油抜きで生まれる虎竹の輝き

 
日本唯一の虎竹


虎竹茶を飲まれた方は自然な甘い香りに驚かれるけれど、竹虎の工場に来ると更に同じ甘い香りに気づかれると思う。ガスバーナーで油抜きの加工をしていると仕事場の入り口に入った瞬間に香ってくる。いつだったか、初めての場所で車から降りたら竹の香りがして、高い塀の向こうに竹屋があると確信した事があった。それくらい特徴的な香りなのだ。


虎竹油抜き


虎竹


炎によって磨かれた虎竹の輝きは、元々の竹が持っていた油分。竹林に生えている時には表皮部分を淡竹ならではのロウ質が覆って白っぽく見える虎竹が、まさに本来の自分らしさで光だした瞬間だ。


虎竹、tigerbamboo




黒竹筒入り虎竹耳かき

 
黒竹筒


もちろん、ただの黒竹筒ではない。節のところに切れ目が見えているけど蓋になっていて中には虎竹耳かきを入れている。欧米では耳かきの習慣がないようなので、この気持ちよさを知らないのは損のような気もしているが、そんな呑気な事も言っていられない。実は大量に作って置いてあったつもりの在庫が知らないうちに売り切れてしまっていた。


黒竹筒入り耳かき


虎竹耳かき


虎竹耳かきは何とか間にあったものの、黒竹筒が出来あがらない。竹屋は「夏痩せ」ではなく、冬場が竹の伐採や仕入れで忙しいから「冬痩せ」と言われてきたのだが、暑い季節はそれなりに竹の需要が高まるので、やはり忙しく「夏痩せ」もするのだ(笑)。


黒竹筒入り耳かき


手仕事は手際の良い事が大事だが、急がない、急がせない事がもっと大事だ。黒竹筒の材料となる竹材を矯めるベテラン職人の技でもご覧いただきながら気長にお待ちいただきたい。




通気性の良い野菜籠に最適な四ツ目籠

 
四ツ目足付


この真竹で編まれた四ツ目籠は、節付の細い丸足があって通気性が抜群というだけでなく使いやすさを考慮して持ち手も用意された、野菜籠などには最適の籠である。ところが編み上がってみるとサイズが若干違うものがある、皆様にご説明できる範囲の誤差なら問題はないが直径や高さなど見た目もかなり異なってしまうものは動画にてYouTube特別販売とさせてもらう事にした。


竹細工は手仕事なので、実はこのように通常製品と機能的には全く同じなのに大きさや、細かいところの仕様が違うために規格外となってしまう物がある。今まではあまり皆さの目にふれる機会は少なかった竹達にもバンブーロスの観点からも、もっと光を当てたいと思い紹介することにした。お求めやすい価格であったり、レアな限定だったりするのでお好きな方は是非チッェクしてもらいたい。




竹の里から届いた風蘭

 
竹の里の風蘭


純白の可憐な花は風蘭だ。美しい花というだけではなく自分にとっては思い入れのある花である。もう随分前になるが山深い竹の集落を訪れた事がある。この先に人がいると知らねば絶対に車を進める事はないであろう道が続いている。昼でも暗い鬱蒼とした曲がりくねった道路は、高知の田舎道に慣れている自分でも少し不安になるほどだった。


竹の里の柿の木


ようやく明るく開けた山腹に出ると数軒の民家があって、樹齢350年と言われる柿木が出迎えてくれる。竹林が意外なほど少なくて本当にここが江戸の時代から続く竹細工の村だろうかと思っていたが、よく見ると木立の中に立派な竹が生えていた。竹籠に編むのには、このような樹木に囲まれて育つ竹が伸びが良くて好まれるのだ。


竹の里の風蘭


200年の歴史ある竹細工を見守り続けてきた大きな柿木には、風蘭が自生していて大風が吹くと一つ、二つと落ちてくる。それを職人さんが持って帰れと持たせてくれていのに日に当てすぎて枯らしてしまっていた。


風蘭つぼみ


残念で仕方なく思っていたところに、一株残っていたものを運よく頂くことができたのがこの風蘭なのだ。今度は大事に育てなければと水やりしていたら、先日小さなツボミを発見した。


