背負い籠と飯干名人

 
背負い籠と竹虎四代目(山岸義浩)


最近、とんと食指の動くような背負い籠に出会っていない。実は全く需要がないという訳でもないのだが、他の竹細工に比べると圧倒的に少ないので特に凝ったものほど編まれる事がなくなった。自分の肩に引っ掛けた背負い籠をご覧いただきたい、利便性を考えた縦長タイプだが単調に見えないのは竹ヒゴ幅を変えて作られているからだ。竹表皮を薄く剥いだ磨きで口巻しているので、その部分だけ色合いが早く変色していて最初から狙っていたかのようなワンポイントとなっていて格好がすこぶるイイ。見るからに丈夫そうな丸みを帯びた力竹が底部分を補強しているのも堪らない。


背負い籠かるいのミニサイズ


秀逸な背負い籠として忘れてはいけないのが独特の形をした「かるい」だ。しかし、思えば芸術的な竹籠を産み出す技を持っておられた名人のあの方でさえ、時代の流れ中で必ずしも思い通りの竹編みを続けられなかった実情がある。むせ返るような青竹の香り、無言で坦々と進む竹の仕事、今となっては小物入れ用に作った小さな「かるい」に、工房で見たあの日の流れるような美しい所作を重ねるしかない。




貴婦人、白竹差し六ツ目手提げ籠バッグ

 
白竹差し六ツ目手提げ籠バッグ


白竹は夏が似合う。最近は昔のように白竹は夏、染め竹は冬と区別して使われる方は少ないようで、白竹でも染め竹でも季節に関係なく使われている。もちろん自由に楽しめば良いのだけれど、強い日差しの中を日傘など片手に行く白竹の籠を見かけると、やはり美しいなあと思う。


白竹差し六ツ目手提げ籠バッグ


今どきの真竹の竹林に行くと、竹皮を脱ぎ捨てながら青々とした竹肌の若竹が、あっちにもこっちにも伸び出している。この青竹を熱湯で油抜きしたのが白竹で、冬場の太陽に当てて乾燥させ色をだしていくので晒竹(さらしだけ)とも呼ばれている。


白竹差し六ツ目手提げ籠バッグ


そんな白竹を使った差し六ツ目編みの手提げ籠バックだが、少し小さいサイズができている。大は小を兼ねるとも言うけれど、ちょっと小ぶりなのは粋なものだ。




続・篠竹で編まれる、どじょうど

 
どじょうど


さて、こちらのどじょうど(どじょう筌)は、しなやかで柔軟性に富んだ篠竹で編まれているのが素晴らしい。細い篠竹を割りっぱなしで編みこむ竹細工が、武骨な独特の雰囲気を醸し出している。昨日の30年ブログでお話ししたように、竹表皮を逆さに使う技法も素朴さに一役かっているようだ。


どじょうど


ところが、更に面白いのが捕れたドジョウの取り出し方なのだ。筌のお尻部分は竹の弾力だけでも、しっかり閉じているので、流れのゆるやかな田んぼや畦の小川では必ずしも紐で結ぶ必要はない。仮に紐で縛っていたなら、その紐をほどいてから獲物をどうやって取り出すのか?それは篠竹の柔軟性を大いに活かしてキュッと籠全体を絞るのだ。キュッとやるとお尻がパッと開く、竹以外にこんな芸当はできはしまい。



篠竹で編まれる、どじょうど

 
どじょうど


東北の寒い地方に成育する篠竹で編まれる竹細工のひとつ、地元では「どじょうど」と呼ばれるどじょう筌もこれだけあれば捕り放題である(笑)。高知では、どじょうより鰻だが鰻筌も長さが違うだけで似た仕掛けであり非常に近しいものを感じる。


篠竹


乾燥しすぎてしまうと使いづらいので、旬の良い時期に伐採した篠竹をビニールやムシロをかけて保管してある。拝見させてもらった素材の中には、こもった湿気でカビがきているものもある。ちなみに節の所に皮が付いているが、これは筍の時からの竹皮だ。竹が筍から成長する過程で竹皮を脱ぎ捨てるのと違い、一生このままなので篠竹は竹と名前の付いているものの典型的なササ類なのだ。


どじょうカゴの篠竹ヒゴ


この篠竹の表皮部分を内側にして編み込まれているのが一つの特徴。よくご覧いただくと、どじょうど外側には竹の内皮を確認できる。


どじょう籠、竹虎四代目(山岸義浩)


それにしても、このような素朴な竹籠に触れていると、次から次へと小さい頃の懐かしい思い出が目の前に浮かんでくる。豊かな流れのせせらぎと、川の香りの向こうに友達の笑顔が見えるようだ。


この大きなスズ竹ざるは奇跡です。

 
スズ竹丸ざる(特大)


梅干し用や干し野菜にお使い頂く大型の竹ざる類は、概ね直径は60センチまでだ。かっては1メートルを超えるものもあり、今でも65センチという匠が編みこむ芸術的な横編み竹ざるがあるが、一般のご家庭ではマックスのサイズだと思う。素材は日本三大有用竹と言われる真竹、淡竹(はちく)、孟宗竹、これ以外の竹でこの大きさのザルなど皆無...いや、皆無に近い。それで竹を扱っている人の中にも知らない方が意外と多いのが何とスズ竹で編まれた丸ざるだ。




