これは渡辺竹清先生と言って、網代編みでは右に出る者がいない巨匠作のパーティーバッグだ。ニューヨークに本店のある有名宝石店T社の注文で限定製作されていた時のプロトタイプに金具を作ってもらって自分用に愛用している。凄い逸品であるが、今回はこのバッグに使われている竹素材のお話しをしてみたい。
この小さなバッグを持つ女性は幸せである。ちょっとした化粧道具だけ入れて颯爽と会場に現れたなら、必ず注目の的となるからだ。もちろん、日本伝統の匠の技があるけれど、この竹素材の持つ力もなかなかである。この竹素材を煤竹という。
煤竹と炭化竹を同じよう考えられている方がいるが、全く違うのでこれを機に考えを改めていただきたい。炭化竹は人工的に温度と圧力をかけて蒸し焼き状にした竹で、確かに似た雰囲気にはなるが竹としては別物だ。
見上げるとズラリと割竹が並べられた囲炉裏に座った事がある。もちろん竹は煙で真っ黒になっている、本当の煤竹はこのような囲炉裏のある民家で100年、200年という長い風雪を耐えて生まれる竹なのだ。
囲炉裏のある藁ぶきの家など、高知の田舎でもほとんども見かけない。つまり本当の煤竹が生まれる環境はすでに日本にはなくなっていると言ってもいい。
このような民家で毎日の生活に囲炉裏で火を焚く事によって出来あがる煤竹、この屋根に縛られた竹の100年後はどうだろうか?期待したい。
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