ぎて「竹害」と言われ、困っているのをご存知の方もいるかと思う、だから不思議に感じるかもだが、実は牡蠣筏用に孟宗竹が必要なのだ。
牡蠣は美味しいから好きな方は多いと思う、産地は広島が有名だけれど何と養殖に使う牡蠣筏は、広島湾だけで1万台以上もあるそうだ。そうすると、その筏が古くなって作り替えるだけでも毎年どれくらいの竹が必要だろうか?何万本?何十万本?とにかく、日本の竹の実情から考えれば凄い量だ。なるほど、自分達の虎竹のように1月末までしか伐らないなんて事を言ってられないのが良く理解できる。
何かの資料で読んだ事があるのだが、1980年以前は日本国内の竹林の90%は人の手によって管理された経営竹林だったそうだ。孟宗竹が伐られなくなり、放置竹林などと不名誉な呼び名をされるようになったのは筍の輸入増加が顕著となってきた1990年代以降の事だ。
伐り株を見ると大きいと思うが、やはり九州の孟宗竹はまだまだ立派で大きい。この辺りの孟宗とは同じ種類と思えないような竹があると職人は話す。もちろん、南方系の竹は暖かい地域ほど成長するが、虎竹もそうだし孟宗竹なども、その竹林により太さや性質はそれぞれ異なっているように思う。
竹が一本、又一本と伐り倒されいく。10数メートルの長さで運ばれていく牡蠣養殖筏の竹には、代用となる新素材のパイプもあるそうだ。
海で使用する場合、孟宗竹の耐久年数が5~10年なのに対して、それらの新素材は30年以上と聞くので牡蠣業者の方からするとコスト的に魅力があるかも知れない。
ところが、筏は壊れて海に流されてしまう事があるようで、その場合は、腐って自然に戻る天然の竹が圧倒的に有利だ。海洋プラスチックの問題が近年クローズアップされる中、国内に潤沢にある孟宗竹を使わない手はない。美しい竹林に、丁寧に積み上げられた竹穂を見ながら思った。
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