スズ竹を使った、60センチもある大きな丸ざるの存在が奇跡のように感じるのは、このYouTube動画(スズ竹開花の様子だけ取り出したショートバージョン)をご覧いただくとご理解いただける。120年に一度のスズ竹の開花が起こり、今まで伐採していた竹林が全て枯れてしまっているのだ。


スズ竹そばざる


そもそも一般的にスズ竹のざると言えば、このようなサイズの蕎麦ざるが中心である。材料不足で困っている中、小物なら何とか編むことできても、さすがに60センチの大型竹細工はとても製作できない。もしかしたら、今回の開花騒動で行李のように消えてしまう技かも知れないと危惧している。




1日に120センチも伸びる筍の力の根源

 
筍と竹虎四代目(山岸義浩)


海外からの筍輸入は昭和60年(1985年)から始まったと言われており、それまで全国各地で収穫されていた筍の多くが採算が合わなくなり放置されて現在に至っている。「竹害」などと、とんでもない事をメディアが報じた事もあるが、人の暮らしのために人が植えて人が広げてきただけであり、竹には何の責任もない。しかし、竹林が荒れ果てた竹藪になっている事は事実で、昼間でも薄暗く立ち枯れした古竹で中に入ることもままならない所も多い。


竹になる筍


だから、このように手入れされた竹林に伸び伸びと育つ竹を見ると心から安堵するのだ。1日に120センチも成長する事がある竹のパワーを感じて、自分までもエネルギーがみなぎってくる気がする。


竹皮


まさに筍が竹にある瞬間である。竹皮を脱ぎ捨てながら上へ上へと伸びあがっていく竹。残された竹皮には抗菌作用があり、自分の小さい頃のお肉屋さんでは包材は決まってこの竹皮が使われていた。今では国産の竹皮は本当に極一部だから、竹虎の竹皮草履も全国レベルで超レアな製品だ。昔ならどこの田舎に行っても何人かは、この竹皮を使った草履も編まれていたはずだから、変わらないようで日本も時代も変わっている。


竹根


変わらない竹の驚異的な成長力を支えるのは、縦横無尽に繋がってる竹根だ。


孟宗竹


この山の頂まで見渡せる、手入れの行き届いた竹林では、まだまだアチラコチラから筍が顔を出している。そして、あれよあれよと大きく育つ力の根源が、皆で助け合う竹の強さなのだ。




腱鞘炎になって重宝した竹籠バッグ

竹虎四代目、腱鞘炎


何をした訳でもないのだが左手首が腱鞘炎を起こしてしまった。痛いと思いながらも無理をして長距離ドライブをしたせいだろうか?昨日は最悪で何もしなくてもズキズキと痛みが襲ってくる。まさか病院に行くほどだとは考えてもいなかったから手近に置いてある竹炭温感サポーターを塗って様子を見ていたが、車に乗ってもシートベルトができない。右手だけでしようとすると、身体の左側にある差し込みに金具を差し込みづらい(泣)。普通の、このような動作ひとつも非常に大変だ、左手が使えない不自由さと両手が使えていた幸せをつくづく感じた。


真竹六ツ目籠


とうとう、格好悪いので嫌だった手首サポーターを使うことになった、35年愛用している腕時計は右腕にはめている。今朝になって幸いなことに腫れが少しづつひいて痛みも随分と軽くなったが、少し動かしただけでも激痛が走る中、モノを握るという動きができないので本当に重宝したのが長い革持ち手の六ツ目籠だった。どうしても買い物に行かねばならない時、サッと腕を通して持ち運べる利便さに助けられた。女性の方がお使いいただく事を考慮して、革持ち手は若干短く作る予定だ。来月の完成が待ち遠しい。




床下用竹炭から、安心して使える室内用の調湿竹炭パック

 
床下用調湿竹炭


ジメジメする梅雨対策に何とか間に合った調湿竹炭パックだが、そもそもの製品開発のキッカケとなったのは床下用調湿竹炭にあった。住宅の床下に敷き詰める用途の調湿竹炭は、購入いただく場合には30~40坪程度の数量が一番多い、ところが少し前から1坪単位でお求めいただく方が意外にいる事に気がついた。


調湿竹炭パック


最初はお試しにお買い上げいただいて、少し試してから30坪なり40坪なりご注文されるのだろうと勝手に考えていた。ところが実際はそればかりではないようで、お送りさせて頂いたお客様に用途を教えてもらうと、家の床下ではなく室内での湿気取りに重宝されていると言う。


竹炭材料


竹は木材に比べても圧倒的に成長が早く、世界的な環境意識の高まりもあって近年は特に注目されている素材である。さらに木炭に比べて、群を抜いて高い効果が期待できるとあって竹炭への活用が進んできた。


竹炭窯


バンブーロスという言葉を使ってお話しする場合もあるが、湿気対策として認知が広まれば伐採しても皆様のお役に立つ事ができず破棄されてしまう竹の活用だけでなく、そもそも放置竹林として手が付けられていなかった竹利用にもなる。


調湿竹炭パック製造


一般の住宅の中でご愛用いただくためには、床下用竹炭を更に改良せねばならなかった。一つは細かい竹炭微粉末が外に漏れださない工夫である。これには通気性を確保しつつ粉は外に出さない不織布を厳選し、二重にする事により安心して使える調湿剤に仕上げた。


