四ツ目編の箕

虎竹箕型色紙掛け


箕は実用的な生活道具としての他に、言い伝えや風習に関わるものがあるが、商売繁盛や福を集める福箕としての縁起物でもあるために色々なデザインに取り入れられている。たとえば、この虎竹箕である。えらく粗い編み目だと感じる方もおられるかも知れない。


虎竹箕型色紙掛け


実は、これは虎竹箕の形をした色紙掛けである。最近では色紙を飾る事も少ないので「色紙掛け」と言ってもピンと来られない方がいるだろうか。この竹の小枝で色紙を留めて飾るようにできている。


四ツ目編箕


さて、このような色紙掛けのような飾りなら粗い編み目も納得でるのだが、この四ツ目編の箕はどうだ。


土佐箕


高知で昔から編まれてきた伝統の土佐箕は、網代編みでしっかりと目が詰まり、穀物でも何でも落とさないように作られている。


エビトヨブ


では、このような四ツ目編の箕は何使うのかと言うと実は炭の選別に使われてきた。編み目が大きいので、細かい炭や不要なものを選り分ける事ができるのだ。


竹炭粒


炭は燃料として長く人々の暮らしを支えてきた生活必需品なので、対馬で「エビトヨブ」と呼ばれる箕も当時は大活躍していたに違いないのである。


自然の神秘、亀甲竹

亀甲竹一輪差し


亀甲竹の一輪差しをご存知だろうか?元々は孟宗竹の変種が固定化した竹で、節間の盛り上がりが亀の甲羅のように見えるから亀甲竹と呼ばれている。この竹の表情の面白い部分を切断して竹花入れにしているのだ。


亀甲竹


竹自体にも年期が入っていて、真っ白い竹肌は飴色のように渋い色合いに変わってきている。節の湾曲が「何故だ?」と言うくらいにカーブを連続して描いているが、亀の甲羅のような節の曲がりは、根元の方に多い。


孟宗竹


節が真っ直ぐな普通の孟宗竹と比べると、まるで別の植物のように見た目が異なる。しかし、そのお陰で滑りにくく持ちやすい事から水戸黄門さんや四国遍路の方にもご愛用いただく杖になったり、釣り竿用としても使われてきた。


亀甲竹


亀甲竹では面白い話があ。実は竹虎本社工場を建て替えた時に、お得意様から美しい亀甲竹を株ごと沢山いただいて庭に植えていた。ところが、植物のというのは土地や微妙な風土で思うように育たない事があるのだ。竹虎に移植した亀甲竹は、年々新しく生える新竹の亀の甲羅ようなデコボコが減っていった。そして、十数年経った後は、どこにでもあるような孟宗竹になってしまったから驚く。


虎竹の里でしか成育しない虎竹も、色々な所に移植しても美しい虎模様が出ない。竹に限った事ではないかも知れないけれど、自然は神秘にあふれている。




竹ビーズを使った昭和のショルダーバッグ

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このショルダーバッグのように素地が全く見えなくなるまで色付けしていると、素材感が分からなくなってしまい一体何で出来ているのかと思われる方がいても不思議ではない。自分では当たり前すぎて、あまり気にしてこなかったのだが、店頭にそのまま置いてあるだけでは木なのか?プラスチックなのか?陶器なのか?知らずに、あるいは関心も引かれる事なく見過ごされてしまっていたのではないかと思う。しかし、実はこれは竹なのだ。


厚みのある孟宗竹の身部分を球形に削りだし、中央に穴を開け紐を通して繋ぎ合わせて作られている。最盛期は70年代頃ではなかったかと思うが、この球形のサイズを変えたり、形状を変えたりした様々な製品があった。


竹ビーズバッグ


このビーズショルダーバッグも、そんな中のひとつである。楕円形のビーズも球形のビーズも竹で作られている。


竹ビーズバッグ


塗装をしていない部分を見ると竹特有の維管束の模様を確認できて、間違いなく竹だとお分かり頂ける。


竹レトロビーズチョーカー


ショルダーバッグ、ハンドバッグなどバッグ類が多かったけれど、ベルトもあった。レトロ感あふれる懐かしい竹ビーズネックレスは奇跡的に倉庫からデッドストックの製品が見つかってご紹介させてもらっている。

