モロコシ手箒は、台所やリビングだけでなく仕事用デスクなどでも、ちょっとした掃除に重宝する。キーボードの掃除に使われ方も多いのではないかと思うので、前々から高知特産黒竹を柄にしたタイプが欲しいと思っていた。
職人さんとお話しする機会があったのでお話ししているうちに軒下に積まれているススキの穂が目についた。手箒の素材はモロコシ草だけではない、全国各地には様々な自然素材を使った箒があるが何とススキも箒になるのだ。
そこで、ひとつススキ手箒の作り方を手ほどきいただく事になった。一度試してみる事は大切だ、構造がよく理解できる。
最初は慣れない手箒作りも、パターンを覚えて出来るようになってくると楽しい。やはり手仕事はいいモノです。
一年前から約束していた竹筆職人さんが来社されていた。竹で筆ができるのか?と驚く方もおられるかも知れないが、竹の繊維の細さを活かして実は昔から筆として使われてきた。色々な竹で作られてきたのだが、竹筆には細かく竹を割って製作される茶筅にも使われている淡竹が適材だ。淡竹は前に淡竹の生垣でもご紹介したように、維管束と呼ばれる竹の養分を吸い上げる細かい管の密度が高い。だから同じ淡竹の仲間である虎竹も、細い筆先を作るのに適している。
命名筆としても多用されてきたのは、竹の神秘的な成長力にあやかり子供の健康を祈ったものだ。竹筆作家の釈迦院時雄氏から受け継いだお弟子さんの竹筆を楽しみに待っている。
今日の話題は竹串、日頃何気に焼き鳥やおでんを食べたり、おやつには団子を頬張る事もあるのではないかと思うけれど、その手には竹串を持たれている。恐らく日本に暮らす皆様で竹串のお世話になっていない方などいないのではないか?しかし、その多くは、いやほとんどは日本国内で製造された物ではなく海外からの輸入品だ。
竹串と一口に言っても丸串や角串、平串の他に鉄砲串や松葉串、のし串、田楽串等がある。長さや太さ形も色々あるし食材によっても実は多種多様な串があるから実は国産だけでは到底まかないきれない。中国をはじめ東南アジアには豊富な竹材があり、優れた加工機械と職人がいて日本の細かい需要に見事に対応している。
価格でも、製造量でも太刀打ちできない日本のメーカーが次々と撤退した中で、今頃になって日本の竹を使った串を求める声が聞こえてくるようになった。理由はいくつかあるようだが品質へのこだわりが一番多い、少し遅すぎる感があるが、それでも国内の竹に目を向けてくれる方だとついつい嬉しくなり何とかできないかと思ってしまう。
無印良品なら180本入りで99円で売っている竹楊枝を、20倍以上の値段で製造しようとしているイカレた自分みたいな人間でないと、恐らく話も聞かないのではないか。竹表皮を串の先端まで残した、断面が三角の形をした別注竹串は手削りで仕上げている。食材の部位によって、丸串が適している所と、この三角串が良い所があって、二種類の竹串を使い分けると言う。
竹材から確保が大変になってきた時代だ、簡単そうに見えて難しく苦労の割に全く報われない仕事を引き受けているのは、国産竹串を使いたいという変わり者の先様に心を動かされたのと、やはり面白いからだ。試作を重ねて二度、三度、せっかくここまで来たのだから日の目を見せたいが、限界点もある。輸入竹串ばかりの中で、「国産ここにあり」の気概だけで数カ月取り組んだ結果が出る日は近い。
素足に下駄が良い季節になってきた。コロナ禍で中止になったり、規模を縮小したりしていた夏祭りも今年あたりからようやく全面的に再開されると皆さん心待ちされているのでないだろうか。やはり、日本の夏は浴衣に下駄で夕涼みしたいものだ、そこで竹虎も天然藍染鼻緒を新調して国産磨き桐下駄をリニューアルした。
そもそも天然藍染を鼻緒に使うようになったのは、もう十数年前にもなるのだがお隣の徳島県藍住町で十九代目という藍師の方との出会いからだった。ずっとこの地で藍生産を続けて来られているが「色素の質が違う」と言われて白花小上粉(シロバナコジョウコ)という品種にこだわっておられた。藍染は知っているが、実際にどのように作られているのか初めて見せていただき衝撃を受けたのだ。
