直島の壁竹

 
壁竹


このゴールデンウィークは久しぶりに多くの方が全国を旅されるとの事なので、瀬戸内国際芸術祭2022が開催されている直島あたりも大人気となっているのではないでしょうか。潮風香る島内を歩いて地元の方と交流しながら、点在するアートに身をゆだねる素晴らしい体験が待っていますので、もしまだ行った事がなければ是非オススメしたい場所のひとつです。


壁竹


さて、そんな直島にやけに風通しのよい建物を見つける事ができると思います。割竹を格子に組んで壁にしている斬新さに驚かれるかも知れません。ところが、これは何処かのアーティストが考案して創作したものでも何でもなくて、元々皆様さん日本人が暮らしていた民家そのままです。


土壁、小舞竹


そのままと言えば少し語弊がありますけれど、昔の住宅はこの竹格子を骨組みとして土を固定して壁にしていたのです。漆喰(しっくい)という言葉を聞いた事もあろうかと思います、お城や寺社の壁、土蔵などの白壁がそれにあたります。


直島


土壁の上に漆喰を塗って耐久性を高めると共に見た目の美しい建物にしていたのです。今回の竹格子は、壁竹(小舞竹)のみにして新しさを感じていただけるように工夫されていると同時に、日本伝統の暮らしの素晴らしさを改めて知る機会になっているのです。


壁面に使われた竹


坂道を下りた突き当りの民家には年期入って良い色合いになった竹壁がありました。日本唯一の虎竹も全てに色付があって一級品という訳ではありません。虎模様の少ない二級品も竹林管理のため伐採され山から出てきますので、以前はそのような竹で壁竹を製造しました。一丈(約3メートル)の長さに竹を割って出荷しますので丈割竹と呼んでいましたけれど、最盛期には毎週10トントラックに2台分も作って積み上げていた事を懐かしく思い出します。


発見!タケトラカミキリの蛹

チビタケナガシンクイムシの食害


竹籠をお使いの皆様の中で、久しぶりに手にしたら見慣れない粉が出ていた等という経験のある方もおられるかと思います。年に何度かは竹虎にもお客様からお問合せ頂く事もあるのですが、暖かくなってくる春先から梅雨時にかけては特に多くなります。

 
竹の虫の喰われた竹籠


この見慣れない粉の正体は竹の虫です、今回は古いサンプルを元に復刻していた淡竹で編んだ祝儀籠が虫に喰われています。現在では、ほとんど使われていませんが20数年前までは婚礼の決まった際に鯛を入れて持ち運ぶ、この祝儀籠が地元で活躍していました。竹表皮に小さな穴が開いていますので、体長3ミリの小さな見た目を侮れない強力な食欲を持ったチビタケナガシンクイムシの仕業と分かります。


タケトラカミキリによる根曲竹の食害


自分の右手にもった根曲竹の手付籠の食害は更に酷いもので、このサイズの穴を開けるのは大型のタケトラカミキリが犯人です。持ち手の丸竹はボロボロになるほど食害にあっています、しかし実際見た目には見過ごしてしまうほどですから定期的に手にしていないと気づきません。


テングス病(Aciculosporiumtake)、蔓自然枯


近年の竹の虫の多さは一体どうしたものでしょうか?その原因はいつくか考えられます。ひとつは温暖化による生態系の変化で、先ほどの根曲竹などが典型的ですけれど寒い地方の竹にこれほど虫が入る事はあまり経験のなかった事です。害虫が活発に活動できる環境になっている事に加えて、竹林に広がる天狗巣病も気になります。これからの梅雨時など多湿になりやすい時期に胞子が飛んで感染する植物の病気で、関東あたりまでの竹林では良く見かます。一帯が罹患していて天狗巣病でない竹を探すのが難しいような地域もあるほどです。




竹の生態は不思議で真竹や淡竹は120年に一度、孟宗竹は60年に一度、竹の花を咲かせる言われています。2018年に虎竹の里からも遠くない土佐市での孟宗竹林で日本最大級の部分開花を見つけました。竹林を所有されるお年寄りも一体何が起こったかとビックリされていましたけれど開花すると地下茎で繋がっている竹林は、この動画でご覧いただくように全体が枯れてします。開花に向かうことによって竹自体の生命力が落ちて結果として天狗巣病や害虫に対する抵抗力が弱まっていくのです。


タケトラカミキリの蛹


何とタケトラカミキリの蛹です!虫の喰った根曲竹の持ち手から珍しいものが出てきました。白いイモムシのような幼虫や、竹から竹へと飛び回る成虫は目にする事が多くとも蛹はかなり珍しいものです。


このような竹の虫への対処方は具体的にどうすればいいのか?竹虎ウェブサイト竹製品のお手入れ方法についての中に「竹の虫について」がありますのでお困りの方は参考にしてください。




