山葡萄手提げ籠バッグに修理依頼が来ることは珍しい。自分も100年以上前と言われる籠を使っているが、ヒゴ自体はツヤが出て黒光りしている他はあまり傷んだ様子はない。それでもやはり自然素材だ、日常的に愛用していると手直しせねばならない場合もある、今回はどういう訳か持ち手部分の芯がポキリと折れてしまっていた。
この程度の修繕なら結構早いものだ、ところが職人からの籠バッグを見て「あれ?」と不思議に思った。山葡萄のヒゴは使い込んだら黒っぽく渋い光沢が出てくるのだが、新しい蔓はこの四ツ目弁当のような明るい色合いをしているものだ。
もしかしたら修理をしていないのかも...と思ってしまうくらい前の状態そのままなのだ。そこで職人に訊ねてみたら、何と当然持ち手の芯はやり直しているのだけれど、巻き直すヒゴには良い色に変色している元の素材をそのまま使っていたのだった。
国産の山葡萄を愛する方々は、ひとつの籠を長く持たれる事が多い。親子二代に渡って使うことも多いと思う、実際に自分のセカンドバッグは母から譲られて30年以上が経つ。大切に持ち歩くお客様の気持ちを思った、熟練職人ならではの仕事のひとつだ。
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