野冊をご存知だろうか?野冊は「やさつ」と読むが、自分も含めて普通の方々には使い方はおろか、まず読み方も分からないと思う。野山に植物採集に出かけた際に、草花を持ち帰るために使う道具だと知ったのは、竹で作られるこの野冊を復刻できないかと依頼を頂いた時だった。
初めてだったその時には、本当に何も分からなかったので、実際にお使いになられている現品をお預かりして全く同じに製作させて頂いた。出来あがった野冊を手にしてみて、軽くて通気性の良い竹は、このような道具にまでなるのだと感心したものだった。
調べてみたら最初製作したのが2007年の事だから、あれからもう16年も経ったのだ。今回改めてNHK朝ドラ「らんまん」で全国的に注目され、来場者も多くなっている牧野植物園さんから野冊の製作を頂戴した。竹虎が作るなら牧野富太郎博士に命名いただき、昨年末には二回目の移植をさせてもらった土佐虎斑竹を使うしかない。
虎竹を移植するなど、70年ぶりだと話す山の職人が厳選した竹を掘り起こし牧野植物園に移植するまでの2日間を密着してYouTube動画にしている。
牧野博士も野山には野冊を携帯されたそうだが、もちろん当時は虎竹野冊などはない。
博士がご覧になられたら、この色合いをどう言われるだろうか?使っていただきたかったなあ。
実際に持ってみたらこんな感じになる。採取した植物をそのまま挟むのではなく、吸水性のある新聞紙などを使うそうだ。野冊はアルミ製やプラスチック、樹脂製などもあるようだけれど、植物を志す者が手にするのは竹しかないと思う。
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