花と小鳥と竹籠と

 
古い鳥籠


その竹職人の仕事場には古い鳥籠が仕舞われています、確かヤマガラを飼っていたと言います。自分も小さい頃にはメジロやウグイスを飼育していましたが、コバンと呼んでいた小さな鳥籠を使っていました。現在では禁止されている野鳥の飼育も、田舎ではずっと昔から当たり前のように楽しまれていて、どこの友達の家に遊びに行っても美しい鳴き声を聞かせてもらっていたものです。当然、このような竹ヒゴを使った鳥籠作りの職人さんは、それぞれの村に一人や二人はいました。


竹職人が工房の周りにかけている巣箱


野鳥を飼う事が禁止されてからも職人さんの工房には楽しそうな小鳥たちの遊ぶ声が絶え間なく響いてきます。それは安心して子育てできるようにと自宅周りにこのような巣箱を何カ所にもかけているからです。


美しい竹林


庭先にはご自身が植えた色とりどりの花が開き、すぐ横に広がる竹林の竹葉は青空に美しく映えています。筍堀に向かう道沿いにも可愛い草花が咲き乱れる中、昨日の30年ブログでの牧野富太郎博士の言葉を思い出しました。


四ツ目籠


四ツ目編みする竹職人


「植物を愛すれば、世界中から争いがなくなるでしょう。」花を愛で、小鳥のさえずりを楽しみながら四ツ目籠を編む姿は、まるで別世界のようです。




牧野富太郎博士「植物を愛すれば、世界中から争いがなくなるでしょう。」

 
牧野富太郎博士生誕160周年の高知新聞


「植物を愛すれば、世界中から争いがなくなるでしょう。」先日の4月24日に生誕160年を迎えられた高知出身の世界的植物学者、牧野富太郎博士の言葉です。この日の地元高知新聞は、牧野博士の大好きだったという桜の花が印刷された新聞カバーとでも呼ぶべきでしょうか?初めて見るような特別バージョンで誕生日をお祝いされていました。


虎竹の里


実は土佐虎斑竹の名前を命名されたのは牧野博士でした。それが1916年(大正5年)の事で、当社初代宇三郎が大阪天王寺の工場にてヨーロッパへの輸出材として虎竹製造を開始したのが、その前年の1915年です。二人は当時何もなかった虎竹の里に、竹という目的を持って他の土地から出入りしていた数少ない人間でしたので何処かで出会っているのではないかと思っています。


虎竹の竹林


土佐藩政時代には「憐れむべき浦にて候」と時の代官が書き残しているくらい当時の安和(あわ)地区は漁業に適した港を持たず、農地も少ない貧しいドン底の集落でした。若い頃、土地の名前の由来に興味を持って調べていたら須崎と久礼という大きな町の間という意味だと書かれていましたけれど、本当は「憐れむべき」の「アワ」から来ているのではないか?と土地のお年寄り達は笑います。


唯一の珍しい模様の浮かびあがる虎竹を年貢の代わりに献上して何とか苦難を乗り越えていた諸先輩にとって、山や竹林の価値は今では考えられないほど高く部外者が立ち入れる場所ではありませんでした。自分の小さい頃には山に向かう人や車は沿道の民家によってチェックされていて、見慣れない場合には追いかけて声をかけるような光景が見られていました。


日本唯一の虎竹


牧野博士も長い年月に渡り何度か虎竹の里を訪れられているようですし、竹虎初代宇三郎は竹伐採シーズンには長期滞在していましたので、閉鎖的な地域で同じ虎竹に引き寄せられた者同士の交流があったのは自然な事のように思います。


土佐虎斑竹


いずれにせよ牧野博士の100年も前の言葉が、今を生きる自分達に大きな教訓として胸に突き刺さります。「植物を愛すれば、世界中から争いがなくなるでしょう。」




竹根の印鑑

漆仕上げの竹根印


この堂々として力強い竹根は一目に気に入りました。竹根表皮のシミが又何ともいい景色となって手にしても惚れ惚れしてしまいます。


竹根素材


竹根は以前のように簡単に手に入れられるものではなくなりました。竹の稈のように中が空洞ではなく身がぎっしりと詰まっているのも竹根の特徴で意外とチビタケナガシンクイムシなどの害虫が入りやすいので品質管理も大変です。


竹根印稈素材


それでも細い竹根なら比較的容易にありますが、やはり太いものはお目にかかれません。


沢山製作された竹根印


虎竹竹根印


沢山ある竹根印鑑の中から極太のものを厳選してもらい「虎竹」の竹根印を作ってもらいました。


朱文字


彫り方には朱文字と白文字の二種類があって、朱文字は文字自体が朱色になり、白文字は朱色に白抜きで文字が入ります。白文字の方を選ばれる方も多いかと思いますけれど、実は竹根印の場合には竹表皮を薄く残して彫り上げるのが職人の腕の見せどころなので、やはり朱文字がおすすめです。