しかも、その藍染の歴史には、この30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」に護岸用の真竹の話題で、何度か登場する吉野川が深く関わっていると知って更に興味が沸いたのだ。藍農家さんから、染め師の技までは藍染下駄のページに詳しく掲載しているので是非ご覧ください。
こだわりの天然藍染鼻緒を取り付けた国産桐下駄の履き心地の良さのひとつは、この曲線にある。
そして、桐材を一度焼いてから磨き上げる技法によって足入れが非常にスムーズなのだ。
藍染の作務衣には当然良く似合っている。
桐材は軽さと柔らかさ、そして適度に湿気を吸う事から下駄としても適材で昔から多用されている。鼻緒の履物が慣れない方も、太めの鼻緒だから歩きやすいと思う。鼻緒の生地にここまで思いを入れなくてもと思われるかも知れないが、あの歴史ある藍農家さんの生産現場を拝見すると、こうなってしまう。
世界に約1300種もあると言われる竹だが、そのうちの半分近くの600種類がこの狭い日本に成育している。この国が、いかに豊かで美しい自然に囲まれているかを象徴的に表していると思う。さて、そんな多品種の竹笹がある中で主に竹細工や竹製品として活用されているのは、孟宗竹、真竹、淡竹のわずか3種類しかない。だから一般的に皆様が竹と呼ぶ場合にはこの3種類の内のどれかを指して言っている。
しかし、このわずか3種類の竹が生える竹林には、それぞれの事情により見た目や性質が異なっている。ひとつは筍を採取するために、手入れされ陽当たりが良いように伐採、管理された畑と呼びたいような竹林。また、本格的な畑とまで行かずとも、里山にあって家庭菜園のようにおじいちゃんが一人でコツコツと世話をしているような竹林もある。その他、庭園や観光地には観賞用として見せるための竹林があり、見栄えが良いように間引きされ多くの人の目を楽しませている。
そんな一方で、成育の早い竹が完全に放置されて荒れ放題になっている竹林がある。立ち枯れてしまったり、風で倒された竹が斜めに交錯して、もはや竹林本来の縦のスッキリたラインは見られない。日中でも薄暗いほど鬱蒼と茂り人の立ち入りを拒んでいるかのような竹林、このような竹林を竹藪と言う。そして、そんな悪い景観の竹を、何とか間引いて風通しの良い美林にしたいと手入れをされている竹林なんかもある。
ところが本日ご覧いただいている竹林は、これらのどれでもない。筍を採るためでもなく、見せるためでもなく、景観のためでもない、人の暮らしに役立つ製品のための孟宗竹たちだ。景観を維持するための竹林のように、伐り倒した竹の使い道に困ったりする事はもちろんない。竹製品に加工するために伐採して、運ばれていく竹は姿形を変えて全て生活シーンで生きている。だから、ここの竹林では竹たちも笑っている。
そうそう、30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」をご覧いただく皆様なら、簡単な竹の見分け方くらいは是非知っておいていただけると嬉しい。このYouTube動画を見ると、誰かに教えたくなる竹の見分け方が分かります(笑)。
かなり大きめの魚籠だから鰻が一体何匹入れられるだろうか?真竹を磨いて編まれた美しい籠は飾りではない、最後の清流として知られる四万十川や、近年仁淀ブルーとして全国的に有名になりアニメ映画「竜とそばかすの姫」の舞台となった仁淀川などの鰻漁に使われる本物の竹の道具だ。
この鰻魚籠にはモデルがある。赤茶色になるほど数十年使ってきた籠の口部分が壊れてしまい、部分的に修復させてもらった事がある魚籠なのだ。手直しした編み込みは色が違うのですぐお分かりいただけると思う。
