小さい頃には鮎がキライだった。自宅の勝手口には、父が新荘川で捕ってくる鮎のための専用冷凍庫があったくらいだから、季節には毎晩のように食卓には鮎が並ぶ。独特の苦みも子供心には、一体どこが美味しいのか?とずっと思っていた。ところが大人になって、連れて行ってもらった山奥のお店で頂いた鮎が感動するほどの味で、一気に大好きになった。そんな大好物の鮎が目の前にならんでいる。達人のお宅では、低温でじっくり素揚げした鮎に醤油を少しだけ垂らして食するのが定番だそうだ。旨い!とにかく旨かった、高津川の鮎...凄い。
何匹か食べて、ふと我に返る。これが心の片隅に不思議な魚籠として、ずっと引っ掛かっている高津川の鮎魚籠に入れられていた鮎か!そう思うと更に箸がすすんだ。
すっかり漁師の顔になった達人が、投網を見せてくれる。父が使っていたものと同じような網で懐かしい、重りなどパーツを沢山入れた箱もあるから自作されるのだろうか、そういえば夜なべに父も何やら作っていた。
新荘川の鮎漁では、たしか投網を投げてから岸辺に網をあげてから鮎を外していた。しかし、こちらでは川の中で鮎を外すそうだ、その方が鮎が傷まないと言われる。なるほど、だから魚籠が必要なのか、それにしても話を聞いている内に漁の様子も拝見したくなった。
高津川の不思議な鮎魚籠の謎が知りたくて来たけれど、鮎魚籠を知るには、作る方、使う方、そして鮎、地域を知らねば辿りつけないのだと感じた。皿の鮎はみるみる無くなった。
(明日の30年ブログにつづく)
コメントする