2022年の年末に

年賀状2023


今年はギリギリとなってしまったが何とか年賀状を出し終えた。スマホの登場で簡単に人と人とが連絡を取れる時代、新春の挨拶状を取りやめる会社や個人の方も多いが、ボクの場合はすっとやり続けると学生の頃から約束しているので今のところ取りやめる事はできそうにない。いつも買い物に使っているスズ竹市場籠だけでは一杯になりそうだったので、小さな虫穴が何個も開いてしまっているものの全く問題なく愛用できている白竹八ツ目バスケットに分けて持って行く。両手にズシリと重い、中には年末に行っていた年賀状企画にご参加いただいた233名のお客様へのお年賀も入っている、今年もこれだけ多くの方にお世話になったのだと体感できる瞬間だ。

 
新聞バッグ


今月中頃に高知新聞さんに掲載いただいた記事を新聞バッグにして届けてくださった近所のおばさんがいる。父や祖父の頃には虎竹の里を中心に60名もの方に働いてもらっていた、内職さんを含めると100名近くなるのではないか。だから、今でもご家族の方は、何かにつけて自分たちを気にかけて大事にしてくれているのだ。30軒ほどあった山の職人さんたちもそうだ、二代目や三代目の大きさを後になって、今頃になってようやく知っている。来年こそは恩替えしのできる年にしたい。


竹磨き脱衣籠のある温泉宿

旅館で使われる磨き脱衣籠、洗濯籠


温泉旅館さんの更衣室で使われている竹編みの脱衣籠の画像が送られてきた。もう何年も前に製作させてもらったものだが、磨きの竹ヒゴらしい綺麗な色合いに変わった籠が大切に使われているのが良く分かる。数枚の画像にズラリと並ぶ竹籠たち、何度も何度も繰り返して見ずにいられない、これだけの揃うとさすがに壮観だ。


磨き脱衣籠三個組、洗濯籠


実は、この四ツ目編みの衣装籠は三個組で製造しており当時はそれなりに需要もあった。しかし、磨きは竹表皮を削る工程だけでも手間と時間がかかる、このような大型の籠だと意外に思われるほど長い竹ヒゴを使うので良質の竹材が必要だ。一つ、二つは出来るだけでは仕事にならないので現在では職人も引退してしまい竹虎での販売も止めている。


竹磨き脱衣籠、竹虎四代目(山岸義浩)


何度も言うけれど磨きの竹細工は、竹表皮を薄く剥いだ竹ヒゴで作る。だから編まれたばかりの籠のは青々とした美しさは格別だ。それが30組だとしても大中小のサイズ合わせれば90個もの量になって工場に積まれていると、そこだけが輝いて見えていたものだ。


竹磨き衣装籠、ランドリーバスケット


それでも今回、同じ籠のご注文を頂いて最初はお断りさせていただくつもりでいた。全てがギリギリでご要望通りには、到底できないと思われたのだ。


竹磨き衣装籠、ランドリーバスケット


ところが、そこにあの更衣室の竹籠の画像が届いて気持ちが変わった。あれだけの場所になら何とかしたい、何とかせねばならないだろう、考えれば知恵も沸く。来春あたりになれば改めて30年ブログでご報告させてもらいます。


籠目の魔除け

 
虎竹六ツ目ランドリーバスケット


「昔より目籠は鬼の怖るるといい習わせり」と江戸時代の「用捨箱」という随筆に書かれてる事を知った。竹細工には編み目を籠目とも言って様々な種類があるけれど、沢山ある中でも六ツ目編みは典型的な形で虎竹六ツ目ランドリーバスケットなどシンプルな籠に多用されている。この六ツ目の六角形に不思議な力があり魔除けの印として使われていたそうだ。


虎竹六ツ目ランドリーバスケットを編む竹職人


現在では、そのような六ツ目編みの事など若い職人はあまり知らないのかも分からない。しかし、この30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」では、竹の事しか知らないので当然と言えば当然なのだが「竹」という文字と共に「籠」という漢字が度々登場する。この「籠」という文字は「龍」の上に「竹」がのっている事から籠が龍を封印する神秘の力があるとも伝えられ、庶民が着る衣類のデザインにも取り入れらるだけでなく武将にも好まれていたと言う。ちょうど新春を迎えようとする、このタイミングで武将と言えばこの伊達政宗に登場いただく他ない(笑)。




山梨県で撮られた民家の写真を見た事がある。茅葺屋根のテッペンに届きそうな程の長い竹竿に六ツ目編みの籠が取り付けられていた。これは、目の多い物が悪霊を追い払うという風習だが、このような目に見えない力を敬い崇める言い伝えは籠に限らず箕なども含めて竹や笹には多い。


虎竹六ツ目脱衣籠


竹と日本人がいかに近しい関係だったかと改めて思う。籠目の伝承などは知らなくとも、竹の温もりや丈夫さ、継続利用可能な天然資源として見直されるべき存在感は、実は昔よりも高まっている事を来年も声を大にしてお話ししたい。


勢ぞろい「にっぽんの暮らし展 2023」のレアな竹籠たち

 
代官山蔦屋書店「にっぽんの暮らし展 2023」の竹籠たち


代官山蔦屋書店は敷地内にお洒落な建物が立ち並んだワクワクするような場所になっているが、奥に進んだT-SITE GARDEN GALLERYで新春3日から開催される「にっぽんの暮らし展 2023」温故知新-日々のうつわと道具-で展示販売させてもらう竹籠達が概ね出揃った。前回にもお話ししたかと思うけれど、試作やワケ有の籠で手元に残っているものが沢山あるので、今回は久しぶりのリアル出展でもあるからウェブサイトの定価から考えれば驚かれるような思い切ったお値段にしている。


米研ぎざる


現品限りのものが多いのでご注意いただきたいが、竹籠や竹ザルは長く使ってこそ経年変色が楽しめて風合いも愛着も増してくるものだ。編まれたばかりの青々とした籠ではないものの、どれも正真正銘の新品なので何卒よろしくお願いいたします。


御用籠力竹


近年、淡竹は開花時期で、真竹は管理不足から来るテング巣病の蔓延で全国的に竹材の品質が低下している。竹の伐り子不足がそれに拍車をかけていて、今までならあまり考えられないような竹割れや弱さを感じる事がある。今回の御用籠にしてもUの字に曲げる力竹の表皮が剥げてしまっているが強度に問題がなければそのままお分けする事にしている。言われないとお気づきにならない方も多いけれど、他の籠も似たような状態でこれが日本の竹細工の一面を象徴的に表している。