竹の里の風蘭


あれから何年になるのか?実はこれほど綺麗だとは知らなかったが、初めて見る竹の里の風蘭である。


塩取り籠と竹コーヒードリッパー

 
塩取り籠


この竹籠を見て一体何なのか分かる方は本当に少ないと思う。ガーデニングが人気なので、持ち手も付いているから吊り下げプランターかと言われた事もある。確かに吊り下げて観葉植物など入れると雰囲気は最高にも思う。水やりしても竹編みから余分な水分は抜けるのでご使用には問題ない。


塩籠


しかし、実際には塩取り籠と言って、その昔海水から塩を取り出す為に編まれ竹籠なのだ。海水は完全に水気がなくなるまで煮沸していると塩が鍋について取れなくなってしまう。十分煮詰めていってシャーベット状の液体感が残る間に、この塩取り籠に入れて完全に水気を切り塩を取り出すのだ。もちろん今ではすっかり姿を消してしまっており、自分も職人の工房の軒先に吊るしてあるのを見た事があるだけで、実際に塩を取っているところは見た事がない。しかし、この塩取り籠は現代の虎竹コーヒードリッパーに姿を変えて愛用されている。




ハレの日、虎竹花籠菊手毬

 
虎竹花籠菊手毬


いつもの見慣れた虎竹花籠とは違う、華やかな表情の菊手毬の写真をお客様からお送りいただいた。婚礼をひかえた前撮りでの写真、ご自身のハレの日に虎竹花籠をお供させてもらい本当に光栄だ。


虎竹花籠菊手毬


花籠は花を活けてこそ華やぐ。お客様はお花屋さん、カメラマンさん、メイクさん、ご家族、ご主人となられる方、色々な人から籠を褒めていただいたとお手紙に書かれている。お幸せを心よりお祈りしたい。




竹炭パンと竹炭大粒豆

 
竹炭パン


今ではすっかりお馴染みとなった竹炭パウダー入りの竹炭食パンだが、やはり見た目はインパクトがある。胃腸の調子が悪いと言いながらガシガシ炭をかじっていたあの炭職人さんも、色々な食材に利用される真っ黒い食べ物シリーズを並べたらビックリするに違いない。


竹炭食パン


以前、高知市にあるベーカリープティールさんで竹炭パン作りを見学させてもらったことがある。


竹炭パン製造


早朝と言うより、まだ真っ暗な真夜中から休むことなくパンを焼き続けて40年というベテラン職人さんの仕事に感服した。


竹炭大粒豆


そんな竹炭パンに負けないくらい早くから登場していたのが竹炭豆だ。竹虎さんの竹炭豆は大粒だからさぞ中に入っている豆が大きいのでしょうか?というご質問をいただいたので少しご覧いただきたい。


竹炭大粒豆

竹炭大粒豆


中に入っているピーナッツの大きさには変わりはないのである。ただ、その周りの竹炭入りコーティングが肉厚なので他のものと比べてみるとサイズがこんなに違っているのだ。


続・雨の日に思い出す、背負い籠かるい名人

かるい、飯干名人


前の30年ブログで、このかるいについて「使う人がいなくなれば必要とされなくなるのは仕方のない事か、昔なら作ることなどなかったような小さな籠が土産物として並んでいたのを寂しく見ていた」と書いた。竹細工は作り手だけでなく、使い手がいなくなれば消えてしまう宿命だ。


背負い籠かるい作り


そういう意味では、現在の竹籠が見栄えばかり気にした編み方だったり、薄っぺらい竹ヒゴで弱々しいものであったりするのは使う側にも責任がある。それが時代の流れであり、そうやって竹は変化していくのかも知れない。


かるいミニチュア


飯干さんのミニチュアのかるいは、忘れられつつあった竹籠の歴史に流されていたように感じてもいた。しかし、小さくとも、あの日の工房で編まれていた背負い籠と全く変わらない丁寧な編み込みと熟練の技を感じる出来栄えを見ていると、そうではなかったように思い直した。竹職人としての誇りをもって時代の流れにあらがう姿が、工房で竹に向き合う覇気に重なるようではないか!これは見習わねばと思い直してから、ミニチュアかるいは少し誇らしげに壁にかけられている。


雨の日に思い出す、背負い籠かるい名人

 
名人竹細工職人・飯干五男氏の背負い籠(かるい)