修理した魚籠はさっそく何処かの河川でお使いいただいてると思うが、この機会にもうひとつ同じ籠を新調されたいとのご要望で今回の復刻となった。
特徴的なのは底部分、中央を内側に引っ込める形で四隅が地面に着くように作られている。しっかりした力竹が入ってはいるものの必然的に角が傷みやすいのでサビに強い銅線を巻いて補強されている。
鰻は筌で捕る事が多かったが、これは罠を仕掛け置いておく言わば待ちの漁。それに対してヒゴ釣りと言うのがあって、これは鰻が隠れていそうな岩の下や穴に針の付いたヒゴを差し込む攻めの漁だった。ヒゴ釣りならではのエキサイティングさがあったけれど、今思い返せば子供の頃使っていたヒゴは竹ではなかった。それが時を経て、また竹が見直されているようだから面白い。
竹の仕事をしているので、この季節は筍を頂いて食する事が多いが、やはり京都の筍は一味違う。今年も有難いことに京都から美味しい筍が届いたので、早々に山岸家定番の筍と豚肉の煮物にしてもらった。以前は大きな鍋で作って一週間こればかりと言う事もあって、最後に煮詰まったところで卵とじにして丼にするのが常だった。
さて、同じように春の味覚として親しまれているイタドリはご存じだろうか?漢字では「虎杖」と書くけれど、季節に山里を歩けば土手や道端など何処にでも生えている山菜だ。子供の頃は野山で遊びまわっていた、喉が乾けばイタドリの皮をむいてそのまま食していたのが懐かしい。しかし、これが炒め物や煮物にすると格別なのだ。実は高知県でしか食されておらず誰も食べ物とは知らないので、春先の県外で竹林に入ると職人とこの話題になり大笑いする。
地元ではスーパーにも直販市にも並んでいるし、美味しさを知っている人が取ってしまい一本も生えていない。だから休みの日など、県外まで遠征するお母さん方もいる程なのだ。以前、徳島県の山奥で高知ナンバーの車だからか声をかけられた「イタドリ取に来たん?向こうにようけあるよ」。いやいや竹にしか用はないのでと思ったけれど、虎杖と虎竹は一文字違いだと、その時気づいた(笑)。
水切りに使う竹簾は実に色々なサイズをお求めいただく竹製品だ。惜しい事に、数年前に丸型の簾ができなくなって今ではYouTube動画で懐かしく見るだけになってしまったが、角型のスダレは今でも健在でお使いいただく皆様のご希望をお受けさせて頂いている。
さて、そんな竹簾にお客様から一枚のファックスでお便りを頂戴した。少し長文だけれど、あまりに感動したのでお客様のご承諾を頂いて全文を掲載させて頂く事にした。
竹虎様 FAX 0889-42-3283 令和5年2月4日(土)記入
すだれの注文です。おそば用のすだれを10枚特注でお願いしたいのですが。兄のプレゼントの1枚板の将棋盤のハギの木、正面(横)33cm、たて36cm、厚さ4.5cm(将棋盤は、ヒバ1寸5分)の下に敷くすだれをお願いしたいのです。冬、こたつの上でこの将棋盤を置くと、こたつの熱で、この将棋盤がきしむそうです。大阪の将棋屋さんが、1枚板の将棋盤は下に1枚すだれを置くと良いです。と教えて下さいました。
自宅近くにホームセンターは無いですし、スマホで調べたら、竹虎様のおそば用のすだれが10枚1組以上からお願いできると画面に出てきました。注文して4~5ヶ月はかかると聞いております。スマホにのっていた2021年7月21日の作品のおそばのすだれの様な作りのが良いと思っています。
自宅で一人すごす兄に、将棋なら、一人で本を見ながら練習が出来ると考えました。兄が将棋を気に入れば、いずれ、将棋を一緒にさす相手が欲しくなるかもしれません。兄は現在、●●●●●に住んでいますが、兄がその気になれば行けるように自宅近くの●●●●●に将棋同好会を2ヶ所見つけました。72才の兄に、もっと楽しみを見つけてあげたくて、妹の出しゃばりでは有りますが、この将棋盤の下に敷くすだれも一緒に送ってあげたいのです。将棋をする、しないは兄の自由です。でも、この将棋盤と、竹虎様の特注品のすだれを送ったらきっと兄は喜んでくれると思います。