白竹麻の葉脱衣籠


白竹八ツ目バスケット


白竹麻の葉脱衣籠と白竹八ツ目バスケット、共に元々は真竹を晒した真っ白な竹肌だったものが長く愛用するうちに美しく渋い飴色に変わり、そして風合いが増して手放せなくなった竹籠たちだ。しかし、このような溜息が出るようにな竹細工も竹林の健康な竹があってこそなのだ。


干しざる


椎茸を干したり、大根を干したり自分たちの地域では今でも竹が普通に暮らしの中で生きている。


茶碗籠に使う


生活の道具として愛されてきた竹ざるや竹籠、素朴だけれど昔から使われ続けてきた竹たちに是非出会って頂きたい。


虎竹網代弁当箱


【にっぽんの暮らし展 2023】温故知新-日々のうつわと道具は、代官山T-SITE GARDEN GALLERYにて2023年1月3日(火)~2023年1月11日(水)まで。もちろん虎竹もご覧いただきたいと思っているので網代弁当箱やピクニックバスケット、ランチボックスも少しですが出品されます。




再発見!孟宗竹の魅力

 
孟宗竹


師走のニュースを見ると門松を作っている様子が映っていたりする。年々、正月らしい特別な気分も薄れつつあるが、このようにが主役となり登場する季節はやはり新しい年を迎えるのだという少し気が引き締まる思いがする。門松に使われている竹は青々として画面を通してさえ気持ちがいい。使われている竹は立派な真竹である、あの青さ、ハス切りされた身部分の白さは誰もが心地良く感じられる色の取り合わせだろう。


孟宗竹


全国的にみれば竹林面積の中では真竹が6割を占めていて圧倒的に多いのだが、自分たちの虎竹の里は当然ながら虎竹(淡竹の仲間)ばかりで真竹はほとんど皆無に近い。そこで、かつて門松を大量に製造していた時には真竹ではなく孟宗竹を使っていた。袖垣の芯に孟宗竹を使うので、県下より伐採された竹材が連日トラックに満載されて運ばれて来ていたから、それこそ孟宗竹なら太いものから細目のものまで何でも豊富にあったのだ。


孟宗竹


こうして何度も孟宗竹と言っているけれど、どんな竹か分からない方もいるかも知れない。一般的に「竹」と言えば真っ先に思い浮かべられるのは、真竹か孟宗竹だが孟宗竹は日本最大級に太く、とにかく大きい。京都嵐山等にある手入れの行き届いた竹林は主に孟宗竹だ、サイズだけでなく良くご覧になればなるほど美しく魅力的な竹である。


孟宗竹


大陸から日本に渡ってきた江戸時代には、武家の庭でステイタスシンボルとして競って植えられたように風格と共に品性まで感じる竹だから手入れされた竹林では半日過ごしていても飽きることがないくらいだ。


竹葉


美味しい筍のために広げられた竹林が多いものの現在では誰も管理する事かできなくなり、放置竹林などと不名誉な呼び方をされる悲劇のヒロインでもある。しかし、大きい竹だけにしっかりと管理すれば、これほど人の心を動かす美しい竹林となる。




虎竹の里を彩る花火

 
夜の虎竹の里


虎竹の里にあるJR安和駅はホームのすぐ下に須崎湾、さらに太平洋が広がる美しい景色が眺められる駅として鉄道ファンならずとも有名な場所だ。ボクが小さい頃には2名ほどの駅員さんが常駐する大きな駅舎があった、海の広がる景色が当たり前だと思っていたので、何かのポスターに選ばれて東京の山手線に貼られているのを見た時にはビックリした。


実はこの場所も竹虎とは非常に縁が深い。トラック輸送が中心になるまでは日本の物流は貨物列車だった、竹虎で製造された竹材や竹製品はこの駅から貨物に積まれて全国各地に運ばれて行ったのだ。汽車の時刻はカッチリ決まっていて、出発が遅れるなどは許されなかった、貨車一両分の製品を作るために当時は24時間3交代制で仕事をしていたのだから日本の経済成長と言おうか、凄い時代だったようだ。


虎竹の里の花火大会


そんな安和駅を見下ろす事ができる峠道も、1997年に公開した竹虎ウェブサイトで写真公開して以来、割りと知られる場所になった。ここからの景色は本当に素晴らしい、少し季節はずれだが焼坂の山々を彩った花火も良く見える所だ。




足付きの虎竹自在垣

虎竹自在垣足付


今年の夏の終わり頃だった、待ち合わせに少し時間があったので集合場所だった近くの住宅街をブラブラする事にした。夕方だったけれど、太陽は照り付けムシムシとしているから日差しを避けて小さな路地に入った。その突き当りには見事な建仁寺垣が設えてられている、凄いなあと思って見ていて何気に振り返ったお家の庭に虎竹自在垣の足付が置かれていた。


古い自在垣


外で雨ざらしで使うので色は褪せてしまっているが、まだまだ活躍しているようだ。このように思いがけず虎竹に出会えるたびに感激できることは本当に幸せだと思う。先日、別のお客様から戻ってきたボロボロの自在垣を見ていて改めて思い起している。


虎竹自在垣足付


虎竹自在垣


自在垣は自由に伸び縮みするので使い勝手が良い、しかし元々は好きな長さに広げておてい固定して使うものだ。その点、足付きの自在垣は自立するので別の場所に移動させて幅を合わせて広げる事ができる。そこで、移動時などに金具で衣類や手をキズ付けないわようにシリコーンシーラントというゴム状の柔らかい素材で金属部分をカバーしている。


留学生60名の竹虎工場見学

 
留学生竹虎見学、竹虎四代目(山岸義浩)<br>


高知にこれだけ沢山の留学生がやって来られているとは知らなかった。龍馬学園さんという県下最大の総合専門学校から60名もの参加者と連絡を頂いた時には、何かのイベントか特別な催しでもあって海外からこの時期だけ来日されているのかと勘違いしていたほどだ。


観光バス


竹虎の店舗は、昭和45年3月のオープンから国道56号線沿いにあって当初より観光バスの立ち寄り先にしていただいてきた。現在では道の駅などが充実してきて長距離ドライブの休憩所には困る事もなくなり、その役割はずっと前に終えているが、大型バスが何台も連なって停車していた当時を少し思い出す。


留学生竹虎見学、竹虎四代目(山岸義浩)


学生さんたちは東南アジアの国々から来られた方ばかりだが、皆さん優秀で驚いた。この春に来日されたという学生さんでも、しっかり日本語を理解されている。来日前によほど語学の勉強をされてきたに違いない、もしかしたらコロナで進路を随分と影響を受けられた方もいるのではないか?そんな困難を乗り越えての皆様だからかも知れないが、学ぼうとされる意識の高さを感じる。