竹炭盛皿への挑戦

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現在では品切れとなってしまっている竹炭盛皿という商品がある。長さが約30センチ、幅が約8.5センチあるビックサイズの竹炭をお皿として料理などに使えれば面白いと思い、炭職人と相談しながら作っていたものだ。ところが、これが本当に難しい。まず素材の孟宗竹から徹底的に吟味せねばならない、竹を炭に焼くと20%程度は縮んでしまうので出来るたけ大きく厚みのある竹材を用いる。大きく焼くというのは割れや捻じれなどのリスクも高まるから、3~4年竹を他の竹材以上にしっかりと乾燥させていた。


ところが特別に手間暇かけて窯入れしていても、実は焼き上げてみないとその時々の天候や環境により土窯は微妙に異なり思うように良品ばかりは出来上がらない。自分のこだわりだけで採算の合わない竹皿作りを続けていられないのと、孟宗竹調達の事もあって今では幻のような竹炭になっている。


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そんな難しい竹炭盛皿に、新たに挑戦される竹炭職人さんが素晴らしく綺麗な竹炭を試作として焼き上げてきた。長さは30センチを超えているし幅はなんと14センチ以上もある。特殊な技法で焼き上げられているので、前の竹炭皿と比べると捻じれがほとんど無いと言っても良いくらいの出来栄えだ。同じ土窯作りだけれど、これだとコンスタントに製作できそうだと思っていた。


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しかし、やはりこれだけのサイズの竹炭になると弱点がある。今の作り方では低温の竹炭にしかならず、導電率の低い竹炭にしか焼けない。一定の品質を保ちつつ焼き上げられるけれど、その反面高温の最高級竹炭に比べて硬度がなく水に弱いのだ。試しに何度か水に浸けてみたが乾燥の過程でまるで消臭・調湿用の竹炭(バラ)を水洗いした時のように小さな音を立てて割れてしまう。


食器として使える竹炭にしたいので水洗いは絶対に必要だ。1000度の高温で焼き上げられる最高級竹炭と、低温窯で焼かれる竹炭では、機能性も性質も随分と異なる。高温で硬く焼き上げながら、大きく安定させた形という難しい課題を乗り越えないと竹炭盛皿は完成できないのです。


浅めの根曲竹手提げ籠

根曲竹手提げ籠


元々、この根曲竹の手提げ籠は「りんご籠」という名前で呼んでいた。青森のリンゴ農家さんでは、リンゴの収穫にこの竹籠を使っていたのだ。ズシリと重たい果実を入れられる根曲竹の丈夫さと、リンゴ表皮をキズ付けない竹のしなやかさが重宝されていると聞いて納得した。現在では農作業に竹籠を使う事はなく、プラスチックの籠ばかりだそうだけれど、当時は職人さんの倉庫に行くと、見た事もないような数のリンゴ籠がギッシリと山のように積み込まれていたので、まだまだ多くの農家さんで使われていたのだろう。


根曲竹買い物籠


定番の大きさは高さが19センチくらいあるのだが、今回少し浅めのサイズが出来あがってきた。通常の籠よりも3センチ程度低い、わずかの差のように思えて、実は手にするとかなり使い勝手が違う。


りんご籠


サイズで見るよりも、ずっと浅く感じるので籠の出し入れは容易なのだ。それにしても、根曲竹の話が出る度にクマに出会わないように爆竹ならし、笛を吹きながら竹林に入る緊張感ある根曲竹伐採を思い出す。ご存知ない方はご覧ください。





長谷川等伯「松林図屏風」と竹筆

松林図屏風


長谷川等伯の松林図は離れて観たい。日中はお客様が多くて、とてもゆっくり出来ないので閉館間際の短い時間を待つしかないが、その価値は十分にある。本当に墨の濃淡でこれだけの世界が描きだせるのだろうか?この松の林の中に迷い込みたい気持ちにもなる。


長谷川等伯、松林図屏風


ずっと前から本物が観たかった、近づいてみると墨の微妙な濃さと多彩さに驚く。


長谷川等伯、松林図屏風


屏風絵だから座敷に座ってみると思えば、又違う迫力がある。


虎竹筆


さて、そこでこの画がどうやって描かれたのかだが、諸説あると思うけれど持論はもちろん竹筆だ。使った後の竹筆をそのまま乾かしておくと、このように硬く毛羽立ち固まる。


長谷川等伯、松林図屏風


「松竹梅」は古来、松も竹も縁起の良い植物とされてきた。だからと言う事でもないのだが躍動感ある松葉を描くのに竹ほど相性の良い筆はないのではないかと思っている。

寒い朝、孟宗竹

雪の孟宗竹


雪の便りが全国各地から聞かれると、真っ白い雪の重さと寒さにじっと耐えている孟宗竹の姿を思い出す。あれだけ頭を垂れて折れるほど曲がりながらも、温かくなれば待ってましたと言わんばかりに元の真っ直ぐな姿に戻る竹は本当に素晴らしいものだ。


