虎竹の里には竹林に向かう細い山道が沢山通っている。季節になればこの道を通って虎竹が運び出されてくるのだが、今回運び出されて来た竹は根ごと掘り上げられているから特別中の特別だ。
竹虎初代宇三郎が虎竹と出会った100年前、竹林面積は今のように広くはなかった。そこで、少しでも生産を増やすため山主さんを説得しながら竹林を増やしてきた歴史がある。初代は魅了された虎竹の可能性に心躍ったのだろう、そしてその当時も、きっと今日の自分たちのように竹を掘り上げ隣の山、さらにその隣の山へと植えていったのだ。
虎竹は不思議な竹で、この地域でしか美しい色づきを出してくれない、まさに地域の宝だ。しかし、強い生命力をもった竹だから移植した竹が年々増えていき竹林に変わって行く山々を眺めた時、宇三郎は感無量だったに違いない。
虎竹を移植して増やしてきた当時を知る山の職人が、まだ残っておられるのも幸運だ。虎竹の里は昔から田畑も少なく「哀れむべき浦にて候」と代官が書き残しているほど貧しい土地柄、年貢としても献上されていた虎竹は地元の宝として希望の光として守られてきた。
その「希望」をスコップにのせると急峻な坂道をスムーズに下ることができる。
山道を下ってきた竹達、アドバイスを頂戴して細めのものばかりを選んだけれど正解だった。
色づきは最高の虎竹たちだ、虎模様が全体にしっかりと入っている。
トラックに積み込まれて、竹葉が乾燥しないよう養生してもらう。これから40数キロ離れた牧野植物園まで運ばれていき新しい土地に根付く事になるのだ。
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