留学生竹虎見学、竹虎四代目(山岸義浩)


留学生竹虎見学、竹虎四代目(山岸義浩)


工場の方で虎竹加工の現場や虎竹袖垣作り等をご覧いただいた後は、店舗の中で主だった日本の竹細工や竹製品のお話しをさせて頂いた。竹は熱帯性の植物で、温かい地域には世界中に生育している植物だ。もちろん学生の皆様の出身国である東南アジアの国々には竹が豊富で沢山の竹製品を作り輸出している、だから少しは竹の事について知識があるのかもと考えていたが見事に期待が違っていた(笑)。


留学生竹虎見学、竹虎四代目(山岸義浩)、青竹踏み


竹に対しては、竹虎のインターンシップに参加いただく日本の大学生と同じ認識しかお持ちでない。しかし、考えてみれば竹林が多くて竹製品を大量に製造している国々と言っても若い学生さんにとっては関係のない話で興味がなければ知らないのは当然の事だ。青竹踏みも知っている方が1名しかおらず、竹を手に取り良さを知っていただくと言う課題は日本でも近くの国々でも世界共通なのだと痛感した。




お母さんの肩を抱いた事ありますか?高知新聞K+と大火災

 
高知新聞K+掲載、竹虎四代目(山岸義浩)


お母さんの肩を抱いた事があるだろうか?多くの方はあまり無いかと思うので、今度機会があれば是非お願いして抱かせてもらってほしい。あんなに大きく、強く、たくましく、やさしい母の肩は、自分が思うよりずっと軽い。ボクは「まるで化学工場の火事のようだ」と真っ黒になった消防隊員がつぶやく大火災の中でそれを知って愕然とした。そして、今まで気づかなかった心の奥底を見たような気がする。


先日、いつもお世話になっている高知新聞さんのK+インタビューに掲載いただいた。学生時代の頃からの話を色々と尋ねられている中で、どうして避けて通れないのがボクが竹屋を継ぐ事になった一番の理由。話せば長くなるのでご関心のある方は下のYouTube動画でご覧ください。


竹虎本社工場


竹虎は長い竹を扱うので工場の敷地は結構広い。中央に見える白い建物が本社と本店だけれど、寝つきの良い自分が、何か声が聞こえると思って小雨の中、傘もささずに真っ暗な道を歩いていった先は工場の端。写真で言うとちょうと真ん中の下、青いトラックが通っている辺りだ。


実は火事を見つけた時、そこには中学1年生くらいの少年が二人いた。どんどんと大きく、高く燃え上っていく炎に照らされて茫然と立ちすくんでいた。夏休みだったので工場の前の海水浴場には、キャンプのお客様も多かった、雨宿りをしていた工場のひさしの下で焚火をしていたのかも知れない。


お二人が火災に関係しているのか分からないけれど、あれだけの大火だ、どちらにしてもずっと大人になっても忘れていないと思う。そして、もし仮に自分たちのほんの少しの過ちで全てが灰になったと心を痛めているのなら、このブログを読んでいるのなら、悔やむ必要など全くないと伝えたい。むしろ会って感謝したいくらいだ。竹虎四代目は、あの夜生まれた。




代官山蔦屋書店「にっぽんの暮らし展2023」に出品させていただきます

 
にっぽんの暮らし展2023、代官山蔦屋書店


代官山蔦屋書店エリア内にある代官山SITE GARDEN GALLERYでの【にっぽんの暮らし展2023】温故知新-日々のうつわと道具-は長く続いており、今回で10回目となる人気企画らしい。年末から楽しそうな催しが新年1月末まであるのだが、竹虎は1月3日(火)~11日(水)までの期間ポップアップ出展させて頂く予定だ。


パリ展示会


実は、そろそろリアルでの展示も面白いなあと考えていた矢先だった。コロナ直前にスタートしたパリでの竹籠展示がギャラリーが開いたり閉まったりを繰り返した後に中止となり、リオン、ツールーズと巡回する予定も無くなってしまった。十数年も本店以外での竹製品の紹介をした事がなかったが、やはり実物をご覧いただき触れてもらえるのは嬉しい事だと改めて感じていたのだ。


竹籠、竹細工、竹虎


そこにタイミング良く代官山蔦屋書店さんからお話しをいただいた。竹虎には自分の想いや、職人のアイデアで数えきれないほどの竹籠のプロトタイプなどユニークな籠たちがある。もちろん二度と出来ない名人の籠など、手元に置いておきたい竹細工もあるのだけれど、皆様にご愛用いただいてこそ輝く竹達も多い。


茶碗籠


まだ、どのような竹編みをお届けできるのか未定の部分もあるけれど、なにせ新春3日からのお正月企画なので少しビックリするような特別価格も考えている。30年ブログ「竹虎四代目がゆく!」をご購読いただいている方々には是非1月3日の初日にお越しいただきたい。損はさせません(笑)。


竹脱衣籠


とは言え、場所が限られているので角型の脱衣籠のような大きな籠はあまり置けない。丸型のランドリーバスケットで、お使いいただきたいものが2点くらいあるのでお送りするつもりだ。


経年変色


この竹の経年変色の美しさは、どうだろう?青々とした磨きの真竹手提げ籠が使っている間にこのような渋い色合いになる。ボクが「時間職人」と呼ぶのがお分かり頂けるのではないかと思う。篠崎ざるの職人さんが教えてくれた「竹は、作る人と使う人で完成するものなんだよ」この言葉には重みがある。


竹のある暮らし


経年変色の竹、かって日本の台所や居間にいっぱいだった竹、まさに日本の暮らしと共にあった竹を思い出して欲しい。新春は初詣をすませて代官山蔦屋書店へどうぞ。


代官山蔦屋書店


この竹ざるは60センチサイズと少し大きいので今回の展示ではご覧いただけないかと思う。高知では「サツマ」と呼ばれる鹿児島の竹職人伝来の伝統の竹ざるだ。全国的にも珍しい孟宗竹を使うが、良質の真竹の多くない地域性と土佐らしい武骨さが好きなのだ。どうやって編まれるのかYouTube動画も用意しています。