兄は、私をとても大切にしてくれました。ですから、今度は私が出しゃばらない程度に兄が喜んでくれる事をしたいのです。次の2枚目にすだれの形の絵を書きます。スマホで、皆様の笑顔の写真を拝見しました。何卒宜しくお願い致します。
何よりご高齢になられても妹さんのお兄様を思いやる気持ちが温かい。将棋盤の下に竹簾を敷くなど思いもよらない使い道に、兄妹お二人の人生が重なる。小さく薄っぺらい簾一枚にもお客様の物語がある事を忘れてはいけない。
片口ざると呼ぶ竹細工は、最近ではめっきり珍しくなった。そもそも普通の丸い竹ざる自体でも、国産のモノは少なくなって、一般の方々の中には馴染がなくなっているのかも知れない。そんな中で、片口ざるは馬蹄型をしており片方には口が付いているから米研ぎザルとしても、他の穀物に使うとしても他の容器に移しやすい作りになっている。このような平口ざるもレアな竹細工のひとつだ。
大きな産地があって大量に作られていた片口当縁米揚げざるなどを見ると、当時の日本の人の暮らしでこの様な竹細工がどれだけ重宝されてきたかを知る事ができる。片口ざるの口部分には、横ヒゴが外れないようにL字型の竹栓が留めに差し込まれている。これがスズ竹や根曲竹のように、細く柔らかい素材だと片口部分は縁巻のように仕上げられていて面白い。
古い職人と新しい職人のものを並べてみたが、どちらも腕の良さが伝わる美しい編み込みだ。独特の片口の形がイダ(ウグイ)あるいは高知ではハヤと言う、どこにでもいる川魚の口の形に似ているからイダグチとも聞く。大量生産されていた片口とは違って竹栓には節が付けられ、それが全体の雰囲気を盛り上げている。
縁起が良い馬蹄型の竹細工でも、片口ざるに比べると大型になるカズラ箕。四万十川流域の山々のカズラで縁巻した実用的な逸品、つい最近まで年間数千枚、数百枚という単位で作られていたと信じられるだろうか?大量生産を極めた竹編みならではの、たたずまいがある。
竹の経年変色を言い続けてきて、最近ようやくその魅力に気づき始めた方々がおられて嬉しい。少しづつ認知が広がってきたので、これからもっともっと多くの方に知っていただきたいと思っている。少し前なら真竹をそのまま竹編みにする竹細工は、青いうちでないとお客様に手に取ってもらえないと言う職人もいたが、それは間違っている。
もちろん、青竹細工を「青物」と呼ぶくらいだから新鮮な青さのある美しい色合いは人目を引く。しかし、作り手を離れ人の暮らしの中で使われる道具としての竹編みは、使い手によって育つものでもある。竹表皮を残した本体編みと、表皮を磨いた(剥いだ)口巻部分、上蓋では同じ時間の経過でもこれだけ色合いが異なる。
竹表皮も渋くなってきているけれど磨きの口巻はどうだ、つやつやと飴色に輝いている。
今では作る方のいなくなった竹お玉も、持ち手の竹を割って先の竹ざる部分を編んでいる。同じ竹なのに、このコントラストは感動しないだろうか?
この手の平ざるも小さいサイズなら見かける事もあるけれど、昔は3尺(90センチ)、4尺(120センチ)くらいの大きさも普通にあった。今度久しぶりに大きなサイズが製作できたらと思っているが、網代の編み目に白っぽい模様のように見えている。
これが竹表皮と磨きで織りなす彩なのだ。一本の竹ヒゴの中央部分だけを磨くから、竹皮の残る両側とで面白い模様となる。ここまで極端でなくとも、日常的に使っていた竹ざるでも四ツ目籠でも同じような竹ヒゴあしらいをしていた古老がいた。いつも自然体で、まるでクセのようにヒゴを軽く磨くのが不思議だった。
一度、どうしてそのような手間をかけるのか訊ねてみた事がある、「親父がしよったき(していたから)」と刃物から目を話さず言う。恐らく理由はある、しかし先人へのリスペクトに心が温かくなって黙っていた。
