以前何かで子供の頃には鮎が大嫌いだったという話を書いた事がある。虎竹の里の近くには、日本で最後までカワウソが住んでいたと言われる新荘川が流れていて鮎釣りには最高の場所だった。カワウソは大食漢だ、一日にかなりの量の魚やカニなどを食していたそうなので、それだけ川が豊かで魚影も濃ゆかったのだと思う。父は川漁師の免許まで取って投網で大量の鮎を獲って来た、それで季節になると連日の鮎づくしでイヤになったのである。もちろん、大人になって炭火でじっくりと焼き上げる鮎の香り、美味しさが分かるようになり、今では大好きなのだけれど、この特徴的なフォルムの鮎魚籠を手にした時にも幼い頃の記憶が蘇っていた。
元々は青々とした表皮の真竹で編まれた魚籠だったと思われるが、誰に使われる事もなく忘れられたかのように棚の奥で眠っているうちに、まるで湯抜きした白竹のような色合いに変色している。伸びのよい良質な竹に魅かれてそのまま手にして来たものの、すでに編んでいる職人もいなくなっているので虎竹で復刻してみる事にした。
出来あがった虎竹鮎魚籠は、口巻などに籐を使ってより高級感があり惚れ惚れする。しかし、小さい頃の思い出はコワイものだ、ボクの中で鮎漁とは大型クーラーに一杯に獲れるものであり、このような優美な籠には、とても入りきらない(笑)。
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