この古い竹籠は御用籠と言います。皆さんが一番馴染みがあるとしたら、かっては自転車やパイクの荷台に縛り付けられていた「あの籠」を覚えてはおられませんでしょうか?もちろん若い皆様はご覧になられた事もないかと思いますけれど、ある年代より上の方でしたらこの御用籠が普通に道路を行き来していたのを一度はご覧になられた事があるのではないかと思います。
そもそも、この御用籠はプラスチックコンテナが登場するまでは様々な荷物を運ぶための万能籠のように使われてきました。重たい荷物から軽量のものまで用途にあわせて編まれていましたので種類も多く、一番大きなサイズだとそれこそ大人四人が四隅を持って動かすようなものまであったのです。竹虎の工場にもかなり大きな御用籠がいくつもあって竹の端材を山積みしてリヤカーで運んで行くのを小さい頃には良く見ていました。
それにしても、当時の竹籠には味があります、時代を感じます。とにかく丈夫に作らねばなりませんから幅の広い頑丈な力竹が何本も通っています。底を擦りながら運ぶ事も多々ありましたので、ちょうどソリのように縦に二本竹が使われています、竹表皮は滑りが良い事もこのような籠に竹が使わる理由の一つでした。
更に詳しく見ていくと力竹にこのような竹のへこみのある素材が使われている事に気がつきます。ここは節のあるウラ(竹先端部分)に近い部材で今なら絶対に使われないのですけれど、御用籠の需要が多く仕事に追われている職人達が貴重な竹材を余すところなく使い切っている様子がうかがえます。この一か所だけ見ても何十年も前の竹工場の活気や、竹曲げに使う炎や煙、職人の大声まで聞こえてきそうな勢いで迫ってきます。
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