孟宗竹の竹林


孟宗竹と言えば太く、背が高く立派な竹林を思い浮かべる方が多いと思う。日本最大級の竹なので、もちろんそれは間違いではない。


孟宗竹伐採


けれど、自然の不思議なところで本来は太い竹ばかりのはずの孟宗竹でも、場所によっては小振りな竹が成育する場合があるのだ。この竹林で伐採された孟宗竹の切り口をご覧いただいても意外なほどに細い竹がまじっているのがお分かりいただけるのではないだろうか。


肉厚の孟宗竹


孟宗竹の竹林の中に他の竹が混じっている訳ではない。細くとも立派な孟宗竹だから、さすがに身の厚みはしっかりしている。


孟宗竹


手で握ってみると更に太さが分かりやすい、まるで真竹か淡竹かというサイズ感。しかし、間違いなく孟宗竹なのだ。




孟宗竹と淡竹などの違いを、一般の方にも簡単に見分けられる方法をYouTube動画で紹介している。ご関心があれば是非ご覧ください。


孟宗竹切り口


この細身の孟宗竹でも、青竹踏み上級者に大好評の踏み王くんか作られる。この身の厚さだから丈夫な事、この上ないのだ。




蘇る竹磨き脱衣籠

竹磨き脱衣籠


真竹の表皮を薄く剥いだ磨き細工の脱衣籠が復活した。昨年、お客様からご依頼を頂いた時には少し難しいかと考えていたが、やはり工夫次第で何とか段取りできるものである。数年前よりもっと質の高い籠が編み上がってきた。


竹磨き脱衣籠


磨きの脱衣籠はかってこのように大量に製造されていた時期がある。お使いいただく方が、スペースによって選べるように(大)(中)(小)の三個入りでご用意させていただいており作るのは大変な分、お陰様でお客様の評価は高かったように思う。


竹磨き脱衣籠


竹ランドリーバスケット


新しく製作した竹籠と、数年前の竹籠を並べてみるとこれだけの色合いの違いがある。竹の経年変色は籠を使う楽しみのひとつでなのだが、磨き細工は特に色づきが早い、室内でこれだから太陽の光の当たる所にある籠は更に変色が進んでいる。


竹ランドリーバスケット


自分のように竹の色具合を見ながら、わざわざ紫外線に当てる必要もないが、磨いた竹編みはそれ程劇的に美しい色変わりをする。


竹衣装籠


脱衣籠を編む竹職人


良い真竹が少なくて遠くまで探しに行ったけれど、その甲斐あって竹磨き脱衣籠にちょうどの竹材も揃った。職人も何とか少しづつ仕事を進めている、時間はかかるけれどそのうち籠が勢ぞろいした姿が見られるのではないだろうか。




かけテボのミニチュア籠

背負い籠かるいミニチュア


以前にもご紹介した事があるように思うが、この籠は「かるい」と言う背負い籠の逸品をスケールダウンしたミニチュア籠だ。かるいは素晴らしい伝統の籠であるものの、近年ではあまり使われる事もなくなりつつあったので、一般のお客様が小物入れとしてお使いいただける位の小さな籠を作られていた事があるのだ。名人の編まれる籠は小さくても本物、改めて手にしてみても惚れ惚れとする。




この美しい背負い籠がどうやって編まれていくのか?熟練職人であられた飯干五男さんの技を真っ青な竹の美しさと共にご覧ください。


かるい


この真竹の色合いが経年変化によって、このような飴色に変わるから竹の魅力は尽きることがないのだ。


かけテボミニチュア


さて、前回の30年ブログで書いた「かけテボ」、実はこれにもミニチュアがある。昔から使われてきた大きな籠には需要が少なくなる一方、小さな籠は花入れや筆立てなどにお求めいただく方がいるそうだ。


かけテボ、背負い籠ミニチュア


かけテボ、背負い籠ミニチュア


伝統の籠が暮らしの中から姿を消していくのを憂いながら、こうして竹は変わっていくのかも知れない。

かけテボと呼ばれる背負い籠

背負い籠


背負い籠も昔から多用されて来た道具のひとつなので、全国各地で様々な形の籠が作られきた。地域によって編まれる素材が違うけれど、多くの場合は加工性が高く、軽く丈夫な竹材が使われている。この籠は対馬で編まれたもので、「マダケ」と淡竹(ハチク)を使っていると職人さんは言うけれど自分たちの言うマダケとは少し違っている。


