最近、とんと食指の動くような背負い籠に出会っていない。実は全く需要がないという訳でもないのだが、他の竹細工に比べると圧倒的に少ないので特に凝ったものほど編まれる事がなくなった。自分の肩に引っ掛けた背負い籠をご覧いただきたい、利便性を考えた縦長タイプだが単調に見えないのは竹ヒゴ幅を変えて作られているからだ。竹表皮を薄く剥いだ磨きで口巻しているので、その部分だけ色合いが早く変色していて最初から狙っていたかのようなワンポイントとなっていて格好がすこぶるイイ。見るからに丈夫そうな丸みを帯びた力竹が底部分を補強しているのも堪らない。
秀逸な背負い籠として忘れてはいけないのが独特の形をした「かるい」だ。しかし、思えば芸術的な竹籠を産み出す技を持っておられた名人のあの方でさえ、時代の流れ中で必ずしも思い通りの竹編みを続けられなかった実情がある。むせ返るような青竹の香り、無言で坦々と進む竹の仕事、今となっては小物入れ用に作った小さな「かるい」に、工房で見たあの日の流れるような美しい所作を重ねるしかない。
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