西村さんが竹と向き合う姿は何度も何度も拝見しています。しかしそれはデパートや催事コーナーでの実演ですので大きな作品ではなく小さな御守りのようなものが多かったように思います。
工房にお伺いした記念に縁起の良い左馬の御守りを社員に彫って頂いたのですがちょうど来店されたお客様ともこのようなやり取りをされていました。ワクワクされながら彫りあがるのを待つお顔、完成した作品を楽しそうに手にされる姿を思い出しました。
しかし、さぬき一刀彫の真価を感じるのはこのような茶合です。皆様も一度はご覧なられた事がある一休和尚の顔、そっくりの大迫力に驚きます。
何本もの彫刻刀を使用されていますけれど、柄の部分は渋い竹根。もちろん自作されたもので刃先を研ぐことができるのがプロだと常々お話しされています。
絶滅危惧種ならぬ「絶滅危惧技」には、さぬき一刀彫の伝統をただ一人背負っておられる気概を感じます。年に何度もお会いしていた頃は20数年も前の事なのに西村さんの若さとバイタリティーは全く変わらないのは、このせいかも知れないと感じました。
昔なら、このような技は人に見せなかったと言われます。印刷された武将の絵が貼られた大きな孟宗竹が彫り進むにつれて勇壮な姿が現れてきます。
竹と黙って会話しているようで格好がいいです。
自分もゼロから彫りはじめる西村さんの技を拝見するのは初めて、あれよあれよと言う間に彫り進みます。
香川県指定伝統的工芸品、さぬき竹一刀彫はまだまだ健在です。一生使いきれないほどの煤竹を保管してある倉庫などにも西村さんの意欲が垣間見えます。竹を愛し、竹に新たな命を吹き込む技がここにもあります。
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