虎竹炭パウダーで日本唯一の竹林を守る

虎竹炭パウダー


竹炭の材料に使われる孟宗竹は、国内最大級の竹であり、現在ではあまり活用される事のなくなった竹でもある。生命力の強さから、増え過ぎて森林を侵食するとか、放置竹林として一部では問題視されている孟宗竹は、直径が大きくて身が厚い事から竹炭の原料として使われるようになった。国内で焼かれている竹炭窯で、孟宗竹以外の竹材を使っている所は聞いた事がないほどだ。


虎竹伐採


そんな中、竹虎で新しく発売を開始した虎竹炭は、日本唯一の虎竹を使うかなりレアな竹炭と言える。しかし、もちろん物珍しさから竹炭にしている訳ではない。まさに本日の1月31日が昔から虎竹伐採の期日として守られてきたけれど、いくら日本唯一の虎竹の竹林でも色づきの良い一級品の竹ばかりは生えていない。


虎竹選別


竹林に一歩足を踏み入れたら、無数に伸びているかの様に見える竹の中でも、製品に適した3~4年生の色づきが良い竹となると本当に極一部だ。虎模様には、この山々特有のバクテリアが影響しているとされるが、「霜が降りると虎の色が付く」と古くから伝えられるように気温も大きく関わっている。


虎竹伐採


実は、自分達は虎竹の色づきの変化から温暖化の影響を10数年前から感じていた。明らかに色づきが遅い、あるいは色が付かない竹が年々増加傾向にあった。虎竹は虎模様があるからこそ価値があり、全国の竹職人に認められてきたのだが、色が付いていないと普通の淡竹(はちく)と変わらない。


最高級飾り竹炭


昔なら、色づきの良くない虎竹も普通の竹材として何らかの竹製品や竹細工に加工して、どうにか活用する事ができた。ところが、現在ではそのような竹を必要とする工場も職人もいない。しかし、それでも虎竹の竹林を適正に管理し、良質な親竹を残しつつ、芳しくない色付きの竹を間引く仕事は絶対に必要となる。そこで、数年前から二級品の虎竹は、専用の土窯を使い高温で焼き上げてインテリアなどに使える飾り竹炭として商品化した。


虎竹炭パウダー


丸竹そのままに硬く焼き上げる竹炭は、それぞれ竹の個性があり、表情もあって面白い。けれど、年々二級品の竹は増えているから、せっかくの竹材を皆さまのお役に立てるような製品に進化させ、美しい虎竹の里と色づきのよい虎竹を守り続けていくために、今回登場させたのがこの虎竹炭パウダーなのだ。


中国で漢方として、竹を炙って取り出す竹瀝(ちくれき)や、竹稈の甘皮部分を使う竹茹(チクジョ)は虎竹と同じ淡竹が使われている。竹葉も利用されており、前々から淡竹には孟宗竹や真竹とは異なる特別な力があるのかも知れないと感じてきた。淡竹を竹炭パウダーにしたのは初めてだから、科学的に確かな事ではない。しかし、虎竹の里の景観と、江戸時代から続く持続可能な竹林を守る一助となる事は間違いない。





竹の鬼おろし、雑誌「モム」に掲載

雑誌「モム」


日本の手仕事に注目した雑誌「モム」さんに竹製の鬼おろしを掲載いただいた。まさに、これから冬の寒さもピークを迎えようとする時でもあり鍋料理を囲む機会も多いのではないだろうか。一年通して重宝する鬼おろしだけれど、やはり大根はの旬は冬、美味しさを満喫できる季節だ。


竹製鬼おろし


シャキシャキ新食感の大根おろしと言っているけれど、本当に初めてお使いの方は今で味わった事のないサラダのような大根おろしに驚かれるかも知れない。竹は、他の木材などに比べても硬質で、鬼歯にするのに適している、使ってみると分かるけれど、大根が面白いようにザクザク摺り下ろせるから、さすが竹だと感心する。


鬼おろし鍋セット1


鍋のセットにも当然入っている竹製鬼おろしだが、単体で使うよりは、やはり竹皿とセットが断然使いやすい。竹皿をあまり深くすると、今度は収納に不便になるので現在の形になっているものの、実際に使うとあれよあれよと言う間に大根が摺れて一杯になる。沢山摺り下ろした大根をタップリ使って、美味しい料理で温まっていただきたい。





淑子さん、久しぶりの帰郷

淑子さん


パリで出会った淑子さんに、虎竹の里にお越し頂いた。いや、お越し頂いたと言うよりも実は淑子さんにとっては久しぶりの帰郷だ。本当に不思議なご縁なのだが、たまたま出張中にお会いさせてもらった淑子さんは、何と須崎市のご出身だったのだ。高知県自体も人口は少ないけれど、須崎市はわずか2万数千人しかいない、それなのに海外でご一緒させていただき、お仕事の機会にもなるなんて事は奇跡に近い。


ご主人様は画家で、ずっとアート関係の仕事に携わってこられた淑子さんに企画いただいて、フランス国内巡回展「日本の日常生活の中の竹」(Bamboo exhibition in Japanese daily life)を開催した。リオン、ツールーズと一年かけて回る予定が、ちょうど搬入が終わりフランスから帰国したタイミングでコロナが始ってしまったけれど、非常に貴重な体験をさせてもらった。竹の根も伸ばしていると、まったく思いもしない所に繋がるから面白い。


土佐では男勝りの女性の事を「ハチキン」と呼んだりするが、まさにハチキンの代表選手のような方だ。坂本龍馬も姉の乙女に叱咤激励されて大事を成した、自分も地元の偉大な先輩を見習わねばならない。





