高知には、こんな立派な網代編みの土佐箕と呼ばれる特徴的な箕があった。箕先の幅が70センチ、奥行きは74センチ、深さは20センチもある大型の箕で、持ち手の部分に滑り止めの棕櫚皮が巻かれていた。そうそう、この棕櫚巻のために職人さんの仕事場には一本そのまま伐り倒して運ばれてきた棕櫚の木があったけれど、いつだったか置いている内に青々とした葉が伸びてきたと思ったら、扇状に開いた事があって、その生命力に驚いたものだ。
主に孟宗竹が使われる土佐箕には、他にメダケやカズラが必要だったが年々このような素材を集められなくなる。製作が難しい箕作りは、こうして作れなくなり現在は残念ながら復刻は難しい。
そんな箕を、農家さんの倉庫で見つけた。かなり使い込まれた古いものだが、竹が枯れた色合いになっているのに箕先部分に青い不自然色合いが混じっている。
これは、荷造りなどに用いられているPPバンドだ。実はこのPPバンドは扱いやすく耐久性もあるので、簡単な手作りクラフトなどに多用される事もある。とっさに、いつか前に見て残念に感じた根曲竹と籐で編まれた伝統的な箕を思い出す。この時には青色ではなく、白いPPバンドが恐らく桜皮の代用として使われていた。
この土佐箕には、傷んでしまった竹ヒゴの代わりにPPバンドを編み込んで補強されている。土に還る自然素材と、いつまでも無くならないプラスチック素材と、まるで今の環境問題や竹の課題が皮肉にも合体して自分に迫ってくるように思えた。
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