竹根印、竹虎四代目(山岸義浩)


この太さ、渋い漆仕上げ、大満足です。




竹根の製品たち

地表に表れた竹根


地表を這うように伸びて行く竹根には、短い間隔で節があって厳しい自然の中で逞しく生き抜く強い生命力を感じます。竹林にはこのような強靭な竹根が縦横無尽に伸びているので天然の鉄筋コンクリートとも言われ「地震の時には竹林に逃げろ」と小さい頃から教わってきましたし、実際に鉄不足の時代には鉄筋の代わりに竹が使われていた事もあるほどなのです。


竹根団扇立て


そんな竹根は丈夫さと同時に、熱加工によって自由に曲げられるという加工性の高さがありますので意外と多くの竹細工に活用されてきました。そんな中でも竹根を多用した身近にあった製品のひとつが団扇立てです。エアコンが普及する前の話なので随分と古くはありますが、一時は色々な形のものが考案されていたのを覚えています。


竹根の灯


先日見かけた竹ペンダントライトにはアクセントとして竹根が使われていて雰囲気を醸し出していました。竹根はこのように、ちょっとした表情の変化を付けるのにも重宝されています。


竹根ステッキ


代表的なものに皆様ご存じの竹根ステッキがあります。現在では製造されなくなったものの、喜劇俳優のチャールズ・チャップリンも愛用していたのは有名なお話で、日本の竹根加工の技術力の高さを思います。


竹根彫刻刀


変わったところでは一刀彫の職人さんが使う道具が全て竹根製だったこともありました。味のある彫刻刀が何十本とならぶと壮観でした。


竹根印稈


竹根を専門に掘る職人がいなくなった今、太い良質な竹根素材は貴重品です。前々から竹根印が欲しいと思ってましたが満足できるものがなかなかありません。ところが先日、竹根の中でも太く、このように雰囲気のある漆仕上げをされた竹根印に出会ったのです。(つづく)


竹根の竹林

竹林の竹葉


心地の良い竹林を歩いています、晴れた空からは朝日が差し込んで来て最高の気分です。柔らかい土の感触を楽しみながらの竹林浴ほどリフレッシュできるものはありません。


青い竹根


ふと足元を見ると青々とした竹根が顔をのぞかせています。をご覧になられて不思議に思いませんか?辺りには竹節の見える稈が無数に天を目指して伸びていますけれど、地中を縦横無尽に走る地下茎にも同じように節があって見た目が良く似ています。


竹根素材


良くお話させていただく事ですが、竹は稈の部分はもちろんの事、竹の小枝、竹葉、そして竹根までも全て無駄にすることなく使い切れる素材です。竹の根は本当に良くしなって丈夫でもありますから鞭には最適の素材です、こうした竹根を見て小学校の先生にお尻を叩かれた思い出のある方はシニア世代では少なくないのではないでしょうか(笑)。


竹根盛り籠


それでは他にはどのような竹製品に活用されているかと言いますと、現在では製造されていない少し珍しい所で、このような竹根盛器などがありました。竹根に数カ所黒く見えている所は熱を加えて曲げているのです、大量生産の時代はスピード重視でしたからこのような焼け焦げもあまり気にせず製作されましたが今見るといい味に感じられます。


竹炭アイマスクの正しい使い方

 
竹炭アイマスク


コロナで旅行や移動を控えていた皆様も今年のゴールデンウィーク等には少しづつお出かけされる方が増えているとニュースで流れていました。自家用車はじめ新幹線や飛行機、あるいは船舶での旅の中でちょっと疲れてお休みされたい時にアイマスクを使わる方はおられませんか?


竹炭綿


いつでも、どこでも寝られるという特技を持つ自分ですがアイマスクを付けると更にパワーアップして熟睡できます!なので乗り越す危険性のある場合には使う事はできません(笑)。竹炭アイマスクには竹炭微粉末を混ぜ込んだ竹炭綿が使われています。


竹炭アイマスクのゴム


竹炭アイマスクを使う


そもそもパソコンで目が疲れ気味の時に遠赤効果のある竹炭を目に当てて休むと良いと聞いてから15センチくらいの長さの竹炭を使っていたのが始まりです。


竹炭アイマスクと竹虎四代目(山岸義浩)