そもそも対馬には大きな孟宗竹はごく一部でしか見かけられない、淡竹の竹林も山間部に点在していて広い竹林を見ることはできなかった。代わりに川岸に矢竹やメダケが生えているのだが、この矢竹をマダケと呼んで使っているのだ。


背負い籠


これだけのサイズの背負い籠なので、網代編みの底部分から縦ヒゴには太めの矢竹を使っている。底から立ち上がり部分は同じく矢竹で、胴体部の回しヒゴには淡竹を用いる。口部分は太さが均一で、丸く綺麗に曲げられるシモゾウという木で作られ、背負い紐をかける部分はツヅラである。使い込んだ風合いがたまらないと思っていたけれど、背負い紐を通して肩にしてみると尚更に良さを感じている。


かけテボを背負ってみて、かって石炭を運んだと聞く幻の背負い籠「タンガラ(炭殻)」を編む迫力の職人さんを思い出した。今では見られないスゴ技です。




蓋付き虎竹小物籠、試作品につき特別販売しました。

 
虎竹小物籠


試作で出上がっていた蓋付の虎竹小物籠がある。使いやすい楕円形の形も良いし、サイズ的にも汎用性がありそうだ。蓋の縁部分にも籠の口巻にも丁寧すぎるくらいに籐でかがっているのも格好がいい。


虎竹小物籠


一番良いのは虎竹の節のところを活かした蓋の持ち手だ。


虎竹小物籠


一点限りだったのでYouTube特別販売としてご紹介しようと用意していたら、すぐにお求め頂いた。どんなお使い方をされているだろうか?かなりのお買い得なので是非大切にご愛用いただきたいけれど、最近インスタにご投稿いただく皆様のようにお手元に届いた後の様子を拝見させていただけると自分達も参考になるので嬉しいです。




四国郷土料理ものがたり2023

 
2023四国郷土ものがたり


昨年末に頂戴した新しいカレンダーを見ている、「2023四国郷土ものがたり」と表紙に書かれた四国ガス燃料さんのカレンダーは、語り継ぎたい故郷四国各地の郷土料理を月替わりで紹介していく楽しいものになっている。実は以前、東京の方に高知特有のお寿司の話を伺った事がある。高知県は地理的に室戸岬から足摺岬まで広く、文化的にも随分と違うものがあるので仕方ないかも知れないが、それでも一体どこの地域の事だろう?と驚くほど全く知らない食べ物だった。同じ高知県内でもこれだから、四国となると野菜も海産物も異なり様々な食に触れられて面白い。それぞれに歴史と由来をしっかりまとめて記載しているので勉強になる(笑)。


竹虎カレンダー2023


竹虎でも恒例となっているカレンダーを今年も作って皆様にお配りさせて頂いている。自分たちの場合には、前年に新しく仲間入りした虎竹細工の中から数点を選び掲載する事にしているけれど、見直してみると竹製品をご存知ない方には少し不親切だと感じた。今月の虎竹リースにしてもパッと見た感じでは何か分からない方がいるかも知れない、四国ガス燃料さんのように説明するテキストが必要だと反省している。


四国ガス燃料カレンダー、虎竹細工


さて、四国ガス燃料さんの今年のカレンダー5月には「きびなごのほうかぶり」という珍しい握り寿司が紹介されている。きびなごは子供の頃に磯で手づかみできるほど沢山いた魚で今でも良く見かけるが、この料理は知らなかった。高知では古くから米の代わりにおからを使うと書かれているけれど、そんな事も初めて聞いた。そもそも、おからを最近ではあまり食さないのではないだろうか?だから、おからを「おたま」と呼ぶこともない。きびなごのほうかぶりは、たまずしの一種で、おからを酢でしめたきびなごで人がほうかぶりしているように包んであるとの事だ。本当に知らない事ばかり、いつも思うけれど、海外に行かずともこんな地元で素晴らしい未知の文化が息づいている、もっと知らねばならない。


きびなごのほうかぶりに、器として使って頂いたのは虎竹で編んだざるだ。自分が知らない食文化にビックリしているように、日本唯一の竹と書かれているのを読んで「なんとっ!?」と声をあける方が、5月になればきっといるに違いない。


