背負い籠の中でも、「かるい」は独特だ。ちょうど全国に数多あった箕の中でも日置の箕か特別だったように、狭い地域に特化して進化してきたスタイルなのだ。普通の背負い籠といえば円柱形かダ円、四角形いずれにしても寸胴型で少しでも沢山の荷物が入れられるように考えられ、肩から下した時に安定して置けるように作られている。
しかし、この背負い籠かるいは横はからみると底すぼみの逆三角形の形をしており、最初は少し首をかしげたくなる形状だと思っていた。まず、背負う容量が少なくなる、そして何より底が狭くなった逆三角形では安定して置けず、倒れてしまって使いづらいのではないか?
ところが、このかるいの里に来てみて籠が長く使われて来た理由が分かった。かるいは深い渓谷と高い山の連なる宮崎県高千穂にも近い日之影町で編まれていた。急峻な土地では底の広い籠よりも、この形が安定して置くことができるし、キツイ傾斜に置いておけば担ぐのにも都合がよい。木立の中を籠を気にせず歩けるように、かってのかるいは使う人の肩幅に合わせて作られてきた事も知った。
縁側に無造作に置かれているかるいは、今でも生活の中で愛用されていて良い色合いになっている。反対側を覗いてみる、背中の当たる部分は擦れもする、汗もかいて使うから、その部分だけ色落ちしたようになっていて本物の味がある。さて、このかるいも元々は目が覚めるような真っ青な一本の真竹だった。竹の色合いと共にかるい作りの名人・飯干五男さんの流れるような技をご堪能ください。
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