どうしても泊まりたいホテルがあった、鹿児島にある城山ホテル。市内を一望できる高台にあり、雄大な桜島も目の前という絶景の5つ星ホテルだが、自分が宿泊したいと思っていたのは、ただひとつ竹灯りがあるからだ。自分の手元にも、このホテルの数部屋にだけあるという竹編みのボールがある。実は、ずっと懇意にしてきた竹職人が引退する時に頂いたものだ。
その時に、竹編みボールが鹿児島でも一番のホテルに照明として使われている事を教えてもらった。以来、ずっと行きたくて、いつかはと思い続けてきた。あまり知られていないが、この職人の専門は元々竹照明だったのだ。
今まで一言も話した事のない竹照明への思いやこだわりは、工房入り口にしつらえた灯りに現れていた。星付きのホテルと聞いて、竹編みに星のデザインを入れたいと何度も何度も試行錯誤したそうだ。
虎竹のペンダントライトを納品させてもらう事があるけれど、竹の割幅を変えると表情が随分と違う。編み込みの密度も異なるので、どんな光が灯るのか楽しみで仕方なかった。お陰で慌ててしまって、広いホテルで迷子になったほどだ(笑)。
ええっ!?部屋に入って驚いた。竹編みボールはポツンと置かれている、電球などは入っていないようだ。
これが照明なのか...そう思いながらスイッチを入れたら、また驚いた。
スポットライトがサッと竹編みに差し込み影を映し出す。竹一筋に歩んできた職人の竹細工には、いつも感嘆していたが、最後の最後まで凄い。リスペクトしかありません。
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