雨が降る今時の季節になると背負い籠「かるい」編の名人・飯干五男さんを思い出す。ジトリと汗がにじみ出てくるような湿度の高い朝、あの日も青々とした美しい真竹をタナで割るところから仕事が始まる。竹を割る心地良い音と咽かえるような青竹の香り、気がつくと雨は本降りになっていた。
黙々と流れるような仕事には全くよどみがない。
知らぬ間に時間が過ぎ、かるいの独特の形が見えてきた。
この逆三角形の形が、急斜面の多いこの地域では使いやすいと愛用されてきた。飯干名人が伝統の籠を一心不乱に編む、一部始終の傍にいられた宝物のような時間だった。
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