日本の夏に、国産籐枕

藤まくら

 
籐と竹は細く割って使われていたりすると見分けがつきにくいようで、同じ素材だと思って時々間違われる場合がある。しかし、籐は竹のように稈に空洞がなく、柔らかさや強さの点で竹には真似のできない製品作りが可能な凄い天然素材なのだ。


籐枕職人


ソファーや椅子、ベットなど丈夫でそのうえ軽い家具が作り出せるのは籐ならではだし、しなやかさは手提げ籠などを編むのにも適している。ただ日本国内に産地がなくて全て海外からの輸入材なので、昔から使われてきた素材ではあるものの古い時代は高価な物で庶民が手にすることはなかったに違いない。


籐まくら作り方


戦後にGHQが籐製の椅子やテーブルを大量に発注するようになって忙しくなり、それまで竹細工をされていた方が籐細工に転向して随分と腕を振るったという話を職人から聞いた。このような籐枕は、今のようにエアコンのなかった当時には現代とは比べ物にならないほどの必需品だったと思うので、さぞ多くの製品が作られていたと想像する。


籐まくら職人


籐まくら製作


海外から素材だけでなく同じような製品自体が輸入されるようになってから、国内の職人が減って産業が衰退してきたのは竹と同じ歴史だけれど、国産には国産ならではの丁寧な仕事ぶりがある。


籐鼓椅子


籐に鼓椅子というロングセラーの製品がある。竹虎にも来客用に何個もあって小さい頃から馴染みのある椅子だけれど、元々はある女優の方が和楽器の鼓をモチーフに作れないだろうかと相談されたのが最初だと言う。こちらの工房に置いてある先代が製作した品など、生命力さえ感じるような力強さに圧倒されて声を失った。


籐枕製作


確かな技が息づく籐工芸の枕は、形にもこだわりがあってただの楕円形ではない。なんと片方が高く、片方が低く作られているので愛用いただく方の好みで使い別ける事ができる。




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