安心して使える調湿竹炭パック


また、室内での色々な場所での使用を想定して形とサイズを4種類にしているので、それぞれをスペースに合わせて適材適所に置いたり組み合わせたりしてお使いいただけるのでないかと考えている。




バンブーロス解消へ、驚異の除湿力の竹炭活用

 
日本唯一の虎竹


バンブーロスなんて言葉を使うのは自分が初めてではないだろうか。食品ロスなら最近よく聞くけれど、一体どういう事なのかと思われる方も多いかも知れない。実は、日本唯一の虎竹は虎竹の里でしか成育しないものの、全ての竹に虎模様が付いている訳ではないのだ。ところが、五年、十年、百年と長い時間を考えた竹林管理のためには色付が良くない竹も伐採して間引かねばならず、実際に山から沢山出てきてしまう。


虎竹伐採、山出し


虎竹特有の模様の付いていない竹は製品化する事ができないので、以前なら土壁用の壁竹などに代表される住宅用資材として、あるいは農業用、造園用の竹材として何とか販売先を確保しつつ素材が無駄にならないように努めてきた。しかし、時代の流れと共に人の暮らし方が変わり、竹に代替する製品の開発や安価な輸入材の増大によって、そのような竹材の需要がなくなり工場や竹林で朽ち果ててしまい、最終的には破棄せざるをえないようになってきた。


飾り竹炭


そんな中、無駄になってしまう竹があまりにも不憫で、その活用方法を考えた一つが竹炭だった。知れば知る程魅力ある竹のもうひとつの新しい顔という事が分かってくる。これならかって世界的にも竹の第一人者として有名でミスターバンブーと呼ばれた竹博士・故上田弘一郎博士にして「竹は山で泣いている」とまで言わしめた未利用の竹林に一筋の光が差し込むのではないかと感じた。


竹炭


なので取り組んでから30年になる竹炭の消臭効果、調湿機能は体感的に非常に優れたものだと熟知しているつもりでいた。しかし、それが今回改めて除湿実験をしてみて、さすがにこれ程の湿度の違いになるとは思いもよらなかった。


調湿竹炭実験で結露


日本の梅雨時の湿度は70%、高くなる場合には80%にもなるので熱湯を入れた湯呑を入れて実験用ガラスケースにその湿度を再現してからスタートした。


調湿竹炭実験結果


約1時間経過した後の温度と湿度を見比べて驚いた。温度はほぼ変わらない状態で、何もしなかった方は湿度94%にもなっているのに対し、竹炭を入れた方は何と湿度50パーセントまで下がっている。


調湿竹炭パック


二つのガラスケースの違いは、わずか0.2リットルの竹炭粒だけ...実験した自分自身も腰をぬかさんばかりにビックリした竹炭の除湿パワーは、竹虎YouTubeチャンネル「衝撃の除湿実験!調湿竹炭パワーを実証!」でご覧いただける。日本は水の豊富な美しい国、それだけに高温多湿になりがちで、お悩みの方も多いのでは?里山の竹林のバンブーロス解消にもつながり、お困りの方の力になれるのであれば、こんな嬉しい事はない。今回の調湿竹炭パックはそんな思いで、快適にご愛用いただけるよう昨年から準備してようやく完成させたものだ。




不思議な竹の雄雌

 
男竹


竹冠の付く漢字の多さからも、竹と人の暮らしは古来よりずっと深く結びついてきた。中国のことわざに「可使食无肉、不可使居无竹(食事で肉がないのは許せるが、暮らしに竹がないのは許せない)」と言うものがあると教えられたが、実際日本でも生活に竹は欠かせないパートナーだった時代がある。


女竹


そのせいか不思議な伝承も多く、ひとつが男竹と女竹だ。竹に男女があるのか?筍には聞いた事がある等、いろいろな話があるけれど見分け方は簡単で、竹の根元から見て行って最初に出ている枝の本数で決まる。一本なら男竹、二本なら女竹だ。だから何かが違うという事はないが、一体誰が言いだしたのだろう、オモシロイ。




竹に男や女があると思われるほど、人に近しい関係だった竹。しかし、神秘的な生態には人智を超えるものがあって分からない事だらけでもある。


スズ竹市場籠、竹虎四代目(山岸義浩)


例えば自分が愛用するスズ竹市場籠。ササの仲間の小さな竹だが、粘りが抜群で強さがあるのに優しい手触りとしなやかさがある。修理しながら親から子へ孫へと使える秀逸な素材であるが120年に一度と言われる開花があってスズ竹の竹林は枯れ果てている。真竹や淡竹(はちく)も120年に一度、孟宗竹は60年に一度、イネ科らしく稲穂のような花を付ける。不思議としか言いようがない。




小菅小竹堂作「鯉口」

 
小菅小竹堂作、鯉口


先日、小菅小竹堂さんの作品の数々を拝見する機会があった。この竹作家の方がユニークな点は、日本最高峰の技術を持たれていながら産業工芸デザイナーであり、戦後は新潟県竹工芸指導所技師として竹の普及に尽力されていた点だ。普段は竹工芸作家とはあまり縁のない一般的な竹細工にも小竹堂さんの創作された品が多々あったのである。


