古くから馬は縁起がよい動物とされている。もう2年前になるけれど懇意にしていただく香川県はさぬき竹一刀の西村文男氏にお会いした時にも煤竹に文字入れしたもらったお守りは「左馬」だった。実はいろいろな言われがあるようだけれど、仔馬が元気にはねる姿に子供の健やかな成長を願ったりするのは自然な事で、玩具に馬のデザインが多いのもそのせいだと思う。一般的には藁細工の馬をご覧になられる事が多いのではないだろうか、田舎にある小さなお社で見かけた事もある。しかし、自分の場合はやはり竹が気になり、ついつい手にしてしまう。
七島藺(しちとうい)の円座をご覧いただいただろうか?
圧倒的な強さと耐火性もありながら、イ草のように機械化できなかったために本当にわずか10軒足らずの農家さんが生産するだけとなった素材を使って素晴らしい渦巻の円座が編まれている。職人さんが仕事の合間に編まれていたのも、やはり馬だった。
日本は南北に長く自然が豊かな国だとつくづく感じる。北の方にいけば竹は少なくなるけれど、イタヤカエデというしなやかな木の皮を使って箕や弁当箱まで編まれてきた。古人の創意工夫には頭がさがるけれど、やはりここにも馬があった。
南に下れば亜熱帯から熱帯地域で育つアダンで生活道具が作られる。八重島から届いたのは、このアダン馬。
籐は日本にない素材ではあるけれど、実は随分と昔から貿易船で運ばれてきた物がその秀逸な強さと粘りから細工に取り入れられてきた。何と言っても量が多くないので当時はかなりの高級品で庶民は見た事もなかったかも知れない。こうして籐細工の馬が普通にある現代は嬉しい時代とも言える。
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