あけびの角籠

アケビ角籠


竹籠同様に、アケビ細工も昔から職人さんとの関係があり手提げ籠などを沢山製作してもらってきた。真竹や淡竹など大型の竹材があまり豊富でない寒い地域では、篠竹、スズ竹、根曲竹などの小型の竹をはじめ、こうしたアケビや山葡萄などの蔓を利用した籠文化がある。竹とは又違った魅力があり、つくづく日本の自然の豊かさや、奥深さをいつも感じる。


アケビの角籠を編んでもらいたいと思ってお願いしていた。小振りな籠もいいけれど、少し大型なものを編んでいただく、底面が44センチ×34センチあって深さも30センチある籠は、口部分が萎んだ台形になっている。あのお婆ちゃんが、納屋の二階に干している材料を持ってきて、雪の中で少しづつ手づくりしてくれたのかと思うと嬉しくなる。



米研ぎザルの出来るまで

米研ぎざる職人


真竹で編まれる米研ぎざるは、何処ででも見かける何の変哲もない形と大きさなので、実はあまり注目される事が多いとは言えない竹細工かも知れない。しかし、昔からずっと定番であり使い続けられてきただけあり、汎用性は高い。米研ぎざるとしてお使いにならない場合でも、キッチンにひとつあれば本当にアレコレと重宝する万能選手なのだ。


米研ぎざる


定番と言っても、近年、熟練の職人さんが少なくなり、製造は必ずしも多くはない。これには製作の難しさもあるので、今回は皆様にその制作過程をYouTube動画でご覧いただきたいと思って用意している。


米研ぎざる編み方


編み初めから、段々と形になっていく行程を通して、竹の特性を知り、竹細工への親しみを感じて頂けると嬉しい。


米研ぎざる製作


米研ぎざるの作り方


竹細工職人


米研ぎざるは、ここからが職人の腕の見せどころとなる。


米研ぎざる職人


編み込みが縁に近づくにつれて曲線がキツクなるのだ。小さいザルほど蒸すがしいので、自分がデスクで物入に使っている直径13センチのものは達人が編み上げている。


米研ぎざる5合


実際に5合のお米を入れてみた、場合直径28センチ、深さが10センチの米研ぎざるだから、容量にかなりゆとりがある。現在では、一家当たりの人数が減少傾向なので、5合でも炊くようなご家庭は少ないのかも知れないが、この米研ぎざる一つあれば7~8合くらいまでは余裕で米研ぎする事ができる。





クパという名前の帽子

クパ帽子、竹虎四代目(YOSHIHIRO YAMAGISHI)


昔のテレビ番組などに出てくる探検家の方々は、このような形の帽子を被っていたように思う。この帽子でジャングルの奥深く足を踏み入れていったのだが、この帽子も石垣島の原生林の木々が生茂る中から生まれた品だ。八重山地方は、さすがに亜熱帯だけあって高知の森林などとは随分違う、職人さんに連れられて一度分け入った密林に逞しく生えていた蓬莱竹を思い出す。


クバの葉


この帽子はクパという名前で呼ばれている。もともとクバの葉を使った笠を作られている職人さんが、新しい試みで製作されたものだ。


クバ笠


強い日差しの中で生活される事が多いので、軽く丈夫なクバ笠は重宝されているそうだ。そして、クバ笠には直径を大きくして太陽の光をできるだけ遮るように作った畑用と、漁に出た時に舟の上で強い風に飛ばされないように直径を小さくした海用とがある。


クパの籐


このクパは、海用のデザインに近いようだけれど決定的に異なる所がある。クバ笠は、クバの葉の他に蓬莱竹を使うが、何とこのクパには籐が使われている。


国産籐とトウツルモドキ


八重山の民具に詳しい方なら、籐と聞いてトウツルモドキ(クージ)の籠を思われる方もいるかも知れない。クージは昔から使われてきた身近な素材だ、確かに似ているけれど見比べるとやはり違う。


竹虎四代目(山岸義浩)YOSHIHIRO YAMAGISHI


籐は古くは江戸時代からある日本人には馴染の素材で、籐籠や籐家具など誰でも知っている。なので、どこか日本に産地があるのか?と思われる方がいても不思議ではない。しかし、実は国産の籐は全くなくて、全てが輸入材なのだ。ところが、今回のクパには何と常識を覆す石垣産の籐が使われていると言う。そう言えば、こんな青々とした籐など初めて見た...本当に竹も籐も知らない事ばかりなので感動してしまった。





虎竹魚籠に取り付けた革ショルダー

虎竹二段角魚籠


虎竹魚籠には良く似た形と大きさの二種類がある。どちらも限定に近いけれど、角型で魚籠としてだけでなく普段使いにもできないかと思って製作してもらった。上蓋を深くしてしっかり固定できるようになっているので、革ベルトを取り付けて仕上げてみた。


虎竹ショルダー、竹虎四代目(山岸義浩)


虎竹ショルダー


こんな感じだが、調節穴を多めにしたので長さは結構お好みで変えられるのではないかと思っている。


虎竹二段角魚籠、竹虎四代目(山岸義浩)


もう一つの魚籠は、職人さんが編めなくなった籠を虎竹で復刻したくて製作してみた。元々は、確かどちら様からか持ち込まれた籠だったと言うから、こうして継承されていく竹もある。


虎竹二段角魚籠


形はできるだけ同じようにしても、やはり細かい所はそれぞれの職人の得手不得手もあって違ってくる。もしかしたら伝言ゲームように、何世代か伝えていくうちに大きくもっと変わっていくのかも知れない。