ヒヨ鳥籠とサンジャク

 
ヒヨドリ籠


ほんの数十年の事で人の暮らしは大きく変わるものだと思う。虎竹の里は竹の産地であると共に良質のシダの成育する地域としても知られていて、シダ編み籠を作るための材料を集めるシダ屋さんが車で10分足らずの町に2軒もあったと言うから今では信じられない話だ。


ところが、自分の小さい頃にはメジロやウグイスは何処の友達の家に遊びにいっても普通に飼われていたし、ツグミやヒヨドリなど野鳥を買い取ってくれるお店さえあった。今では飼育や捕獲が禁じられているので、こんな話を知らない人に話すと、今度は自分の方が「信じられない」とビックリされてしまう。


ヒヨドリ籠


思えば自分の子供時代までは山や川、海といった自然が人の生活にもう少し深く関わっていた。近くの川で捕ってきた鰻が食卓に並ぶ、ツグミの毛を隣のおじさんが毛をむしって焼いてくれる、もしかしたら最後の世代だったろうか?そう言う意味では、今は田舎に暮らしていても都会に暮らしていても、自然との関わりはそう大きく変わる事がないかも知れない。


さて、そんな現代に当時を思い出す名残のようなヒヨドリ籠なるもの発見した(笑)。渡り鳥として知られるヒヨドリは日本各地に普通に見かける鳥で、自分たちの場合は「コブテ」と言う罠を作って捕っていたけれど、このヒヨドリ籠は生け捕りにする竹籠だ。鳥籠は二段式になっている、下にオトリの鳥を入れておいて誘われてやってきた鳥が上段に入ると蓋が閉まる仕組みである。


虎竹とサンジャク


先日、地元のテレビニュースで取り上げられていたサンジャクという鳥がいる。カラス科の外来種で観光施設から逃げ出して野生化しているそうだ。繁殖力が強く、高知県では絶滅危惧種のヤイロチョウの生態に影響があったり、黒潮町では里山でお馴染みのメジロがいなくなった島もあると聞く。前にお話しした事があるけれど、虎竹の里の竹林で一度見かけた事があって熱帯雨林のジャングルにでもいるかのような違和感だった。こんな小さなヒヨドリ籠では追い付かないと思うが、ふと思い出した。




鰻魚籠の予告

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さて、本日は今度編み上がってくる鰻魚籠の予告のお知らせだ。きっと良い籠が出来あがってくると今からワクワクしている、もしかしたら今時新しい魚籠などあるのか?と思われる方もいるかも知れない。けれど、美しい川の流れがあり、魚がいて、暮らす人がいれば、そこに寄り添うように繁る竹を使った道具は自然と生まれてくるものだと思っている。この二つの魚籠を見比べて頂きたい、昨年末に伐採した真竹で作られたばかりの魚籠は青々とした鮮やかな色合いだ。ところが、やはり魅力的なのは5年、10年と使い込まれて赤茶けた竹籠。


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自身が鰻捕りの名人で一日に100匹捕った事もある川漁師のような方だからこそ魚籠には強いこだわりだ。新しくご紹介するものは銅線をステンレスに変更しているものの圧巻の上蓋の作りや、底部分の曲線美など堪らない仕上がりになる。底の四隅が足になって地面に接するので傷みやすい、だから銅線を巻いて補強しているのだけれど、虎竹の里に伝わる海で使われていた魚籠も力竹に全く同じ補強がされている。川と海が繋がっているのだ。




白虎竹で編んだ巾着籠

 
白虎巾着籠、竹虎四代目(山岸義浩)


巾着籠には舞妓籠やお座敷籠と言う呼び名もあって、普通は手提げに使う方も少ないけれど着物や夏の浴衣、和服などに合わせて持たれる籠だ。この籠を虎竹を使って網代編みの試作をしてみる事にした、日頃同じ編み方で籠も製作している職人なので難なく出来あがるのだけれど何とも色合いが薄い。試作だとの事で色付きの良い虎竹を使っていないのだ。



そこで、一点限りでYouTube動画特別販売としてご紹介させてもらう事にした。


虎竹林


虎竹の里の竹林は当然虎竹ばかりなのだが、すべての竹が同じように色づいている訳ではない。何か所にも分かれた山々の竹林でもそれぞれ違うし、同じ竹林であってもまさに千差万別である。


白虎巾着籠、竹虎四代目(山岸義浩)


山から伐り出されて来る竹は、色付きの一定した竹ばかりではないので虎模様の少ない竹材を使う場合、このように編み上げてから染める事も多い。


虎竹伐採


今回の虎竹は色合いが芳しくないので「白虎竹」と呼んでいる、ただ一点限りでなので染めずにそのまま自然の色合いで特別販売する事にした。




第二回竹虎インスタキャンペーンはじめました!

