竹の事になると居ても立ってもいられない、何とか日程をやり繰りして熊本県にある問題の竹林にやって来た。ご案内いただく職人さんに続いて歩きながら何カ所かの山々を回るけれど、遠くからは別段変わった風には見えない。少し元気のない普通の真竹の竹林である。短い期間に数百束もの竹を伐採すると聞いて、どのようにされているのか?不思議にも感じていたが、虎竹の里のように急峻な山道を登る必要もなく、このような平坦で道路脇の竹林は仕事もはかどりそうで恵まれている。
おっと、しかし、やはり此処にもイノシシが身体を擦り付けた跡が残れさている。ただ、このような竹は虎竹の竹林でも沢山見られるので、イノシシが今回の虫害と直接関係があるとは少し考えにくい。
竹伐採をされてきた山の職人さんが、分かりやすいように赤いマジックで印を付けてくれている。しかし、辺りを見回して少しギョッとする、マークをしてくれるまでもなく、横にも、その隣にも、ここにも、あそこにも同じような小さな穴が開けられた竹ばかりなのだ。
中には、このように二つも穴の開いている竹もある、まさかこれほどまでとは...予想以上の虫害である。
去年、今年あたりから急に被害が大きくなったと話されているけれど、立ち枯れしてゴマ竹になった竹にも同じ穴が見られるので前々から虫の被害は少しづつあったようだ。虫害の急拡大には何か理由があるのだろうか。
数年前に竹の講演で招待いただき、色々と見学に訪れさせてもらったブラジルやメキシコの竹林で見たような大きな虫の穴ではないものの、結構大きな穴を見つけた。これは又別の虫のによるもののように思う。
穴の開いた竹を割ってみると黒ずんでいたり、粉をふいていたりと竹細工や加工ができるような竹材ではなくなっている。園芸やその他資材用に使うにしても、このような穴が沢山開いた竹では販売が難しい。
タケノコムシ(ハジマクチバ)と言う蛾の幼虫が筍の時に入ってこのような穴を開けているのではないかと今のところ考えている。竹の節間に等間隔に明けられた穴は、筍の時に虫が食い破って貫いたものではないかと思うからだ。
しかし、どうもそれだけでは納得できない所もあり、伸び出していた筍を許可をいただいて何本か折って皮を剥いでみたりして痕跡を探してみたが見つけられなかった。
真竹だけでなく、淡竹の竹林で同じような状態だった。
今や当たり前のようになったテング巣病が、竹林でもいたる所に見られている。健康でない竹の抵抗力の低下が、ひとつの大きな要因となっている事は間違いないと思っている。
真竹、淡竹、そして孟宗竹のウラ(先端)の柔らかい部分が食害にあっているとの事だったが、今回はじめて女竹でも全く同じ症状の竹が見つけられた。これには山の職人さんたちも一様に驚かれていたが、竹なら種類を問わず食害に合うという事を頭に入れておかねばならない。竹籠や竹ざるには籐を使う場合があるけれど、竹を食する虫はこの籐にも同じような穴を開けてしまう、つくづく竹には愛情をもって良く見ておかねばならないと思う。
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