素朴な青物買い物籠

青竹手提げ籠


このような素朴な竹手提げ籠は、あまりご覧になる機会が少ないかも知れない。何の飾り気もない無骨な作りは、まだ竹細工が生活の中の必需品として道具として普通にあって頃の名残なのだ。青竹一本持ち手買い物籠は、昨今、なかなか手に入りづらくなった良質の真竹を割って、竹ヒゴにして腕と包丁一本だけ、昔ながらやり方で編み上げる無骨な籠だ。


真竹買い物籠


底と傷みやすい四隅には、しっかりと補強が入れられていてる。


青竹買い物籠


昔ながらの竹籠は、小振りでもバランスがいいから好きだ。


青竹一本持ち手買い物籠


この手提げには、職人の気まぐれで角ばった持ち手と、丸みを帯びた優しい感じの持ち手との二種類かある。


竹籠バッグ


いづれも、昔から竹細工で身をたててきた熟練職人らしい竹籠だ。



竹林で失くしたメガネの10年後

竹林で失くしたメガネ


あれはもう、10年近く前になるのではないだろうか?竹林の中でお気に入りのメガネを落とした事がある。自分は、元々視力は良い方で、手元だけが少し見づらいだけだったのでメガネを頭に引っ掛けて仕事していた。汗を拭いたタイミングだったか何かでメガネを何処かに落としたのだった。


虎竹クマデ、竹虎四代目(山岸義浩)


そんなに遠くで失くしたワケではない、自分がいる近辺には間違いなので少し探せばきっと見つかると簡単に思っていたけれど、スペアの眼鏡を持ってきて日暮れまで探しても見つからなかった。その時の事は詳しく「竹林から戻ってきたメガネ」に書いてあるので関心のある方はご覧ください。ついには、社員三人と共にクマデまで持ち込んでの大捜索となった(笑)。


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最後の最後に、ずっと上の竹林から帰ってきた山の職人が、「竹以外の物があれば、ワシたちには即座に分かる」と言ってすぐに見つけてくれて一件落着となった。


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虎竹伐採の季節となると、いつも思い出す虎竹の里の伝説だ。今年の虎竹は少し色づきもよいようで安心している、ただ、竹林管理のためにどうして良い竹ばかりを伐採してもいけない。数年先の事まで考えて、虎模様のない竹の方が多く搬出されているのが現状だ。


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あの時、竹林で即座にメガネを発見してくれた職人に感動して、レンズがキズだらけだったけれど、ずっと愛用してきた。現場では特に良く使っていて、竹トラッカーの「チャレンジラン横浜」や、同じく竹トラッカーで世界竹会議でメキシコを走った時なども、必ずこのメガネだった。


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しかし今回、遂にあまりにもレンズのキズや曇りが酷くなって、レンズを交換することにした。フレームも随分と古くなっているし、もしかしたら交換時に割れてしまうかも知れないとも言われている。けれど、もし、無事にレンズ交換できて又使えるようなら、これからも出来るだけ長く愛用したいと思っている。





名人の米ざるのチャンス

名人の米ざる


どんな世界にも名人と呼ばれる方がいると思うが、竹細工の世界にも一線を画すような美しい籠を編み上げる職人がいる。たまたま年末の大掃除の時に倉庫から久しぶりに出てきた、この米ざるもそんな名人が世に出したもの達だ。通気性の良い不織布の袋に入れてから、他の製品と区別できるようにフタを開けたままの段ボールにいれて大事に保管していた。長く置いてあったから、このような逸品を仕舞っておいた事さえ忘れてるほどだった。


深竹ざる


先日、新しくご紹介している縁巻部分を籐で二重に仕上げた深竹ざるなども同じだが、竹ヒゴを横に編んでいく横編み言っている竹ざるは製作が難しい。これが平だと、比較的容易に手の若い職人でもこなしていけるのだが、深さがある竹編みは熟練職人の仕事だ。


孟宗竹深ざる


一昨日、1月18日の記事でも書いた孟宗竹の竹ざるも直径が60センチ、深さは20センチあって普通の職人では、とても手に負えない。どうにか編む事は出来ても、とてもこのエレガントな美しさを醸し出す事は不可能だ。さらに、日頃竹を触っている竹人がこの竹編みを見ても孟宗竹だと思うだろうか?一般的に粗いと素材だと思われている竹材を、ここまで繊細かつ、緻密に編み込める熟練の技は凄い。


米研ぎざる


近年の米研ぎざるや味噌漉しざるは、家族の人数が少なくなったので小さくなりつつあるけれど、横編みのざるは小さくなっても難しい。古老の職人が、割と平気な顔でこなしているのは、やはり同じ籠を何百個も何千個も編み続けてきたからだろう。当時は、生活必需品としての竹だったから、そのような手仕事が求められていたのだ。


さて、現代ではもう二度とないかも知れないような名人作の真竹米ざるを(大)と(小)とそれぞれ1個限定でYouTube特別販売させてもらった。実は小さいサイズの直径約50センチ、深さ約16センチは、まだ残っている、これはチャンスです。





竹の秘宝館に、ようこそ

日本古来の竹細工


黒い下見板が雰囲気を醸し出している土蔵の中に入ると、所せましと並べられた本棚に一体どこから集めて来たのだろうかと思うような古い本がギッシリと並んでいる。それが手を伸ばしても届かないくらいの高さまであるものだから、かなりの迫力だ。


圧巻だと感心しながら上ばかり見ていたから首が痛くなってきた。そして、ふと後ろを振り返ると屋根裏にチラリと見える竹籠があるではないか!?古そうだが、この地域で編まれた籠のようだ、とても気になる。しかし、屋根裏に続く階段などは見当たらない、結構高い所にあるけれど何とか見られないだろうか。