何年も前になるけれど、パリに行った時に案内いただいたお店の竹フローリングを思い出した。竹のフローリング材や壁材は中国などで大量に製造されていて、日本の住宅や商業施設でも広く見られる建材だ。しかし、普通のフローリング材は一定の幅に割った竹材を貼り合わせて作られる集成材なのに対して、ここの床に張り詰められているのは、丸い竹を平たく伸したものだった。
細く割った竹を貼り合わせる集成材も良いが、竹により近い形でそのまま平らに加工すると更に面白味があるものだ。ふとパリの竹フローリングを思い出したのは、虎竹ヒシギ張りの壁面の写真を見たからだ。ヒシギは金槌のような専用の道具でタンタン、タンタンと叩いて竹を細かく割り伸ばしていく、竹虎で袖垣などに沢山使っていた当時は10名近くの内職さんがいて専用の別工場まであった。
しかし、この床材は細く割っているのではなく丸い竹に切れ目を入れて押し開いたような形だ。同じような竹加工を拝見した事があるけれど、熱を加え強い力でプレスして板状にしてるのだと思う。
階段まで竹だから楽しくなる。そう言えば竹フローリング材にはヒールの跡が無数についていたりするが、ここでは見られなかった。足に伝わる感触も硬く心地良かったが、竹で一番強度のある表皮部分を使っているのでキズへの耐久性も高かったのかも知れない。
それにしても幅と高さを揃えられているので節も削られてはいるが、しっかりと竹節がデザインとして残っているから本当に竹が敷き詰められているようだ。つくづく変幻自在の竹と、その魅力は尽きないと思う。
網代編みの竹ざるは、材質の硬い孟宗竹でしっかり編まれているので、直径が60センチという大きなサイズだけれど少しも弱さを感じない。更に、この「ふたえばら」と呼ぶ二重竹ざるは、裏側に補強のための六ツ目編みを入れるから最強なのだ。このような竹素材そのままに編まれる籠やザルを総称して「青物細工」と言う、竹林から伐採した竹をそのまま編んでいくから一年中素材に困る事はないように思われる方がいる。しかし、実は冬場の旬が良い時期にしか竹を伐らなくて、竹材がいつまでも使える訳ではないので今頃が一番心置きなく仕事ができる季節なのだ。
たまにお問合せをいただく、竹ざるの作り方は動画で紹介もしているので、ご関心のある方はご覧ください。
網代編みを六ツ目編みで補強する竹編みは珍しく、この二重編み竹ざるの他には寿司バラくらいだと思う。寿司バラとは、かなりレアな竹ざるで何と寿司飯を、この細かい竹網代編みの竹ざるで作るのだ。九州でも鹿児島県、宮崎県だけに見られる伝統的な生活道具で乾燥を防ぐための蓋も付いていて、底編みも上蓋も同じように六ツ目編みで補強される。
寿司バラの素晴らしい所は、網代編み部分に蓬莱竹が使われているのだ。節間の長い竹を使用することによってフラットな編み目にして使いやすさを考えている。九州や四国など豪雨地帯の河川を守るためにも植えられてきた蓬莱竹だ、やはり他の土地で出来る竹製品ではない。いつだったか、お一人になってしまった寿司バラ職人さんが譲ってくれた最後の籠は、青さがすっかり色褪せて飴色に変わりつつある。ふたえばらも今の瑞々しさは無くなるが、むしろこれからが竹ざる人生の始まりだ。
自分は、竹虎の職人が使う前掛けで作ったショルダーバッグを愛用している。もう何年になるか忘れてしまうくらい前に、前掛けを使ったバッグ作りをされている方をご紹介いただいた。確か元々は趣味で作られていたと思うが、ご主人用のリュックサックを見せてもらうと色落ちが渋くて、大切に使えばこれほどになるのかと少し感動した覚えがある。
是非、竹虎の前掛けもショルダーバッグやリュックサックにして使いたいと思って、少しづつ作ってもらっていた。今回、前掛けを新しく作ったのを機にショルダーバッグも新しい職人さんに作っていただける事になった。新しいと言っても、ほとんど変わらない(笑)本当に少しだけマイナーチェンジして再デビュー、いい風合いに色落ちするまでご愛用いただきたい。
