子供の頃、虎竹の里ではチャンバラごっこと弓矢作りが盛んだった。山出しされる竹が大量にあって選別作業に追われていて、刈り取られてレンゲの花が一面に咲いていてる田んぼにまで虎竹が広げられていた。あちらこちらに竹の端材が落ちているので、刀や弓の材料に事欠かなかったからである。チャンバラなら、そのあたりの切れ端で良かったけれど、剣道の道を極める達人たちの道具となれば、そうはいかない。
竹刀なども輸入品が多くなっていると聞いていた。学生時代に剣道部の友人から竹刀を借りた事もあるが、そう高価なものではなかったので、きっと海外からのものだと思っていた。けれど、実はこだわりの竹刀はやはり国産のものがいい。竹は身の厚さから孟宗竹だと思われる方もいるかも知れないが、実は真竹の元の部分だけが使われている。繊維が緻密でしなりもあり、割れやささくれが少ないからだが、こんな大きな真竹を揃えるだけでも本当に凄い事だ。
そう言えば、別の竹屋さんで竹刀用の竹材をメーカーの方が来られて選別されているのに出くわした事がある。思い出せば確かに厳しい選りようだった。
竹の厚みはもちろん節間の長さまで決まっている、良質の竹だと思って伐採しながらも使えない竹はかなり多いと思う。その上、竹刀には重さの測定があって軽い竹は使用できないから更に難しい。現在、真竹にはテング巣病が蔓延しているので、その影響も少なからずあるだろう。
二階に大事に保管されている竹材を見上げてみる。通常なら竹の晒しには少量の苛性ソーダを使うが、それすら入れず湯抜きした、まさにこだわりの竹材だ。努力の結晶などと言えば、ありきたりに聞こえそうだが、この何倍もの竹からようやく出来あがった竹刀の材料たち、しっかり縛られて束になった状態で乾燥されながら竹刀になる日を待っている。
コメントする