雨が降る今時の季節になると背負い籠「かるい」編の名人・飯干五男さんを思い出す。ジトリと汗がにじみ出てくるような湿度の高い朝、あの日も青々とした美しい真竹をタナで割るところから仕事が始まる。竹を割る心地良い音と咽かえるような青竹の香り、気がつくと雨は本降りになっていた。


飯干五男氏の背負い籠(かるい)作り


黙々と流れるような仕事には全くよどみがない。


飯干五男氏の背負い籠(かるい)編み


知らぬ間に時間が過ぎ、かるいの独特の形が見えてきた。


飯干五男氏の背負い籠(かるい)編み


この逆三角形の形が、急斜面の多いこの地域では使いやすいと愛用されてきた。飯干名人が伝統の籠を一心不乱に編む、一部始終の傍にいられた宝物のような時間だった。




「かるい」という背負い籠

 
背負い籠かるい


独特の形状をしていて一度でも見たなら忘れられないような背負い籠「かるい」には、今でも時々問い合わせがある。背負い籠といえば少しでも沢山の荷物が入れられるように丸型であっても角型であっても寸胴の形をしているのが普通だと思っていたので、初めて出会った時には驚いた。竹ヒゴが立っているのか?編み方もユニークだし、口部分こそ広がっているものの、底になるに従って狭くなる籠など使い勝手も良くなさそうだと感じた。


背負い籠、かるい


ところが、この形状には理由があって宮崎の急峻な山岳地域で発達した「かるい」は、平地だと立てて置くことはできないが斜面だと威力を発揮する。反対に安定して置く事ができるし、背負う場合にもとても楽なのである。山深い土地で使われるため、いたずらに厚みをつけて大きくすることもなく、木立の多い山中でも使いやすいように、何とその昔は使う人の肩幅に合わせて編まれていたと言う。竹籠のオーダーメイド、家族の人数に合わせて作られていた米研ぎざるや、茶碗籠と同じではないか。かるい作りの名人・飯干さんに会いたくなった。


お一人様の椀かごについて

お一人様の椀かご(楕円)


「竹は世につれ人につれ」なので竹籠の形や大きさも当然人の暮らしのスタイルが変わってくれば変化するのが当然だ。自分の小さい頃など食器を干す籠と言えば大きいものだと、一抱えもあるような竹籠があった。


お一人様の椀かご(楕円)


「おきゃく」と呼ばれる宴会のある時になどには、干ざるだろうが何だろうが兎に角家中の大きなサイズの籠が集められて庭に並んでいた事を思いだす。


お一人様椀籠

 
お一人様椀籠


家族の人数が少なくなり飯籠も椀籠も段々と小さくなってきて、ついにお一人様用の籠を作るようになった。それでも無くなってしまうよりは随分とありがたいと思っている。




スズ竹市場籠の持ち手修理について

 
スズ竹手提げ籠


少し小ぶりなスズ竹市場籠がある、ちょっと違和感を感じられる方は鋭い(笑)。その違和感は、本体の飴色がかった編み込みに対してビニール持ち手が新品のように綺麗だからだと思う。


スズ竹手提げ籠籐持ち手


実は、このスズ竹市場籠には籐巻の持ち手が付いていて、長い間ご愛用いただくのだが先日とうとう持ち手が折れてしまって修理することになったのだ。


スズ竹手提げ籠


自分の使っているスズ竹市場籠はロープを籐巻したものだから耐久性は高いのだが、硬い芯のの入った籐持ち手は急な負荷がかかった場合には若干弱い部分がある。


スズ竹市場籠持ち手修理


もちろん、ロープ×藤巻きが最強という事ではない。このように修理に戻ってくる籠もある。


スズ竹市場籠修理済、竹虎四代目(山岸義浩)


この籠は前にもご紹介したが、白く見える口巻部分の一部をワンちゃんが噛んでしまったもの。ちょうど自分も同じような所が噛まれた経験がある。


スズ竹市場籠修理済


スズ竹の修理が多いのは、弱いからではなく反対に丈夫だからだ。編み込み部分は日常使いで数十年もガンガン使える、一番傷みやすい持ち手だけが壊れてしまっているのだ。数年前から続く開花で原料不足の続くスズ竹市場籠はまだまだ製造の見通しは立っていない。




山葡萄の弁当箱

 
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山葡萄の蔓で編まれたペンケースを持っている。楕円形で、いつも使っているボールペンがちょうど入るサイズだ、確か手提げ籠を作っていた時の余った材料で楽しみながら編んでみたと言われていた。