自分達が虎竹の異変に気付き始めたのは、15年位前からだろうか?虎竹の色づきがどうも芳しくない、しかし急激な変化ではないので、どうやら言われ続けている温暖化の影響ではないかと気づくまでに時間がかかった。
自然界の変化は、虎竹でなく孟宗竹や真竹など日本三大有用竹と呼ばれ竹業界で多用される他の竹でも同じように感じられている。その一つが害虫被害の多さだ、竹林や製造現場に近い所ほど悲鳴を上げている。そこで、食害を少しでも防ぐために現在、最も効果的な方法として使われているのが炭化加工なのだ。
伐採しただけの自然な孟宗竹を炭化加工すると...。
高温と圧力で蒸し上げるような形になるので、このような茶褐色に変色する。
竹は糖分が多く、デンプン質も含んでいるから炭化加工らよって食べても美味しくないように蒸し焼き状態にして、それらを取り除いている。
こちらは炭化加工した竹箸の材料、良質でこのような厚みのある竹材は最近では少なくなって貴重品。しかし、チビタケナガシンクイムシやヒラタキクイムシなど竹が大好きな害虫からすれば絶好の食材なのだ。せっかくの材料をこうして置いておいて気が付くと虫が喰っている事があり、消費者の皆様には見えないけれど実は竹材が無駄になり、コスト高や製造量の減少はここ数年で急増している。
しかし、虎竹のように伐採時期をしっかり管理していても、高温で炭化加工しても防虫対策は万全ではない。竹林からの異変の声が全国各地から届いている、特に広大な竹林面積のある九州では顕著のようだ。一体何が起こっているのか?この目で確かめたい。
社員に怒られた「もう少し、普通の方にお求めいただける竹籠を作ったらどうですか!」。一体何の事かと思っていたら、鮎籠や二段魚籠の事を言っているようだ。魚籠のように、あまり多くの方が必要とされていない籠が沢山ある事を心配してくれているのだ、しかし、魚籠は面白い。個人的にお付き合いのある職人さんに譲ってもらった籠が手放せない。
虎竹二段魚籠も虎竹鮎籠も、元々は真竹で編まれていた籠を職人が作れなくなったから虎竹で復刻したくてしてみたものだ。釣りは小学校で卒業したのだが、魚籠を手にしたら竿まで手にしてしまそうになる(笑)。
今年の母の日は5月14日だ、皆様はもうお母様への感謝の気持ちを伝える準備はできているだろうか?かく言う自分の方が何も出来ていないので、先日京都のお得意様からいただいた筍を届けに行った時に、母の顔を見ながら何ができるか考えてみた。母も80歳を超えているのに、まだまだ元気なのが本当に嬉しい。母は昔から顔の肌ツヤが綺麗だと、いつも周りの人に言われていて自分も小さい頃から自慢だった。年齢を重ねた今でもハリがあるのは、きっと竹に囲まれて暮らしてきたからだろう。
先日朝のテレビニュースでは、中国大陸から大量の黄砂が飛来すると日本地図を映しながら報じられていた。特に関東含む、東日本が真っ赤になっていて黄砂の濃度が高いとの事だった、自分達の暮らす高知は風向きなのか、四国山脈のせいなのか飛来は少ないようだ。いやいや、それでも遠くの竹林が結構かすんで見えている。黄砂の多い原因は、大陸の雨不足での乾燥と、今年の強風だそうだけれど、花粉で大変な時に追い打ちをかけるような黄砂だから、まさに春霞などと風流な事を言ってる場合ではないのかも知れない。
このような季節には、お洗濯物を外に干す事ができず室内干しの方が多いと思う。そこで部屋干しではニオイが気にならない竹炭の洗い水が沢山のからから重宝されている。元々は自分と同じようなアトピー体質の方に喜ばれる自然派の洗濯洗剤なのだが、柔軟剤を不使用でも柔らかい仕上がりだと大満足いただく方も多い。竹炭と竹炭灰と水だけで作った、竹炭の洗い水ギフト、今年の母の日にお得なセットにしてご用意しています。
【30セット限定】母の日ギフトセット天然成分100%の竹炭の洗い水、竹炭パワーでしっとり虎竹の里 竹炭石鹸2個をセットでお届け♪さらに大人気の竹炭石鹸をプラス1個無料でプレゼント!