竹虎年賀状2023を制作中

 
竹虎年賀状2022


自分の場合、年賀状は新年の挨拶というよりも一年報告や抱負を知っていただくために毎年送り続けてきた。しかし、すでに次回で35年目の製作とあって方向性も少しづつ変わってきてはいる。今年は寅年だったので、そのままだけれど「フーテンの寅さん」であった。来年は一体どんな年賀状になるのか?楽しみにされている方も多いのが何とか続けられているモチベーションとなっているが、お待ちいただく方に少しでも喜んでもらえる一枚にしたい。




ちなみに最近「NO ●●●●● NO LIFE」という言葉をよく耳にするようになった。時代だろうか?しかし、竹虎では2012年から「NO BAMBOO NO LIFE」と言い続けている。辰年だったので独眼竜正宗からスタートする、この新春動画をご覧いただきたい(笑)。



昭和の竹屋さんと虎竹魚籠

 
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あれは何時だったか?深い渓谷の流れを右手に見ながら、長い下り道をおりた所に小さな竹屋さんがあった。中に入ってみたら様々な竹ざるや竹籠がならんでいる、一目で地元の竹を使った細工だと分かるので興味がわいた。「ごめんください...!」声をかけても静まりかえっている、しかし奥に進むと少し高くなった仕事場があって、ついさっきまで職人がそこに座って竹割りでもしていたかのような温もりさえ感じた。


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一枚の白黒写真が飾られているのが目に付く。昔のこのお店だろうか?引き戸のある入り口には大きなクマデが二本掛けられ、立派な竹箒も見える、梁には腰籠や小さな手付き籠が連なって吊り下げられ、奥の天井には井型に組んだ丸竹に長角の虫籠、左側の古びた柱には六ツ目編みの花籠。そして、四ツ目底の干ざるや大きな盛籠、米研ぎざるなど大小の竹編みが無造作に並ぶ畳敷きの中央に頬被りしたエプロン姿の店番らしき若い女性が写っていた。ハッと目が釘付けになる、こちらを見る優しい眼差しがまるで母を見ているようだったからだ。


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しばらくすると、白髪のご婦人がゆっくりと表れて静かに話しだした。お茶の湯気が差し込んで来た光に揺れている、この仕事場は壁の上側に大きな窓が設えられていて細かい竹の仕事にピッタリなのだ。


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竹屋に嫁いで竹人となる、やはり母と同じだった。幸せな人生だったに違いない、亡くなられたご主人が撮った写真を見れば竹への想いも、妻への気持ちも良く分かる。渓流釣りが盛んな川筋にあって、魚籠作りの名人だったと言うご主人の真竹で編まれた魚籠を一つ頂いた。


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「同じような魚籠があるのに、どうしてですか?」わざわざ虎竹角魚籠を復刻した理由が人には分からないらしい。それは決まっている、あの白黒写真を見たからだ。


竹の手箒

手箒


この季節になると京都の竹職人が手作りした庭園用の手箒を思い出す。美しい庭の手入れには欠かせない道具のひとつだそうだが、あまりに綺麗に出来ていて天に向かって末広がりの形も縁起がいいので床の間飾りに置いたほどだ。しかも、素材の竹穂はその年に生えた新竹だけが使われているから驚いてしまう。しかし、なるほどとも思う、京都では若竹を使った図面竹が作られているのだ。虎竹の里などでは細工に適さない一年竹を伐採する事などないけれど、京銘竹の竹文化の中で生まれた逸品。長く使っても穂先の柔らかさを損なうことなく、苔の上にある落ち葉なども優しく取り除くことができるのだ。


キーボード用手箒


室内で使う手箒としては、パソコン周りで重宝するモロコシがある。


フガラ箒


石垣島の職人さんにいただいたフガラ箒は、自分たちにも馴染のシュロに似た素材だと思ったが、シュロよりしなやかで箒としては使いやすい。


ペット用手箒


固い茎と、ソフトな穂先を使ったペット用は絨毯などにからまった毛を取り除くのに適したスグレモノ。実は前々から竹虎らしい手箒を作りたいと思ってきたが、年末のお掃除の時期になってようやく構想がまとまった。来年には形にしたいと楽しみにしている。




続々・命名の父・牧野富太郎博士生誕160年!日本唯一の虎竹移植プロジェクト掘り上げ

牧野植物園ふむふむ広場


虎竹の里で掘り上げたを移植する先は、牧野植物園でも新しく整備されている「ふむふむ広場」と言う土佐の中山間地域に行くと見られるような石組みか印象的な高知の植物を集めた広々とした公園のような場所だ。サンサンと降り注ぐ太陽が眩しいくらいに日当たりの良い斜面が続いている、休日には家族連れの方などで賑わっている事だと思う。


牧野植物園ふむふむ広場の虎竹、竹虎四代目(山岸義浩)


この広場に通じる小道の両脇に虎竹を移植いただいた。気持ちの良い風が吹きぬける最高のコーナーなので、きっと元気に成長して多くの方を楽しませてくれるに違いない。


牧野植物園ふむふむ広場に虎竹移植
 

慣れた手付きで移植が行われている、さすが専門の職員さんたち、こうしたプロの皆様の手で管理いただけて安心だ。


牧野植物園ふむふむ広場に虎竹移植


牧野植物園ふむふむ広場に虎竹移植


ふむふむ広場案内


ふむふむ広場は、高知市内を眼下に望んで本当にのんびりできる広場だ。ボクは県外から来られた方に高知観光を訪ねられたら、真っ先に牧野植物園をオススメしているけれど、この美しい景色を見ると、もっともっと薦めたくなる。


牧野植物園ふむふむ広場に虎竹移植


牧野植物園ふむふむ広場に虎竹移植


牧野植物園ふむふむ広場に虎竹移植


牧野植物園ふむふむ広場に虎竹移植


虎竹移植


牧野植物園ふむふむ広場に虎竹移植


牧野植物園ふむふむ広場に虎竹移植


虎竹移植


この5株の虎竹たちがドンドンと成長し、何年か後には虎竹の里のような竹林になって、この小道が竹のトンネルとなれば素晴らしい。


牧野植物園虎竹移植


ふむふむ広場は五感を使って植物に触れ合うセンサリーガーデンだ。虎竹の里に見学に来られるお客様の中には生きている竹に初めて触ったという方も多いので、この虎竹がしっかり根付き成長した暁には竹肌を撫でて愛でてもらえるようになれば良いと思う。




続・命名の父・牧野富太郎博士生誕160年!日本唯一の虎竹移植プロジェクト掘り上げ

日本唯一の虎竹、竹虎四代目(山岸義浩)


虎竹の里には竹林に向かう細い山道が沢山通っている。季節になればこの道を通って虎竹が運び出されてくるのだが、今回運び出されて来た竹は根ごと掘り上げられているから特別中の特別だ。