竹編みネックレス


自分たちも幼い頃から知らず知らずの間に小竹堂さんのデザインに慣れ親しんでいた事になり、後から知って物凄く親近感を感じてきた。だから、作品展が開催されると聞くたびに、どうしても足が向いてしまう。今回は自分の持っている竹編みネックレスを持参した、創作された元々の作品と見比べてみるためである。既に数十年前に廃盤となっているため、最後に残された中から最高に出来栄えの良いものを置いてあるのだが、やはり本元と比べると見劣りする。


小菅小竹堂作、鯉口


素晴らしい作品の中に面白い籠を見つけた、美しい鳳尾竹で編まれた籠だ。鳳尾竹とは元々は根曲竹で、柔らかく、それでいて堅牢な竹質は買い物籠や脱衣籠などで皆様の目に触れる事が多いが、このような繊細な表現もできるから、つくづく竹は面白い。


小菅小竹堂作、鯉口、鳳尾竹


小菅小竹堂作、鯉口


銘を「鯉口」と言う。フッと笑みがこぼれるのも確かな技があってこそ、また小竹堂さんを身近に感じて好きになった。


逆さ台形六ツ目編みのオモシロイ手提げ籠

逆台形手提げ籠バッグ


昨年末に、逆台形六ツ目編みの手提げ籠をコチラの30年ブログにてご紹介させていただきました。それ以来、買い物に行くたびに結構高い確率でこの竹手提げ籠を持参して行きます。白竹八ツ目編み試作時の籠や、一点物で無骨さが気に入っている根曲竹の買い物籠、昔から長く愛用しているスズ竹市場籠など常時車内には数個の籠が載っているのですが、ついつい手に取ってしまい気がつくと一番多用しているのが、この逆台形の籠なのです。


真竹手提げ籠


ユニークな形と長めの革持ち手に、ちょっとワクワクする感じを竹虎のお客様にも共有でればと思っていたところ、遂に10個程度ではありますものの籠が完成して後は革持ち手が出来上がるのを待つばかりとなっいます。

 
六ツ目手買い物籠


さて、手にしております二つの籠の色目が違うのは経年変色です(笑)。元々青竹そのままに編まれた六ツ目籠が2~3年経過しているので、まるで晒した白竹のように見えています。革持ち手にまだ一ヵ月以上かかりそうなので少しお時間頂戴いたしますけれど、お楽しみにお待ちいただきたいと思っています。




昔の篠竹細工の籠たち

 
篠竹細工、米研ぎざる、魚籠、腰籠、餅草摘みふご(よもぎ餅)<br>


先日5月14日の30年ブログで「竹は、作る人と使う人で完成するものなんだよ」と、しびれる話を聞かせていただいた篠崎ざるのお話をさせていただきました。同じ篠竹を使う竹細工でも、東京から北に上がって東北にまで行くと籠の種類や風合いは微妙に違ってくるものの、使う人を思って編まれる職人の精神は同じです。


篠竹米とぎざる


飴色に変わって、いかにも生活の中の竹という風合いの大振りの米研ぎざるを手にしてみました。数十年前に編まれたであろう細かく取った竹ヒゴの籠なのに、ついこの間出来たばかりのようにカチリとした感触、やはり縁巻がしっかりしています。


篠竹


虎竹をご存じない方から「どれくらいの太さの竹ですか?」と質問される事があります。太めのボールペンくらいの細さから直径10センチ近い太さの竹まで様々なのですが、同じように篠竹も細身の竹でありながらサイズには若干のバラつきがあります。


篠竹米とぎざる縁巻


この頃合いの丸竹を何と3本もまとめて縁にあてがって、そのまま口巻きしているのです。地味に見えますけれど、丸竹をこれだけ綺麗な円の形に仕上げているのは相当な熟練の技です。




驚きの調湿竹炭実験の結果や如何に!?

 
調湿竹炭


調湿竹炭パックには、湿気にお悩みの皆様にオススメしたい3つのポイントがあるのです。まず、人と環境にやさしい竹素材である事、次に厳選した二重の不織布で快適にお使いいただける事、最後に半永久的に湿度調節してくれる経済性です。しかし、実際どの程度の効果があるのか?ここが一番、皆様がお知りになりたい所でもありますので今回は、調湿竹炭パックに入れています竹炭粒を使って除湿実験を行う事にしました。


竹炭の除湿実験


元々は、県の公の機関にお願いしようと相談していましたが、実はこのような実験はあまり多くないらしく「竹虎さんの方でテストされた方が良いのではないか」という事になりました。そこで、簡易にできる実施方法や試験器具をご指導いただいて自社で測定する事にしたのです。


竹炭除湿実験に驚く竹虎四代目(山岸義浩)


食品ロス、フードロスという事が言われるようになりましたけれど、自分たちはバンブーロス削減のため竹の活用方法を考え、竹炭に取り組んで30年になりますので竹炭の消臭効果、調湿機能などは体感的に非常に優れたものだと知っていました。ところが、今回の除湿試験をしてみて、さすがにこれ程の湿度の違いになるとは思ってもみませんでした。


約1時間経過した後の温度と湿度をご覧ください、温度はほぼ変わらないのに竹炭を入れた方は湿度50パーセント、一方何もしなかった方は湿度94%です。改めて竹炭の可能性を知らされた思いです、皆様にも下のYouTube動画をご覧いただいて竹炭の除湿パワーの凄さを感じていただきたいです。




