この八重桜のような竹ブローチは、45年間仕舞われていた倉庫から奇跡的に見つかった当時は大人気だった竹細工のアクセサリーのひとつです。竹を細く薄いヒゴににして弾力としなりを活かした造形は見事であり、美しい花のイメージを見事に再現されています。
自分の小さい頃には、それこそ大人たちは洋服につけていたと思うくらい流行っていました。もしかしたら虎竹の里だけかもと思いましたが、いやいや...製作されていた種類や数を考えたら全国津々浦々で販売され愛用されていたことを伺い知ることが出来ます。
ちょうど今回の母の日の企画に使っている竹ブローチも色違いだけで8種類、しかし実際にはこの数倍の色のバリエーションがありました。同じ技法で様々な形に応用できるのもこの製品が沢山作られた理由の一つであったと思います。竹ヒゴをまとめて製造し、素材を複数の内職さんの手で編み上げることによって、現在では見られなくなった大量生産を可能にするしくみが作られていたのです。
当時、新潟県竹工芸指導所に勤務され竹製品の開発に携わっておられた小菅小竹堂さんが、これらの竹アクセサリーを考案されたと聞きますがその背景には驚愕するような竹の技がありました。ご覧になられている結び編みと言う技法も難度は全く異なるものの同じように竹ヒゴを細く薄くして編まれた竹の芸術です。
裏側から拝見しても魅入ってしまうような迫力ですが、このような大作になると小菅さんでしか創作できません。昭和の時代を一世風靡した竹ブローチは、多くの方の手に取って使っていただいたり、手軽なプレゼントになるように価格を抑え、大量に製造するために編みを簡素化して考え出された逸品だったのです。
もう6年ほど前になります、昔を知る職人さんに製作されていた竹アクセサリーを作っていただいた事がありました。自分にとっても見覚えのある懐かしい竹細工でしたのでこの目で実際に見られた嬉しさでいっぱいだった事を思い出します。
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