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ペンケースはヒゴ幅もまちまちで、本当に質素な小物なのだが、これに蓋を付ければちょっとした小物入れになりそうだと思っていた。ランチボックスくらいの大きさがあれば面白いと考えていた矢先に、たまたま試作いただける機会があって出来あがったのが山葡萄の弁当箱だ。


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予想以上の出来栄えだが一点気になるところがあって検討中だ。しかし、これが時間が経って自分が母から譲られた40年前のセカンドバッグのような色合いになったらどうだろうか?感嘆のため息しかでないのではないか(笑)。


竹弁当箱


竹編みの弁当箱は色々とあって、日本唯一の虎竹はもちろん、白竹、スズ竹、竹皮等それぞれ特徴があるけれど、素材も違い野趣あふれる山葡萄は別格の個性派ぶり、小物入れなどとしても使い方によっては凄くはまりそうである。同じく物入れに使える大型サイズの白竹四ツ目弁当箱を思い出した。




マタタビ米研ぎざるの水切れ

 
マタタビ米研ぎざる


マタタビが米研ぎざるとして素晴らしい素材だというお話をさせて頂いた。細かく割れた米粒でも、編み目に挟まったりザルの外に落ちてしまうことなく使えるのは毎日使う主婦の方にとっては嬉しい限りだ。


マタタビ米研ぎざる


元々しっかり編み込まれている米研ぎざるなのだが、さらにマタタビの材質が水分を含みやすく、ヒゴが膨張することによって編み目を塞いでいるのが画像でご覧いただけるかと思う。


竹ざるとマタダビ米研ぎざる


竹に比べるとソフトな感触で手にも優しいマタタビなので、手近にあった同じくらいの大きさの竹深ざると水切れ比較をしてみることにした。


マタタビ、竹深ざる


同じように水の中に浸しておいて持ち上げてみる。


マタタビ米研ぎざると竹深ざる水切れ比較


竹深ざるの方は水から上げた瞬間にサササッと水が流れ落ちるのに対して、マタタビは水落ちがかなり遅い。米研ぎにはマタタビの編み目を塞ぐような性質が幸いするが、野菜など洗って水切りする場合には竹ざるの水切れの良さに軍配が上がる。このように自然素材の籠ひとつにしても材質、大きさ、編み方によりそれぞれ得意な用途があって、好きな方は段々とあれもこれもと欲しくなり気が付くと幸せな台所が完成するのだ。




エイジングまたたび米研ぎざる

 
経年変色(エイジング)マタタビ


さて、先週の土曜日の30年ブログからYouTube動画「マタタビ米研ぎざるのヒゴ取り!秀逸な山の恵み」をご覧になられた方はマタタビの経年変色に驚かれたのではないだろうか?少し飴色がかった米研ぎざるや蕎麦ざるを見て、これがマタタビだと思うと大違いなので申し上げたい。


マタタビ米研ぎざる


マタタビとは、このような純白の木肌をした本当に美しい籠なのだ。まさに雪国のお姫様のように見えてくる。


マタタビざる


この白い米研ぎざるや蕎麦ざるが時間は経っているとは言え、あんな色に変わるのか?そんな疑問を持たれる方がおられたら自分の持っている竹手提げ籠を見てもらいたい。


経年変色(エイジング)竹手提げ籠


全て真竹の竹表皮を薄く剥いだ、「磨き」と言う技法で竹ヒゴを取って編まれた籠たちである。飴色になっているマタタビ細工より更に深い色合いになっている。


経年変色(エイジング)竹手提げ籠


同じ竹手提げ籠と比べると分かりやすいかと思う。青々とした編まれたばかりの竹が、時間の経過と共にこんな美しいエイジングをする。たまらない竹の魅力だ。




根曲竹すいのう

 
根曲竹すいのう


「すいのう」と呼ばれる道具がある。麺の水切りなどに使わるもので今では金属製が多いようだが、実は竹製のものも以前は多く作られていた。最近では、ほとんど見かける事がなくなったので久しぶりに手にしたレアな竹細工は根曲竹。丈夫でしなりもあるから、なるほどすいのうにもピッタリだろう。


