今では全く想像もつかないのだが、東京江戸川区の篠崎は昔は篠竹が生い茂る土地だったそうだ。江戸川沿いに続く篠竹を使い発展した竹細工が篠崎ざるとして近年まで残っていて、かっては200軒もの竹職人がいた土地柄だ。東京で竹細工とは少し意外かも知れないけれど、昔は生活必需品のひとつだったから人口が多くしかも素材が豊富となれば、産地が出来るのはしごく自然な事だったのだ。
さて、そんな篠崎だからこそ今も大切にされている「竹と親しむ広場」(江戸川区篠崎町5-5)がある。大きな道路が通り、商店や住宅が立ち並ぶ一角に突然現れる竹林!訪れた方は、一体何だろうかと思う方もいると思う。まるで奇跡のような、都会のオアシスとでも呼びたいようなユニークな公園だ、竹垣が設えられて孟宗竹や真竹、淡竹はじめ色々な種類の竹や笹が風にたなびいている。
自然の竹林にあるような、本来の大きさの竹が立ち並んでいる訳ではないので何気に通り過ぎる方も多いも知れない。ところがだ、この「竹と親しむ広場」の見どころは実は淡竹(ハチク)にある。よくよくご覧いただくと広場の一角には日除けの棚が設けられている。この日除け棚こそ竹の素晴らしい特性を活かした、ちょっと他にはない素晴らしいものなのだ。
青々とした竹葉が強い日差しを物ともせず繁っているが、この日除け棚は隣に生えている淡竹を折り曲げて木製の枠に取り付けて作られている。毎年育つ淡竹の新竹の伸びが止まる6月頃に稈を折る、若竹なので柔らかく手でおれるので特別な道具は必要ない。
竹を折るなど乱暴だと思われるかも知れないが、京都の桂離宮に見られる桂垣と呼ばれる生垣と理屈は同じだ。桂垣の場合は歴史もあり、スケールも違って約250メートルもの長さがある。大雨で桂川が氾濫した時に備えての生垣なので淡竹を折り曲げて全面を覆うように作られているけれど、元気に生茂る竹葉に竹の生命力の強さを改めて感じる事ができる。
「竹と親しむ広場」に来られたら是非この淡竹の日除け棚をご覧いただきたい。注意して見ると竹を折って作られている事が良くご理解いただける。しかし、どうして先程から淡竹、淡竹と連呼しているのか?日本唯一の虎竹が淡竹の仲間だからではない!竹には維管束という水や養分を吸い上げる管が先端まで通っているけれど、淡竹はこの維管束が他の竹に比べて密度が濃い、だから折ってもその先端部分が枯れる事がないのだ。
一度試したことがある方がいて、孟宗竹でも同じように折って生垣作ってみたけれど、繊維が粗いため水上げせず全て枯れたそうだ。真竹はどうか?半分枯れて、半分は生きているとの事なので、やはり淡竹のように生垣にする事はできない。竹と一言に言っても日本国内に600種、様々な竹があり性質も違う、ご興味の沸かれた方は竹チューバー竹虎四代目の世界へ「孟宗竹と淡竹の違い?」あたりからどうぞ(笑)。
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