インドネシアのプロダクトデザイナー、シンギー・カルトノ(Singgih.S.Kartono)さんが、折りたたみ式の自転車を携えて遠路はるばる虎竹の里までお越しになられた。シンギ―さんは、故郷の竹林を活用すべくスペダギ(Spedagi)を創設、自転車製作をされている。スペダギとは造語で朝に自転車に乗る事を意味していると言う。
実はシンギーさんの竹自転車には、一年前に乗らせてもらった事があり、その快適さに驚いた。何を隠そうボクの学生時代の目標のひとつが自転車旅行だった、荷物を積み込み仲間三人で1ヵ月かけて北海道一周した事もあるから、自転車には少し乗ればその性能が何となく分かるのだ(笑)。2015年韓国で開催された世界竹博覧会で、見せて頂いた竹自転車と比べると、かなりスマートに洗練された感じに仕上げられていた。
インドネシアは赤道直下の国で、竹の性質も日本とは随分違っているが、その活用は生活道具から家具、住宅建材、ホテルまで建てられているから比べ物にならないほど幅が広い。自分など、以前はプリミティブな竹細工が真っ先に思い浮かんでいたけれど、近年の竹については認識を新たにするような製品も多いと思う。
おっと、そんな事考えていたら虎竹の里の急勾配の山道を、シンギーさんは先に進んで行かれている。なんだか、背中が「虎竹に早く会いたい」と言っているようで(いや、言っていた)嬉しくなって立ち止まった。
今回、拝見させて頂いたのは何と折りたたみ式の竹自転車だ。輪行(りんこう)と言って、このように折りたたんで専用の袋に収納すれば公共交通機関に乗って移動する事ができるので、旅好きなサイクリストの方には重宝されている。
短時間で組上げられるので、この竹自転車は全国どこへでも持ち運び、各地の風景を楽しみながら走っていける。前輪、後輪のタイヤのサイズが異なっているのにも、シンギーさんのメッセージが込められている。後ろの大きなタイヤは先進国、前の小さい方は後進国だそうで、これからは後進国が前の舵取りをしていかねばならないと言う事らしい。
凄いサプライズが待っていた!この折りたたみ式竹自転車に試乗させてもらったのだけれど、何と、この自転車を竹虎にプレゼントしていただけると言うのだ!何とお礼を言っていいか分からない、とにかくシンギーさんにサインを書いていただいた。
インドネシアの竹は日本のように一本立ではなく、バンブー系なので株立ちの竹たちだ。自転車の材料となるジャイアントバンブーも、孟宗竹より更に大きく身の厚い竹だが根元部分が引っ付いておりエキゾチックだ。しかし、加工すると竹節はまるで孟宗竹のような雰囲気を醸し出し親近感がある。
さて、その他にもシンギーさんからは竹編みヘルメットやTシャツなど色々な贈り物を頂戴した。
何年か前にインドネシア・ジャカルタの空港でパスポートを落とした話を、昨年この30年ブログでもしたと思う。後ろを歩いていた方に拾って頂いて助かったのだが、インドネシアの国民性は日本に良く似ているのではないだろうか。優しさや思いやりの精神を感じる。そして日本と同じように都市化が進み、地方のコミュニティが少なくなっていく中でのシンギーさんの取組みだとしたら、とても共感できる部分は多い。竹の通貨しか使えない地域など、しびれてしまった。
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