さて、昨日の30年ブログでは竹虎での白竹(晒竹)の湯抜きをしていた時の様子をご覧いただいた。そして、山の職人の丁寧な仕事ぶりが伝わるような白竹三段ピクニックバスケットをご紹介した。白竹が青々とした真竹を加工している事がお分かりいただけたと思う。
実はこの真竹にも、現在大きな変化が起こっている。今年8月10日のブログではテングス巣病について、お話させてもらっているが覚えておられるだろうか。テングス病は一般的にはカビとよばれる糸状菌の一種で高温多湿な環境では特に伝染しやすい。それにしても今頃なら青々とした竹葉がゆれていなければならないのに、四国、中国地方、そして竹の多い九州各県では特に異様な雰囲気を感じるほどだ。
竹にも紅葉の季節があって竹葉が黄色く色づくことがあるが、それは普通の植物とは真逆の春であり多くの方が気づかないほどの短い一時期の事である。ところが、あちらこちらの竹林の色合いや竹の様子が何かおかしい、一目でテングス病だと分かる。
淡竹については120年に一度という開花が全国各地で現在進行中と伝わって来ている。開花した竹林はすべて枯れてしまって再生には10年、元通りの竹材が育つには15年とも言われるが、虎竹も淡竹の仲間なので、もしかしたら開花に向かって竹の生命力が徐々に落ちているのではないかと感じる事もあって心配している。こうして竹の勢いが弱まると抵抗力の低下と共にテングス病が蔓延する、だから竹の部分開花と間違えられる事も多いのだ。
しかし、真竹の開花は1960年代に記録が残っているので、まだ一斉開花の時期ではない。それなのに、まるで竹の秋のように見えるほどの竹林の衰退、テングス病...、これは前々から申し上げている気候変動と竹林の荒廃が主たる原因ではないかと思っている。病が一部の竹だけに限定されていれば、それらの竹を皆伐して焼き払うという方法もあるけれど、テングス病でない竹林を見つけるのが大変なほどの広がりだとそうもいかない。
そこに来て山の職人の高齢化など伐採や竹林管理の品質低下が問題になってくる。決められた時期に3~4年の適正な竹を伐り出し、間引きしながら竹林を美しく保っていく技術と人材が不足してきて良質の竹材確保が難しくなっているのだ。
この事が、近年チビタケナガシンクイムシ等による害虫被害の多発につながっている。これはもちろん竹虎だけの問題ではなく日本全国が似たような状況にあり、お客様も含めて様々な形で竹に関わる全ての人たちに考えていただきたい。
竹虎では、このような虫食い穴(ピンホール)への注意書きをウェブサイトの製品、特に穴が目立つことの多い角物細工、つまりピクニックバスケットやランチボックスなどの弁当箱各種に記載することにした。もちろん今まで通りの可能な限りの努力と対策をするのだが、どうしても虫害を防ぎきれない場合がある。新しく編んだ籠にも小さな穴が開いていることがあるが、そのような場合には繰り返し熱湯を使い3ケ月程度様子を見て虫がいない事を確認して販売させていただく。
自分がアトピー体質という事もあり殺虫剤など薬剤が大嫌いなので熱湯での対処だ。竹の虫も自然界で必死に生きているので、そう簡単にいなくならなくて根気が必要な事もある。ご愛用いただく皆様に、このような竹の環境をご理解いただき、自分達と一緒に竹林や竹職人、竹文化を守っていく、そんな気持ちのお客様だけに竹をお届けできればと思っている。成長の早さからサステナブル(Sustainable)な素材として世界が注目している竹、その日本の竹は作り手と使い手が、まさに竹が地下茎で手を取り合っているかのように、手と手をたずさえなけばならない時代に来た。