前にも紹介した事がありますけれど、このように額にあてて鉢金に見立ててチャンバラに使うものではありません。


美しい竹の切り口

 
美しい竹の切り口


とても美しい竹の切り口です、何と竹林から竹を伐採した時そのままの切り口だと言うので驚いて暫く声が出ません。しかし、こうして見ていると竹は竹林に立つ姿が一番ではあるものの、こうした切り口ひとつでも人に熱く語りかけてくるものがあるものです。模様のように見えるのは維管束と言う竹の水分や養分を運ぶ細い管です、竹表皮に近いほど密集しているのがお分かりいただけると思います。だから表皮近くの繊維はしなやかでも強く、竹細工に多用される部分です。


虎竹の切り口


日本唯一の虎竹の切り口はどうか?と言えばこんな感じで、実はあまり美しいものではありません。先程の白竹は丸竹のまま使われますので切り口そのものも作品になるのに対して、虎竹は丸竹で使う事は少なく、その場合でも必ず切り直すので竹林での伐採ではむしろ竹表皮へのキズに注意しています。


虎竹の山出し


竹林からの搬出も一本づつ担いで運び出せるのであれば、それが一番かも知れません。しかし、虎竹の里のように急峻な山道を30分も登っての作業ではある程度の効率を求められますので昔ならキンマ(木製のソリ)、現代は運搬機に載せて山出しします。最終的な製品が異なるので、やり方は違いますが長い時間をかけて培われ最適化した其々の竹の形です。




フランス国内巡回展「日本の日常生活の中の竹」の展示作品が帰ってきた

 
パリの展示竹細工


2020年1月から開催されていたフランス国内巡回展「日本の日常生活の中の竹」(Bamboo exhibition in Japanese daily life)の竹細工達がパリから帰ってきました。思えば、ちょうど新型コロナウイルス感染症(COVID-19)拡大直前からのスタートでしたので今度の展示はコロナと共にあったように思います。同年の10月からはリオンで、その次にはツールーズでの開催を予定していて皆様の反応を楽しみにしていましたものの、残念ながらそれは叶いませんでした。


それぞれの竹に作り手の顔が思い浮かぶ、日本人の暮らしの中から生まれてきた実用的で美しい竹細工ばかりを厳選していました。今では製作されていない籠も多いのでパリに荷物を送り出す時には、これが最高だと思っていましたけれど2年経って再会して見ると籠たちが変わったのか?自分が変わったのか?今度同じようにセレクトするとなると全く違う内容になるなあと感じますので面白いものです。




国産山ぶどう手提げ籠の作り方

 
山ぶどう棚編み手提げ籠製作


山葡萄の蔓で編まれる手提げ籠は、若い世代からご年配の方まで女性の皆様にはご愛用されている方も多いと思います。竹虎では40数年前から扱っているので昔から使う母のセカンドバッグを譲られましたが渋い色合いに変色して、まるで黒光りする革のような素材感がたまらないのです。


山ぶどう棚編み手提げ籠、竹虎四代目(山岸義浩)


ただ現在では広く知られすぎたためか輸入される製品や素材が多く、それと共に技巧的な編み込みの籠もあって少し品が感じられない気がします。やはり自分などは昔ながらの網代編みか、せいぜい棚編みとよばれる透かし編みくらいしか手にする気にはなれません。自分が現在トートバッグのように愛用する大型バッグは元々は腰籠として使われていた棚編みです。


山ぶどう手提げ籠作り


山葡萄の蔓は一年の中でも梅雨時の1~2週間の短い期間しか収穫することができません。


野葡萄蔓


山葡萄素材


堅い葡萄蔓を水に浸し柔らかくして丁寧にヒゴとりしていくのは竹細工と同じです。


山葡萄買い物籠編み


山ぶどう買い物籠製造


木型を使って編まれる国産山ぶどう手提げ籠バッグは、こうして丁寧な手仕事から生みだされています。




今年は出ない特大竹ざる

 
特大竹ざる


この大迫力の竹ざるは直径が70センチもある深竹丸ざるです。さすがに一般のご家庭でお使いいただく事は稀ですが、仕事用として根強いご要望がありますので、その都度やはり他の代替え素材では対応できない竹ならではの特性の素晴らしさを感じています。


竹ざる製作


しかし、大きくてしかも丈夫で機能的な竹細工は非常に高度な技と共に腕力も必要とされるので高齢化の進む竹職人の世界では真っ先に出来なくなってしまう物のひとつです。しかも今年は良質の太い真竹がなくて50センチサイズの竹ざるが編めただけで70センチのように特別な大きさは来年以降になりそうです。


