心洗い流してくれる竹林

 
竹虎四代目(山岸義浩)


ある日の事だった。駅のタクシー乗り場で待っているとロータリーの向こうから結構な勢いで白いタクシーが走りこんできた。ドアが開いたので乗り込んで行先を告げると、自分の行こうとしている建物には何度も通いなれているらしく返事もそこそこに走り出す。しかし、アクセルの踏み込みが強い...。急発進で軽く頭を打ってしまった。車に酔うことなど、この歳になるまであまり無いけれど、急発進と急停車を繰り返すので気分が悪くなりそうだ。


ところが、更にこのタクシー運転手さんは信号を守らない。赤で交差点に直進して右折してくる車に怒っている、こうなると緊張して気持ち悪くもなれない(笑)。何とか目的地に無事到着したが、今度はカード払いが面倒だと言う。スイカにしてくれないか?そちらが決済時間が早いのだそうだ。ああ、色々なドライバーさんがいるものだなあと思いながら車を降りた。


孟宗竹


さて、所用をすませたら時間もなくなり急いで次の場所に移動せねばならない。車の行き交う大きな道路まで小走りに出てタクシーはないか?見るとちょうど向こうから一台やってくる。良かった!手を上げて止めると、何と朝のドライバーさんだった。あらら...と思いながら行先を告げる。駅から乗せた自分は忘れている(まあ、覚えないか)、それは良いのだけれど、ここでUターンせねばならないと言う。


ええ?実は自分は子供の頃から一度通った道は忘れなくて、何故だか方向感覚が鋭い(山深い所でばかり遊んでいたからか?)。だから、目的地への進行方向の道路でタクシーを拾ったつもりなのだが...。まあしかし、地元の運転手さんが言うのならと思い黙ってお願いしていた。けれど、しばらくして曲がりくねった住宅街に迷いこむ、変だと思ってgoogleマップで確認すると明らかに道を間違っている。どこまで進むのか、停車してナビを見たりグルグルしながら20分、ようやく細い道から出てきたと思ったら、さっきタクシーに乗せてもらった牛丼屋さんの前だった。


そこで下車させてもらい、どうも釈然としない気持ちで上を見上げたら元気な孟宗竹が風に笑っている。スッーと心が落ち着いて何かモヤモヤを洗い流してくれたよう気分になった。竹は、やはりいいものだ。


コメントする