地表を這うように伸びて行く竹根には、短い間隔で節があって厳しい自然の中で逞しく生き抜く強い生命力を感じます。竹林にはこのような強靭な竹根が縦横無尽に伸びているので天然の鉄筋コンクリートとも言われ「地震の時には竹林に逃げろ」と小さい頃から教わってきましたし、実際に鉄不足の時代には鉄筋の代わりに竹が使われていた事もあるほどなのです。
そんな竹根は丈夫さと同時に、熱加工によって自由に曲げられるという加工性の高さがありますので意外と多くの竹細工に活用されてきました。そんな中でも竹根を多用した身近にあった製品のひとつが団扇立てです。エアコンが普及する前の話なので随分と古くはありますが、一時は色々な形のものが考案されていたのを覚えています。
先日見かけた竹ペンダントライトにはアクセントとして竹根が使われていて雰囲気を醸し出していました。竹根はこのように、ちょっとした表情の変化を付けるのにも重宝されています。
代表的なものに皆様ご存じの竹根ステッキがあります。現在では製造されなくなったものの、喜劇俳優のチャールズ・チャップリンも愛用していたのは有名なお話で、日本の竹根加工の技術力の高さを思います。
変わったところでは一刀彫の職人さんが使う道具が全て竹根製だったこともありました。味のある彫刻刀が何十本とならぶと壮観でした。
竹根を専門に掘る職人がいなくなった今、太い良質な竹根素材は貴重品です。前々から竹根印が欲しいと思ってましたが満足できるものがなかなかありません。ところが先日、竹根の中でも太く、このように雰囲気のある漆仕上げをされた竹根印に出会ったのです。(つづく)
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