虎竹の里


竹虎初代宇三郎が虎竹と出会った100年前、竹林面積は今のように広くはなかった。そこで、少しでも生産を増やすため山主さんを説得しながら竹林を増やしてきた歴史がある。初代は魅了された虎竹の可能性に心躍ったのだろう、そしてその当時も、きっと今日の自分たちのように竹を掘り上げ隣の山、さらにその隣の山へと植えていったのだ。


虎竹根巻


虎竹は不思議な竹で、この地域でしか美しい色づきを出してくれない、まさに地域の宝だ。しかし、強い生命力をもった竹だから移植した竹が年々増えていき竹林に変わって行く山々を眺めた時、宇三郎は感無量だったに違いない。


虎竹根巻


虎竹を移植して増やしてきた当時を知る山の職人が、まだ残っておられるのも幸運だ。虎竹の里は昔から田畑も少なく「哀れむべき浦にて候」と代官が書き残しているほど貧しい土地柄、年貢としても献上されていた虎竹は地元の宝として希望の光として守られてきた。


虎竹根付き


その「希望」をスコップにのせると急峻な坂道をスムーズに下ることができる。


虎竹移植


山道を下ってきた竹達、アドバイスを頂戴して細めのものばかりを選んだけれど正解だった。


日本唯一の虎竹


色づきは最高の虎竹たちだ、虎模様が全体にしっかりと入っている。


虎竹積み込み


虎竹積み込み


トラックに積み込まれて、竹葉が乾燥しないよう養生してもらう。これから40数キロ離れた牧野植物園まで運ばれていき新しい土地に根付く事になるのだ。




命名の父・牧野富太郎博士生誕160年!日本唯一の虎竹移植プロジェクト掘り上げ

虎竹移植プロジェクト、牧野植物園職員


命名の父・牧野富太郎博士生誕160年ほ記念した日本唯一の虎竹移植プロジェクトは、ついに虎竹の掘り上げの日を迎えた。竹虎の職人に加えて、日頃から植物の管理に精通された牧野植物園の職員四名に加えて、アドバイザーとしてもプロの方にお越しいただいて本当に心強い。


虎竹根堀り


そもそも虎竹は伐採するものであって、根堀りが許される竹ではない。山主は元より、竹林管理を任されている山の職人は何年もに渡って竹林を見続けているから竹根を切ることすら全く良い顔をしないのだ。


日本唯一の虎竹林


しかし、今回だけは牧野博士の生誕160周年であり、来春からのNHK朝ドラ「らんまん」効果があり県内外からのお客様に日本唯一の虎竹を知っていただく絶好の機会でもある。日頃から一度移植できるチャンスがあればと思っていたので、今このタイミングしかないと思った。


竹虎四代目(山岸義浩)、虎竹林


厳選した虎竹


山の職人と共に厳選した虎竹。しかし、本当にこれで良かったのか?周りの竹達に何度も訊ねてみたくて3日もかかってしまったけれど、それでもまだ迷いがないと言えばウソになる。


虎竹根堀り


虎竹根堀り、竹虎専務


虎竹根堀り


選んだ五株に、ほぼ同時にスコップが入った。これが最初で最後の虎竹掘り上げだ。


虎竹根切り


竹は天然の鉄筋コンクリートと言われるほど、丈夫な地下茎が縦横無尽に伸びて竹同士で繋がっている。この地下茎を丁寧に切り離していないと掘り上げた竹にも良くないし、残った地下茎にも良くないそうだ。


虎竹根切り


地下茎が切断されるが何か見覚えはありはしないだうか?今では少なくなっている竹根の印鑑はこの地下茎を使う。虎竹ではないけれど、昔はこの竹根を堀集める職人もいた。だから根に近い竹材を使う尺八の材料なども割と手軽に揃えられた時代があった。


虎竹根


掘り上げた竹根には、竹葉が落葉して積み重なりできた栄養タップリの腐葉土が付いている。この土に独特の虎模様を浮かび上がらせる特別な細菌がいるかと思うと不思議な気持ちだ。


虎竹根


竹の落ち葉と聞いてもピンと来ない方が多いと思う。竹も紅葉するけれど他の植物のように秋ではなくて春に葉が枯れた色目になり落葉する、すぐに青々とした新葉がでるので多くの方は気づかない。一年中、清々しく元気な竹だと思われていると思う、だがその実、落葉した竹葉は豊かな土壌を作り、そのお陰で美しい竹林が育まれているのである。


虎竹根巻


さあ、いよいよ掘り上げた虎竹根を養生する根巻きが始まった。




#竹虎グラム #第一回竹虎インスタキャンペーン @taketora1894、入れてインスタ投稿ください!

 
第一回竹虎インスタキャンペーン


インスタグラムに投稿いただくお客様が増えてきて本当に嬉しく思っている。それぞれに凝った綺麗な画像は見ているだけで楽しくなってくるが、お客様によって思い思いのご愛用の仕方があるのだと感じて、改めてしっかりした竹製品をお届けしたいと気が引き締まる。


第一回竹虎インスタキャンペーン


竹は昔から衣食住すべてに関わり日本人と共にあった、最近少し竹が忘れられているのではないか?なんて言ったりするのが恥ずかしくなるような皆様の竹への愛に心が震えてくる。


第一回竹虎インスタキャンペーン


そこで更に盛り上げたいと開始した第一回竹虎インスタキャンペーンは、皆様のご投稿に「#第一回竹虎インスタキャンペーン」「#竹虎グラム」「@taketora1894」と3つのキーワードを入れて頂くと、投稿いただいた方の中から一名様に一点限りの日本唯一の虎竹蓋付き小物籠が当たるという企画だ。この虎竹蓋付き籠は、随分と前になるけれど外部の方に関わっていただき結構力を入れて試作していたプロトタイプなので、かなりレアな竹籠。


第一回竹虎インスタキャンペーン


いよいよ明日15日が最終日となっているので、インスタされている方は是非宜しくお願いいたします!