古い竹細工


そう言えば、蔵の外に梯子があったのを思い出した。主の方に許しをいただいて、梯子をかけて屋根裏に上がらせてもらった。危ないので慎重に登って行ったら驚いた。竹籠のワンダーランドか?時代を感じさせる本物の竹細工に目移るする、こんな場所にひっそりと、これだけの逸品達が隠されていたなんて(別に隠していたワケではありません)、これは竹の秘宝館だ。


垂涎の竹細工


自分も個人的に魚籠が好きで、持っている籠を動画でご紹介させてもらっているが、現在ではこのような竹細工は急速に失われていっている。特に腕の良い職人のものは極端に少なく、どうしても目に留まるものは昔に編まれた物ばかりだ。しかし、竹籠は耐久性があり数十年前のものなど普通の残されており、それどころか暮らしの中で普通に使われている事さえあるから、このような聖域は他にも残されてるに違いない。





孟宗竹と真竹の見分け方、孟宗竹の全国唯一無二の竹ざる

孟宗竹と真竹


孟宗竹や真竹は、淡竹(はちく)と共に日本を代表するなので名前くらいは聞いた事があると思う。えっ!?竹は、どの竹でも同じだと思っておられましたか?いやいや、日本に竹は600種類もあって、竹虎のウェブサイトに掲載している竹だけでもブログも併せれば、孟宗竹、真竹、淡竹、虎竹、黒竹、根曲竹、篠竹、スズ竹、蓬莱竹、布袋竹、矢竹、女竹、大名竹、煤竹、メゴ笹...と種類は多いです。


この同じに見える二本の切り竹も、実は種類が異なる。左が孟宗竹で右が真竹、見分け方は節の部分に注目いただきたい。節の線が一本なのが孟宗竹、二本あるのが真竹だ。




せめて、日本最大級の孟宗竹と真竹、淡竹の違いくらいは知っておきたい、そんな奇特な方はコチラの動画を是非ご覧ください(笑)。虎竹の里に生える孟宗竹と虎竹をご覧いただきながら、分かりやすくご説明しております。


孟宗竹


孟宗竹は太くて背丈も高く立派な竹だが、特に大きさの割に竹葉が小さく繁っているので見た目にも格好がいい。




お時間ある方は、こちらが何度かご紹介している孟宗竹の庭園。この迫力と美しさを眺めてもらえれば、かつて江戸時代に武家の庭に植えられてステイタスシンボルとされていたと言うのが納得できる。


孟宗竹伐採山の職人


ところが、この孟宗竹が近年あまり活躍する場が無くて困っている。こうして竹伐り職人が、手入れされた竹林で伐採する竹も用途は限られているのが現状だ。


伐採された孟宗竹林


昨年の秋だったか、立ち寄ったコンビニの広い駐車場に孟宗竹を満載にした大型トレーラーが駐車していた。あまり出番のない孟宗竹が何に使われているのかと言うと、行先は広島などのカキ養殖場。自分もカキは大好きだが、そんな養殖に孟宗竹が今でも筏に組まれて使われている事は本当に嬉しい。


孟宗竹竹ざる


まあ、この当たりまでは竹を扱う方ならご存知のお話。しかし、この孟宗竹が竹ざるになっているとしたら?孟宗竹は真竹などに比べて繊維が粗く、竹細工には不向きな素材と思われている。けれど、堅くて割づらい竹質はウラを返せば丈夫な竹編みとなる。


孟宗竹の米ざる


丁寧に洗ってあるので孟宗竹に見えないような青さだけれど、手にしたら感じる堅牢さ。それが、直径が60センチというビッグサイズで、しかも深さが20センチある深ザルは本物の職人仕事でないとできない。日本全国見まわしても唯一無二であり、まさに孟宗竹の最強竹ざるである。



鍋島虎仙窯の一閑張り竹細工?

鍋島虎仙窯


佐賀県と言えば焼き物の名産地として有名だ、有田焼、伊万里焼、唐津焼などは一度は耳にした事があるのではないだろうか。しかし、実はもうひとつ佐賀鍋島藩が将軍や大名などお殿様だけが使うために築いた藩窯があり、それが鍋島焼なのだ。


昨年はじめて参加させてもらった日本工芸産地博覧会でお隣のブースとなり、何気に作品を拝見させて頂いて驚いた。まるで一閑張りのようなお皿があるではないか!淡い緑色とも青ともつかない美しい青磁が、もしも柿渋のような色合いだったとしたら竹ヒゴに和紙を貼り付けて製作する一閑張りと見間違えてしまうかも知れない。


一閑張り行李


元々一閑張りの技法というのは、壊れた竹籠に和紙を貼り付って補強した事から始まっている。つまり、古人の物を大切にする精神、今ならエコな生活から生み出されたものだ。和紙を貼り付けて柿渋や漆で仕上げる職人の減少もあるが、何より芯となる竹編みが出来る職人がいなくなり、今後は特に行李など大型製品の製作が難しくなりそうだ。




そんな中、一閑張り買い物籠をお使いされているお客様から修理のご依頼があった。和紙を貼った表面が擦れて下地の竹編みがのぞいている箇所もあるが、和紙を貼り直し手直しすれば新品同様になる。こうして、また新たに命が与えられ使い続けられるのだから素晴らしいと思う。



手間いらず簡単、ぽかぽか温まるヘルシー蒸籠料理

国産檜蒸篭


台所で湯気が立っているのを見ると何となく安らいだ気持ちになるのは自分だけだろうか。寒い季節になると人気の蒸籠だが、どうして多くの方にご支持いただけているかと言うと、やはりその手軽さ簡単さからだと思う。


