暑い中、虎竹光悦寺垣の製造が始まった。この竹垣には幅3尺(約90センチ)から7尺(約210センチ)幅まで定番で用意してあるのだが、7尺や別誂えの8尺くらいになると、かなりの大きさで設置する場所も限られる。
光悦垣や袖垣などをご覧いただく場合、多くの方が一本の竹で柱部分を作っていると思われてるようだ。しかし、よく注意してもらうと孟宗竹の芯に、細く割った虎竹を巻き付けて製作している事がお分かりいただけると思う。だから竹節部分をずらして模様を作る事もできる、こうご説明すると見る目が全く違ってくると皆様に言って頂ける。
芯に巻いていく竹を「巻き竹」と呼ぶが、長い柱用の巻き竹は均一に細く割るのが難しく専門の内職さんがいた。二台の10tトラックを満載にして、竹製品や竹材を関西まで運んでいた頃には、このような光悦寺垣や袖垣に関わる職人は、内職さんも入れると40~50人いたのではないだろうか。袖垣を飾る竹枝を集めてくれる方々もいたし、竹格子を縛る四万十川流域のカズラを採取して来る職人もいた。
現在では、ほとんどの工程を一人の職人が最後まで仕上げていく袖垣作り、それでもやはり出来あがりは威風堂々としていて、昔と何ら変わらない。
夏の竹手提げ籠は、だいたい白竹と相場は決まっていたが、今ではそんな事を言う人も少なくなった。価値感の多様化だろうか?しかし、自分の場合は車に載せて常に使えるようにしてある手提げ籠は、白竹やスズ竹で編んだ少し大振りなものが多い。
経年変色の素晴らしい磨き細工は、繊細な編み込みで意外と小さなサイズのものが中心だ。名人と呼び声の高かった職人の手提げ籠も、手放す事ができず手元にあるけれど、自分が普段使いするには少し華奢な感じがする。
実は虎竹も真竹と同じくらいの大きさとは言いながら、太い竹材は近年特に少ない。その上、色づきが良くないと製品にはならないので、男性向きの幅広のフレームが入るような竹手提げ籠は、いつも竹材がネックになって実現しないから、かなりレアなのだ。
その点、スズ竹はボールペンほどの細い素材でありながら、しなりがあり非常に堅牢でもあるので、重たい荷物を入れて持ち運ぶ築地や豊洲市場の板前さんにも愛されるタフな手提げ籠となる。開花で竹材不足が続いており、たまに出来あがってくる竹肌も本調子ではないが、一日も早い竹林の復活が期待されている。
「一生使える竹のマイバスケット」なんてスゴイと思われた方、竹籠は一生どころからお子様にまで譲れる丈夫さだ。だたし、使い方によっては傷んだり、壊れたりもするので、その都度修理は必要となる。それでも、たとえ海外製であっても、使うほどに愛着の増す竹細工は捨てられない。大事に手直しすれば新品のようになるから、又楽しくお使いいただけるのです。
虎竹ランドリーバスケットとしてご使用いただいてる竹籠は、定番の六ツ目編みで実に様々なサイズがあり、昔から多くの方に愛されてきた。しかし、これだけの大きさになって衣類を入れるとなると、底の力竹が必要となってくる。そこで、力竹をどう入れるか?何種類かパターンがあって、試してみたところ一番しっくりくるのがこの三角型であった。
もういつだったか忘れてしまうほど前だったと思うけれど、飴色に変わった白竹の籠に三角の力竹が入れられていたのを最近思い出した。力竹を考える時に以前見たイメージが、もしかしたら無意識に浮かんでいたのかも知れない。
そう言えば、以前の30年ブログにて、虎竹ランドリーバスケットなどに使われている六ツ目編みが、魔除けの印として知られていたお話しをした事がある。それでなくとも、編み目のひとつひとつを目の玉に見立てて、籠で悪霊を退散させる風習は昔から日本にあった。また台風が近づいて来る、多くの籠に囲まれながら目に見えない力や大自然に対する畏怖の気持ちを忘れないようにしたい。
夏前からずっと気になっていた真竹磨き衣装籠に、ようやく取り掛かる事ができた。冬に伐採した真竹が多すぎたのか、自社で活用するスピードが遅かったのか、おそらく両方のような気がするけれど倉庫を見てみると、思うよりも真竹は随分と余っている。シーズンに伐った竹だけを使って製品作りをしていくのだから、竹は足りなかったり、余ったりする。
それでも昔のように、湯抜き釜で白竹にしていれば心配ないが、原竹そのままで保管していると傷んで使えなくなる事もあるから、やはり竹の仕事は難しい。
厳選した竹材を使って竹籠づくりが始まった。
おっと、それにしても竹林で伐採したばかりの竹と、職人が手にしている竹や編み上がった衣装籠の色合いが全く違うと気づかれた方は鋭い(笑)。