真竹筒の景色

 
真竹筒


身の厚い真竹の模様に気を取られてしまうけれど、この模様は維管束という水や養分を運ぶ大切な管だ。竹表皮に近いほど密度が濃くなる様子が良くお分かりいただけると思う、だから竹は表皮に近いほど強いのだ。しかし、竹の切断面ばかりに気を取られてしまっている場合ではない、ご注目いただきたいのは竹の切り口なのだ。別の特別な鋸ではない、普通にホームセンターに売られているような道具を使っているから「弘法筆を選ばず」だ。


真竹


これらの真竹は主に花入れとして使われる。竹に花を飾ると言えば茶道や華道を思い浮かべるかも知れないが、別にそのような型にはまった使い方ではなくとも食卓でも玄関でも居間にでも一輪を入れる余裕を楽しみたい。


真竹筒


だから竹筒には全てオトシがついている。竹は割れる事があるのでオトシは身の部分を削って薄く仕上げられる、竹は外皮と内皮の収縮率の違いで割れるから実は薄い方が割れにくいのだ。それにしても美しい切り口である、うっとりしてしまいそうになる。


真竹筒


真竹は12月、1月に伐採して油抜きして2~3ヶ月は天日干にする。それから2~3年は倉庫に入れて自然乾燥させてから使う。天気の良いこの日も沢山の丸竹が、気持ち良さそうに日光浴をしていた。


竹筒


それにしても、シミの入ったいわゆる「景色」の良い竹が多い。真っ白な竹肌が喜ばれる事もあれば、このような独特の柄を好まれる方も結構おられるものだ。このような竹材ばかり集めるのは、さぞ大変ではないかと思われるかも知れないが、シミの出る竹林というのがあって同じようにシミのある真竹が沢山生えているそうである。虎竹も他の土地には生えない事を考えれば、つくづく竹は不思議だ。


門松と孟宗竹と真竹と青竹箸

 
門松


流石に師走だけあって毎日が早い、いや正確に言えば別に12月だから特別な訳でもなく月日は足早に過ぎていく。しかし、本当に年の瀬だろうか?と思ってしまうのは昔のように門松作りをしなくなったのも一つあるかも知れないと思っている。あの頃なら、そろそろ竹だけでなく縁起のよい松や梅を集めに行かねばならない時期だ。


孟宗竹


竹虎では門松を孟宗竹で作っていた。それは手頃な太さと色合いの真竹が少なかった事もあるけれど、とにかく当時は虎竹や白竹の袖垣を大量に製造していたので孟宗竹が山積みされていて材料に事欠かなかったのだ。


真竹


太い真竹が手近にあれば、当然使ってした。やはり青々とした美しさは真竹には敵わない。


青竹酒器


だから青竹酒器など清々しい竹を味わっていただきたい場合には必ず真竹を使用する。


青竹盃


ただ、この青さは全く長持ちしない。一回限りの贅沢な酒器セットとなる、まさに生鮮野菜と同じようなものなのだ。この青竹盃も切り口あたりから乾燥してきて見る見る白くなっていく。


正月箸


そこで、昔からこの青竹の色をできるだけ長く保たせる試行錯誤が数知れず行われてきた。しかし、今のところ難しいのが現状で、天然青竹の色合いに似せた塗りが精一杯である。竹は竹林の姿が一番だと先人が言ったが、その通りなのかも知れない。


青竹塗箸


とは言え、青竹箸をその時限りで使用するなど、どこかの高級旅館か料亭くらいだ。繰り返し洗っては使う事のできる塗の青竹箸は重宝する。


100年後の煤竹

煤竹パーティーバッグ


これは渡辺竹清先生と言って、網代編みでは右に出る者がいない巨匠作のパーティーバッグだ。ニューヨークに本店のある有名宝石店T社の注文で限定製作されていた時のプロトタイプに金具を作ってもらって自分用に愛用している。凄い逸品であるが、今回はこのバッグに使われている竹素材のお話しをしてみたい。


渡辺竹清作煤竹籠バッグ


この小さなバッグを持つ女性は幸せである。ちょっとした化粧道具だけ入れて颯爽と会場に現れたなら、必ず注目の的となるからだ。もちろん、日本伝統の匠の技があるけれど、この竹素材の持つ力もなかなかである。この竹素材を煤竹という。


炭化竹


煤竹と炭化竹を同じよう考えられている方がいるが、全く違うのでこれを機に考えを改めていただきたい。炭化竹は人工的に温度と圧力をかけて蒸し焼き状にした竹で、確かに似た雰囲気にはなるが竹としては別物だ。


囲炉裏


見上げるとズラリと割竹が並べられた囲炉裏に座った事がある。もちろん竹は煙で真っ黒になっている、本当の煤竹はこのような囲炉裏のある民家で100年、200年という長い風雪を耐えて生まれる竹なのだ。


藁ぶき屋根、竹虎四代目(山岸義浩)


囲炉裏のある藁ぶきの家など、高知の田舎でもほとんども見かけない。つまり本当の煤竹が生まれる環境はすでに日本にはなくなっていると言ってもいい。


藁ぶき屋根の竹


このような民家で毎日の生活に囲炉裏で火を焚く事によって出来あがる煤竹、この屋根に縛られた竹の100年後はどうだろうか?期待したい。




牧野富太郎博士生誕160年!牧野植物園に虎竹移植プロジェクト

 
日本唯一の虎竹


虎竹の命名の父である牧野富太郎博士生誕160年の節目に、牧野植物園に改めて虎竹を移植したいと思っていた。植物園のリニューアルを機に虎竹を移植させてもらってから早いもので20年が経っている、下に掲載しているYouTube動画「牧野植物園、あれから20年!(The Kochi Prefectual Makino Botanical Garden)牧野富太郎博士命名の虎竹は!?」でも話しているけれど、どうも虎竹に元気がない。




テングス病など抵抗力が弱くなってきた竹に見られる症状もある。そんな折に生誕の節目と共に、来春からはNHK朝ドラ「らんまん」で牧野博士がモデルとして登場されると聞いて、これはちょうどタイミングではないかと感じたのである。


牧野植物園に虎竹移植プロジェクト


虎竹移植プロジェクトは、幸いにも牧野植物園さんからは移植の快諾を頂いた。後は虎竹の選別という事で候補の竹林に数日通って植え替えに適した虎竹を探す事になった。


日本唯一の虎竹


100年近い前には虎竹の竹林面積は今のように広くなくて、虎竹の里では竹を移植しながら竹林を広げてきた歴史がある。当時は植え替えと言っても同じ気候、土質の狭い地域だったから虎模様など全く気にすることなく移植したそうだ。最初は色の付かない虎竹も、時が経つにつれて色づきの良い竹に育ったそうだから、さすが虎竹の里だと思う。


牧野植物園に虎竹移植プロジェクト


ところが、今回の移植は40数キロも離れた五台山の牧野植物園。全く違う土地では虎竹がうまく育った例は今までにない、だから出来るだけ選りすぐった竹を持って行きたいと思っているのだ。若いうちは色づきは良くないけれど、元気な若竹でしかも色づきがあり、太さも頃合いの竹となると数は限られる。しかも、ただの伐採ではなく、根切りして運んでいくのである。竹根に触れる事を山の職人は極端に嫌がる、今度も山の職人と同行して許しをもらった竹だけを大事に持っていく。竹林を繋いできた先人に最大限の感謝と敬意を払いながら、命の山道を今日下って行く。




