飯干名人の「かるい」、山の自然、職人、使い手

名人作の背負い籠かるい


名人の作った「かるい」と呼ばれる背負い籠がある。普通の背負い籠は底が広く平地に置くと倒れないうように編まれているが、急勾配の多い地域で使われてきた「かるい」は横からみると逆三角形になっていて自立しない。山の斜面に置いて使いやすく担ぎやすいように考えられた独特のものなのである。


しかし飴色に光る竹肌をご覧になられて、これが元々は青々とした真竹だったと思う方が何人いるだろうか?油抜きをして白竹にした竹材をこうして籠にしている訳ではない、香りたつような真っ青な竹を伐りだし、そのまま割って作られている。信じられない人は、このブログ最下段にあるYouTube動画で名人が手にする真竹に、そして出来あがった「かるい」の色合いに驚かれるかも知れない。


かるい、竹虎四代目(山岸義浩)


先日、手の平にのるようなミニチュアの籠をいだたいて、飯干名人の美しい籠を思い出していた。残念ながら沢山いただいたのに一つも手元に残っておらず、かろうじて置いてあった二回りも小さな籠は現在中断しているパリの展示会場に飾られている。


かるいミニチュア


伝統的な竹細工は、いくら腕が良くても時代に取り残されてしまう。使う人がいなくなれば必要とされなくなるのは仕方のない事か、昔なら作ることなどなかったような小さな籠が土産物として並んでいたのを寂しく見ていた。神業のような竹のあしらいも、良い竹があり、物の価値を知って愛用する人がいてこそ。山の自然、職人、使い手の三方のどこかが崩れても成り立たないのだ。




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