どうして、このような見た目の違いになるのかは、真竹磨き衣装籠の職人動画をご覧いただくと、なるほどと納得する。そして、意外と見えない所にも職人の技と手間とが掛かっている事がお分かり頂けると思う。
先日から広島にある蔦屋書店の「くらしの道具市」にてポップアップ出店させて頂いている。今年は1月の代官山T-SITE GARDEN GALLERY(代官山蔦屋書店エリア内)にっぽんの暮らし展 2023、湘南T-SITEの料理道具市に続いて三回目となっているが、実際に竹製品をお客様の手に取って見てもらえる機会はやはり嬉しい。
竹茶碗籠のある暮らしにも詳しく書いてあるが、加工しやすく耐水性も高い竹は水回りでも大活躍していた。小さい頃の台所やリビングなど室内も竹細工だらけだった。
現代ではすっかり忘れさられている機能的で美しい道具達だが、やはり日本人のDNAには竹が生きている。このような展示の機会に、ふと触れると手作りの温かみや品質へのこだわりは、すぐに伝わると思っている。竹を知らずに入社した竹虎の若い社員が、竹を身近に感じるようになると、自然と手にして毎日の暮らしで使いだすのが良い例なのだ。
代官山蔦屋書店にあるT-SITE GARDEN GALLERYのために用意した竹籠たちの動画がある。広島の方には無いものも多いけれど、竹細工を肌で感じていただきたいので改めて掲載している、良かったらご覧ください。
高知のお城下に一年に一度だけ現われるのが、とさっ子タウン。子供達が自ら運営して、自分達で作る子供だけの街。今年は8月19日(土)、20日(日)の2日間、高知市文化プラザかるぽーとにて開催された。
実はこの街の住人になるには結構大変なのだ。住みたい子供達が多くて例年抽選が行われている、運よく当選された市民の皆さんは、まずハローワークで仕事を探す。
働いてもらった、とさっ子タウンだけで使える通貨tos(トス)で街を楽しむのだけれど、アカデミーがあって勉強する事もできる。竹虎はこの学びの場を担当させてもらっていて、今回は紙芝居「伝説の虎斑竹」とガリガリ虎竹とんぼ作りを開講した。
正直、乗り物に乗ったり、食べたり遊んだりするのではないので竹虎のアカデミーにお越しいただくのは大変だ(笑)。現実社会でもリクルートせねば人は来ていただけないが、子供たちの街でもPR活動して生徒さんを募集して周る。これが、なかなか楽しい。
社員の作った紙芝居は良くできている。今年はじめて担当となって使わせてもらったけれど完成度も素晴らしい。
この時の紙芝居の様子は、YouTube動画で撮っているのでご関心のある方は最下段の動画でご覧ください。小学生にお話しするのはハードル高いと改めて思った。
さて、これがガリガリ虎竹とんぼ。ギザギザになった部分を竹で擦るとプロペラが回転する昔ながらの竹玩具だ。
ギザギザの加減で、良く回るもの、回らないものがある。これは次回からに向けて課題だ。
それにしても概ね喜んでもらえて本当に安堵した。何より定員オーバーしてアカデミーを開講するのは参加しはじめて数回になるが初めての事だ。さらにプロペラに「竹虎」と文字入れしてくれた、ちびっ子がいて感激した。これなら来年は授業数を増やしてみてもいいかも知れない(笑)。
本当は「歌は世につれ世は歌につれ」らしい(笑)、ところが自分は昔から「竹は世につれ、人のつれ」と言い続けてきた。中学生の頃、校長先生に教わった、高い山は低くなろうと、深い谷間は浅くなろうとしている、つまり何でもこの世にあるものは全て変わり続けているという事だった。
昔からずっと続いてきた竹籠だって例外ではない。使われなくなった籠は忘れ去られ無くなっていき、新しい籠が生まれて、そして少しづつ変化している。
一番の目に見える変化は籠のサイズだ。昨夜、ちょうど40年前に放映された四万十流域のテレビ番組を観ていたが、家族が15人だと話していた。今は、そんな大家族はあまり聞かなくて、お父さん、お母さんにお子様一人かお二人、都会では一人暮らしの方も多い。
だから、自分の小さい頃には大の大人が一抱えするような竹籠があったものだけれど、家族の人数が少なくなると共にサイズも小さくなってきた。まさに暮らしの中に寄り添っている竹細工たちは「竹は世につれ、人のつれ」なのだ。現代の職人の中では突出した名人が編む真竹茶碗籠も、美しさそのままに小さく使いやすくなっている。
竹製鬼おろしの素晴らしい点をいくつかご紹介したいと思う。お客様から頂いている沢山のご感想などからもこのような特徴があるので、もしまだお試しいただいていない方には是非オススメしたい(笑)。
まず、食材の美味しさを引き出すという所だ、たとえば大根や山芋を鬼おろしでおろすことで、食材の風味や食感が引き立ち、サラダであったり、焼き魚であったり、トロロうどん等に様々な料理で美味しさが楽しめる。
