竹の構造は、とても面白くて稈の中が空洞になっている、それなのに強いのは適当な位置に節があるからだ。そして更に身の部分にも秘密があって、地中から水分や養分を運ぶ維管束(いかんそく)という管が縦にのびているが、その密度は竹表皮に近い高い。つまり竹の外側に近いほど繊維が密集していて強いという事だ。
だから竹細工の場合には、たとえば青物細工のように青竹の表皮をそのまま活かして竹籠を作っていく。ただ、そんな青竹細工の中には、竹表皮部分を薄く剥いで編む籠があり、竹表皮をできるだけ薄く削る工程を「磨き」と呼ぶ。
木工所に行くと角材を削った後の鉋屑が沢山落ちていたりするけれど、磨きの仕事をした後には、ちょうど同じような竹の表皮屑が沢山出来あがっている。
磨きをかけると竹表皮のキズやシミが無くなり、均一感のある更に美しい竹籠を編むことができる。また、磨きの経年変色は進化が早いので、お使いの頻度にもよるが数年経てば結構な深みのある色合いになっている籠がある。
磨きの細工で作る四ツ目編みの衣装籠を製作する事になった。この籠は、今では少し考えられないけれど当時は三個組で製造するほど需要もあり製造力もあった。しかし、需要の低下と共に竹表皮を削る工程だけでも手間と時間がかかってしまう磨きの細工は敬遠されている。このサイズの大型の角籠だと、意外に思われるほど長い竹材を準備せねばならず、職人の労力たるや凄いものがある。
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