高祖父、山岸安兵衛に導かれた本政寺

 
高祖父、山岸安兵衛の奉塔、本政寺、竹虎四代目(山岸義浩)


ボクが奈良に行くと言えば茶筅師のいる高山と決まっていたが、今回は木材と桜で有名な吉野だった。それにしても吉野の山は懐が深い、古くからの歴史があり信仰があり自然があり、何より人があり、圧倒的なカルチャーショックを受けて何も考えられない状態でハンドルを握って帰途についた。


途中、大阪市内で立ち寄らねばならない場所があって、調べてみたら近くには高速降り口があるので便利なはずだった。ところが、どういう訳か分岐地点でナビが間違った指示を出してしまった。湾岸線と書かれた看板がある、このままでは大阪を通り越して神戸の方まで向かってしまいそうだ、とにかく出来るだけ早く高速道路を降りたいと思い、どこか分からないまま次の出口で下道に降りた。赤信号で停まって確認してみると、目的地までは10キロ程度と表示されている、道を間違えたのに案外近い。これなら多少混雑していても時間はかからないと安堵しながら走っていると、今度は交差点でナビが妙な指示を出してくる。


どう考えても真っ直ぐ行った方が近いと思うのだが、左に曲がれと言っている。すでに直進車線で停まっているけれど、バックミラーをのぞくと後続車もいない。少しくらい遠回りも良いだろうと車線変更して左にハンドルを切った。そしたら案の定すぐに「次の信号を右です」とナビの声。ほら来た、ここを右に曲がるのなら、さっきの交差点で直進したほうが良かったのに...。


高祖父、山岸安兵衛の奉塔、本政寺、竹虎四代目(山岸義浩)


ところが、北に向かって車を走らせて鳥肌がたった。山岸家の菩提寺であり、高祖父山岸安兵衛の奉塔が建つ本政寺が目の前に見える。ええっ!?こんな事があるのだろうか?そのまま導かれるように駐車場に向かうと門はボクを待っていたかのように開かれ、車は一台もなく静まりかえっている。空堀商店街の花屋に行けば、仏花がちょうど二対残されていた。


奈良での出来事と、これからの立ち寄り先の事ばかり考えて全く思いが至らなかったが高祖父は何か話があって呼んでくれたようだ。いや話したいことがあったのはボクの方だ、高祖父とはじめて心が通じた気がした。色々としゃべったけれど実は聞こえない声の方がほとんど。「そのうち教えたるわ」そう言うので、そのうちを楽しみにしている。




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