根曲竹すいのう


根曲竹は真竹などの細工と違い竹ヒゴの幅を揃えず割りっぱなしで編むけれど、このすいのうに関しては木材部の穴に通す必要もあり一本づつ丁寧に幅取りされている。柄の木材は元々ウルシの木だが、これには黒文字が使われている。


水嚢(すいのう)


真竹でも幾つも種類があり、根曲竹だけでなくマタタビなどでも作られていたが今では限定的で今後も流通するようなものではない。そうそう、調理場で水切りに使う振りザルと言って逆円錐形の形をしたものもあった、これも国内で編まれる事のなくなった竹細工のひとつだ。


米研ぎざるとして最高の素材、白いマタタビの木肌

 
マタタビ米研ぎざる


マタタビは米研ぎざるとしては最高の自然素材と言ってもいいかも知れない。もちろん自分の場合は竹が一番だが、機能的な部分を言うと軽くて強くて手触りも優しいマタタビは凄いと思う。そもそも目が細かい細工だが、米研ぎに使うと素材が水分を吸ってお米が編み込みに目詰まりする事も、外に落ちこぼれてしまう事もない。米粒の中には割れて小さくなってしまうものもあるので、これは使い勝手がよろしい。


またたび原木


更に面白いのがマタタビの原木である。こんなに黒く地味な色合いをした樹木なのだが、薄皮を履いてみると真っ白い木肌が表れるのだ。


またたびヒゴ


9月から11月の旬の良い時期に伐採されたマタタビ、生えている時には想像もできないような白いヒゴだ。


またたび細工


そのヒゴを使って編まれた米研ぎざるは純白で可憐な姿をしている。手に取ると意外なほど軽いモノのもあるけれど、使ってみると断然強い。


またたびざる経年変色


ほんの少しだけ飴色に近づいているのがお分かりだろうか?マタタビも竹と同じように経年変色していく。この色合いは徐々に深まっていけれど、茶褐色になってもマタタビは全く傷まない。




小さな袖垣の小さな希望

 
虎竹ミニ屋形垣


日本唯一の虎竹を使って、こんな小さな袖垣も製作している。ああ、なるほどそうですか...ところで、袖垣って何?と言うのが大方の皆様の感想ではないだろうか。


虎竹角袖垣


世の中は動かないようでいて、毎日変化している少しもジッとしていない。数十年前には結構当たり前に玄関脇に置かれていた袖垣も、今や住宅街を足を棒にして歩き回っても見つけられるものではない。


虎竹ミニ屋形垣


竹虎でも製造量は全盛期から言えば何十分の一かに減った。10トントラックに袖垣ばかり満載して、これ以上積んだら警察に怒られるというギリギリまで載せて出荷していた頃が懐かしい。


虎竹ミニ屋形垣


それでも少しは注文をいただいて作る袖垣の芯竹に虎竹を巻き付けたところである。


虎竹ミニ屋形垣


柱が一本の竹で作られていると思われている方が多いので、ご覧になられたら必ず驚かれる。袖垣は屋外で使うことが前提なので、雨風にも耐えられるように実はかなりしっかりと作り込まれているのだ。


袖垣製造


袖垣など皆様にソッポを向かれて必要とされない竹製品だと思っていた。自分も職人も自信を無くしていた所に一筋の光が見えたのがYouTube動画だった。


虎竹玉袖垣


もちろん、光明はかすかに感じられる程度で、それで何かが起こっている訳ではない。けれど270万回を超える再生回数の中で思った以上の割合で日本の方がいて20代、30代も多い。これは勇気をいただいている。




地元の素材を活かす山ぶどう手提げ籠バッグ

 
山ぶどう職人


雪深い日はかじかむ手を温めながら、セミ時雨の日には窓を開けて心地よい風を入れながら職人は山葡萄と向き合っている。大きな梁の通った高い天井の民家は何年前の建物だろう?どれくらいかは知らないが、きっと長い間こうして人の暮らしを見守り続けてきたに違いない。


国産山葡萄の素材


山深いこの辺りで採った山葡萄のツルが乾燥されて積み上げられている。見るからに丈夫そうなこの素材たちが手提げ籠バッグになるのも、そう遠くないような気がする。


国産山ぶどう手提げ籠を編む


近年、山ぶどうは国産材に加えて外国産の材料が多く輸入されるようになっている。海外で製造されたモノも多いが、出来栄えが良い代わりに価格も日本製と変わらないので自分でも見分けるのに苦労する。以前と比べて愛用者の裾野が広がったのかファッションとして編み方や形が多様化しているのも特徴だ。


