八月、あの竹職人さん

 
竹林


何処に行くにもカブに乗っている職人さんだった。田舎では公共交通機関が整っていない、虎竹の里でもJRもバスも一日に数本しかないから自分で運転できないと少し不便なのだ。だから、数台を乗りつぶすほど毎日の乗っていた。ここまでなら特別な話でもないが、実は時効だから言うけれど職人さんは無免許だった。この年齢でまさか免許を持っていないなんて誰も思っていない(自分もずっと知らなかった)、そのかわり交通ルールを守って一度も違反せず警察に止められた事もないから生涯一度も免許証とは無縁だった。


竹林


職人さんは高校野球が大好きで、春と夏は甲子園が始まると全く仕事をしない。とにかく朝から晩まで一日中野球放送を観ていた、仕事もあるのだれどこれほど好きなら何も言うまいと思った記憶がある。お盆だからか、今日は色々な職人の姿が思い出されては消えていく、ほんの短い時間でも両手の指で足らなくなった。熱戦の方は日程が進み、勝ち残った球児たちが日本一を決める日が近づいてくる、あの竹職人さんならテレビの前から一歩も動かないに違いない。


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