以前にリンゴを摺り下ろしてヨーグルトに混ぜて食してみたことがある。普通の大根おろしと比較して、ギザギザ歯の竹製鬼おろしは水分が少なく出るため、リンゴでもその甘みや栄養分を余すことなく味わえる。
職人の丁寧な仕事が見られる鬼おろしだが、似たような製品でも持ち手の形状が違うものがある。竹虎では、しっかりと握って力を入れやすい平板タイプをオススメしている。実際使ってみると、摺り下ろす素材によっては結構強く握ったほうが良い場合もあるのだ。
この摺り下ろした瑞々しさはどうだろうか?硬い特性を持った竹材ならではの使い方と言える。
リンゴに竹歯の跡がクッキリだ!リンゴなどの場合には、手前に引くようにおろすことで、力を入れずに効率的におろせるため、使いやすく初心者から上級者まで幅広い皆様にご愛用いただいている。
今回は摺り下ろしリンゴを作った事をご紹介してみたが、意外なところでチーズなどの食材をおろす際にも活用されているお客様もいて、食事のバリエーションを広げることができる。
日本で昔から馴染のある自然素材の竹の美しさと共にホッとする感心感もあり、台所に置いておくだけで雰囲気が引き立つのがいい。小さな鬼おろしを通じて、ご家族や友人と楽しい食事の時間を共有し、料理を愉しむことができるのだ。
倉庫に仕舞われていた網代編みの竹ざるは大迫力だ。普通に生活していたら、まず目にする事のない大きさで、直径が一つは3尺(約90センチ)、もう一つは4尺(約120センチ)もあるから凄い。こんな平らな竹ざるが何に使われていたのかと言うと、実は味噌作りだ。蒸した麦を冷ますのに、この大きな竹ざるを使う、そして冷ましてから麹菌と混ぜるのだが、薄い竹ヒゴを網代編みした細かい編み目にその家独特の菌が生きているから、同じ地域でも各家庭それぞれに風味の違う味噌が出来ていた。
それにしても、この大きさには自分でも面食らってしまう。前に、宮崎県の寿司バラと言う竹笊を最後の職人さんから頂いたお話しをした事がある。寿司飯を竹編みのザルで作るなんて、味噌作り同様に馴染がないと少し意外に感じてしまうが、この寿司バラも結構な人数分を作る事ができるサイズであるものの、内側は1.3尺(約40センチ)しかない。
つまり、3尺(約90センチ)、4尺(約120センチ)サイズの竹ざるがいかに大きいかお分かり頂けるかと思う。竹虎では定番としている2尺(約60センチ)だって、沢山の梅干や野菜を干すのには都合がよいけれど、都会に暮らす方の中には、もしかしたら置き場所に困っている方もおられるかも知れないなどと想像する(笑)。このビッグサイズの竹ざるが、どうやって使われてきたのか?近いうちに皆様にご紹介したいと思っています。
「サザエさん」の漫画連載が始まったのは昭和21年(1946年)で、テレビ放映がスタートしたのは昭和44年だそうだ。今でも続いている国民的な番組の中で、主人公のサザエさんは買い物に行く時には手提げ籠を使っている。若い皆様も違和感なくご覧いただいてるけれど、昭和のお母さん方はスーパーに出かける場合は必ず買い物籠を手にしていた。少し年配の職人に聞くと、近所の魚屋には竹ザルを持参していて、そこにアジやサンマを載せてもらっていた時代だから、持ち手付で深さのある籠は必需品だったのだ。
そんな昭和の手提げ買い物籠が、70数年という時を経て少しづつ見直されている。すっかり忘れ去られていた手提げ籠文化だったが、環境意識の高まりで数年前から購入時のビニール袋有料化でマイバックが浸透し、一部の方には竹編みの籠が雰囲気と実用性から支持されている。
この懐かしい昭和のお母さん愛用、虎竹買い物かご(だ円)は、物の出し入れが便利なように口部分を広く、安定した持ったり置いたりできるように少し低めの定番の形だ。毎日、普段使いのできる丈夫な竹籠がどのように編まれてるのか?54分を越える長いYouTube動画で、じっくりご覧いただけるようにしました。
竹が環境に優しい素材だと言う事を、多くの方に知って頂けるようになると共に、コンビニやお弁当屋さんのお箸も竹素材に変わってきた。お気づきになられていない方もいるかも知れないけれど、ビニール袋に入った竹丸箸を多く見かける。もちろん、随分前からなのだが国産竹材を使った日本製の竹割箸には注目していて、技術が途絶えてしまっていた竹割箸の復活に少しでも協力できればと思ってきた。ところが、遂にそのメーカーさんでの製造も難しくなった。
