篠竹細工、謎の黒いライン

篠竹底編み足付ざる


篠竹底編み足付ざる等、篠竹細工には竹材の強さと粘りを活かした秀逸な籠やざるが多い。近年開花があって材料不足となっているスズ竹と混同される方もおられるけれど、「真竹より篠竹、篠竹よりスズ竹、スズ竹より根曲竹」という言葉があるように、篠竹とスズ竹は全く異なる竹だ。


篠竹魚籠


篠竹とスズ竹が混同されがちなのは、竹ヒゴにしてしまうと見分けがつかないくらい似ているからだ。産地では篠竹を伐採した後、細いヒゴにしたものを内職の編み子さんに配って籠作りをしていた歴史がある。しかし、長く編みの仕事に携わって来られた職人さんでも、どちらの竹か区別がつかない程に似たものもあるそうだ。確かに、そう言われてみたら仕事場の隅に置いてある使い込まれた魚籠も、篠竹か?スズ竹か?竹ヒゴの状態では分かりづらいのかも知れない。


篠竹素材


しかし、今日はそんなお話ではなく、篠竹細工に入れられる不思議な黒い竹ヒゴの話題だ。何気に見ているので、そんな黒い竹ヒゴなどあったかなあ?と思われる方も多いと思う。竹編みの仕事で出来た焚き付けにする端材を、こうして丁寧に片付けている几帳面な古老に訊ねてみても、理由は何故だか分からない。


篠竹細工


何かの法則性のようなものも無く、まるで気まぐれのようにも感じるくらい黒い竹ヒゴが入っている籠があれば、入っていない籠もある。いや、近年は入っていない籠やザルの方が圧倒的に多い。


篠竹


淡竹や真竹の竹質の変化を感じるが、篠竹の品質も年々落ちていると言う。温暖化など気候変化の影響だろうか、昔はこのような黒い汚れのようなシミなど付いている篠竹は少なかった。


篠竹細工職人


そう話しながら、ストーブの横で黒い汚れを一本一本刃物で磨いている。


篠竹ヒゴ


だから、もちろん工房の天井に保管されている色の付いた竹ヒゴは、あえて染め付けて黒くしているのだ。近年は染粉で色付けしているけれど、その昔は松の葉を燃やした煙に燻して色付けしていたらしい。


篠竹細工


黒い竹ヒゴだけでなく、赤く染められた竹ヒゴが使われる事もある。一体これは何だろう?ただの飾りなのか、何かの意味合いがあるのか、現代では恐らく明確な答えを知る人はいないような気がする。そして、まるで篠竹特有の竹ひごのあしらいのように話してきたけれど、実は真竹の籠にも同じような色ヒゴが使われているから、やはり竹は奥が深い。





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