明日のウェブセミナー「日本文化と暮らしに息づく竹~竹の無限の可能性」

 
竹、bamboo


いよいよ明日になったJAPAN HOUSE Los Angelesのウェブセミナー「Bamboo in Japanese Culture & Lifestyle | Limitless Potential of Bamboo(日本文化と暮らしに息づく竹~竹の無限の可能性)」、アメリカを中心に海外の方向けの講演となっている。日本に暮らしていると竹は何処にでもあるので、意外に思ったりするのだが実は北米には竹がなく人工的に竹を栽培し、竹林が造られていて庭園用などには人気がある。嘘か本当か分からないけれど、竹が庭に植えられている家は豪邸だそうだ、国内で竹が生えすぎて困っている方に聞かせたい(笑)。けれど、そう言えば虎竹の里に来られた会社だけでも何社もあるので、アメリカには竹を育てる会社は結構多いのかも知れないと思っている。


孟宗竹


竹にはテーマを絞り込まないと何の話か分からなくなるくらい様々な顔がある、講演では自分たちの紹介をさせて戴いた後に「日本文化の中の竹」「暮らしの中の竹」というふたつの切り口でお話しさせてもらう予定だ。内容にはボクがいつも話すかぐや姫が登場する。ご存知のように竹から生まれた美しい姫だが、竹から人が生まれるのか?素朴な疑問や不思議な気持ちも、こんな神々しい竹の姿を見ていると何となく納得できはしないだろうか?


竹になる筍


かぐや姫は、わずか3ヶ月で成人する。これは竹が竹皮を脱ぎながら親竹と同じ大きさに成長する期間と同じだ。おまけに3年で月に帰るのだけれど、竹も3年で伐採するから竹取物語は日本最古の日本人と竹のストーリーだ。


光る孟宗竹


ウェブセミナーでは、そこまでお話しできないけれど、かぐや姫が生まれた竹を見つけた事がある。雨天に竹林に行く事は少ないので、あまり遭遇する機会は少ないが梅雨時にちょうど成長したばかりの孟宗竹が光輝いている。竹取の翁もビックリ仰天したのではないか!?暗い竹林の中に浮かびあがって、こちらに迫ってくるかのような迫力すらある。


ところが、この白く光を放つ孟宗竹は竹取物語が成立した時代には日本にはなかった外来種だ。ええっ!?それなら本当のかぐや姫の生まれた竹は何だったのか?明日は、そもそもかぐや姫をご存知ないであろう海外の方ばかりなので、こんな話は混乱しそうだからできません。


日本文化と暮らしに息づく竹~竹の無限の可能性(Bamboo in Japanese Culture & Lifestyle | Limitless Potential of Bamboo)」は、どちら様でもウェブサイトに飛んでもらい「Register Now」ボタンから無料でお申込みできます。
※記載の時間はアメリカ西海岸時間ですが、日本時間では12月8日午前10時開始です。




暮らしの中の背負い籠「かるい」

 
かるい、背負い籠


背負い籠の中でも、「かるい」は独特だ。ちょうど全国に数多あった箕の中でも日置のか特別だったように、狭い地域に特化して進化してきたスタイルなのだ。普通の背負い籠といえば円柱形かダ円、四角形いずれにしても寸胴型で少しでも沢山の荷物が入れられるように考えられ、肩から下した時に安定して置けるように作られている。


背負い籠、かるい


しかし、この背負い籠かるいは横はからみると底すぼみの逆三角形の形をしており、最初は少し首をかしげたくなる形状だと思っていた。まず、背負う容量が少なくなる、そして何より底が狭くなった逆三角形では安定して置けず、倒れてしまって使いづらいのではないか?


ところが、このかるいの里に来てみて籠が長く使われて来た理由が分かった。かるいは深い渓谷と高い山の連なる宮崎県高千穂にも近い日之影町で編まれていた。急峻な土地では底の広い籠よりも、この形が安定して置くことができるし、キツイ傾斜に置いておけば担ぐのにも都合がよい。木立の中を籠を気にせず歩けるように、かってのかるいは使う人の肩幅に合わせて作られてきた事も知った。


背負い籠、かるい


縁側に無造作に置かれているかるいは、今でも生活の中で愛用されていて良い色合いになっている。反対側を覗いてみる、背中の当たる部分は擦れもする、汗もかいて使うから、その部分だけ色落ちしたようになっていて本物の味がある。さて、このかるいも元々は目が覚めるような真っ青な一本の真竹だった。竹の色合いと共にかるい作りの名人・飯干五男さんの流れるような技をご堪能ください。



暮らしの中の竹細工

 
暮らしの中の竹籠


「竹のある暮らし」と30年来言ってきているけれど、日本の今の生活では地方に暮らしている人でさえも意識していないと竹と触れ合う機会など皆無の方も多いと思う。ボクの小さい頃には、居間も台所も竹だらけであった。小学校の時に新築された自宅では、県外から来られるお得意様に宿泊いただくのが常だったから二階は旅館の客間のような作りになっていた。


虎竹の里は、交通不便な所にあって当時はホテルや旅館などが近くになかったのだ。来られるのは竹関係の方ばかりなので、自然と使う食器類は配膳するお盆などにいたるまで全て竹製が使われていた。だから、もしかしたらボクの記憶は少し偏りがあるのかも知れないと最近思っている。


水切り籠


しかし、それでも当時は近所の友達の家にいけば、まるで色でも塗ったのか?と知らなければ思ってしまうような美しい経年変色した竹籠などは普通に転がっていた。


脱衣籠


これは底部分が上げ底になっていて通気性抜群の脱衣籠だ。本体編みは竹表皮を残してあり、口巻と足部分は竹表皮を薄く剥いだ「磨き」なので変色具合が違っていて、これが又たまらない。そこまで古い籠でないはずなのに、ここまで綺麗に進化するのは昔から良材の出る竹林で伐採された素材だからかも知れない。普通は右巻で仕上げられる口巻が反対に巻かれてるのに気づいた方はかなりのツウである。そのとおり左巻の籠なので、九州の特定の地域の籠でなければ職人は、きっとが左効きだと推察できる。