国産檜蒸籠


肉でも魚、野菜などお好みの食材をそのまま、あるいはカットして入れて蓋をして蒸し上げるだけだ。食べごろは、蒸し時間は食材によって異なるけれど、竹串を刺したり(自分は竹箸でそのまま突いたりするが)すれば分かるから初めての方でも失敗はない。


国産檜蒸篭


ただ、いくら短時間で簡単にできるからと言っても美味しくなければ意味がない。ところが、この蒸籠料理は食べ物の味をそのまま堪能できて本当に美味しい。おすすめは馬路村農協さんのポン酢しょうゆだけれど、最近はもっぱら「組合長」と言う赤ラベルの物を気に入って使っている。これを付けて頂くと、野菜などでもいくらでも食べられそうだ。


セイロ料理


健康に気をつけておられる方がいたら、更にこの蒸籠の素晴らしい点をお伝えすると、油を使わず蒸気で調理するので非常にヘルシーだ。ダイエットされている方にもオススメしたい料理と言える。


杉蒸篭


このように、お手軽・美味しい・ヘルシーと三拍子揃った蒸籠料理には、本格的な国産檜蒸籠から、初心者の方にも好評の杉蒸籠まで色々とある。


キッチンペーパー


インターネットで見ていると色々あって迷ってしまいそうだが、お二人で使うくらいなら、蒸籠18cmサイズが2段になったタイプか定番だ。IH対応鍋つきセットがあるので、これさえあれば今夜からぽかぽか温かい蒸籠料理をお楽しみいただけます。





茶碗籠や脱衣籠に使える、超レアなシダ編み籠

シダ編み籠、竹虎四代目(山岸義浩)


シダ編み籠をご存知だろうか?この30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」では何度かご紹介しているので、ご存知の方も多いかと思うが、自然素材の中では最強とも言える防湿性、耐水性のある素材なので昔から台所や、お風呂場などの水回りで使われる籠に多用されてきた。


虎竹の里はシダの里


実は虎竹の里は、虎竹ばかではなく良質のシダの成育する地域でもあり、かつてシダ編み籠が日常使いされている時代には、沢山のシダが伐り出されていたそうだ。なにせ、お隣の久礼の漁師町に、シダ屋さんが2軒もあって集荷していたと言うから凄い時代もあったものだ。




さて、そんなシダ編み籠の職人の仕事を動画にているので、ご覧いただきたい。竹のように自分でヒゴを作るという事はせず、自然にあるままのシダを使用するから、長さや太さによって籠のサイズを決めている。


シダ編み籠


だから、このような二重編みになった大型の籠は、作りたくとも何時でも製作できるという事ではなく、どんなシダ材が取れるかによって制約が出来てしまうから厄介なのだ。


シダ編み籠


メゴ笹洗濯籠にも用いられる編み方が一般的で、それぞれのサイズ感により茶碗籠や脱衣籠などに使わている。


シダ籠


最初に防湿性、耐水性が高いと言ったけれど、まるで天然のプラスチックのような質感で水気を寄せ付けない。使うほどに色合いが濃くなり、昔の籠は真っ黒くなっていたりする物もあって、これが又魅力があるのだ。





アトピーやお肌の弱い方に、竹炭を使った洗濯洗剤プレゼント

竹炭の洗い水


前にもお話しした事があるかと思うけれど、自分は小さい頃からアトピー体質で肌が弱かった。母から「皮膚科の病院に一体いくらお金を使ったか分からない」と冗談紛れに何度も言われる。当時は虎竹の里から高知市内の病院まで汽車で片道2時間、駅から病院までも遠かったから丸一日かかって通院していたと思う。治療が芳しく無かったのか?最後には母が菩提寺の和尚さんにお願いしてご祈祷までしてもらった、真っ裸にされて真っ赤に燃え盛る炎の上にかざされて子供心に物凄く怖かった事を今でも鮮明に覚えているのだ(笑)。


竹虎四代目、筍


だから、もし自分と同じように敏感肌で困っている方々を、自分達の一番身近であり、しかも驚くべき生命力で毎年どんどん生えてくる竹を使って癒す事ができれば、こんなに嬉しい事はないと思ってきた。竹を炭に焼き上げた竹炭を活用した竹炭石鹸は、出張で泊まったホテルに備え付けられたボディソープが肌にピリピリして使えない事から作る事にしたし、入浴に使う竹酢液は強い殺菌力を知っていた炭職人のおじさんから教わった。


竹炭の洗い水洗濯効果


竹炭の洗い水は、土窯作りの竹炭と竹炭灰と水だけで作った洗濯用洗剤だ。真っ黒い竹炭が、どうして汚れを落とす洗剤になるのか?不思議に思われる方も多いと思う。しかし、これも別に新しい物ではなく、昔から風呂釜の灰を使ってタライで洗濯していた、おばあちゃんの知恵を現代風にアレンジしただけだ。


竹炭の洗い水洗濯効果


日本紡績検査協会さんが、市販の洗濯洗剤と比べたデータを見ると若干は汚れ落ちが少ないが、ほぼ遜色ない洗浄力が照明されている。お肌にやさしい、環境にやさしい、すすぎが1回で済む、柔軟剤がいらない、消臭効果など自然素材100%ならではの洗濯洗剤だ。


竹炭の洗い水


ただ、見た目は普通の水のようだし、初めての方はどうなんだろう?と思われるかも知れない。そこで、先着100名様にミニボトルお試し約1回分(25ミリリットル)無料プレゼントを開催している。自分も普通の洗剤を使っている時には、襟首に残った洗剤でいつも首筋が荒れていた。困られている方には、是非一度お使いいただきたいと本当に思っています。



コタツ、みかん、鉄鉢と言う名の虎竹盛籠

虎竹盛りかご(鉄鉢)