山ぶどうの紐


しかし、山葡萄は元々生活に根差した背負い籠や腰籠のような道具として発展してきた。現在ではあまり見られないこのような紐も、山葡萄の強靭な強さでもって暮らしの中ではさぞ役立ってきたものだと思う。


国産野ぶどうバッグ


それにしても、やはり自分達が出会った40年前の素朴さが忘れられない。昔ながらの網代編みが一番だ、これぞ山葡萄なのだ。




困難な根曲竹ステッキ復刻計画

 
根曲竹


細身で軽いのだが驚くほど強い根曲竹はステッキにも最適の素材だ。前に黒竹でステッキを製作した事があった、黒竹も細く丈夫な竹なので割れにくく強度も十分だと思っていた。ところが、根曲竹は身の部分が厚くて少し次元が違うような粘りと堅牢さを感じさせてくれる。


竹根


「何を言っている四代目!ステッキと言えば竹根ではないか!」そんなお声が聞こえてきそうだ。もちろん竹根は定番で自分も数本愛用しているが、全国探しても竹根職人がいなくなり良質の素材は手に入らなくなった。思えば竹根も竹の稈と違いギッシリと身が詰まっている、丸竹のまま製品化して段違いに実用的なのはこのせいだ。


竹根傘


ステッキの他にも傘の持ち手などに竹根が使われている、竹根だからこのような美しいUの字に加工できるのである。中が空洞になっている丸竹の場合は、細ければ何とかなるけれどこんな太いサイズで曲げられたものは見た事がない。


煤竹手提げバッグ


そう、これくらいの細さの竹であれば簡単ではないけれどUの字に曲げられる。


オーバーナイター


じゃあ、前に紹介した昭和の時代に一世風靡したオーバーナイターの持ち手はどうか?グルリと一周しているのではないか?いやいや、この持ち手は籐だ。




ところで、こんな強靭な根曲竹の伐採の様子はご覧いただいた事はあるだろうか?多くの方が、どの様な竹林でどんな風に竹を集めるのかご存知ないと思うので、関心のある方はコチラの動画の冒頭部分を是非チェックいただきたい。


根曲竹ステッキ


動画を観ていただくと、根元が曲がるくらいの雪の重みに耐えて、鍛えられた根曲竹のステッキの生命力、耐久性の謎が解けるようだ。


丸窓


実は今回の根曲竹では、一流の技を持つ竹曲げ職人さんのお力を借りていたが思うように曲げ加工ができなかった。根曲竹と一口に言っても成育年数や部位により特性が異なるに違いない。竹林から見直して改めてチャレンジしたい。


虎竹赤染革手提げ籠バッグ

 
虎竹赤染革手提げ籠バッグ


新しく仲間入りした虎竹赤染革手提げ籠バッグがある。虎竹の色づきは自然の意匠なので実に様々だ、最近「バンブーロス」という言葉を使うようになったけれど、虎模様の少ない虎竹にもしっかりと活躍できる場を用意したいと考えた時に、染めという技法はひとつの解決になる。


虎竹手提げ籠バッグ


特徴的なのは染めだけでなく持ち手部分にある。今までの手提げ籠は丸籐を使う事が定番であった、丈夫で持ちやすい秀逸な素材だ。籐は竹細工で唯一海外から輸入されている部材だが、近年は良品が少なくなって来た、特に竹籠バッグ用になるような太くて頃合いの籐が少なくなっている。


虎竹赤染革手提げ籠バッグ持ち手


これには少し困ったと一瞬戸惑ったけれど、籐持ち手ばかりでなく新しい革持ち手にチャレンジできて、結果的には面白い買い物籠に仕上がった。


虎竹赤染革手提げ籠バッグ底編み


虎竹赤染革手提げ籠バッグ


編み込み、底部分のあしらいや四隅の籐かがり、口巻など、ずっと虎竹と向き合い続けてきた熟練の技を見ると親しみが沸いてくる。昔から変わらない、しっかり編まれた籠が新しい定番となれば良いと思っている。


虎竹赤染革手提げ籠バッグ、竹虎四代目(山岸義浩)