竹は人が手を入れずとも、毎年地下茎から筍としてドンドン生えてくる、そして成長が早いので、わずか3ヶ月で20数メートルの親竹と同じになるから圧巻だ。日本の竹林の場合は、確かに無尽蔵の資源と言うには少し大袈裟な部分もあるけれど、それにしても竹箸の材料なら何とかなる。
竹割箸のように大量生産していく場合には、実は加工機械が肝心だ。竹は木材のように角材にして均一化できるものではない、一本一本の竹の太さ、形、性質が異なり、高さの違う節が付いている事も仕事を複雑にさせるから、機械を巧みに操る事のできる職人技も絶対に必要となる。再び販売を復活させたい国産竹割箸、竹林→竹材→加工→製造→販売→お客様まで、まるで細い糸のような繋がりだけれど明るい兆しと希望を感じている。
わらいずみを知る方は案外少ないのではないかと思っている。飯櫃入れとも言う事があるので、そう聞くと一体何に使うのかさえ分からなかった人でも、おぼろげに用途は想像がつくのではないだろうか。昔は今のように保温機能の付いた炊飯ジャーなど無かったので、炊いたご飯を保温するための道具が必要だった。そこで、熱を逃がしにくい藁を編み込んで作る、わらいずみが活躍していたのだ。
小さい頃に親戚の農家に行くと、囲炉裏端に煤のついたわらいずみが置かれていたのを良く覚えている。思い起せば小さい頃には、近所の田んぼにには稲刈りした後の藁を田んぼに干していたり、積み重ねたわらぐろが普通にあった。本当に身近な素材だったから、様々な生活道具に使わていた。自分の場合はあまりに普通すぎで見逃してがちだけれど、縄の素材が藁だった、これは現在でも竹皮草履の鼻緒の芯としても使われている。
さて、この藁をわらいずみ等の生活道具に活用する場合、まず柔らかくして使いやすくする必要がある。この藁打ち木槌は、そのための物で藁をまんべんなくトントン叩いてソフトにしなやかにしていく。竹皮草履の場合には専用の藁打ち機械があるので、関心のある方は動画でご覧ください。
実は竹はイネ科なので、藁とは親戚のようなものだ。美しい竹細工には良質の竹材が必要不可欠だけど、同じようにわらいずみにも適した藁素材が必要で、職人は山間部の田で育ったもの、海沿いのものなど色々使い比べて今に至っていると言う。
完成まではまだまだ日数を要する、わらいずみの製作の様子をYouTube動画でご覧いただけるようにした。地道な手仕事を是非ご覧ください。そして、今度お鮨屋さんに行かれる事があったなら、カウンター越しに大将の手元に注目してみてください、きっとこのわらいずみが置かれています。
竹弁当箱は種類も多く、好きな方なら手にとって見るだけでも楽しくなるに違いない。弁当男子という言葉を覚えておられるだろうか?そんなに昔の事とも思っていなかったけれど、話題になったのは2008年末だそうなので、もう随分と前になる。その頃は、竹に限らず弁当箱も色々とあって専門店が出来たニュースを見たような記憶もある。
さて、ずっと定番で作り続けられている白竹ランチボックスは、ガッチリした作りで若干サイズが大きめとなる。そこで一般的な長方形の形だけでなく、正方形のタイプも女性向けに人気となっている。
イタヤカエデの樹皮を使う、イタヤ細工の職人さんの仕事を拝見した事がある。南北に長い日本は、地域によって身近に手に入る自然素材が異なるので、それを本当に上手に活かしてきたと思う。イタヤの質感も独特だが、編み方は竹材と同じで面白い。
コロナ禍によって、会社や学校に通う事が常識ではなくなり、もしかしたら弁当箱への需要は一時的に減少したのかも知れないけれど、屋外の行楽やアウトドアで再び注目されている。120年に一度の竹の開花で竹林が枯れてしまい少なくなっているスズ竹素材でも、小さな弁当箱は比較的に作りやすいので四角い形の物も少しづつ編まれている。
飾り竹炭とは、竹炭の浄水、消臭や調湿などの機能性だけでなく、インテリアにも活用して頂けるようにと思い考えてネーミングしている。竹炭と備長炭などの木炭の大きな違いはその形状にある、木炭の原料であるウバメガシなどの木材と違って竹はご存知のように中が空洞になっている。だから通常の竹炭は、効率良く竹炭に焼き上げるために、大きな孟宗竹を割って平らな状態にしてから窯入れする。
ところが、飾り竹炭は虎竹を厳選して選り分けた色づきの良くない丸竹をそのまま焼き上げている。丸竹を高温で硬く焼いているのでインテリアとしても使えるようになり、平らな竹炭とは一線を画した炭製品となった。
ただ、丸竹だけにサイズにはバラつきがある。今回のように細めの竹炭ばかりの場合もあるし、少し太めの事だってある。更に中が空洞の炭だから、いくら硬めに焼いてるとは言えガラスのように繊細で割れやすい。