自ら竹林に入り太い竹を伐り倒して65センチサイズの横編み竹ざるを製作する職人の動画をご覧いただきますと、その苦労の一端をご理解いただけるのではないかと思います。



虎竹と白竹の網代弁当箱の三サイズ種類揃いました

 
竹網代弁当箱


竹のお弁当箱と言えば皆様が一番に思い浮かべるのが、このような細い竹ヒゴでギッシリと目を詰めて編まれた網代弁当箱ではないかと思います。薄い竹ヒゴを使いしっかり編み込む事により軽くて丈夫でいながら、しなやかさと弾力があり更に通気性もよい最高のお弁当箱となります。日本唯一の虎竹と白竹で、それぞれ(大)とミニの2サイズを展開していましたけれど、先日よりもっと大きなサイズとのご要望をいただいて特大サイズを追加する事になりました。


竹虎では竹細工がどのように製作されてるのかを皆様に少しでも知っていただきたいと考えています。この虎竹網代弁当箱もYouTube動画で最初の編み出しからから出来あがりまでを1時間程度にまとめています。ちょうど1年前に公開させてもらって再生回数1万回を越えていますので関心をもってご覧いただく方々もおられるのだと感謝しています。思った以上に手間のかかっている職人の技を感じていただくと、お手元の網代弁当箱も違って見えてくるのではないでしょうか。




自然のデザインで飾られた竹香合

 
竹香合


まるで薄型のファンデーションケースのようですが違います。洗練されたデザインは香合(こうごう)、お茶道具の一つで香を入れる蓋付きの容器です。そして素材は竹、点々とついた模様が特徴です。


竹香合


長い竹の稈には水や養分を運ぶ維管束とよばれる管が通っています。その細い管がこのような斑点となって表れているのです、平らな部分は線状に縁に行くに従い矢印のようになって最後は丸い点となります。


竹香合


竹は日本だけでも実に600種もあると言われていて、小さな笹類のような竹から大きな竹まで様々です。おのずと竹から生み出される製品は多岐にわたりますので、このような軽く繊細で面白い、ひとつだけの竹香合もあるのです。


懐かしい竹根の灯を見つけました

 
竹根の灯


これは珍しい竹灯を見つけました、このような竹製品は部屋に入るとすぐに目に飛び込んできます(笑)。あまり気にされていない方が多いかも知れませんが、実は昭和のご自宅にはあっちにもこっちにも実に様々な竹の照明が当たり前のように取り付けられていました。今となっては貴重品のようになっているペンダントライトを見ながら改めて竹が身近であった古き良き時代を思います。


竹のペンダントライト


この球形の電灯で縦にゆったりした丸いカーブを描いているフレーム部分も竹です。竹ならではの優しいしなりを活かした作りで、更に竹特有の繊維の流れが模様になって表れています。ポイントにされているのが均一の太さと長さで並んでいる竹根、全体を引き締めてしっかりとまとめています。


竹灯


需要も少なくなって竹根を掘る職人さんもいなくなり現在ではこのような使い方は出来かねてます。けれど竹の曲線をデザインに取り入れた丸い灯は健在で、このような虎竹フロアライト(丸)大が当時の雰囲気を伝えるかのように頑張っています。




虎竹スクエア蓋付き籠(弁当箱)プレゼント企画スタート!

 
虎竹スクエア蓋付き籠(弁当箱)


YouTube登録者数四万人突破を記念して「四」がらみの、ちょっとこじつけで四万十川のスイーツを四名様にプレゼントする企画を開催させていただきました。まずまず多くの方に喜んでもらえたようですので今回の「四」がらみは、自社の四ツ目編みの虎竹スクエア蓋付き籠!これを四名様プレゼントしたいと思っています。


虎竹スクエアバスケット


コロナが長引いていますけれど、この虎竹スクエアバスケットのシリーズはお家時間が長くなった一昨年あたりから一つ又一つと増えていった竹籠たちです。プレゼント賞品にさせてもらいました虎竹スクエア蓋付き籠は、もともとはお弁当箱としての用途が多いと考えていましたのに会社や学校がリモートとなりましたので小物入れとしてお使いの方が多いのかも知れません。


いずれにせよ、日本唯一の虎竹で四ツ目編みにした逸品です、このチャンスにご応募いただきラッキーな四名の中のお一人になっていただきたいです(笑)。




ストレートネック、スマホ首対策の竹首枕が出来るまで

 
孟宗竹


今や生活に欠かせなくなったスマートホン、もし忘れて出かけてしまったら人との連絡が取れないというだけではなく、その日のスケジュールから電車や飛行機などの移動も、お買い物も全くお手上げという方も多いかも知れません。それだけ普及して誰もが使うようになってからスマホならではの身体の不具合があって、それがストレートネックやスマホ首、あるいはクレーンネックなどとも言われる症状なのです。ひどくなると首や肩がこったり痛みの他、頭痛、手足しびれ・冷え、自律神経失調症なども引き起こすそうですから大変です。


竹材の炭化加工


現代の日本では多くが活用されずにいる孟宗竹の竹のカーブが、このストレートネック対策に役立つとの事で「ようやく出番が来たか!」喜々としました。そして、皆様に安心してご愛用頂ける製品作りのための一つが防虫、防カビに有効な炭化加工です。


炭化竹


高温で蒸焼きにした竹材を使う事により安定した品質の首枕をご提供できるようにしていますが、作られる工程はテキストだけでご説明するには限界があります。下記のYouTube動画では、孟宗竹を使う竹首枕の製造工程を詳しく紹介しています。




ストレートネックに竹首枕


そして、出来あがった竹首まくらは天然竹を使っていますのでサイズがまちまちです。その選び方や使い方につきましてもYouTube動画をご用意しています。良くご覧いただき有効的にご愛用いただければと思います。




竹の顔とは?

