竹は種類や使い方によるけれど、寒い季節に伐採するのが一般的だ。もちろん一年通して竹伐採をしている職人もいるのだが、日本の竹は秋の深まりと共に本格的に始まる。そこで昨年の竹がなくなり、品薄になっていた遍路杖の材料が今年も思ったとおりに確保できてまずまず満足している。
遍路杖の材料は布袋竹という竹だ、布袋様のお腹のような膨らみがある特徴的で面白い竹で、西日本では護岸用として川岸に群生して植えられているのを良く見かける。元々大陸から渡って来た竹のひとつだが、五三竹(ゴサンチク)はじめ、全国で10種類を超える呼び名がある事から日本人の暮らしに深く根付いた竹でもある。
原竹そのままで使うのではなく、虎竹などと同じようにガスバーナーで油抜きという加工をする。
竹は油成分の多い植物なので、余分な油を取り除く事により耐久性を高め、雑巾で拭き取ると輝くような美しい竹肌になる。
竹の個性によって、手に馴染んで持ちやすそうな様々な形の竹がある。このユニークな形から釣竿やステッキなどに多用されている。乾燥するほどに硬く締まる性質があるから杖には最適の竹でもあるのだ。
ガスバーナーの温度は約700度、竹が熱せられているうちに布袋竹の曲がりを矯正する。職人の思い通りに曲がる竹材も、冷えてしまえば固まってしまい全く曲がらない。
実は、職人仲間も絶賛する山里の名人が作る竹箒の柄にもこの布袋竹(五三竹)が使わている。布袋様のお腹のような部分を利用する訳ではないから、まっすぐに伸びている竹を選んで伐っている。それでも、わざわざ布袋竹を使うのは、やはり乾燥すると丈夫になる竹質からだ。昔からの名人が好んで使う竹材だから間違いはない。
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