白竹手付き小物籠二個セット


竹虎でお求めいただいた竹細工や竹製品、竹炭などを、毎日の暮らしにお役立ていただく様子をインスタグラムを通じて拝見させていただく事が多くなった。今まででも、同様にご愛用いただくシーンを写真でお送りいただく機会はあったが、インスタによって格段に簡単に便利になった。


竹虎グラム


そこで、皆様からのインスタグラム投稿を更に頂ければ嬉しいと、開催した第一回竹虎インスタキャンペーンがお陰様で大好評だったので気を良くして続けて第二弾スタートする事にした(笑)。自分達では到底考えらえれないような素晴らしい竹の活かし方をされているお客様ばかりで毎日感激しているのだ。


白竹手付き籠二個セット


第二回竹虎インスタキャンペーンでは、一点限りの白竹小物籠(大小2個セット)が一名様に当たる。小振りな手付き籠なので食卓のちょっとした演出には最適ではないだろうか。投稿いただき当選された方は、一体どんなお使い方をされるのか是非拝見させていただきたい!


白竹手付き籠二個セット


そう言えば、第一回のインスタキャンペーンの当選賞品だった虎竹蓋付き籠も、お手元に届いたお客様はどうやってご使用されるのだろうか?ヤタラ編みされた虎竹の籠の良さを、きっと十二分に引き出されて楽しまれているに違いない。


白竹手付き小物籠二個セット


インスタ投稿は、自分達がまず誰よりも楽しみにしているけれど、竹虎に来店された他の皆様にも出来るだけ目に触れるようにしているので竹活用のヒント満載で参考になると思っています。3/15日まで開催しているので、是非、Instagramにて「@taketora1894 #竹虎グラム #第二回竹虎インスタキャンペーン」で投稿お待ちしています!




「なんだコレは?」オールド虎竹二段弁当箱

虎竹二段弁当箱

 
この正月に実家で水炊きを作ってもらっていた、特別な材料など使っている訳でもないけれどメチャクチャ旨い。何がこんに違うのだろう?不思議に思っていたけれど答えは野菜だ、自宅や隣の畑でとって来たばかりのものは格別、特に引っこ抜いたばかりの大根おろしが大きな丼に入れてタップリ出してくれたのが堪らない。


竹ピクニックバスケット


豪華なお節も良いけれど実は新鮮野菜が贅沢だったりする、そんな事を思いながら日頃見ない棚のガラス戸の奥に目をやると、良い色合いになった虎竹の二段弁当箱を見つけた。「なんだコレは...?」このような角物細工では虎竹を使ったものは殆どない。価格だったり、製作に手間がかかるのが理由だけれど、白竹ばかりでは面白くないと数年前から虎竹を使った三段ピクニックバスケットなども企画してきた。


竹弁当箱


虎竹の角物など手掛けるのは自分だけだろうと思って仕事していたが大間違いだった。少なくとも50年前には虎竹を使った角物弁当箱が祖父の手によって作られていたのだ。手にしてしみじみ見て改めて感服する。


虎竹二段弁当箱


竹は大切にしていれば置いておくだけで、こんな艶やかな色合いに変化して人を魅了する。この上段の底編みも今とは全く違う手の込みようである。それだけではない、持ち手の竹が両サイド2本に別れて下に伸びている、少し長めに残しているのは籠の底面が床に直接触れないように足にしているのだ。日本で誰よりも角物細工を見てきたが、このような細工は初めてで感動した。


虎竹二段弁当箱、竹虎四代目(山岸義浩)


しかし、凄い虎竹だ。竹の質も段違いに良い、今の籠なら負荷のかかる竹ヒゴは弾いてしまいかねないのだが、この竹はどうだ。そんな素振りは1ミリもない、竹の質か?職人の腕か?おそらく両方なのだ。


新春早々圧巻!名人の鰻筌

 
鰻筌、竹虎四代目(山岸義浩)


昨日は「多少のキズも味わいとして感じていただきたい」とお話ししたばかりだが、そうかと思えばこのように美しい惚れ惚れするような竹編みがあるのも竹の世界だ。今が伐採の季節、旬の真竹は寒暖差の大きい土地の竹、それを丁寧に磨いて手に触れてもスベスベの竹肌に仕上げている鰻筌だ。


