もう何年になるでしょうか?随分と前にスズ竹市場籠をお求めいただいていたお客様から籠の一部を修理して欲しいとのご連絡をいただきました。竹はしなりや粘りがあるものなのですが、そんな竹素材の中でも特にスズ竹は強く堅牢です。重たい荷物を入れてもビクともしない特性を活かして昔なら行李が大量に作られましたし、現在では大型の市場籠に編まれています。
編みあがったばかりのスズ竹の竹肌はこんな色合いですから、飴色に変色した買い物籠をどれだけ長くお客様がご愛用いただいているかが分かります。
しかし、普通に見ていたらどうともない市場籠の底部分を見てビックリ!
これは只事ではありません。日常使いしていてこのように一部分だけ穴が開くなど考えられませんのできっとペットにかじられたのではないか?そう思ってお尋ねしてみたら、いつも自転車のカゴに入れてお使いだそうなのです。
そこで、自転車カゴにいつも触れている部分が擦れてしまったそうです。口巻の籐もギッシリしっかり巻かれているので、このように傷むのは不自然です。しかし擦り切れたというのでしたら納得です。
さっそく新しい籐で巻き直しです、古い籐とはどうしても色目が違ってきますがそれは皆様に勘弁いただいております。また数年お使いいただくうちに目立たなくなります。
籠の底部分もこの通り、どこを修理したか色の違う竹ヒゴが無ければ分からないくらい完璧に修理されています。
竹細工の良いところは竹が身近で成長が早く材料が無尽蔵と言ってよいほど豊富な事。柔と剛という相反するような性質を併せ持つ不思議な素材だから様々な形に加工が出来る事。そして、出来あがった籠やザルは万が一傷んだ場合にも修理をして再び同じように使える事です。
120年に一度という開花でスズ竹の材料不足が続く中、ご迷惑をおかけしている方々も少なくありません。スズ竹の竹林の様子など今までご覧になられた事はあまり機会はなかったのではないでしょうか?一度ご覧いただき山々の竹に少しでも心を向けていただくと嬉しく思います。
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