片口ざると呼ぶ竹細工は、最近ではめっきり珍しくなった。そもそも普通の丸い竹ざる自体でも、国産のモノは少なくなって、一般の方々の中には馴染がなくなっているのかも知れない。そんな中で、片口ざるは馬蹄型をしており片方には口が付いているから米研ぎザルとしても、他の穀物に使うとしても他の容器に移しやすい作りになっている。このような平口ざるもレアな竹細工のひとつだ。
大きな産地があって大量に作られていた片口当縁米揚げざるなどを見ると、当時の日本の人の暮らしでこの様な竹細工がどれだけ重宝されてきたかを知る事ができる。片口ざるの口部分には、横ヒゴが外れないようにL字型の竹栓が留めに差し込まれている。これがスズ竹や根曲竹のように、細く柔らかい素材だと片口部分は縁巻のように仕上げられていて面白い。
古い職人と新しい職人のものを並べてみたが、どちらも腕の良さが伝わる美しい編み込みだ。独特の片口の形がイダ(ウグイ)あるいは高知ではハヤと言う、どこにでもいる川魚の口の形に似ているからイダグチとも聞く。大量生産されていた片口とは違って竹栓には節が付けられ、それが全体の雰囲気を盛り上げている。
縁起が良い馬蹄型の竹細工でも、片口ざるに比べると大型になるカズラ箕。四万十川流域の山々のカズラで縁巻した実用的な逸品、つい最近まで年間数千枚、数百枚という単位で作られていたと信じられるだろうか?大量生産を極めた竹編みならではの、たたずまいがある。
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