長い竹炭もあれば、短い竹炭も入っています。お取り扱いの中で割れてしまったりするかも知れません。そんなマイナス面も知っていただきながら、竹虎のウェブサイトを見て共感していただける方は、是非お試しください。
真竹で編まれた大きな籠がある、近年このような六ツ目編みの籠は運動会で使う玉入れ籠の他にはあまり見かける事もないが、これは玉入れ籠にしては少し大きすぎるようだ。本当に稀にだけれども、背負い籠用としても、このようなサイズの六ツ目籠を作る事もあった、落ち葉籠として使われているのだ。
久しぶりの籠は玉入れ籠でも、背負い籠でもなく鶏籠と呼ばれるものだ。メジロやウグイスなど小鳥を飼っていた頃の鳥籠は、地元では「コバン」とも呼ばれて細い丸竹ヒゴで四角い形に製作されていた。これは同じ鳥でも、地鶏など大型の鶏用に丈夫に作られている。
都会に暮らす皆様でも、テレビなどで農家の庭先で鶏を遊ばせる光景をご覧になられた事があるかと思う。田舎でも今では放し飼いは少なくなりはしたものの、鶏が自由に歩き回りアチコチつついて何やら食べている様は見ていて楽しいし、鶏自身の健康にも良いのだ。
昔と違い、そもそも小さな籠ばかりなので、人でも十分に入る事のできるくらいの大きな籠は、それだけでテンションが上がる。
竹の構造は、とても面白くて稈の中が空洞になっている、それなのに強いのは適当な位置に節があるからだ。そして更に身の部分にも秘密があって、地中から水分や養分を運ぶ維管束(いかんそく)という管が縦にのびているが、その密度は竹表皮に近い高い。つまり竹の外側に近いほど繊維が密集していて強いという事だ。
だから竹細工の場合には、たとえば青物細工のように青竹の表皮をそのまま活かして竹籠を作っていく。ただ、そんな青竹細工の中には、竹表皮部分を薄く剥いで編む籠があり、竹表皮をできるだけ薄く削る工程を「磨き」と呼ぶ。
木工所に行くと角材を削った後の鉋屑が沢山落ちていたりするけれど、磨きの仕事をした後には、ちょうど同じような竹の表皮屑が沢山出来あがっている。
磨きをかけると竹表皮のキズやシミが無くなり、均一感のある更に美しい竹籠を編むことができる。また、磨きの経年変色は進化が早いので、お使いの頻度にもよるが数年経てば結構な深みのある色合いになっている籠がある。
磨きの細工で作る四ツ目編みの衣装籠を製作する事になった。この籠は、今では少し考えられないけれど当時は三個組で製造するほど需要もあり製造力もあった。しかし、需要の低下と共に竹表皮を削る工程だけでも手間と時間がかかってしまう磨きの細工は敬遠されている。このサイズの大型の角籠だと、意外に思われるほど長い竹材を準備せねばならず、職人の労力たるや凄いものがある。
台風6号が過ぎ去った、近く国道で土砂崩れがあり通行止め等はあったものの、虎竹の里はお陰様でこれと言った被害もなかった、本当に感謝の気持ちだ。しかし、台風銀座の高知に育ち、大雨には慣れているつもりでも先日の強い雨音には早朝から目が覚めるほどの激しさだった。
小さい頃には聞いた覚えすらない線状降水帯と言う言葉を、近頃のニュースでは頻繁に耳にする。温暖化で台風のサイズは大きくなり、それに伴い降水量も多く、長時間続く傾向になっているので災害への整備が進み、詳しい情報をリアルタイムに知る事のできる現代でさえ、恐ろしく感じる。
「線状降水帯に強い味方!大雨から川岸を護る蓬莱竹(ホウライチク)と火縄銃の意外な関係!?」では防災竹林としての蓬莱竹を詳しく紹介している。バンブー系で株立ちのため、竹根が隣接する農地に伸びていかない事も多用された理由のひとつだ。
それにしても、土木技術も発達しておらず治水が脆弱だったその昔、土地に暮らす人々はどれだけ不安だったかと思う。人が護岸用に植えた竹を大切にし、竹を頼りにしてきたのは当然だ。株立ちの根をしっかりと張った蓬莱竹を、今とは比べものにならない程たくましく感じていたに違いない。「土地の守り神」なんて言うと大袈裟だろうか?いやいや、ほんの数十メートル先さえ煙って見えない激しい豪雨の中では、守り神そのものだと、つくづく思う。
「巨大な蓬莱竹が土地の守り神!大自然の猛威から防災百年!」で、蓬莱竹の生命力をご覧ください。自然の猛威には、自然の力で対抗してきた先人の知恵に脱帽する。今回は、すぐ後に台風7号も近づいる、まだまだ警戒は緩める事はできない。
高知のような田舎で生まれて、自然を身近に感じながら育った皆さんでさえ、竹の事となると実は全く知らなかったりする。ご縁があって竹虎の社員となり、ここで初めて竹に触れ、竹を知り、親しみを感じながら働く内にいつの間にか愛用者となる。今日、手にしているのは、まるでお揃いのようにして使っているスズ竹市場籠だ。車通勤にせよ、近くから徒歩でやって来るにせよ、こうして竹の手提げ籠バッグを持って来てくれるのは、やはり嬉しい。
