今日は根曲竹手付き丸籠だ。直径が約28センチで高さが15センチと手頃な大きさと持ち手の付いた便利さから色々な途にご愛用いただいている万能籠として人気がある。ところで、この根曲竹とは一体どんな竹なのか、ご存知だろうか?筍は確かに美味しいらしいが、当然だけれど竹虎では食べる事など考えた事もない。30年ブログのファンだという少し変わった方(笑)がおられたならば、実は何度かご紹介している竹なのでウンウンと頷かれているかも知れない。
根曲竹は、皆様が普通に思い描く竹林の様子とも少し違うが、伐採の仕方も自分たちの虎竹とは全く異なっていて興味深い。竹と名前が付くが、別名は千島笹(チシマザサ)とも呼ばれるように笹の仲間だ、だから竹林も場所にもよるのだが意外と低木に感じる。しかし、だから竹切りの苦労がないかと言えば実は大有りで、このYouTube動画の出だしにあるように、職人がクマに用心しながら道なき道を竹林に分け入っている大変な姿をご覧いただきたい。
どうだろうか?竹は曲がりくねった山道を車で随分と登って来た場所にあって、山裾にあった民家からも遠く離れて辺りに人の気配は全くない。標高が高いためか震えるほど気温の低い中、爆竹を鳴らし笛を吹いて緊張しながらの伐採なのだ。この日はラジオを忘れている、いつもは大音量の音楽をかけながらの山仕事だと聞かされた。
根曲竹は寒い地方の竹なので、さすがの自分も南国育ちでこれだけ生々しい竹に触れる機会は多くない。ひと冬、雪の下で保管してあった竹とも違う、まさに伐採されたばかりの根曲竹は何とも青く、硬く、生命力にあふれていて触れただけでビリビリと感動する。
根曲竹は虎竹や真竹のように3年竹、4年竹だけを使うのではなく、1年物の若竹も上手に多用する。柔らかい1年竹は編み込みに、冒頭の手付き丸籠のように丸竹のまま持ち手に用いる時等には硬い3年竹と言うように使い別ける。
ところが、その根曲竹もここ数年やはり少し異変があるように思っている。南北に長い日本列島に産地がいくつかあるので、気候も様々で条件も微妙に違うといえばだが、やはり以前の根曲とは違う。どうも虫に弱くなっているように思えて仕方がない。竹が本来持っている抵抗力の低下は真竹などにも見られるけれど、先日もまさに手付き丸籠の持ち手に小さな穴が見つかった。
このような場合にはすぐに熱湯消毒をする。竹材の場合だと一晩中水に浸けておく事もあるのだが、籠に編んだものは形が崩れる事に注意しながら天日干し、陰干しなどして5~6回繰り返して様子をみる。
社員が畑で育てた夏野菜をいれるのにも重宝する丈夫な万能籠が、こんな小さな穴で日の目を見られず倉庫で朽ちていくのだろうか。竹林から伐採、山だし、選別、加工、製造、販売からお客様までを全て知る竹虎に耐えられるはずもない。
東北では、「真竹より篠竹、篠竹よりスズ竹、それより根曲竹」という言葉がある。根曲竹の何が魅力的なのか?奥が深いと言われてきたのか?それは使ってみた方ならば分かる艶だ。信じられますか?義母から譲り受けた根曲竹の色合いは、元は自分が右手に持つような白っぽい竹だったのだ。長く愛していくうちには、キズもつくし、虫も喰う、割れる事も管理が良くないとカビが生えるかも知れない。しかし、それが自然の竹です。
小さな虫穴のある籠も、若干であれば出来る限りお客様に届けていきたいと考えている。もちろん、虫が退治できている事を確認してからだし、本来の強度が担保されなかったり、見た目にも酷過ぎる籠は論外だけれど。それでお手元に届いた竹籠が、どうしてもお気に召されない場合はどうかお気軽に当社まで送料着払いで結構なのでご返送ください。竹の三悪と昔から言われている「カビ、割れ、ムシ」をご理解いただき、手間のかかる竹細工ではありますが日本の竹を愛でて頂きたいと思っています。