虎竹と白竹で作るランチボックス、ピクニックバスケット、二段・三段ピクニックバスケットは、角物と呼ばれて普通の竹細工とは一線を画しています。大量の細かい竹のバーツを用意して編むと言うより、組上げると言う表現方が分かりやすい角物細工の職人の仕事は、虎竹ピクニックバスケットを製作する工程をご覧いただくと納得されると思う。
そんな角物の二段弁当箱でも、恐らく誰も見た事のないような籠が出てくるのが山岸家の食器棚なのだ。奥から取り出した50年前の虎竹は色艶が増して風格満点、持ち手の足が長く伸びて底の通気性が良い所など本当に秀逸な作りだ。二代目義治でないと思いつかない発想だと圧倒される。
先日の30年ブログでご紹介もした玄関すのこには、高知県特産黒竹を使っている。皆様が思われている竹に比べて随分と細い竹でもあり、また生産量も少ないので頻繁に目にする竹ではないかも知れない。しかし、よくよくご注意いただいていると和食の気のきいたお店様などでは、壁や天井の装飾に使われているので是非気を付けておいて欲しい。この黒竹箸箱も、竹集成材の本体にスライド式にはめ込む蓋部分は黒竹を使う。竹の身部分と黒竹表皮、渋い色合いのコントラストが引き締まった印象だ。
実は、この箸箱本体にはレーザー刻印で様々なメッセージをお入れさせて頂く事ができる。蓋を開けて、21センチの携帯に便利な少し短めの竹箸を取り出したら嬉しい文字が目に飛び込んでくる。
黒竹は虎竹と同様に自然そのままの色合いだ、なのでそれぞれの竹によって黒の出方が異なる。並べてみると際立つけれど、これがそれぞれ個性的で素晴らしいのだ。
日本最大級の竹と言えば孟宗竹であり、多くの皆様が「竹」と言う時に思い浮かべる事が一番多いのではないだろうか。筍は大きくて美味だが、輸入が増えた現在では多くの竹林が手入れされずにいる。だから稀に農家さんが手入れした竹林などに出くわすと時間を忘れてしまう事さえある。
直径はこの通り太く、20数メートルもの長さがあって、特に伐採したばかりの孟宗竹は水分を含んでいてズシリと重い。
それもそのはず、稈の中に空洞があるのだけれど、淡竹の仲間である虎竹等に比べると圧倒的に身の部分が厚いのだ。孟宗竹は籠やザルに使われる事は少ない代わりに、この身の厚さの特性を活かした製品作りがされてきた。
竹炭もそんな製品のひとつで、木炭よりカリウム、ナトリウムなどミネラル成分が多く土壌改良効果が高い。更に多孔質なので湿度の調整や消臭能力に優れており、現代の暮らしの中でもっと利用が進めたいと考えている。
竹炭(バラ)は土窯から出したそのままなので、一般の方がお使いされる場合には水洗いなどの手間や竹炭の微粉末が付着するなど若干の使いづらさがあった。そこで、もっと簡単に気軽に暮らしに取り込めるような調湿竹炭パックを作っている。日本は高温多湿だ、梅雨時などのジメジメにうんざりされる方も多いのではないだろうか?しかし、この竹炭の除湿実験をご覧いただくと、今まで関心のなかった方でも「一度試してみようか」きっと、そう思っていただけるに違いない。
虎竹の里から車で10分の所にある黒竹の竹林にやって来た。この辺りは江戸時代から美しい黒竹が有名で「黒竹なる名品あり、笛に適す」と土佐藩山内家の皆山集という文献にも載っている産地だ。虎模様の虎竹と違って真っ黒い竹で、太さも虎竹に比べると随分と細い。
しかし、竹は大きければ良いというものでもなく、黒竹の細さと色艶を活かして製造しているのが黒竹玄関すのこ。これからの季節は素足でいる事も多くなるが、足裏に何とも気持ちのいい感触がある。革靴で自宅に帰って来たお父さんは、この天然竹の細身の踏み心地にホッと安堵するのではないだうろか。
地元大学教授の方が、塩分と植物の成育についてお話ししてくださった事があって、虎竹の模様も海風が関わっているようだが、黒竹にも同じようなメカニズムが働いているように思っている。今まで何カ所もの竹林に入ったけれど、どこも海に近く太平洋からの風を受けやすい所にある。
この季節になると、今年も暑くなりそうだなと予感するような日がある。黒竹の竹林に向かうのは冬場だけれど、それでもキラキラと目にまぶしい程の海からの照り返し、この竹も又、土佐の明るい風土が育んだ竹なのだ。
元々は真竹で編んでもらっていた小さな茶碗籠がある。もし、お使いの方でこの30年ブログをご覧になられていたら「ああ、その通りだ」と納得いただけるかと思うが、小振りに編んでいるけれど驚くほど丈夫に作られている。そもそも昔ながらの竹細工は、毎日の生活の中で使われる事が前提の道具だったので強さが一つのセールスポイントだった。