しかし、竹のヘビーユーザーになっていくのは何も竹虎だからというワケではない。元々、日本人のDNAに竹が刻み込まれているからなのだ、日本の皆様は竹を知らないのではなく、竹を忘れているだけなのだ。現在、120年ぶりと言う開花があって、スズ竹は少なくなっているけれど、また緑の竹林が蘇る日がきっと来る。
昭和のお母さん方が、毎日のお買い物に提げていったような光景は戻らないかも知れないけれど、同じ形で復刻した虎竹買い物籠も、いづれもっともっと見直される日がくるに違いない。なぜって、自分がこれだけ愛用して、楽しく本当に使いやすいと実感しているからだ。
前にもこのお客様から頂いたおハガキを掲載させてもらった事がある。まるでプロの漫画家のようなイラストに「五徳を取り付けて畑で毎日使っています、すばらしいです」と書かれているが、もちろん自分たちからすれば、お仕事にご愛用されるお客様こそ最高だ!素晴らしい!
日本では、このような自然素材で作られた笠は色々とある。しかし、この浪人笠は稲わらを使い編まれた国産だが、竹編みの笠などの多くは海外で作られたものばかりだ。日頃、竹虎本社前の国道で見かける、お遍路の方々の被るものは、もちろんそうだし、道具にこだわりのありそうな釣り人の皆様もそうだった。明らかに輸入の笠を、日本製と思い込んでいる若い職人には閉口したが、本物を見た事がないから仕方ないのだろうか?
さて、そこで、どこを見渡しても輸入品ばかりの竹編み網代笠を、日本の真竹を使い、日本の伝統の技で復活させたいと思っている。実は、結構長い道のりだった。細かい竹ヒゴを使い円錐形に編み込む技術は国内に残っているので、まだまだ可能だと考えていたものの、ひとつ問題をクリアすれば、すぐに違う山が目の前に現れる。その繰り返しで、一つの網代笠だけが手元に残って、くすぶっていた所に救世主が登場したのだ(笑)。
もう少しお待ちください、日本の皆様が忘れている本物の網代編み竹笠をご覧頂けます。
この目にも鮮やかな色合いの大きな籠は、メゴ笹特大皿鉢籠だ。竹や笹は国内だけでも600種類もあり、竹職人でも見分けがつかないものがあったり、呼び名が違っていたり、結構カオスなのだが、メゴ笹の呼び名も全国にオカメ笹や神楽笹をはじめとして、イッサイザサ、イナリザサ、イヨザサ、オサンダケ、カンノンザサ、チクサクザサ、ソロバンザサと様々だ。実は、それくらい日本各地にあって籠にも多用されてきた素材だと言うことだと思う。
このように密集して生えるから、護岸用として植えられる事があったし、変わった所では戦国時代のお城や砦の守りとして活用されたと伝えられる竹でもある。
こちらのYouTube動画「蘇る戦国時代?!幻のメゴ笹で城郭防衛とは?」では、そんなメゴ笹の事をお話しているので、お時間あればご覧ください。
さて、そんなメゴ笹を使った籠も今では見かける事はほとんどない。素材は身近にあるものの、一時は幻の籠だったほどの扱いの大変さや、先人から見よう見まねも含めて継承されてきた技が急速に失われてきた事が理由だ。
青々とした色合いは、素材の乾燥と共に思うより早く消えていき落ち着いた風合いになってくる。編み込みも硬く締まってくるのがメゴ笹の特徴のひとつである。
経年変色を、あまり良く思っていない人がいるが、それは逆だ。経年変色は成長であり、進化だ。メゴ笹は、このくらいの感じになってきてからが本番だと知ってもらいたい。
竹箸はじめ、竹スプーン、竹フォーク、竹ナイフなどのカトラリー類までも無塗装で仕上げて欲しいと言うご要望を頂戴する事がある。自然志向の方には、せっかく環境に優しい天然の竹を使用しているのに、ウレタン塗装などしてしまうともったいないと感じられるようだ。しかし、竹虎にある竹箸、竹カトラリーは全て国産だから、防虫剤や防カビ剤など一切使用せずに製作している。従って、竹素地のままだと実は管理が非常に難しい。
お客様がご家庭で使用される場合にも、無塗装だと竹繊維に食材や調味料の色が染みこむ事もある。何より竹の場合はカビが心配だ。季節によっては加工している間にもカビが生えてダメになる半製品が、それこそ山のようにあるくらい、竹はデリケートな素材だと知っておいてもらいたい。
ただ、やはり過敏症の方で、どうしても無塗装でないとお使いいただけない方もおられる。そのような場合には無塗装よりは、漆仕上げをオススメしている。白っぽく見えるウレタン塗装した通常の竹カトラリーに比べ、ウレタン加工する前の素地に漆を塗布したものはコゲ茶色の渋い色合いになる。塗っては乾かし、塗っては乾かしと言う工程を4回も繰り返すが、この季節は湿度が高く比較的仕上がりは早いので、お客様には喜んで頂けそうだ。
