細身で軽いのだが驚くほど強い根曲竹はステッキにも最適の素材だ。前に黒竹でステッキを製作した事があった、黒竹も細く丈夫な竹なので割れにくく強度も十分だと思っていた。ところが、根曲竹は身の部分が厚くて少し次元が違うような粘りと堅牢さを感じさせてくれる。
「何を言っている四代目!ステッキと言えば竹根ではないか!」そんなお声が聞こえてきそうだ。もちろん竹根は定番で自分も数本愛用しているが、全国探しても竹根職人がいなくなり良質の素材は手に入らなくなった。思えば竹根も竹の稈と違いギッシリと身が詰まっている、丸竹のまま製品化して段違いに実用的なのはこのせいだ。
ステッキの他にも傘の持ち手などに竹根が使われている、竹根だからこのような美しいUの字に加工できるのである。中が空洞になっている丸竹の場合は、細ければ何とかなるけれどこんな太いサイズで曲げられたものは見た事がない。
そう、これくらいの細さの竹であれば簡単ではないけれどUの字に曲げられる。
じゃあ、前に紹介した昭和の時代に一世風靡したオーバーナイターの持ち手はどうか?グルリと一周しているのではないか?いやいや、この持ち手は籐だ。
ところで、こんな強靭な根曲竹の伐採の様子はご覧いただいた事はあるだろうか?多くの方が、どの様な竹林でどんな風に竹を集めるのかご存知ないと思うので、関心のある方はコチラの動画の冒頭部分を是非チェックいただきたい。
動画を観ていただくと、根元が曲がるくらいの雪の重みに耐えて、鍛えられた根曲竹のステッキの生命力、耐久性の謎が解けるようだ。
実は今回の根曲竹では、一流の技を持つ竹曲げ職人さんのお力を借りていたが思うように曲げ加工ができなかった。根曲竹と一口に言っても成育年数や部位により特性が異なるに違いない。竹林から見直して改めてチャレンジしたい。