横味噌こしザル×丸味噌こしザル

飯籠、竹虎四代目(山岸義浩)


ここにひとつ面白い竹籠があります。面白いと言っても自分の小さい頃には、このような縁側の上の軒先にはご飯を入れて吊り下げられていた普通の飯籠であり、おそらく今でも田舎の家を訪ねると台所の片隅や納屋に仕舞われているかも知れない何処にでもあったポピュラーな竹籠のひとつなのです。


飯籠


面白いと言うのは、この飯籠の成り立ちにあります。飯籠は、本体部分と蓋部分に分かれていますけれど良くご覧いただいたら、それぞれの編み方が違うのにお気づきいただけるはずです。ご飯を入れる本体部分は横編みと言って竹ヒゴが手前から向こう側に向かって編まれてるのに対し、蓋部分は菊底編みで編まれているので竹ヒゴは丸い形に沿ってグルグル回っています。


飯籠


かっては味噌こしに使われる事が多かった事から「横味噌こしザル」と呼ばれていた本体の竹編み。


飯籠


こうすると分かりやすいかと思いますが、そんな本体部分に対して蓋は「丸味噌こしザル」ともいう菊底編み。放射状に伸びた少し幅広の竹ヒゴに、細い竹ヒゴを回りして編まれています。


めしかご


今では家電の発達、生活様式の変化で飯籠を使うご家庭はほとんどありませんので、本体編みの部分はサイズも小さくして米研ぎざるとして残っています。


飯籠


蓋部分も水切りに使って頂きたいと思って足を付けて台所籠として製造は続いています。


手付きメシカゴ


それぞれ違う編み方を併せて一つの飯籠として販売されていたのは、生活道具として飯籠が無くてはならなかった時代でした。大量生産に応えるために実は本体部分と蓋部分は別々の職人達が作っていたのです。まず「横味噌こしザル」を編むと、今度は別の職人がそのザルの形に合わせて「丸味噌こしザル」を蓋として編んでいきます、編み方が違えば材料の竹ヒゴの取り方も違うので効率化を極めた結果でした。


飯籠の蓋は「カチリ」と音をたてて閉まります、これは非常に難しい熟練職人の技なので蓋作りの職人もさぞ大変だったのではないかと思います。それにしても隣合わせた集落で150人もの職人達が、一方は「横味噌こしザル」をもう一方は「丸味噌こしザル」を編み一つの製品として日本中に販売されていたとは本当に夢のような話。皆様にお届けさせていただく竹編みひとつひとつはそんな夢の続きなのです。




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