虎竹の里は果物の里でもあるので、今の季節は国道沿いに農家さんが色鮮やかなポンカンを並べて販売されている。当たり前の光景ではあるが、いつも楽しみにしていて車を停めては何袋か分けいただく。全国的には温州ミカンが多いと思うけれど、こうした柑橘類をコタツの上に置かれた竹籠に入れて、テレビを観るのが日本の冬の定番だった。


虎竹盛りかご(鉄鉢)製造


コタツを使うご家庭が少なくなっているので、随分と古い「日本の冬」かも知れない(笑)。しかし、その当時にはミカンを入れるためのミカン籠は沢山編まれていて、そのひとつが虎竹盛りかごだ。僧が托鉢時に食物を受けるための鉄の容器に形が似ているから鉄鉢(てっぱち)とも呼ばれている。


虎竹盛りかご(鉄鉢)


輪弧編みと呼ばれる編み込みに、網代編みの底を組み合わせて作られる虎竹盛かごは、昔ながらのオーソドックスな形に根強い人気がある。


ミカン籠


元々は白竹で編むことが多かったが、近年は虎竹でも製作させてもらう事が多い。


鉄鉢製作


コタツ、みかん、そして竹籠が過去の物になってしまっても、お使いの皆様が新しい用途を見つけてお使い頂けるように、自分達は作り続けていく。





竹製の物差しについて

竹尺、竹物差し


は縮みにくく、膨張も歪みも少なく何年たっても使えるという事で、昔から物差しに使われている程の素材だ。案外と忘れられている方も多いのだが、小学校の時に竹の物差しを使われていたのを思い出して欲しい。もちろん今でも竹製の物差しは学校で使われている、これだけ色々と新しい製品が出来ている時代にもっと良いものがあるだろう?と誰でも考えるのが普通だ。


竹尺、竹物差し


しかし、実は物差しとは長さを測るものであり、透明なアクリル定規は線を引くための道具なのである。ちょうど自分もデスクに透明な30センチのアクリル定規もあるけれど、良く見たら目盛りが端からふられていない。その点、竹の物差しは当たり前のように端からの目盛りだから、長さを測るには竹の物差しでないとダメなのだ。まあ、それが竹の物差しを小学校以来、中学、高校、大学、社会人と50年に渡って使い続けている理由ではないのだが...。


真竹湯抜き


伸縮しない竹に比べて、プラスチックは熱で膨張しやすいから本当に微妙だが目盛りがズレる事もある。社会に出てからでも一番竹の物差しが活躍しているのではないかと思うのが衣類関係の現場。軽さ、しなやかさが繊維に優しく、これでないと使えないと思われている方は多いと思う。しかし、そんな皆様がこの色鮮やかな竹材を見て、これが毎日手にしている物差しになろうとは想像しないのではないだろうか?


竹尺、竹物差し


信じられない方は、下のYouTube動画「感動する真竹湯抜き職人の仕事と白竹の作り方、静かな山里にたなびく煙」を是非ご覧ください。また、竹の物差しが愛用する程に色合いがこれほど変わるという事も是非知っていただきたい。右端が新しいもの、真ん中が自分が50年使う物差し、左端は祖母が使っていた竹尺だ。色合いの変化がたまらない(笑)。





国産竹ざるの縁作り

国産竹ざる60センチ


これから虎竹伐採や山出しが続く虎竹の里だが、竹林での仕事の合間にも網代編みの国産竹ざるの製造を少しづつ進めている。60センチと40センチの2種類があるのだが、真竹の方の準備が遅れていて60センチサイズの製作が中心だ。ただ同じ竹細工が出来れば良いというものではない、高知では伝統的に孟宗竹を使った竹細工が続いてきたので、その伝統を継承して竹材にもこだわる。


日本製竹ざる縁


昔ながらの古老の職人は、竹ざるの縁についても実に手際よく、綺麗な円を描くように製作されていた。しなやかな竹なので簡単に丸くなりそうだが、竹の性質にもよるし身の厚みが揃っていないと美しい縁はできない。


国産竹ざる製造


ところが近年では、熱を利用して綺麗な丸縁を作る「型曲げ」という道具があるから便利だ。


国産竹ざる


竹を真っ直ぐに矯め直しする場合にも熱をいれるけれど、曲げたい時にも、こうして熱した鉄板に沿って割竹を固定すると思うような曲線を作り出す事ができる。


国産竹ざる縁


熱を入れて曲げた竹縁は、油抜きしたような色合いになっている。少し若竹色のようになって見栄えが良いが、この色合いはすぐに変色する。


国産竹ざる縁、竹虎四代目(山岸義浩)


どうだろうか?綺麗な丸さではないだろうか。


国産竹ざる


こうしふ縁をつくり、網代編み、あるいは四ツ目編した底編み部分とあわせて竹ざるを完成させる。昨年は定番の網代編みが間に合わず、四ツ目編みの竹ざるが殆ど製作できなかった。今年は少しでもご要望にお応えできるようにと考えています。





続々・感動!山里の真竹湯抜き

竹湯抜き


真竹の湯抜きはまだまだ続いている。湯抜き釜から竹を取り出し終えたら、すぐに次の竹を熱湯の中に入れていく。何度かお話しさせて頂くように、竹の油抜きには今回のお湯を使う湿式と、自分たちの虎竹のようにガスバーナーの炎でする乾式とがある。


晒し竹


真竹の場合、熱湯でする油抜きが効率的でもあり一般的だが、竹材の油分を全体的に取りすぎてしまい割れやすくなるとも言われている。その点、火抜きは表皮部分に集中して熱が当たり、油分が膜を張って割れづらくなるとの説もあるが、どうだろうか?