郵政省は、昭和24年(1949)に逓信省を改編して設置されたそうだから、この山葡萄のバッグはもしかしたら、まだ逓信省と呼ばれていた頃に使われていた物かも知れない。それくらい昔の郵便配達員の方が使われていたと言う山葡萄が残されている。封筒やハガキなどは、今以上に大切な通信手段であり、配達員の皆さんにとっては連日大変なお仕事だったのではないかと思う。責任の重い激務の中で使う鞄は、それこそ丈夫さが何より求められていただろう。
山葡萄の手提げ籠バッグは、今では海外で沢山製造される程人気となり、様々な技巧を競うような籠も多々見かけられるようになった。しかし、元々は東北の農作業や山仕事用として編まれた生活道具だ。その堅牢さは、竹をはるかに凌ぐほどだが、更にこのバッグには分厚い板の補強が入れられているから驚く。
このリベット留めはどうだろうか?強靭な山葡萄に金属を使うなど初めて見た。ギッシリと詰め込んだ郵便物を、肩に掛けた紐を食い込ませながら走っていく様子が凄い迫力で伝わってきた。
まさに黒革のような色艶、質感、見た目どおり触った感触も、堅牢な革そのもののようだ。こんな山葡萄を見せられると、自分が20年や30年愛用している山葡萄手提げ籠やセカンドバッグなど、まだまだヒヨッコだと思うのだ。
これは、初めての方などには少し分かりづらいかも知れないが、伝統的に製作されてきた箕の肩の部分である。根曲竹に籐が使われた箕で、実は製作が難しく伝承する職人もほとんどいないので、現在では全く見られなくなった竹細工のひとつだ。バランスよく編まれた形から、かなりの熟練の職人が作られたものだと分かる。土佐箕の職人は、箕だけでなく色々な竹籠や竹ざるも編んでいたけれど、この箕は専門でされていたのではないか?いや少なくとも、箕が一番得意だった職人さんだと思う。それくらい綺麗な出来栄えだ。
しかし、よくよく近づいて見て驚いた。何と縦ヒゴに使われているのは、荷造りなどに用いられているPPバンドではないか!確かに、PPバンドを使ったクラフトなどもあるようだが、この箕は職人として長い時間を経ないと習得できる技術ではない。どうして、これだけの仕事に、不釣り合いなビニール素材を使ってしまったのか不思議だ。
そこで、ここからは自分の推測だ。この伝統の箕には、元々この桜箕のように桜皮や蓬莱竹、ビワの木、カズラなど山の自然素材が使い分けられていたはずだ。それぞれ山に自生している、植物の特性を知り尽くした上で、最高の取り合わせで編まれ続けてきた逸品なのだ。
ところが、それだけに複数の天然素材を、山に分け入り集めてくるのが大変な労力となる。蓬莱竹などに伐採の時期があるように、桜皮やカズラなどにも採っていい旬というものがあるから、人の都合に合わせる訳にはいかない。良質の素材を見極める眼力も必要で、職人の高齢化と共に箕の材料が手に入らなくなってくるのだ。
実際、土佐箕の場合でも竹の他にシュロ皮を使うのだが、近所の里山に多く生えているシュロの木一本でも結構苦労があった。PPバンドの箕を編まれた方も、腕は良いものの、これら多種多様な自然素材が手元になくて(今回の場合だと桜皮)、仕方なく代用品として使ったのではないだろうか?この箕が、自分に語りかけてくるものは少なくない。
どこにでもあそうな菊底編みの普通の竹製、虎竹ロングゴミ箱には、同じ30センチ直径で高さが、それぞれ60センチ、45センチ、30センチの三種類がある。竹籠と言えば、誰もが思い浮かぶようなオーソドックスな編み方と、筒型の形状ではあるものの、実際探してみると意外と見当たらない。国産で、しかも虎竹となれば皆無と言っていい。
小さい頃には、仕事場でも、ご家庭でも何処ででも見られた竹籠だから、虎竹だけでなく白竹でも同じようにご用意する事にしている。竹細工は竹林が見直す時代になっているから、もしかしたら手軽なものではなくなっているかも知れない。しかし、日本人にとって竹は遠い存在では決してない、毎日の普通の暮らしの中で人と共にあるべきものだと思っている。
凄い竹箒である。職人たちの口コミで広がる山里の逸品。握った感触がイイと思ったら、柄は乾燥するほどに硬く丈夫になるゴサンチクだ。何と言っても孟宗の枝が秀逸、優しいのにヘタらない掃き心地は、恐らく一枝づつ厳選しているからに違いない。
孟宗竹は、来月あたりから旬が良くなるので枝は確保できそうだけれど、ゴサンチクの方は少し遅れて伐採できるのは、やはり秋口になろうか。兎に角、新しい箒が出来あがるのが待ち遠しい!