磨きの鰻筌エギ


一日に百匹も鰻を捕る事があると聞くと、まるで川漁師みたいだと思ってしまうが、田舎では何処の村でも自然と向き合う事に卓越した方が一人や二人はいるものだ。鰻が通る肝心な仕掛け部分をエギと呼ぶ、この作りも綺麗で獲物がスムーズに入っていきそうだ。


磨きの鰻筌


鰻が好きな方は多いかと思う、しかし今の世の中は養殖ばかりで自然の中で鰻を捕る機会など、そうそう無いのかも知れない。何を隠そうボクなど鰻と言えば、祖父に連れられ大阪千日前に出た時に、今は無くなってしまった「いずもや」と言う店で食する以外に外食は一切なかった。


鰻筌フタ


鰻が嫌いなワケではない、大好物だ。しかし、鰻は店で食べるものではなく、川で捕って家でさばいて焼いて食べるものだったのだ。鰻をまな板に打ち付けるキリが台所に常備されていた。


磨き細工の鰻筌


だから特に竹編みの道具については小さい頃から詳しくこだわりがあった、プラスチック製の筌が登場したが川に似合わないと思い大嫌いだった。真新しい筌では竹の香りが強すぎて実は鰻を捕るには不向きだ、エサで工夫したり、田んぼの泥の中に沈めたりして竹を馴染ませていく。その工程から鰻捕りがはじまっているのだ。


名人の筌


そんな自分が、これは日本一だと思う鰻筌、年始早々これだから竹はオモシロイ。




本日最終日、代官山蔦屋書店「にっぽんの暮らし展 2023」

 
竹虎竹籠


新春3日から開催されていた代官山蔦屋書店「にっぽんの暮らし展 2023」は、いよいよ本日が最終日です。YouTube動画ではお話しさせて頂いている通り、竹籠や竹製品を直接手に取って確かめてみたいと言うお声は前々から多かった。何かの機会があればと思っていたところに今回の展示は良いタイミングで、いつもウェブサイトから竹虎をご覧いただいているお客様にも足を運んでいただけて良かったと思う。


にっぽんの暮らし展 2023


そんなお客様から早速メッセージが届いているのでご紹介してみたい。会場には竹細工だけでなく焼き物や木製品、キッチン用品などもあって楽しい売り場だったという事が伝わってくるので全文を掲載してみたい。


【お客様の声】
昨日、早速代官山のTSUTAYAに行ってきましたよ!竹虎様のお品物以外に、素晴らしい木材のテーブル天板、持ち手が吸い付くようなフライパン。どれも素晴らしく、主人も料理好きですから、夫婦でひゃあひゃあ言いながら拝見させていただきました。
一番に竹虎様のブースにて、オオ。とどれも素晴らしくお値段もお安くなっていたりして、あれこれ実際に触ってみたりしながら選びました。体質的に胃腸が弱く、外食などはほとんど出来ず出かける時は必ずお弁当を持っていかないと外に出れない私にはお弁当箱は親友のようなもの。とある無薬剤の木製お弁当箱に出会ってから飛躍的に外に出られる様になりました。
お弁当箱も、あれもこれも拝見しましたが、2段式のお弁当箱と、かぐや姫が、いる様なワインクーラーをいただきました。ワインクーラー、小さいのと大きいのがあって、夏場主人が水割りする時のアイスペールに良いかなあと買ったのですが、主人が大は小を兼ねるからって、欲張って大きな方を選んだので持って帰ってきたら、まあ大きい。夏場のお酒が楽しみです。


つみれサーバー


冬場は、私が漬けている梅干しで、お湯割りをしています。お鍋のお供は竹虎様のつみれサーバで。お米は竹虎様のざるで米とぎ棒でといだお米を炊いて。。お弁当箱作成時の動画も拝見できたりして、縁あって我が家に来たお品物とこれからも過ごしていきますね。
お弁当箱、次に何を入れて出かけるかなあ。と本当に楽しみ!また次、次と買いたくなりました。今回実際に高価なお品物拝見できましたので自信持ってポチリます!またこの様な機会か有れば是非お知らせくださいね!
2段式お弁当箱は半額になっておりました。どこがどうしてか全くわかりませんし、多少傷があったり何かあったりしても味わいでかえって嬉しいです。大切に楽しく使いますね!本当にありがとうございました!