水切り籠


この水切り籠の口巻も磨きである。時間が経つことに飴色から赤みがかったこげ茶色のような色合いに深みが出てくる。内側に滑らかで水分をはじく竹表皮がくるように編まれてるのも職人の知恵で、収納するものを傷めず水きれが早くなる。




ナリヒラダケ(業平竹)について

 
ナリヒラダケ (業平竹) 、ダイミョウチク (大名竹)


「この筍は旨いよ、昔は大名しか食べられなかったからね」そう言って、出してもらった炭火焼きの大名竹は絶品だった。高知県特産の四方竹などもそうだが、小振りな竹の筍は総じて美味しい、大名竹とは業平竹(ナリヒラダケ)の事で高さは4~8メートル程度と小型の竹で枝が短い事から庭園用としても多用されている。


ナリヒラダケ (業平竹) 、ダイミョウチク (大名竹)


ナリヒラダケなど名前は知らずとも、このように竹葉が特徴的な丸い形になった竹をご覧になられた方もいると思う。昔は、このような葉の形に自然となる竹があるのだろうか?その割には河川敷で見かける事はないなあと思っていた。よくよく見てみれば整いすぎている、さすがにこのような葉の形にはならないだろう...、いやいや、しかし、竹は神秘の植物で日本国内だけでも600種もある。もしかしたら、このくらいの芸当ができる竹があっても不思議ではないと考えていたのだ。


ナリヒラダケ (業平竹) 、ダイミョウチク (大名竹)


ところが、やはりこのように整って竹葉が美しく丸くなることはなく、鑑賞のために庭師さんが剪定されている。新竹が伸び切る6月頃に枝の3節目でカットしているそうだ。その後3ヶ月くらいかけて竹葉が伸び9月には段になる(形が整う)との事だった。青々とした稈の色合いも魅力的で、綺麗に見せるための間引きもしっかりされている。


ナリヒラダケ (業平竹) 、ダイミョウチク (大名竹)


ところで、この竹の名前の由来が面白い。容姿端麗な形は全体的には男性的、しかし、節の感じが女性的な優しさだと言うことで光源氏のモデルの一人とも言われたイケメンの平安貴族、和歌の名手でもあった在原業平(ありわらのなりひら)から来ているそうだ。竹を見て六歌仙の一人の名前を付けるとは(ちなみに、平安時代を代表する六歌仙の一人には小野小町がいる)誰がそんな命名をするのか?凄い感覚ではないか?そう思っていたら、何と命名は日本唯一の虎竹と同じ高知県出身の世界的植物学者、牧野富太郎博士だった。さすが、参りました。


牧野博士生誕160年の記念でもあり、只今牧野植物園に博士命名の虎竹移植プロジェクトが進んでいる。3日かけて虎竹を選定した様子をYouTube動画でご覧ください。




竹の造形、日詰明男さん、二名良日さん

幾何学アーティスト日詰明男氏

 
先日、ジャパンハウスでのウェブセミナーが予定されているお話しをさせてもらった。実はこの施設は世界に三拠点あって、その内ひとつがブラジルのサンパウロにある。オープンした2017年にお伺いさせてもらった時、強烈に印象に残った竹の造形があった。一体誰がこのような作品を創作されているのだろう?名前を見ると「日詰明男」とあった、とにかく不思議な気持ちになってしまい、建物の入り口にあるものだから、そこから足が動かなくなって早く行かねばと思いつつも中に入れず困った覚えがある。


日詰明男氏


あれから数年経って日本唯一の虎竹電気自動車「竹トラッカー」を展示させて頂いていた山口県で開催されたバンブーフェスタで、あの時の日詰明男さんにお会い出来ると聞いてずっと楽しみにしていた。幾何学アーティストと言うだけあって、作られるものが独創的で面白い。


日詰明男氏


武蔵野美術大学や龍谷大学先端理工学部で教鞭を取りながら実は30年来、国内外で驚くような作品を生み出し続けられている方だった。黄金比と言う言葉を何度も口にされていて、今まで作られた造形を画像で拝見させてもらったが、もっともっと他の作品にも触れてみたいと強く感じるものばかりだ。見た事ないのに懐かしい竹の姿とも思えてくる、竹のしなやかさ、強靭さが巧みに活かされてる。


二名良日氏竹ジャングルジム


実は、もうお一人、今までお名前だけ聞いていた探検植物作家、地球野外塾長老という肩書を持たれる二名良日(ふたなよしひ)さんという方がおられるが、この方にも前々からお目にかかりたかった。竹のジャングルジムも素晴らしかったし、色々な植物を自由に使ったリースは見ているだけで楽しくなる。竹リースものびのびしていて心地よい、どうやら毎日の魅力的な生き方がそのまま作る物に反映されているようだ。


虎竹片袖枝屋根付き150㎝の特大サイズ

 
虎竹片袖枝屋根付き


正直言うと袖垣を見直している。この日本唯一の虎竹で製作した片袖枝屋根付き垣は5尺もある!分かりやすいサイズだと幅が150㎝、運ぶのにも一苦労するまさに特大サイズなのだ。この威風堂々とした形はどうだろう、そそり立つ両柱、ギッシリと綺麗に並んだ竹穂、四万十カズラで縛った格子に組んだ透かしのデザイン、まるで虎竹の里の山に腰をおろして静かな竹林眺めているかと見まがうようなヒシギ部分の竹節にもご注目いただきたい、この迫力どうですか?素晴らしいとしか言いようがない。ところが、この片袖垣に杉皮に竹枝で飾った屋根が取り付けられるのだから完全にノックアウトだ。


多くの方は存在すらご存知ない袖垣だが、この良さが分かるのには時間がかかった。連日、20数名の職人が関わり、10トントラックに満載しても積みきれないほど製造していた時には、忙しさと竹の多さで見えていなかったのかも知れない。




この虎竹袖垣については、職人の仕事を詳しくYouTube動画でご紹介しているので関心のある方はご覧いただきたい。注文が間に合わず、分業体制で大量に製造していた時もあった袖垣作りは、これだけの手間暇がかかっている。


虎竹袖垣柱


ところで、ご説明しないとほとんどの方が見過ごされてしまうので一つだけお話ししたい。袖垣の柱をご覧いただきたいのだが、この柱はただ一本の竹をそのまま使っているのではない。竹の節が斜めにズレているのがお分かり頂けるだろうか?良く見ると縦に切り込みがあるけれど、この細い幅に竹を全て割っている。丈夫な孟宗竹を芯に使い、その周りを一度割った虎竹で巻き直しているのだ。庭で雨ざらしで使われる袖垣だからこその、美しさと耐久性を考えた伝統の技である。