この竹枝のしつらえが素晴らしい。いずれ詳しく皆様にご覧いただきたいと思っている。
これほど箒に感動したのは、孟宗竹の新竹の小枝だけを使って京都の庭師さんが手作りされていた手箒以来だ。あれは、驚くほどのこだわりだったが、この山里の竹箒も田舎といえど負けてはいない。
ちなみに、ゴサンチクは布袋竹とも言われて、竹節の詰んだ部分が釣り竿の持ち手や、お遍路さんの杖にも多用されている竹。雨の多い高知では河川の護岸用としても植えられてきたので川岸で良く見かける。大きく立派な竹でもないから、何気に通り過ぎてしまう事が多いかも知れないけれど、人の命と財産を守ってきた竹でもある。
また、もうすぐ徳島ではじまる阿波踊りの竹人形に素材として使われている。竹の節を巧みに活かしてイキイキと作られる人形を見ていると、にぎやかな音まで聞こえてきそう、まさに竹が楽しそうに踊っている、笑っている。いつも思うが、創作された方は天才だ。
竹は一本で立っている植物ではなく、地下茎でそれぞれの竹同士が縦横無尽に繋がり竹林を形成している。だから強い、地滑りも起こりにくく、「地震の時には竹林に逃げろ」と言われる由縁である。そんな強靭な竹根を使ったステッキは、節が短く詰んでいて見るからに丈夫そうに思えないだろうか?実は本当に耐久性が高いのだが、さすがに竹だけあって、しなりがあるから体重をのせた時の、スッと身体を支えてくれるような優しさは単なる棒とは全く異なる。
かの有名な、世界的喜劇俳優チャップリンの愛用する竹根ステッキも日本製だった。まるで飾りかと感じてしまうような、かなり細身のステッキを持っていたが、あの杖も曲がる事はあっても折れたりはしない。
ところで、竹根、竹根と話しているけれど、竹林ではどんな風に見つけられるかと言うと地中だけでなくて、このように地上に出ていたり、切り立った地面から突き抜けて伸びていたりする。
今でも皆さんの周りで普通に見られるのは、このような小さな竹根印鑑だろう。細いものは海外からのモノを中心にあるのだが、やはりステッキ用にできるような大きな竹根は見当たらない。
試しに昨日の30年ブログでもご紹介した、虎竹八ツ目編み傘立てに入れてみると、なかなか格好がよい(笑)。
数本ある竹根ステッキだけれど、実は一番気に入っているのは一本だけしかない根曲竹で作られた竹ステッキだ。普通は使う機会の少ない根曲竹を、わざわざ持ってきて杖に加工しようとした事があるが、全く上手くできない。持ち手の曲げの部分が、国内最高レベルの熟練職人でもお手上げだと言うので、これは今後の大きな課題として残ったままなのである。
八ツ目編みで仕上げた虎竹傘立てが新しく登場した。残念ながら、梅雨には間に合わず、ジリジリと照り付ける青空の下での新発売ではあるけれど、さすがにこれだけの大作になるとアイデアはあっても完成には時間がかかるものなのだ。
虎竹フロアライトをお求めになられたお客様から、同じ形と編み方で傘立てのご用命をいただいたのだが、実はそれまでもヤタラ編みの傘立ては年間十数個は製作させてもらっていた。
新しい傘立ては、直径が約30センチあるから一般のご家庭では少し大きすぎるサイズだ。コロナ後、飲食や観光に人が戻ってきている飲食店、旅館やホテル様でお使いいただけるように、最大約25本の傘を収納できる黒の艶消し塗装したスチール製の傘立てを入れている。
なかなか格好の良い傘立てだが、普通のご家庭用には大きすぎる。今度の雨までには、もう少し小振りなタイプも考えてみたくなる。