1月末までしか期間のない虎竹の伐採シーズンが終わり、静けさを取り戻した山道を行くとついこの間まで伐り出された竹が立てかけられていた事を思い出します。虎竹の色付は、大学の研究者の方によると土中にある特殊な細菌の作用と言われているものの実はハッキリした事は解明されていません。日当たりや潮風など複雑な自然環境が絡み合って生まれる奇跡の竹だと思いますが、気温が虎模様に関係しているのは間違いないようです。
山の職人は年をとって引退された後も竹林が恋しいのでしょう、積み込みの現場で座っていたり、土場の選別作業の仕事をしている所に自転車でやって来たりしていました。そんなお年寄りが口々に「虎竹は霜が下りると色が来る」と話していたのです。
昔は根拠のない土地の言い伝えだと思っていたところ、近年の温暖化がはじまると同時に虎竹の色付の変化が現れはじめ古老の言葉が真実であったのだと知ります。竹はイネ科だといつもお話させて頂いています、お米は寒暖の差で美味しくなりますから同じイネ科の竹の品質や色付にも気温は密接に関係しているはずです。
3月に入り今日などは好天で日当たりの良い所で動いていますと暑いくらいです(笑)。けれど昨年からの大型寒波で凍霜害が報じられるくらいの寒さがあり、この冬も気温が低く虎竹の色付は例年比べて良い竹林が多く嬉しくなりました。
先程の画像の切り口や立てかけている竹をご覧いただくとお分かりいただけるように虎竹は皆様が良く目にしている孟宗竹のように太い竹ではありません。しかも同じくらいの太さである真竹と比べると節間が短いので竹細工に使う場合には結構な苦労があります。
それでも多くの人を魅了しつづけているのは、この色合い。100年前に遥々と大阪天王寺からやって来た初代宇三郎が惚れ込んだ竹です。
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