「竹は、作る人と使う人で完成するものなんだよ」江戸の篠崎ざる

 
東京上空から荒川を見る


高知から羽田空港へ飛ぶ飛行機のルートは、その日によって変わるようです。東京湾方向から着陸していたはずが、今日は大都会の上空を飛んで滑走路に向かっています。眼下に見えてる大きな河川は江戸川でしょうか?かってあの河川敷には護岸用にもなっていた篠竹が茂っていて、その竹を使った竹細工の一大生産地がありました。今となっては「篠崎」という地名に当時の名残を感じるだけですが、その土地で最後まで竹編みの仕事をされていた職人を思い出すのです。


篠崎ざる


「ウチのかごは、これだけ丈夫なんだよ」そう言って、ご自身の編んだ竹籠をひっくり返したかと思うと立ち上がり、籠に飛び乗った時には本当に驚きました。200軒もの竹籠屋が軒を連ねていた地域で技を競い合った職人のプライドが伝ってきました。竹は江戸っ子気質にピッタリだと話されていた通り、竹を割ったような気持ちのよい方でした。


篠崎ざる


篠崎ざるの特徴的な「外縁」は持ちやすく、中に入れて洗った食材を他の籠に移しやすい実用的な作りです。もちろん、たとえ籠の上に飛び乗ってもビクともしなかった堅牢さの秘密でもあります。懐かしい画像を見ながら、機内から撮った河川を調べてみらた、どうやら荒川のようです。左手に中川があり、更にその横を流れるのが江戸川でした。


YouTube動画で伝統の竹細工と現代的な竹籠の違いをお話しさせもらいました。竹は世につれ、人につれ変化してきました、改めて竹職人の忘れられない言葉を思い出します。「竹は、作る人と使う人で完成するものなんだよ。」




かぐや姫の宿る竹?

 
かぐや姫の宿る竹?


竹取の翁は竹林で光輝く竹を見つけて、その竹の中のかぐや姫を連れ帰ったと竹取物語にあります。実際に光輝く竹などあるのだろうか?実は梅雨時の孟宗竹の竹林で驚くほど明るく光って見えるかぐや姫の竹と出会った事があって以前の30年ブログにも書かせてもらいました。


孟宗竹


この日の葉が生い茂る少し薄暗い孟宗竹の竹林は、所々に明るい日が差し込んでいましたのでその中の一本がまさにかぐや姫の竹のように輝いて見えていました。


かぐや姫の宿る竹?


ところが、前からご購読の皆様は既にお分かりのように日本最古の物語と言われる竹取物語が書かれた頃の日本には孟宗竹はありませんでしたので、竹取の翁が見つけた竹はこんな風ではなかったはずです。それでも白く輝いて何やら話しかけてくれているのを感じます。




昭和の御用籠、久々の登場

 
御用籠


無骨な御用籠をご覧になって、昭和生まれの皆様は懐かしく感じられる方が少なくないと思っています。ピンと来られない方にも、かって自転車やバイクの荷台にくくり付けられていた竹籠と言えばいかがでしょうか?「あ~、あれね!なるほど知ってる、知ってる」そんな声がチラホラと全国から聞こえて来る気がしています(笑)。


御用籠、竹虎四代目(山岸義浩)


兎に角、昔の竹籠ですから、まず丈夫さと使いやすさが一番。底に幾重にも重なる迫力の力竹を見ると、自分などは職人の仕事場で見た炭火の匂いが頭をよぎります。幅広に取った力竹は熱を加えて直角に曲げられているのです、この御用籠も角の部分は火を当てた跡が残っています。


古い御用籠


こちらは現役で使われていた当時の御用籠、さすがに良い色合いになっています。プラスチック製のコンテナ箱が出回るまでは竹籠が運搬用として主流だったので御用籠は全国各地で編まれていて、基本的な構造は同じでも作りは微妙に違っていました。


古い御用籠


確か前にもお話した底の力竹です、今なら絶対に使わないような節付きの竹が使われています。これは竹のウラ(先端)部分まで無駄にならないようにしていた証で、昔は竹材を少しでも節約して製作しないと間に合わないほど大量生産されていた事かうかがえるのです。


御用籠


「ウラの竹材を使っても、しっカリ作っているから強さは変わらんよ!使えば分かる。」昭和の籠からは、そんな熟練職人の自信が聞こえてきそうですが、現代では見栄えも機能と同時に見栄えも大事に編まれています。


御用籠


御用籠は、まさに万能籠として色々な使われ方をしていました。竹虎の工場ではリヤカーに載せて運ばないといけない程の大きさの籠をゴミ箱として使っていたのを覚えています。えっ?リヤカーをご存じない...?そんな方はgoogleで検索して下さい。自分も試しに見てみたらアルミ製のカッコイイものが出てきましたけれど、竹虎の職人が使っていたのは木製の本体に古タイヤを取り付けたようなものでした。


御用籠


大の大人が数人がかりで持つような大型の籠から自転車の荷台で使かわれるサイズまで、用途によって様々な大きさが作られて愛されてきた御用籠の魅力が尽きることはありません。