真竹湯抜き


ただ、湯抜きの場合は竹を拭き上げるウエスに付着する竹の油分が、ガスバーナーなど乾式に比べて少ないので多くの油分は熱湯に溶け出しているのは間違いない。そして、湯抜きと火抜きでは、同じ油抜きには変わりないけれど経年変色に大きな違いがある。


竹湯抜き用ウエス


使い込まれたウエスも綺麗に折りたたんでカゴに入れられている。自分が小学校の頃には、竹虎でも湯抜き作業をかなり行っていたから、同じようなウエスを土場中に干していた。そしたら、それをトンビが一枚、また一枚と取って行く。実は何かと言えば、近くの山で子育てするために巣作りするための材料に使っていたらしい。高い木の上まで登って見て来た先輩が教えてくれた、懐かしい話だ(笑)。


竹用カンナ


さて、この竹職人のこだわりを、もう一つお伝えしたいと思う。それが、この小さなカンナだ。竹林に伐採に行く時には、これを携帯して行く。


竹節


そして、伐採した竹を束ねて運び出す時に「くびき」と言って、飛び出した竹節が隣の竹をキズ付けないように節を一つ一つ削っているのだ。


晒し竹


白竹


なるほど、山出しからそんな丁寧な仕事があっての、この美しい竹肌なのだ。


山出し機械


山出しと言えば、竹の種類によっては運搬機を使う事もある。新しくはないけれど、さすがに良く手入れされていて現役バリバリで動きそうだ。


竹伐採機械


ポールと滑車が付いているのは、重たい孟宗竹を引っ張り出すためのものだ。たとえば、広島などで盛んな牡蛎の養殖には、太い孟宗竹で組まれた筏が用いられている。このような用途なら竹材に少しのキズがあっても問題ない。昨年、駐車場の広いコンビニに孟宗竹を満載して停まっている大型トレーラーを見かけた。こうやって竹が運ばれていくのか...凄い本数に見惚れたものだが、そんな孟宗竹の事もいずれお話ししたい。





続・感動!山里の真竹湯抜き

竹職人


年末、皆様にご紹介した山里の湯抜き釜の竹職人は、湯気の立ち昇る中いた。朝から切り竹を熱湯の中に入れてはじっと頃合いを見計らい、竹を引き上げる。布(ウエス)で竹表皮に残った油分を拭き取っていくのは奥様の役目、二人で長年続けてきた息の合った流れるような連携は見事だ。


真竹湯抜き作業


竹を全て取り出したら新しい真竹を釜に入れていくのだが、この時も竹は手渡し。ここの白竹は、ご夫婦が一体となって作り出す夫婦竹だ。


里山の真竹湯抜き


谷間にひっそりと、しかし力強く続く湯抜き作業。効率よく加工できるように整理整頓された美しい工場を見るだけで、どれほど丁寧な仕事ぶりかが伝わってくる。


竹刀用竹材


ずっと奥に入った所の壁沿いに積み上げられている竹は、太さや厚み節間が揃っている。どうやら何か特別な竹材として選別して置かれているようだ。聞いてみたら竹刀用の竹との事だった、剣道で使う竹刀も現在では海外から輸入されるものばかりと思われているが、まだまだこうして国産竹材を厳選して製竹されている。


竹刀用真竹割り


今日は竹割をしないとの事だったけれど、試しに数本だけ菊割の機械を使って割って見せてくれた。竹刀用の竹は、身が厚く重たい孟宗竹は使わないそうだ。湯抜きした後、時間をかけて乾燥させていた真竹は、パリパリッと心地良い音を立てて割れる。まさに竹を割ったような性格の言葉どおりだ。


竹刀用竹材


「この竹が、こうして竹刀になって剣士に使われるのだよ」職人さんは嬉しそうだ。


木製椅子


さて、湯抜き釜の焚口のところには、使い古してはいるけれど丈夫そうな木製の台が置かれている。来た時から一体何なのだろうか?と気にはなっていたが、実は煙が上がりだすと、湯抜きが始まった事を知った近所の人が三々五々集まってくる。


湯抜き釜で団らん


そして竹仕事の合間に、湯抜き釜の火を囲んで世間話に花が咲くのだ。


竹職人


湯が沸き立ってくると、また職人が竹人の顔に戻る。静かな山里の湯抜き作業は、こうしてずっと続いていく。





竹網代の麹菌が作る、我が家自慢の味噌

味噌バラ、竹ざる


以前、二重編みの竹ざるを使う味噌作りを拝見させて頂いた。直径が3.5尺(105センチ)もある網代編みの大ザルの上で大豆や麦を混ぜ合わせるという、ちょっと他では見られない凄い体験に圧倒された。


竹ざるの味噌作り


そして、今回改めて同じ鹿児島県内での味噌作りを見せていただく機会をいただく事になった。実はそれには理由があって、そもそも竹網代編みの竹ざるを使う味噌作りは各ご家庭でされていて、それぞれの家庭で味噌の味が違っていたと古い竹職人から伺っていた。


竹バラ、網代編み


なぜならそれは、竹網代編みの隙間にそれぞれのご家庭の麹菌が住みついているからだと言うのだ。前に拝見した竹ざるを使う味噌作りでは、竹文化に親しみを持ち大切にしながらでも、ざるの上にビニールシートを被せた方法だった。そこで、どうしても昔ながらの竹ざるをそのまま使用する味噌作りとのどのようなものか?それに使う二重編み竹ざる(ふたえばら)とはどんなものか?知りたいと思ったのだった。