夏に間に合った別注の蕎麦せいろ

 
蕎麦セイロ


蒸し暑い夏がそこまでやって来ている。食欲も減退気味になる時期には冷たくサラサラッと頂けるザル蕎麦などが最高だ。そこで、コロナも下火になってきてお客様も増てきそうと期待されている蕎麦屋さんから、ご注文いただいたのはサイズを小さく変更した別注蕎麦せいろ




ところで30年ブログを熱心にご購読いただく方ならご存知のなのだが、皆様は竹を虫が喰うのをご存知だろうか?何度も言うように、ここ数年は特に竹の開花やてんぐ巣病で抵抗力が弱まっているとしか思えない竹があり、更に温暖化の影響もあって例年以上にヒヂタケナガシンクイムシ等の害虫が活発だ。


別誂え蕎麦せいろ


熱と圧力で防虫・カビ対策する炭化加工は薬剤処理が大嫌いな自分にピッタリの方法で、この辺りはYouTube動画でご説明している通りである。さて、別注蕎麦せいろは通常製品と比べるとこんなに可愛いサイズだ。


別注蕎麦せいろ


ただ、高さをしっかり取った形なのでチープ感がなく、ワンランク上のお蕎麦を召し上がっていただけそうな仕上がりになっている。


箱型すだれ蕎麦皿に竹炭うどん


ご家庭用には水気が下に垂れない箱型になった竹製そば皿を新しく登場させている。竹炭うどんを食すのに使ってみたが、もちろん蕎麦やそうめんなどでもテーブルの涼しい演出を十二分にお楽しみいただける。




謎のレッドライン、篠竹ざる赤の正体は何なんだ?

篠竹黒ラインの魚籠


昨日の「黒いライン」、実は東北の篠竹細工ではかなり広い地域にわたって見られている装飾だ。同じ篠竹でも産地によってヒゴの割り幅や、編み上げられる籠の形に特徴があり、随分と見た目が違うのに同じような黒いラインが入っているのが面白い。これだけ沢山の職人に受け継がれている伝統である、きっと何かがあるに違いないがその前に黒いラインだけでなく赤いラインの話だ。


篠竹レッドライン


篠竹細工は魚籠の内側に竹表皮が向くように編まれていると言った、必然的に籠編みの外側に竹の身部分が見える。比較的に新しい時代の籠を手に取ってみると、その身部分が黒色だけでなく、今度は更に赤い色付けがされている。


篠竹昔の口巻


また違う篠竹細工に手を伸ばす。この米研ぎざるは竹の変色具合や、しっかりした厚みのある口巻きで昔の職人の手によるものだと分かる。何十年前のものか知れないけれど本当に堅牢な作りだ。


赤ヒゴの篠竹古籠


現在ではマジックで竹ヒゴを塗ってしまう事もあるそうなので少し残念ではあるが、これら年期の入った籠が作られた当時には、そんな便利なものはなかった。今ではすっかり色褪せしてしまっているけれど、当時は鮮やかな赤いラインだったという。


赤ヒゴの篠竹古籠


古い篠竹籠、赤ライン


しかし、黒い竹ヒゴは松葉を使って染色していた事が分かっているが、赤い色は一体どうしていたのか?聞いてみても実際に編んでいた人がいなくなって植物の名前まで特定できかねているのだが、どうやら草の根を煮詰めて赤い染液を作っていたらしい。以前、染色作家の方に虎竹の葉で布を染めてもらったら、思いがけない優しい黄色い色に染まった。赤い色も予想だにしない草木から生み出されていた気がしている。


篠竹魚籠の黒いラインが気に入らない。

 
篠竹魚籠


顔では笑っているが内心穏やかではない。篠竹魚籠に入れられている黒いラインが気に入らない、本当は松の葉や根っこを使って色付けせねばならないのに、これは何で塗られているのだろうか。初めて聞いた時には、竹に松と組み合わせるなど縁起も良いし面白いと思っていた。そもそも元を辿っていけば神事的な要素があったに違いないのだけど、今となっては誰も知る人がおらず伝統の技も消えてしまっている。