 
竹一重切用竹材


華道で使われる竹一重切花入を創作されている職人さんのへのこだわりも凄いものがある。広い竹林を歩き回ってようやく一本の竹を選ぶのだが、その竹の切り口を見てあまりに綺麗なので驚いた事がある。人間国宝の生野祥雲斎さんは長い布袋に竹を入れて運び出したと聞く、そこまでではないにせよ同じように竹林からの運搬にも気を付けられている。


竹林


虎竹の里の伐採や搬出とは随分違うけれど、これは竹材の用途に関係している。自然の丸竹そのままを花入れに製作するので竹の姿や竹肌をとても大切にするのだ。シミや自然な割れなども珍重される、流派によるのたろうか?シミの付き具合を見れば好まれる、好まれないが一目で分かると職人は話す。


竹花入れ用竹材


ところで、竹には表と裏がある。虎竹は、太く割ったり細く割ったりして丸竹のまま使うことは稀だからあまり考えた事がない。先程の乾燥させた竹材を油抜きすると天然の油成分が光って美しい竹肌に趣のあるシミが浮かびあがる。さて、どちらが表だろうか?


実は向かって右側が竹の表の部分だ。竹が成長していく過程で太陽の当たる表側は早く硬くなり反対に裏側は柔らかいままに伸び上がり微妙に節間に違いが出るのである。節が少しだけ短い方が表、つまり竹の顔とも言える。節間が短いので、ゆっくりと曲がって頭をたれるイメージか...奥ゆかしい竹らしい。


逆台形六ツ目手提げ籠の使い心地

 
逆台形六ツ目編みの竹籠


昨年末にご紹介したちょっと風変わりな形の六ツ目編み手提げ籠がありましたが覚えておられますでしょうか?台形を逆さにしたようなデザインに新鮮さを感じて使ってみたいと思った籠でした、通常の持ち手より革が似合うだろうと専用に誂えた革持ち手にすると何とも格好が良いのです。


逆三角背負い籠


もしかしたら逆三角形の形に、この背負い籠と間違えられている方もおられるのではないでしょうか。この背負い籠も、かなりのレアですが底が平らになっておらず完全におむすび型です。両方とも底が狭くなっているため収納力という点では優れているとは言えません。


逆台形六ツ目編みの竹籠


更に置いた時の安定感は、革の持ち手を付けた逆台形六ツ目編み手提げ籠も底の平部分が小さいため良くもありません。ところが、ここ数ケ月自分が愛用する中でついつい手が伸びるのがこの籠なのです。スーパーでは食材が口からはみ出す事もありましたけれど、底の狭くなる収納力の弱さは入れ方の工夫でどうにかカバーできますし安定感という点では大きな問題はありません。何より一番良いのが手にするだけで楽しくなる事です、手に感触のよい革一本手を肩にかけると足取りも軽くなる気がしますから夏に向けて少しだけ製作してみようと考えています。


白竹八ツ目手提げ籠が三個入りできるなんて!?珍しい特大サイズは限定です。

白竹八ツ目手提げ籠の三個入りを持つ竹虎四代目(山岸義浩)


白竹八ツ目手提げ籠は大小の二つのサイズがあって、やはり人気なのは沢山の荷物が入る大サイズです。どの程度のお買い物ができるかと言いますと、例えば牛乳パック1リットル、キャベツ一玉、白菜半分、ホウレンソウ一束、リンゴ二個、ニンジン三本、玉子10個、バナナ一房(6本)、ケチャップ、醤油小瓶などがゆっくりと入れられる収納力です。この量を入れますと女性の方でしたら少し重たいくらいではないかと思いますので、スーパーなどへのお供には余裕のサイズではいなでしょうか。

 
白竹八ツ目手提げ籠


しかし、今回は特別に更に一回り大きなサイズで大の籠がスッポリ重ねられてしまう特別規格の約W46×H27×D24cmは、八ツ目編みとしてはかなりレアな竹籠となります。もっと荷物を沢山入れて持ち歩きたいという方にはご満足いただける限定の竹編みです。