竹の秋と竹の花、そして竹てんぐ巣病

 
竹の黄葉、竹の秋


昨日から竹の秋についてお話しさせて頂いている。竹は昔から日本人の暮らしに密着して一日として欠かす事のできないパートナーと言ってもよい存在だった。全国どこで生活される方であっても、多くの場合は少し注意をするだけで身近に繁っている竹を見る事ができるのではないだろうか。


竹の落葉、竹の紅葉


国内の森林面積に占める竹林の割合が、わずか0.6%しかないのにこれほど目につくのは竹がいかに人の生活圏に植えられて役立ってきたかという証である。そして、その竹が紅葉しているのだ。燃えるような真っ赤な色合いで主張しないところが竹の奥ゆかしい所で、紅葉ではなく黄葉と呼ぶのがふさわしいと思う。


竹てんぐ巣病


竹の葉が黄色くなっているお陰で、実は今の山里の景色は決して生命力に溢れる美しさではない。更に近年は北から南まで蔓延している竹てんぐ巣病があって竹林が疲弊しているように見えてしまう。


竹の秋と竹の花


高速道路が貫く高知市北山はかって筍の産地として知られた地域でもある。ここ20年だけでも、久しぶりに帰高した人が驚くほど広がりを見せている竹藪の薊野トンネル付近をご覧いただいている、左手前は黄葉した竹、トンネル口に見える竹は罹患している竹たちだ。


竹の花


そして前にからお話させてもらっているように竹の開花があって、まさに今の竹林には二重苦、三重苦のような状態だ。しかし、竹の黄葉は新しい若葉の芽吹きのためでもあるし、竹の開花も次世代に繋いでいく大自然の営みである。てんぐ巣病も、竹が生まれ変わる時代の過渡期の症状と思って長い目で見ていきたい。




誰にも知られない竹の秋(竹の紅葉)

竹の秋、竹の紅葉


松や梅と共に古来縁起のよい植物のひとつにが数えられているは何故だろうか?きっとそれは、その凛とした姿に人が魅了された事、そして雪の降る寒い季節にあっても青々とした葉を繁らせる神秘的な生命力あふれる様からではないかと思う。だから竹の秋とか、竹の紅葉、竹の落葉と言ってもピンと来る人はあまりいないかも知れない。


竹の紅葉(黄葉)


ところが、一年を通して変わる事がないと思われる竹林にも秋があり、紅葉があり、落葉があるのだ。ただ竹の場合は、普通の樹木とは反対に春に紅葉の季節がやって来る。ちょうど筍が頭を出す頃に、竹の葉は黄色く色づき静かに葉を落とす。


竹の紅葉(黄葉)


多くの竹は人里に成育しているので、実は沢山の方が毎年繰り返される竹の営みを目にしているはずなのに、関心がないのか気づいていない。もしよかったらこの30年ブログを読み終わった後、近くに山があれば竹林を注意深くご覧いただきたい。


竹の紅葉(黄葉)


「そう言えば、いつもの緑色の景色が少し色あせて見えるような...」それこそが竹の紅葉なのだ。


竹の秋、竹の若葉


それでは落葉はどうだろうか?さすがに落葉して裸になった小枝ばかりの竹林なら誰でも気づくはずである。しかし、やっぱり竹には神秘的な力が宿っている。黄色く紅葉し落葉していく小枝には既に次の世代を担う若葉が芽吹いているのだ。古い葉が散っても、交代するかのように青々とした新しい葉が大きく育つので、誰にも竹の秋は知られない。




「ウチは国産竹串を使ってます」

竹串


新型コロナによる行動制限の緩和で飲食店が少しづつ稼働しはじめたからでしょうか、夜の街にも賑わいが戻ってきたようで国産の竹串には週に何度もお問合せを頂くようになりました。焼き鳥屋さんやホルモン焼き、あるいは川魚のお店まで、こだわりのお店も多いようで単価は多少高くなっても日本の竹を使った製品を求められていると感じています。

 
国産竹串、竹虎四代目(山岸義浩)


現在、このような竹串については国内で流通しているほとんどは輸入されたものです。中には海外の竹材が柔らかく肉を刺しづらいので、しっかりした材質の国産品を探されてると言われる方もおられます。ところが、自分達もできるだけ国産竹串を使っていただきたいと思うものの数量が足りていません。


※柔らかいのは海外の竹質のせいだけではありません。肥料を使って筍を生産する竹林の場合、育ちが良く材質が柔らかくなりがちで竹製品の素材としては適していません。これは日本の竹林でも同じ事で筍栽培をする孟宗竹の間伐材は、たとえ沢山あっても使えないのです。


竹串


こじんまりとしたお店で、何とか数は揃いそうでも最後には値段がかみ合いません。「ウチは国産竹串を使ってます」なんて事をウリにする焼き鳥屋さんは、あまり見た事がないです。つまり安価な海外製品が多々ある中で、日本製竹串と言ってもお客様に対してアピール力が乏しく、安心して使いやすいと思いながらも価格の相異に諦めてしまうのでしょう。