竹ざる味噌作り、大豆を蒸す


竹ざる味噌作り、麦


蒸し器から湯気が立ち上ってきた、そろそろ麦が蒸し上がったようだ。


竹ざる味噌作り


この熱い麦の熱を竹ざるに広げて冷ましていく。ここでは、竹ざるそのままに使われている!竹は細いバラが出てしまう事もあるけれど、もちろんこちらの竹ざるの竹編みは素手で触れてもツルツルで心地よいくらいだ。


竹ざる味噌作り


竹ざる味噌作り、大豆


この伝統の味噌作りは地域によって若干方法が異なるようで、こちらでは大豆を蒸してミンチにした後はそのままプラ樽に入れて麦と一緒に持ち帰られていた。


持ち帰る味噌


後はそれぞれのご家庭で発酵具合などみながら作られていくそうだ。


大型竹ざるの縁


それにしても、伝統にも迫力にも感動する大ザルを使った味噌作り、それを支えるのはやはり竹文化である。直径1メートルを超える大きな竹網代編み、その丁寧なヒゴ取りと編み込み。身の厚い太い孟宗竹を使う堅牢な縁など、しびれる竹細工に魅了されっぱなしの味噌作りだ。





2024辰年、新春虎竹の里ウォーキング

虎竹と竹虎四代目(山岸義浩)


恒例となっている新春虎竹の里ウォーキングで焼坂の山道を歩く。今年は快晴とまではいかないけれど、気持ちの良い朝だ、気温もそこまで低くなくて絶好のウォーキング日和だ。日が差しこんでくる背中が温かい、高知は本当に自然に気候に恵まれている。


虎竹の手すり(遍路道)


焼坂峠に行くまでには数本の道があって、虎竹の里ウォーキングはその年のよって若干通る道筋が違う。昔からあるこの遍路道は、確か昨年も歩いて登ったが途中に虎竹で作った手すりや、急勾配の道にはロープや鎖などが用意されていて安心して通る事ができる。


朝日の差し込む虎竹林


日の光が当たった虎竹は神々しくもあり美しい。


虎竹伐採


今月末までの虎竹伐採シーズンは山道には、伐り出された竹がこのように沢山立てかけられている。


色づきの良い虎竹


虎竹は淡竹(はちく)の仲間で、竹表皮には白っぽい蝋質の粉がふいたようになっているが、その下には虎竹特有の虎柄模様がハッキリと確認できる。この模様の色づきが竹林により、年によって違っていて全ての竹林が同じように色づくわけでは無いのが自然の難しいところだ。


焼坂峠


峠からは竹虎本社が見える、今年もこのように長閑で変わる事のない虎竹の里であって欲しいと願っている。


石垣


峠を越えて歩いていくと、車が一切通らない山道は歩くのも困難なくらいになってくる。そして虎竹はおろか普通の竹もほとんど見当たらなくなるから不思議だ。


残された石垣


そんな山肌には、古人が築いたであろう段々畑が山道の上にも、下の方にも延々と作られているのが分かる。山を削り石を運んで作った石垣の畑では、芋の栽培がされていたいたそうだが、その苦労を思いながら山を下る。


イノシシぬた場


お遍路さんが歩くくらいで、ほとんど人も通らない山道にはイノシシ専用の、ぬた場と呼ばれる水浴び場がある。


焼坂峠


虎竹の里、安和駅


予定より順調に進んだ辰年の虎竹の里ウォーキング、静かな山里を今年の虎竹を会話しながら歩く大事な時間だ。





竹林には縦横無尽に走るドラゴンがいる

2024年竹虎賀状


2024年が明けました、今年も何卒よろしくお願いいたします。今年は新年早々に大きな地震があり、被災された皆様は、寒い中大変な思いをされているのではないだろうかと心配しています。自然災害の多い日本は、どこにでもこのようなリスクがあるから心を引き締めていかねばならない。もしかしたら、この辰年はそんな一年になるのかも知れない。


虎竹2024


さて、自分などは「地震の時には竹林に逃げろ」と幼い頃がずっと教わってきた。色々な方にこのお話をさせて頂くと、案外初めての方もおられるが、実は竹林に逃げろと言われるにはそれなりの理由がある。


虎竹根


皆様は竹の根をご存じだろうか?竹根は、竹の稈と同じような節が狭い間隔に無数についており、しなりがあり恐ろしく強靭だ。辰年だからか、見た目からか、竹林にいると地中を龍が這っているような錯覚を感じる。普通の方がご覧になられるのは、印鑑に使われていたり、ステッキや傘の持ち手あるいは近年はブランドバッグのハンドルにも使われているから馴染みのある方も多いかも知れない。


竹根ステッキ、竹根杖


太い竹根をステッキに使えば決して折れる事のない堅牢さだが、細い竹根は物凄い柔軟性としなりがある。明徳中学時代、担任の先生から何本か持ってくるように言われ、喜んで持参したらお尻を叩くムチになったという(笑)今となっては笑い話もあるが、粘りも抜群でとにかく強い。


竹根


この竹の根は、場合によっては1m近くの深さまで伸びる事があるけれど、大体は30~50cm程度と思うより浅い地表を伸びていく。ところが、これがまさに縦横無尽に伸びていて、竹同士が根で繋ぎあい支えあっているのだ。そこで、竹林全体が一塊となって土壌をガッチリと固めていて、天然の鉄筋コンクリートとも呼ばれる由縁だ。


虎竹竹林、竹職人


実際、竹林が地滑りを防いだ例はいくつもあって、高知でも土佐山田繁藤という場所で起こった60名も方が犠牲になった大災害は、竹林が斜面の崩落を止めた例として書籍にも掲載されている。もちろん、防災に役立つような竹林は日頃から管理されている健康な竹林でなければならず、 荒れ放題だと根浅になって逆効果になる場合もある。


飛び込んできた地震のニュースに、の強さにも改めて思いをはせる新春だ。