あれは先の年の暮れ、夜の8時過ぎに一本の電話があったのです。たまたま受話器を取るといきなり電話の向こうで女性の方が落ち着いた声で話しだしました。「ご自宅で水漏れや何かお困りごとはありませんか?」クリスマスも間近の、こんな夜にと少し困惑して話もそこそこに断って電話を切ったのでした。
「営業の電話を、どうして夜にてしくるのか」
食卓に座り直した自分がそう言うと、ずっと横で聞いていたヨメが言いいました。
「あなたもお偉くなられましたね...」
「竹虎が倒産しかけていた時はどうでした?」
東京のデパートで土下座して買ってもらっていたのではないか、慣れない営業で3時間玄関で待たされたあげく追い返されて悔しくて泣いて帰ってきたのは誰だったのかと続きます。電話の方は、きっと年末に資金繰りが大変で電話営業されているのでしょうね?コロナで外出が減り、夜はどこの家にもご主人が在宅している、だから、わざわざこんな時間にかけているのではないですか?
「お偉くなられましたね?」
そう言われてハッとしました。当時と比べれば確かに少しは生活も楽になって人並みに食べていけていけています。しかし、すっかり忘れていましたけれど当時の名刺には「竹虎は365日24時間営業」と書いていました。それが今ではどうでしょう、東京のデザイナーに作ってもらって格好だけは良くなって、でも自分は何をしているのか?
正直反省しました、そして何かできることはないかと考えてすぐに思い当りました。会社の留守番電話です、竹虎の電話は終業の午後5時30分から翌朝8時まで誰も電話を取っていません。一体いつから、そんな殿様商売のような会社になったのか、父親も早朝6時から電話に出ていたのに。今年の書初めは「変」。とにかくやり方を変えないと自分達の将来はありません。そこで、さっそく留守番電話をやめて終業時からの電話、土日の休日の電話は自分の携帯に転送する事にしたのです。
先週から開始して一番最初の転送電話は、高知新聞さんからふるさとづくり大賞の総務大臣賞記事掲載についてでした。幸先よいスタートだと思いながらも、電話で先様と声を交わす事の大切さを改めて感じています。
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