何故もっと安価に製造できないのか?竹串など簡単そうなのに。普通に考えれば本当にその通りかも知れません、しかし実際には竹は一年通して伐採できる訳ではないので、これだけでは収入が安定しないから山の職人がいなくなります。材料である竹を苦労して集めたと思ったら、今度は加工せねばなりませんが実はこれも下のYouTube動画で紹介しているように相当な手間がかかっています。工場では加工機械を多用していますものの、この調整が大変で別サイズなど簡単に出来ない理由もお分かりいただけるのではないでしょうか。竹串をお問合せされようと検討される方には動画「感激の国産竹串工場!太い丸竹から細い1本の竹串が生まれる!」を是非ご覧いただく事をオススメします。




竹微粉末を加えて新しくなった竹炭サプリメント

 
竹粉でリニューアルした竹炭サプリメント


竹炭パウダーを毎日ご活用いただけるように手軽なカプセルタイプにした竹炭サプリメントが更にパワーアップしました。竹炭の力が十二分に発揮されるように相乗効果の高い90パーセント以上が難消化性の食物繊維である竹粉微粉末をプラスしたのです。


竹微粉末


実は今回の竹粉は普通のものではありません、十数年前から自分も使用しながら気になっていた竹素材なのです。竹粉と聞きますと、一般の方でも粉砕する機械か何かで微粉末にするというのは容易に想像できるかと思います。しかし、普通のチッパーシュレッダーは竹を切断して粉状にしています。


針状繊維の残る竹粉


これでは見た目には同じ竹の微粉末でも電子顕微鏡で確認すると竹特有の針状繊維が残ってしまっています。竹は細工をする段階でも繊維が指に刺さりやすいものですが、目に見えないほどの細かさになっても同じような繊維質の形があるのには少し驚きます。


特許取得の特殊刃物で製造した竹粉


レタスの80倍という竹の食物繊維の多さも針状繊維があるままでは胃の内壁に刺さり食欲低下等があり家畜の実験でも効果が上がらなかったそうです。そこで今回の竹炭微粉末ですが特許取得の特殊刃物で60ミクロンに「切削」され微粉末化されているので見た目から全く別物のようです。


竹微粉末ハニカム構造


高温を発しない常温加工なので熱に弱いビタミンやアミノ酸が壊れることなくバランスよく含まれており、繊維のハニカム構造の中に竹由来の乳酸菌が生きています。竹ヨーグルトと呼ばれたりするのは、このためで当時飼っていたゴールデンレトリバーは竹粉入りのご飯が大好きだったのを思いだします。


虎竹の竹林、竹虎四代目(山岸義浩)


最後に今回の竹炭サプリメントに使わせていただいた唯一の竹粉は虎竹と同じ淡竹(はちく)という竹の種類になります。淡竹は孟宗竹や真竹に比べてビタミンKが多く、香成分も豊かです。あれだけ竹の豊富な中国にあっても、漢方薬に使われている素材は淡竹なので他に何かあるのかも知れません。竹自体が神秘的な植物ではありますけれど、淡竹の事はもっと調べてみたいと思っています。


竹の地下茎レーダー

筍


手入れがしっかり行き届いた竹林は本当に気持ちが良いものです、ウグイスの上達した鳴き声を聞きながら進んで行くと筍がようやく顔をのぞかせていました。高知では孟宗竹の筍は既に大きく伸び上がっていたり、皮を落して竹になりつつありますから、さすがに北の筍は気温が低いとみえて少し遅いようです。


イノシシの食害にあった筍


京都など名産地の筍は地面の下にあるうちに収穫していますが、それは筍が空気に触れて光が当たると硬くなるからです。だから、この竹林で一番のグルメは、どうやらイノシシかも知れません。土中にある柔らかくて美味しい筍を鋭い嗅覚で探り当て食べてしまっています。


淡竹の筍、竹虎四代目(山岸義浩)


筍は、まず孟宗竹、その次に淡竹、真竹と続きます。暖かな虎竹の里では孟宗竹はおろか淡竹の仲間である虎竹の筍もグングン伸びています。今シーズンも沢山の筍を頂きました、しかし食したのは全て孟宗竹であって虎竹の筍は今まで一度も食べた事はありません。淡竹なので絶対に美味だと思うのですが、虎竹はやはり多く成長させてから伐採する竹なのです。


竹


さて、初めて案内頂いたちょっとだけ小振な北の竹林。あちこちに曲りくねって伸びる生命力の塊のような竹根の見える山道を歩いて、竹はやはり魅力的だと改めて感じます。


竹根


先日の30年ブログでお話したように竹は無数の竹根で繋がり助け合って生きています。昔から地震の時には竹林に逃げろと教わってきたように、まさに天然の鉄筋コンクリートのようなのです。縦横無尽に地下茎が走るからこそ、地殻の変化に敏感に反応して開花すると言う話も聞きます。


そうなれば地下茎は土の中に張り巡らされたレーダーのようです。敏感に変化を感じて人間に知らせるために竹は花を咲かせているのでしょうか?120年に一度しか花が咲かないという神秘さから開花は不吉な事の前兆ともされてきました、真偽はさておき備える心は必要です。


王様気分の円座!七島藺渦巻円座

 
七島藺渦巻円座


ところで七島藺で編まれた製品の中で一際物凄いオーラをまとっているのがこの七島藺渦巻円座。とにかく存在感はハンパありせん。職人さんに見せていただいた時の衝撃は今でも忘れられないくらい、「あっあっ!」と思わず上ずった声がでました(笑)。


七島藺渦巻円座


どうですか?このサイズ感。日本国内にも自然素材で編まれた円座は色々あるものの数ある円座の頂点に君臨するかのような、まさに円座の中の円座!