自分で編んだ籠や竹ザルを自身で売って歩く事も多かった。だから山や海や畑や、そして家の中で使うお客様の声を直接聞いて籠に磨きをかけてきたのだ。強靭さを求められる仕事の名残で、このような小さな籠も竹ヒゴの厚みをしっかり取って丁寧に作る。
最近の竹籠は、見た目は良いけれど使ってみると頼りない物も多い。これは竹ヒゴが薄いのだ、作る方は編むのは楽だから、それで問題なければ元の厚みには戻らない。ところが昔気質の職人は少し違っていた、数個だけ虎竹で作ってみた茶碗籠だが、いつもと同じ厚みのある竹ヒゴを使うから竹質の違いでかなり難しかったようだ。同じ竹でも淡竹系の虎竹と真竹では、実は全く違うのだ。
こんな日が来るのではないかと思っていた。夏の冷酒用としてファンも多かった青竹酒器を今年は確保できなくなったのだ。この30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」では何度が申し上げているが、青竹とは真竹の事で瑞々しい色合いが気持ちいい、この青さは日本人に親しみがあり、大好きな色だと思う。
同じ頃合いの太さの竹に淡竹(ハチク)があるが、竹表皮にロウ質の被膜があってこのような美しさはない。ところが、案外知られていないけれど、こうして真竹を酒器や料理の演出に使う場合には竹を生鮮野菜のように扱わねばならない。と言うのも、真竹の青さは抜けやすく切り口からみるみる変色して白くなってしまうからだ。
切り口から見える身の部分の白さは、表皮の青さとのコントラストで素晴らしいのだが、竹肌の青さが白くなってしまうのは興ざめでしかない。だから、青竹酒器はお客様にお届けする日時合わせて伐採する。一本の真竹が無駄にならないように元の太い部分で酒器を、ウラ(先端)の細いところで盃を作っている。スピードとの勝負と言わんばかりに、出来るだけ乾燥に注意しながら素早く進めて配送せねばならない。
竹林を伐採する職人が高齢化し、良質の竹材が減っている中で思えば今までよく続けられたとも言える。本来、一回限りの使用しかできない贅沢な器であったけれど、これからは更に難しくレアな酒器となりそうだ。
青竹とは真竹の事をさしている、そして青竹細工とは真竹を油抜きする事なくそのまま使って編み込む素朴な籠やザルの事だ。日本人の暮らしは竹と共にあったと言っても良いくらい、毎日当たり前のように使われてきた道具でもある。青々とした編み上がったばかりの竹肌は綺麗だけれど、使い込んでいくほどに色褪せて使いようによっては飴色に輝いてくるのがたまらない。
何種類かある籠の中で、今回は特に目にとまったのは収穫籠に使えそうな腰籠だ。ちょうどこれくらいの深さのあるものが欲しかった。
これくらいのサイズなると重さも結構なものになるから底にはしっかりと力竹を必要だ。
腰紐を付けなければ、チリ籠でも良いけれど少しもったいない。高さのある小物入れとして室内でお使い頂くのも楽しいのではないかと思う。
竹虎は明治27年の創業で、竹の商いをはじめてから129年となる。こうして長く竹の仕事を続けさせて頂けているのは、いつもご愛顧いただく皆様方のお陰だ、本当に心から感謝したいと思う。創業した大阪天王寺から日本唯一の虎竹成育地である高知県須崎市安和に拠点を移し、製造量の増加と共に株式会社として立ち上げてから今期で第73期を迎える事ができた。今日は、その一日目である。
和傘に使う竹材の取り扱いから竹材商としてスタートし、虎竹に魅入られた初代から今にいたるまで竹の世界も様々な変遷があり、自分達の会社も大きな時代の波のうねりの中で右往左往を続けている。
長い社歴も変化の連続だったに違いないが、これからは更にスピードを増して全てが変わり続けていくのだろう。目が回りそうなほど早い流れを目の前にする度、ずっと変わらない虎竹を手に取り先人に問う。そんな一年のはじまりだ。
今日のお休みは絶好の花見日和なので、桜の名所には沢山の方が向かわれている事だろう。竹虎は新年度から社内でいくつかの大きな変革を予定していて、その準備で自分は窓から眺めるしかないけれど、それでも山桜が焼坂の山々を彩り美しい。
「花より団子」という言葉があるように、行楽に行かれる皆様には綺麗な桜も楽しみだけれど、美味しいお弁当の方を心待ちにされる方も少ないないと思う。
竹虎のお客様の中には、竹のお弁当箱を持参されている方もおられるのではないか?などと想像している(笑)。虎竹三段ピクニックバスケットなら遊びに行かれる人数によって二段、三段と使い分けられるので便利だ。
何より、竹の弁当箱など周りをご覧いただいても誰も使っている人などいないと思う。日本唯一の虎竹なら尚更だ。楽しいお花見が何倍も盛り上がる事間違いない。