竹虎四代目が痛恨のミス!虎竹トイレットペーパー籠を限定販売

 
虎竹トイレットペーパー籠


こちらは日本唯一の虎竹で編んだ虎竹トイレットペーパー籠なのです、少し分かりづらいですが左右ひとつづつの竹籠を並べています。見比べているのですがお分かりでしょうか...?虎柄もあるし何だかご覧いただくのも大変なので申し上げますと編み目の大きさが微妙に異なっているのです。


虎竹トイレットペーパー籠


編み目だけでは伝わりづらいサイズ感も、こうして並べて置いてみますと結構お分かりいただけそうです。左右どちらも高さは同じなのに左側の籠は編み目がちょっとだけ大きいために底が付いてしまっています(涙)。同寸の虎竹骨を入れても、この通りなので通気性が良いとは言えません。竹虎四代目痛恨のミスです!しかし20個も完成してしまいましたので今回は訳ありの特別価格にて限定販売させていただきます。下のYouTube動画もご覧いただきご検討ください~色々とお使い頂けそうな虎竹籠です。




鼻緒職人の秘技!?極太鼻緒をすげて八割BLACKが完成

 
八割BLACK、下駄


夏はカランコロンと素足に下駄で音を鳴らして歩きたいものです。近年は新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)によって全国各地のお祭りも開催されない事が多いようですが、今年こそは花火や縁日を楽しめるようにと願っています。でも、この八割BLACKはそんじょそこらの下駄とは違います(笑)、下駄の台部分にご注目いただけきたのですけれど、実は桐材部分に切れ目が入っていてソフトな履き心地が大人気なのです。だから浴衣に合わせてというよりも、ジーンズなど普段履きにされる方が多い下駄です。


鼻緒職人の道具


別に新しい下駄ではなくて、昭和の時代には動きやすい事から仕事場で使っていたと言う本当に普通の履物のひとつでした。令和になっても皆様にご愛用いただきたいので、竹虎では特注で極太鼻緒を製作して専用にすげています。鼻緒の履物に慣れない若い皆様が足が痛くなるとのお声をいただくからです、ところが、実は極太ゆえに少し苦労している事があります。


下駄に鼻緒付け作業


それが鼻緒の取り付けなのです。竹皮をしっかり張り付けた下駄台にすげる鼻緒が特別太いので鼻緒職人さんは大変だと話します。そこで鼻緒職人さんが編み出した秘技がこの太い竹串!


八割BLACK、下駄


お手製の太い竹串を、鼻緒が通る穴に突き刺して型が付くまで置いておきます。こんなちょっとした、ひと工夫が仕事の効率を良くして、とどのつまりは歩きやすい鼻緒すげにつながります。




山深い里の孟宗竹

 
四国の山々


NHK大河ドラマファンなので「鎌倉殿の13人」も毎週楽しく観ています。今のところ物語が始まったばかりなので関東での話が中心ですが、源氏と平氏の戦いが進んでいく中で西日本も舞台となっていくかと思います。ご存じのように、ゆくゆくは平氏が破れてしまうわけなのですけれど敗走して逃れた武者が四国の山深い土地に数々の平家落人伝説を残しているのです。国指定重要有形民俗文化財ともなっている祖谷のかずら橋などは有名です、源氏の追手が迫った場合は谷底に切り落とせるようにかずらで編まれていると言います。源氏の討伐がいかに激しかったかを今に伝える逸話と共に、それでも逃げおおせられるほど四国の山は深く険しいのです。


旬の筍


軽四自動車でないと運転が難しいような細く曲がりくねった山道を登っていきます、自分は今一体どの辺りにいるのだろうか?さっぱり分からなくなりました。車のドアを開けると気温は急に下がっているので標高の高さを感じます。改めて四国の山の大きさを思いながら見渡すと、峰々には人の暮らしがあり、驚くほど家の周りの畑が美しく管理されていて自分たちの土地を大切に愛着を持って生活されている事が伝わってきます。そして、このような山深い場所にも孟宗竹です。かっては貴重な食料として、建材から生活道具、防災まで人の毎日になくてはならなかったからこそ民家の近くに青々と繁っています。


金明孟宗竹


先日ご紹介した金明孟宗竹などは同じ孟宗竹でも鑑賞用です。植えられるようになるのは江戸時代の事、当時どの程度あったのか分かりませんけれど武家のステイタスシンボルとして大きな孟宗竹を庭に植えるのが流行っていたそうなので、もしこんな美しい竹があればさぞ自慢の種で来客も多かったかも知れません。




イ草縄編みバッグ

 
い草編み黒革持ち手バッグ


しばらく忘れていたけれど、香りという物は強烈に記憶を蘇らせてくれるものです。岡山県倉敷市は昔からい草栽培が盛んな地域で代々仕事を続けられてきた須浪亨商店五代目の須波隆貴さんの仕事場にお伺いした時に幼い頃の事を鮮明に思い出します。