以上がお客様から頂いたメッセージで、社員一同嬉しく拝見させて頂きました。竹つみれサーバーを鍋にご愛用いただくあたりかなりの使い手(笑)の方であられるようです。とても大事なお話しをいただいているのは特価にさせてもらっていた二段弁当箱について「どこがどうしてか全くわかりませんし、多少傷があったり何かあったりしても味わいでかえって嬉しいです。」と言う部分だ。


竹細工にプラスチックか工業製品のような画一的なものを求められる方が稀におられるけれど、そもそも自然素材をそのまま使って手仕事で作り出す籠やざるには同じものはない。良質の竹材ばかりでなくなっている現状では、多少のキズや虫の痕などもこのお客様のように味わいとして感じていただきたいと強く思っている。




爆竹のなる竹林、根曲竹魚籠

根曲竹魚籠


年末年始も竹は止まらない、待ち望んでいた根曲竹魚籠が編み上がってきた。以前から30年ブログをご購読の皆様なら、何度かご紹介しているのでご存知かも知れないが、根曲竹伐採に同行させて頂いた事がある。寒い日だった、熊に注意して爆竹を鳴らし時々笛を吹きながらの緊張感ある山仕事だった。




根曲竹とは本当に根元が曲がっていて、まるで地を這うように生えている物もある。自分の知る虎竹や孟宗、真竹の竹林とは全く異なる竹だったけれど、こうして伐採され山から運び出された竹が籠になる。


根曲竹魚籠

 
根曲竹魚籠


この魚籠(びく)は形も良いけれど背面の真竹であしらった籐のベルト通しがカッコイイ。そして蓋が深くて使いやすそうなのもイイ。


根曲竹魚籠


根曲竹魚籠


更に細い根曲竹を使って補強されている底部分が、職人の愛用される方への思いがこもっているようで好きだ。縦横それぞれの力竹の中央部分には、耐久性を考慮して竹節がくるように作られている。籠が傷むとしたら真っ先に底の四隅であるけれど、堅牢な根曲竹が二重になって補強されているので心強い魚籠だ。




2023年の書き初め百枚

 
虎竹筆


今年の書き初めは木版画家の故倉富敏之先生の「かごはこづくし百選」という作品に登場する竹冠のついた100の文字と決めていた。竹職人さんの工房に掛けられていたのを見た時の衝撃は今も忘れられない。竹は昔から人々の暮らしに深く関わっていたから、生活道具はもちろん衣食住すべてに竹冠の文字が多い。大漢和辞典には漢字が5万文字も収められているそうだが、そのうち竹冠の文字が1025字もあるという。


書き初め2023


そんな中から倉富先生が選ばれた文字は非常に難しく、一体何と読むのかさえ分からなかった複雑な文字もあるが、すべて籠や容器として人々の役に立ってきた道具たちを表した字である。


虎竹筆


数年前、竹虎のテーマソングを作っていただき社員一同に参加してもらって録音した事がある。その際、スタジオなど使わずに虎竹の立ち並ぶ工場に機材を運んでいただき歌ってもらった。虎竹の歌を虎竹たち自身にも見守ってもらいたいと思ったからなのだが、今回はも虎竹の中で文字を書きたいと思った。虎竹の中で虎竹筆を使い、竹の文字を書いたのだ。


虎竹筆で書き初め


朝から始まり昼までかかっても全く終わらない、気がつけば夜になっていた。


虎竹筆


天を目指してスクスクと真っ直ぐに育つ竹は、縁起が良いので命名筆に使われる事がある。このような時には動物の毛を避けるという意味もあるけれど、それより竹のもつ不思議な力を信じてだろう。虎竹の筆入れ、馬蹄型の竹編み筆立てなど、幸運な道具を使っていた当日は忘れていたが、ちょうど10年くらい前に同じ場所で筆文字を書いた事を後から懐かしく思い出した。




明けましておめでとうございます!2023新春

竹虎年賀状2023


30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」をご購読の皆様、明けましておめでとうございます。今年は卯年、飛び跳ねる事から飛躍の年を誓う方も多いと思うけれど、ボクもその中の一人。新しい事に挑戦するのに最適の年とも聞くので、まさにこの2023年は今までやらなかった事をやる年にしたい。




何のひねりもない新春の挨拶だが、何を隠そう今年は年男だ。卯年とも重なって節目の年になる予感がする。


卯年、竹虎四代目(山岸義浩)




今年も写真家のミナモトタダユキさんにお願いしてご多忙な合間をぬって撮影いただいた。できあがる写真は素晴らしいが、仕上げのデザインや動画は竹虎なので自分らしくこんな感じだ(笑)。


卯年、竹虎四代目(山岸義浩)


兎に角、いつものように日本唯一の虎竹の竹林にやって来た。100年前から全ての原点はここにある、だから年始もここからはじまる。