七島藺渦巻円座の座り心地


ふっくらと盛り上がる編み込みの座り心地は、まさに最上級。予想を上回る使用感はお試しいただく他ありません。


七島藺畳表


特筆すべきは、元々貴重な素材である七島藺を何と贅沢に畳一畳分まるまる使って製作されている事。


七島藺渦巻円座縁かがり


七島藺渦巻円座、竹虎四代目(山岸義浩)


サイズもゆったり65センチありますから、まるで王様気分でのんびり過ごす休日にこそ愛用したいものです。




七島藺縄編み円座の作り方

 
七島藺縄編み円座


七島藺(しちとうい)の生産農家さんにお話しを伺うと、驚くほど強く、耐火性もある七島藺をまだまだこれから復活させていきたいという思いが伝わってきます。国東特有であり350年の歴史があるという地域性が虎竹の里に通じるものを感じました。そして、かって暖房などのない時代には、特に寒い地方での暮らしには囲炉裏が無くてはならないものの一つであり、耐火性の高い素材で編まれた円座はさぞ重宝されたのではないかと推察します。


七島藺縄編み円座


縄編み円座は七島藺を縄状に編み込みながら少しづつグルグルと巻いて製造していきます。縄が糸でギッシリと編み込まれているので特有の座り心地が楽しめるのです。


七島藺縄編み円座


青々とした草の色合いは年月と共に飴色に変わるのは竹と同じです。息をしている七島藺は湿気の多い季節にはカビがでることもありますが、枯れた色合いに変化する頃にはその心配もなくなります。とにかく長持ちさせるには毎日のように使い込むことで、これも竹の使い方に似ています。


七島藺縄編み円座を編む職人


七島藺縄編み円座、竹虎四代目(山岸義浩)


竹皮草履を編む時に使う三又と同じ道具を使って円座を製作されます。こちらでは五本の指が立っているだけで全く同じ構造に親近感を覚えます。




七島藺(しちとうい)とイグサ

七島藺草履


自分が履いているのは竹皮草履ではありません、七島藺(しちとうい)と言うイグサに似た素材で編まれた草履です。とても良く編まれていて鼻緒もソフトで履き慣れない方にも痛くならずにご愛用いただけるのではないでしょうか。ただ、少し足裏への刺激が優しすぎて竹皮草履のサラリとした感触がモノ足りなく思います。そこで、硬めのEVAスポンジを貼ってスリッパタイプにしてみる事にしています。




実は七島藺に辿り付くまでには、祖母から受け継いだ機織り機を使いイグサ縄で籠を編む岡山県の須浪亨商店さんがありました。元々はイグサ栽培の盛んな地域と言うことでお伺いしてイグサの香りに包まれた瞬間に母の実家が高知県は土佐市で栽培していたイグサや製造していたゴザの記憶が蘇りました。


七島藺


興味が沸いてきたイグサを見ていて、ふと思い出したのが随分前に聞いた事のある七島藺(しちとうい)だったのです。イグサに似ているものの実はカヤツリグサ科という全く違う植物で、350年もの歴史がありながら現在では国東半島で10軒足らずの農家さんが栽培するだけになっています。

 
七島藺織機


イグサの5~6倍もの摩擦強度があり、耐火能力も備えている七島藺が衰退したのは、三角形の断面をした草の形が大量生産する機械化に向かなかったためと聞きました。


七島藺スリッパ


ところが、やはりこれだけ長く愛されてきた素材です。刈り取り作業の写真を手にすると小さい頃に母の実家で見た真夏のイグサ収穫とそっくりです。懐かしい光景だなあと思っている中で面白いスリッパにも出会いました。


続・直島の壁竹

 
三分一博志氏


直島では三分一博志さんという凄い建築家の方が活躍されていました。土地の風を長期にわたって計測し、歴史を学び、その場所に最適な建物を創るられているのです。改装中の古い民家の壁は漆喰、そして壁竹が見えています。


三分一博志氏建築の直島ホール


関心のない方でも地中美術館の名前くらいは聞いた事があるのではないでしょうか?こちらの三分一博志さん設計の直島ホールも半分地中に埋もれることによって空調の必要がないとの事でした。見た目の美しさにも目を奪われますけれど、島を吹き抜ける風を上手につかまえて夏でも涼しく快適に過ごせる構造に驚きます。


内田真一氏、竹虎四代目(山岸義浩)g


三分一博志氏の直島ホール、内田真一氏、竹虎四代目(山岸義浩)

竹と水


建築中の社員寮となる予定の建物を拝見させていただきました。半割にした竹樋をたっぷりの水が流れています、なんと地下水を汲み上げ屋根裏を通し循環させる事で各部屋にもエアコンが必要ないそうです。


三分一博志氏の建築


水は各部屋の出入口前にある池に注いでいました。ドアを開けるとこんな水辺があるとは、素敵すぎて寮から離れられなくなるのでは?と心配になりました(笑)。


水の冷却


黒電話、竹虎四代目(山岸義浩)


今日はいろいろ楽しく勉強させてもらいましたので、壁にあった黒電話を使います。空から見ている祖父に届いたでしょうか。