地元の高知県では「メゴ笹」あるいは省略して「メゴ」と呼ばれ親しまれている籠材は、背丈も低く「笹」という名前が付けられているので笹の仲間と思われがちなのですが実は最小の竹の仲間です。全国的には酉の市でオタフクを飾ることからオカメザサ、あるいは神楽に使うカグラザサという名前もあって場所が変わってもやはり「笹」と言われているのは面白いものです。
稈の高さが1~2メートル、直径が3~5ミリと小さいことから笹と思われているのだと思います。日本には600種の竹があるものの竹と笹の区別というのは複雑で明確な分類ができていません、しかし、とにかくこのメゴ笹は細いながらも非常に丈夫で強い性質を持っていて昔から秀逸な籠素材として愛用されてきたのです。
さて、ここらか本題ですが、良くしなり強靱な繊維をもったメゴ笹は割ったりせずにそのまま丸竹の状態で籠に製作していきます。ただ、ひとつだけこのメゴ笹には他の竹には無い大きな特徴があり、それがこの細工を「幻」としていまう由縁でもあるのです。自分も竹虎に入社して数年は話に聞くだけで見たことがありませんでした。それは何かと言いますと、他の竹材なら伐採しても、しっかり管理していれば一年通して同じように細工の素材として使う事ができます。
ところが、このメゴ笹は伐採して青々としているうちは柔らかく、しなりがあり編組細工にはもってこいなのですけれど乾燥して色合いが落ち着いた頃になると硬くなり籠の材料としては全く使えないのです。メゴ笹の伐採も旬の良い秋から今月いっぱいくらいまでなので瑞々しい素材がある今しか製作することができません、だから圧倒的に数量が少ないのです。
丸竹のまま編まれた籠は、ケバ立ちや、ささくれがなく表面はつるつるツヤツヤで小さなお子様が素手でふれても大丈夫な事からメゴ笹手付き籠は洗濯籠などにも使われています。色が落ち着くに従い、しっかりと硬くなる性質は一旦編み上げてしまうと形が狂うこともありません、貴重な竹材なので是非大切にご愛用いただきたいと思うのです。
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