亀甲竹の一輪差しをご存知だろうか?元々は孟宗竹の変種が固定化した竹で、節間の盛り上がりが亀の甲羅のように見えるから亀甲竹と呼ばれている。この竹の表情の面白い部分を切断して竹花入れにしているのだ。
竹自体にも年期が入っていて、真っ白い竹肌は飴色のように渋い色合いに変わってきている。節の湾曲が「何故だ?」と言うくらいにカーブを連続して描いているが、亀の甲羅のような節の曲がりは、根元の方に多い。
節が真っ直ぐな普通の孟宗竹と比べると、まるで別の植物のように見た目が異なる。しかし、そのお陰で滑りにくく持ちやすい事から水戸黄門さんや四国遍路の方にもご愛用いただく杖になったり、釣り竿用としても使われてきた。
亀甲竹では面白い話があ。実は竹虎本社工場を建て替えた時に、お得意様から美しい亀甲竹を株ごと沢山いただいて庭に植えていた。ところが、植物のというのは土地や微妙な風土で思うように育たない事があるのだ。竹虎に移植した亀甲竹は、年々新しく生える新竹の亀の甲羅ようなデコボコが減っていった。そして、十数年経った後は、どこにでもあるような孟宗竹になってしまったから驚く。
虎竹の里でしか成育しない虎竹も、色々な所に移植しても美しい虎模様が出ない。竹に限った事ではないかも知れないけれど、自然は神秘にあふれている。
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