須波隆貴さんのい草編み


母の実家は土佐市蓮池という所でい草栽培をしていました。夏のうだるような暑さの中、刈り入れして乾燥される山のようない草、工場に入るとむせ返るほどの香り、泥の乾いた色、数台の機械から絶え間なく聞こえてくるゴザを編む大きな音...沢山のい草縄を操りながら祖母から受け継がれたと言う木製織機を使う須波さんの手元を見ながら回想していました。


い草縄編みシート


カッタン、コットンといつまでも聞いていられるような音を止みまます、気がつけばい草縄は一枚のシート状に編まれています。これが様々な形の籠に変わっていくのです。


い草編み黒革持ち手バッグ


使われている革の感触がとても良かったので持ち手全体を包んで頂きました。夏に最盛期を迎えるい草です、これからの季節にこそい草バッグは似合いそうです。今回い草を手にして、ふと前に教えてもらった七島藺(しちとうい)の事も気になりだしました。丈夫で耐火性もあるのに機械化できなかったため生産されなくなり今では数件の農家さんが残るだけと聞いていますが、又ご紹介できればと考えています。




塩月寿籃作の菓子器(Japanese bamboo art by Juran Shiotsuki)

 
塩月寿籃作 蓋つき網代編菓子器うさぎと三日月(Japanese bamboo art by Juran Shiotsuki)


塩月寿籃さんの作品をいつも手にして愛でている。その都度思うのだが作品にこれほど人柄が出るのだろうか?裏表のない丁寧な仕事ぶりが竹編みにも拭き漆にも滲み出ている。


塩月寿籃作 蓋つき網代編菓子器うさぎと三日月(Japanese bamboo art by Juran Shiotsuki)


うさぎは自分の干支でもありお気に入りだ。三日月が描かれているけれど最初は月の世界にいるのかと思っていた。


塩月寿籃作 丸菓子器(Japanese bamboo art by Juran Shiotsuki)


塩月寿籃作 丸菓子器(Japanese bamboo art by Juran Shiotsuki)


塩月寿籃作 丸菓子器(Japanese bamboo art by Juran Shiotsuki)


かっちりした性格そのままの丸菓子器、今からちょうど30年前に創られたとは思えない新鮮さで今日も自分の手の中にある。


竹盃三枚組


竹盃


こんな竹盃で乾杯したくなる。この盃が竹皮の残し方など粋なのだ。


竹微粉末の可能性

 
竹微粉末


言うなれば「を食べる」という事になります、今が旬の筍とは違います(笑)。大きく成長した竹材を微粉末に加工しているのです。竹微粉末なら、最近食品添加物として広く使われている竹炭パウダーの事かと思われる方も多いかも知れません。しかし、竹炭ではなく伐採したそのままの竹を微粉末にしているものです。それも普通にチッパーシュレッダー等で竹を切断して粉状にするだけなら他にも沢山ありますが、今回の竹微粉末は特許取得の特殊刃物の竹粉製造装置で作られる60ミクロンの細かさで、なめらかな舌触り。竹を切断するのではなく「切削」している微粉末というのが大きな特徴です。通常の加工機械と比べた時に一見どちらも細かい粉末のようなのですが電子顕微鏡で比べると全く違う形であることに気がつきます。


竹微粉末顕微鏡画像(針状)


竹粉を食用利用する大きな理由のひとつにレタスの80倍という竹の食物繊維に着目したという事がありました。ただ、竹を切断する際に出る切り屑も細い針状の繊維質です、前掛けや衣類に着いてもなかなか落ちないのは衣服の編み目に細長い繊維が入り込んでいるからです。更にもっと細かく竹を微粉末状にしても、実は針状繊維は残ったままなので、この普通の竹粉を家畜のエサに使う研究も進んでいたものの胃の内壁に竹繊維が刺さり食欲低下等で成果がでなかったのです。


竹微粉末顕微鏡画像


ところが、この竹微粉末は驚くことに針状繊維が全く見当たりません。90パーセント以上が難消化性の食物繊維という竹を微粉末化する際に高温にならず、常温加工されているのも凄いところです。熱に弱いビタミンやアミノ酸が壊れることなくバランスよく含まれていると言います。


竹微粉末のハニカム構造


竹には真っ直ぐ縦に維管束という養分を運ぶ細かい穴が伸びています。この維管束の穴には竹由来の乳酸菌が住み着いているのですが、常温加工なのでハニカム構造の中に竹由来の乳酸菌が生きています。竹粉が乳酸発酵するのはこのため、10年近く前に愛犬の体調管理に使っていた竹微粉末素材に可能性を感じています。