篠竹魚籠の黒いライン


この黒いラインは何なのか?ただのデザインか?本体に入っているだけではない、底に入れられていたり、口巻の一部にあったりする。とても魅力的だ、だから知りたい。松葉ではなく古タイヤを燃やして色付けしていたと言う職人をはじめ誰も知らない。ただ父親がやっていた、祖父から教わったと話すだけである。1970年代とは少し古いが、その頃まではカマドの釜底に付着した煤を使って竹ヒゴを染めていた職人もおられたようだ。しかし、その方も黒い竹ヒゴについては何も語ってくれてはいない。


篠竹魚籠内側


篠竹魚籠は竹表皮を裏返した形で編まれている。地元の人もうっかり見過ごしているようだが、滑らかな竹表皮が内側にくる事によって魚が傷まないようにと、作り手の心使いが伝わる大切な部分だ。


篠竹魚籠、竹虎四代目(山岸義浩)


内心穏やかでないと言ったが、実は安堵もしている。理由が分からずとも、それでも何とか今日まで竹細工の文化が繋がってきているからだ。本来の作りではないにせよ、昔ながらの形がここにある。竹ひごの色付けには、さすがにそぐわないと思う手法もあるけれど、それでも全く失われてしまう事に比べれば何という事はない。


真竹より篠竹、篠竹よりスズ竹、スズ竹より根曲竹

根曲竹六ツ目編み手付き籠

東北の方では、真竹より篠竹、篠竹よりスズ竹、スズ竹より根曲竹が奥が深い、なんて事が言われたりする。この言葉の真意がどこにあるのか分かるようで分からない。ただしかし、昔の大作家の竹籠にハタと足が止まる時、その作品が根曲竹であることは多い。いつだったか「これは誰にも譲らない」と真顔になった大御所がサッと棚に戻した竹編みも根曲竹だった。




前に一度、根曲竹の伐採に同行した事がある。根曲竹の成育する山々は熊の活動地域なので、自分達の虎竹とは全く違う意味での苦労があると感じた。爆竹を鳴らし、笛を吹き、ラジオの大音量の中で藪に分け入る。根曲竹は名前の由来どおり、根元か曲がるほどの雪の重みに耐えて鍛えられた竹だ。普通の竹林とはイメージが異なり、地面に横たわっている竹さえある、それだけに細く見える竹だがその性質は粘りがあり強靭、野趣あふれる魅力がある竹なのだ。


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自分が日常的に愛用する根曲竹と言えば別誂えの少し大きめの手提げ籠がある。一般的には茶碗籠や脱衣籠、小物籠といった生活道具が多いと思うが、飾っておきたくなるほどの(実際飾っている)魚籠や変わったところで醤油籠なども編まれている。そしてもうひとつが自分くらいの体重ならいくら負荷をかけても折れる事のないステッキまである。


根曲竹職人


使っているうち、いつの間にか自然に浮かび上がってくる竹艶。あまり知られていないが、かっては竹家具としても製造されて来た歴史があるから考えれば確かに奥が深い。無骨な野武士のようでもあり、優雅に舞う歌姫ともなる竹材、この根曲竹職人か生み出す竹籠は果たしてどちらだろうか?




無料プレゼントで、調湿竹炭パックお試しのチャンス

 
【全4種セット】調湿竹炭パックを10名様にプレゼント


竹虎では皆様のご存知なかった竹の世界をお届けしたいと思っている。今回の調湿竹炭パックなどもそんなモノのひとつだ、皆様に良さを知って頂くには一度お使いいただく事が何よりではないかと考えて、たまにこのような無料プレゼントの機会を作るようにしている。環境にやさしく竹達は「自分たちを役立てて欲しい!」と竹林で泣いている、そんな竹を主役にした調湿剤で台所やトイレ、居間、押し入れや下駄箱の湿気をスキッとさせて皆様に竹のパワーで喜んでもらいたい。


そこで今回の特別企画は、<大>約W30×D30cm(内容量:約2.5L)、<中>約W20×D20cm(内容量:約0.6L)、<小>約W12×D18cm(内容量:約0.2L)、<クローゼット用>約W9×D42cm(内容量:約0.6L)の全四種類を1パックづつセットにして10名様に当たる。肝心の竹炭の除湿効果だが、自分達でもビックリした実験の様子を下の動画で公開している、お時間の無い方は、00:40に調湿竹炭パックの3つのポイント、02:35に竹炭の除湿実験開始、04:44には竹炭の凄い実験結果なので頭出しでご覧いただきたい。効果を確認したら調湿竹炭パックを10名様にプレゼントからご応募を!